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ベンジャミン三世

 次の瞬間、私たちの目の前に両腕のないAI兵が着地する。そして、自身も追われている身だというのに私たちに向かって威嚇した。

 そいつはランプ型の頭部を持っていたため、頭部についた数個のランプ型横にグルグルと回転して、赤く点滅する。

 私はすかさず腰の拳銃を手に取り、至近距離で二発撃つ。すぐにそのAI兵は倒れたが、とっくに他のAI兵たちの視線は集まっていた。

「高峯くん! 走るよ!」

「ちょちょちょ、あー! ウィンドウが閉じちゃったよ!」


「ちょっと! 一回止まろう! ウィンドウを開いてハムスターボールを装備しなきゃ! じゃなきゃ! 僕は! すぐに! 殺される!」

「そんな余裕ないってば! いいからもっと速く!」

「北山さんが閉じたんだろー!」

 私は来た道をまっすぐに戻る。しかし、陽の光は差していなかった。

「そんな……落盤してる」

「そこ左!」

「え?! でもこっちに出口はないよ?」

「速く速く! 追いつかれるってば!」


「よし! あった!」

「トロッコ?!」

「乗って!」

 私は高峯くんに手を引かれるままに、トロッコに乗り込んだ。

 私たちは何とかAI兵の集団から逃げ切ることができた。トロッコは以前として走り続けているが、止まることはない。

「何でこんなところにトロッコがあったの?」

「僕が線路を引いたんだ」

「まさか一人で?」

「そうだよ。悪い? まるで僕が当然のようにひとりぼっちの人間みたいな言い方だけど」

「別にそうは言ってないでしょ」

「じゃあ何だっていうんだよ」

「驚いただけ。何時間かけたの?」

「三ヶ月ぐらいかな」

「よく耐えられたね」

「何だその言い方は。もっとこのトロッコに感謝しなさいよ」

「はいはい。ありがとうありがとう」

 砂漠の強い日差しが遠くに見えてきた。



「またそれ? ちゃんと食べないと午後持たないよ?」

 トイレから戻ってきた私は、机でお昼ごはんを食べる高峯くんに言う。

「それって、何さ。ちゃんとタコスって名前があるんだけど?」

「ごめんな〜、北山さん。こいつメキシコ人だからさ」

「両親とも日本人で、日本生まれ日本育ちなんだけど?」

 高峯くんの机に寄りかかって爽やかに笑うのは新田くんだ。高峯くんにとっておそらくただ一人の友人で、ものすごく女子からモテる。モテすぎて、こじらせた子にこないだ刺されそうになったという噂まである。

「奈帆! はやくお弁当食べようよ」

 クラスの子が私を呼ぶ。

「じゃあね、ベンジャミン三世」

 私が彼のアカウント名で呼ぶと高峯くんは嫌そうに顔をしかめた。

「何の話?」

 新田くんが高峯くんにそう尋ねるが、高峯くんは僕の本名とだけ言い、私に小声で言う。

「そっちだってマシロだろ? なんだよマシロって」

「昔飼ってた犬の名前」

「あ、ごめん」

「今はおばあちゃんの家にいるけどね」

 勝手に死んだ犬だと勘違いした高峯くんにベロを突き出し、私は自分の机に戻った。


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