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みんなのはなし

イドウくんのバースデー

作者: ゆとうよみ

みんなのどこにでもありそうな日常系ホラーです

5話目は、イドウくんと、たくさんの誕生日のお話

2番

おたんじょうびはとくべつなひ

ごちそう!

ケーキ!

プレゼント!

みんなニコニコしてたのしくて、おめでとうっていってくれる



イドウくんは誕生日が大好きです。いつもなら怒られるようなイタズラもちょっとお目溢ししてもらえるし、両親も祖父母もいっしょに1日楽しく過ごしてくれるから。

今日はイドウくんの5歳の誕生日。

ずっと欲しかったゲーム機を買ってもらう約束なのです。みんな自分か家族の誰かが持っているのに、イドウくんの家では誰もゲームをしないのですから。祖父母はソフトとかいろんなものを買ってくれることになっています。

隣駅のレストランでハンバーグを食べてから皆で家電量販店に行きました。ゲーム機は大好きな赤色。ソフトは欲しいのがいっぱいあって、すごく悩んで3本まで絞ったけれど決められなくて「ぜんぶ」と言ってみたら、イドウくんのお母さんがちょっと怖い顔で「1本だけって言ったでしょ?次は、それが終わってから」やっぱり怒られてしまいました。

すると、イドウくんの父方のお祖母さんがそっと寄ってきて口を開きます。

「まぁまぁ、いいじゃない。誕生日なんだから、もうひとつくらい」

「そうだよ、たんじょうびなんだから」

口調を真似してイドウくんが言うと、お母さん以外が笑ってしまいました。

ちょっとしてお母さんも「仕方ないわね、誕生日だものね」と、くすくす笑い出しました。

誕生日はすごい とイドウくんは元気いっぱい笑いました。


誕生日から1ヶ月ほど過ぎたある日のこと。イドウくんは誕生日プレゼントに貰ったゲームソフトの次のシリーズが欲しくてたまりませんでした。

先月来たお店で、一生懸命お願いします。

勿論、お母さんは駄目と言います。

お父さんにお願いしても、駄目としか言いません。

イドウくんは、不意に思いつくまま口にしていました。

「きょうはたんじょうびなんだよ」

すると、どうしたことでしょう。お父さんもお母さんも、今まで怖い顔をしていたのに、急に「じゃあ、仕方ないね」と頷いたのです。

イドウくんはびっくりしました。誕生日ってすごい!と、新しく買ってもらったゲームソフトを大事に抱えたバスの中で思いました。



そうして、イドウくんは沢山のワガママを通してもらいました。

誕生日は、特別な日だから。

最初は、本当に欲しいものとかしたいこととか行きたいところとか食べたいものとか、そういう時だけ口にしていたのですが、だんだん些細なことにも使うようになりました。習い事に行きたくないとか野菜を食べたくないとか学校休みたいとか宿題をやりたくないとかずっとゲームしたいとか……キリがありません。

それでも、誕生日ですから。

お父さんもお母さんも「仕方ない」と許してくれるのですから。




1年に沢山の誕生日を迎えたイドウくんは、どんどん大きくなりました。みんなは1年に1回しかない誕生日を何度も何度も何度も迎えるのですから。


イドウくんは、たくさんの誕生日を祝ってもらううちにとうとう、どう見ても両親よりも年上のようになってしまいました。

お祖父さんお祖母さんにも近付いたようにすら見えます。



来年、小学校に上がるのに。

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