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百鬼夜行.3

「……じゃ、会議始めまーす」


「おい! 待て待て! 何故貴様が勝手に進行している!?」


 周りの人も同様の事を言っている。やっぱりこうなるよね。……はぁ、面倒臭い。師匠、ギルマスに連れてこられたのは本部内の会議室。そこに入った瞬間、周囲はざわついて、視線は主に僕へと向けられた。


 ギルド職員でもなければ、冒険者として目立った功績を残している訳でもない。そんなぽっと出のどこの馬の骨かも分からない奴が、急に会議を主導しようとすれば、苦言が出るのは当たり前だ。


 僕は師匠を睨みつける。師匠は苦笑し、一度手を挙げた。それだけで、途端に場は静寂と化した。


「皆を困惑させる気は無かったが、すまない。非常事態だったのでな、彼に来てもらった」


「ギルマス。奴は一体何者なんですか?」


「肩書だけなら一般人ではある。が、彼のスキルは有用でね」


「……あの若さでスキル持ち、ですか。お話は分かりました。では、そこの。自己紹介とスキルの説明をしてもらおうか。ギルマスにそこまで言わせるなら、さぞ有益なスキルなんだろうなぁ?」


 やたらと喋っている男は、僕に厳しい視線をぶつけてきた。今、論点はそこじゃないでしょうに……。


「リョウと言います。スキルは、セバンタート内を俯瞰して見ることが出来ます」


「なっ……!?」


 僕の言葉に、男だけじゃなく周囲もざわつきを見せる。説明はかなり省いたけどね。再び師匠が手を挙げる。


「皆知っての通り、今オーガが地上に出て来ている。そして一体も迷うことなくここ、セバンタートを目指し歩みを進めている。何体かは侵入を許してしまっており、被害も少なからず出ている。そこで、今回の事案に有用なスキルを持った彼に、指揮を託そうと思っている」


「ギルマス! 只の一般人に指揮権を渡すなどと!」


「では、彼より先に現状を把握できる者が、この場にいるのか?」


「それは……」


「リョウ、現時点でオーガの動きはどうなっている?」


「とりあえず城下には一体も行ってないです。危ないのは商店街、後はこの周辺。店は殆ど閉まってるけど、酒場や宿は開いている。何体かうろついていますね。今の所、商店での被害は無さそうです」


「ふむ。では三人一組、もしくは四人一組でオーガの掃討に当たろう。騎士団にも応援を要請したから、合同での作戦となる」


 皆の士気が高まっているように感じ……いや? これは、緊張しているのか?


「あのー、一つ聞いてもいいですか?」


「一般人がしゃしゃり出るな! 精々スキルを用いて我々に貢献しろ!」


 ……こいつやたら突っかかってくるな。


「構わない。リョウ、どうした?」


「この中で、オーガとの戦闘経験がある人って、います?」


 皆顔を見合わせる。え、ないの? 僕もないけど、それってマズくない?


「戦闘経験等要らん! 我々はギルド職員、荒事には慣れている! オーガ等恐るるに足らんわ!」


 どこからその自信が湧くの……僕がうんざりしていると、コココンッと小気味の良いノック音が。


「ギルマス、ヤマトです。お連れしました」


「ありがとう、通して」


「失礼します」


 中へ入ってきたのは、ヤマト君とフルーラ。それと、知らない騎士団員だ。フルーラは光沢のある綺麗な金髪だが、こっちの騎士団員は、眩しい程、まるで光っているかの様な金色の髪色をしており、それを超短髪にしていた。坊主頭に近い。


 フルーラは一礼するが、もう一人は大きな欠伸をした。それを見た、先程から突っかかってきた男は、標的を僕からその男に変えた。


「貴様! ここはギルド本部だ! 礼節をわきまえろ!」


「そんな事言ったって、良い子は寝る時間なんスよ。自分この時間は寝てるんで」


「貴様の事情なぞ知らん!」


 すると短髪の男は師匠を見て、珍しい物を見るかのように声を出す。


「あれー? どうしたんスか? こんな所で」


 師匠は人差し指を立てて、その男にウィンクをする。


「……事情は後でね。軽く自己紹介を頼めるかな」


「はーい。ゾマって言います。お願いしまーす」


「フルーラです」


「騎士団からはこの二人が応援に来てくれた。このメンバーでオーガを迎え撃つぞ」


「え? オーガってダンジョンの中層にいる奴ッスよね? 戦えるんです?」


「貴様! ウキウキして……何を勝手に動ける気でいる! ギルドの傘下に一時的に置いてやるだけだ。我々の指示に従ってもらうぞ!」


「……さっきから突っかかって来ますけど、アンタ何で弱いのにそんな威張ってるんです? 別に威嚇しなくても、自分弱いものイジメなんかしませんって」


 そう言って笑い出すゾマと言った男。比例して突っかかった男は顔を赤くして、声を荒げる。


「貴様! 私を侮辱するか!」


「侮辱も何も、事実ッスから。他の人も大体同じっぽいし、自分弱い人には興味無いんで。……アンタは、強そうですけどね?」


 そう言って僕を指差し不敵な笑みを見せるゾマ。やめてよ。


「貴様ぁ! いい加減にしろ!! あんな一般人より弱いだと!?」


 ほらぁ、矛先がこっちに来ちゃったじゃん。剣まで抜きそうになってるし。


「ビーティン! ……いい加減にしろ、君も戦力だというのを忘れるな。今はそれどころではないだろう?」


 師匠が声を張ったことで、ビーティンと呼ばれた男は叱られた犬みたいになった。


「は……も、申し訳ありません……」


「ゾマも、会議が終わるまで大人しくしてくれ」


「はーい」


 ここいいッスか? といい、椅子へ座り出すゾマ。フルーラも一礼して腰を掛ける。師匠に続けてと促され、このペースでちゃんと会議終わるの? そう思ってしまった。

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