大事な話
その日、裕馬は部屋で本を読んでいた。
裕馬が好みの分野は歴史である。
特に戦争の歴史を好んだ。
裕馬の関心は主に思想や戦略にあった。
あまり兵器には関心がなかった。
その時、ドアがノックされた。
「裕馬君、入ってもいい?」
声の主は沙希だった。
裕馬は少し、自室を見わたした。
特に、見られて困るようなものはない。
「ああ、入っていいぞ」
「失礼します」
ドアから沙希が入ってきた。
もうおふろに入ったせいか沙希はパジャマに着替えていた。
「? どうしたんだ、沙希? 俺に何か用か?」
「ちょっと、大事な話があって」
「大事な話?」
「そう、大事な話」
「それはいったい何なんだ?」
沙希は真剣なまなざしを裕馬に向けてきた。
裕馬はドキドキした。
こんな美少女に見られたら、心臓がおかしくなりそうだ。
「私たちはお義父さんとお母さんに幸せになってもらいたいと思っている、その認識で一致しているよね?」
「ああ、間違っていない」
「私たちは新しい一つの家族になった。でも、それだけじゃないと思うの。私と裕馬君の関係も大事なんだと思う」
「? というと?」
「私たちは話し合いをすべきだってこと。私たちがうまくやっていけなかったら、二人は幸せじゃなくなるかもしれない。私はお母さんが手に入れた幸せを大事にしたい。だから、私と裕馬君の関係も大事になってくる」
「つまり、仲よくしようってことか?」
「そうなんだけど、それだけじゃない。私は仲がいい家族でありたいし、仲がいい兄妹でありたい。これは私にとって悪くないし、裕馬君にとっても悪くないと思うの。どう?」
裕馬はしばらく沈黙した。
「俺もオヤジが再婚するって言った時はびっくりしたよ。オヤジは女とはもう二度と縁がないと思っていたからさ。わかった。できる限り俺たちも仲良くやろう」
「話はそれで終わり。それにしても、裕馬君の部屋って本が多いね? なんだか学者の本棚みたい」
「まあ、な。俺には知性があるから本を多く読むんだ」
「奇遇ね。私も本は好きなんだ。裕馬君はどんな本を読むの?」
「そうだな……俺は主に歴史か戦争かだな。専門的に読んだのは古代ローマ史だ」
「へえ、そうなんだ。私は主に小説を読んでいるの。ねえ、今度裕馬君の本を読ませてもらってもいい?」
「ああ、いいぞ」
裕馬は古代ローマ史をよく読んでいた。
学校の勉強でも古代ローマ史はある。
月州の学校では古代オリエント史、古代ギリシア史、古代ローマ史を学ぶ。
裕馬は熱烈なカエサルフリークで、ほかにもアレクサンダー大王などが好きだった。
「じゃあ、裕馬君、おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
沙希は部屋から出て行った。
「さて、俺もふろに入るか」
裕馬はおふろに入って寝ることにした。