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ハムスターボール

 ズドンと重い銃声が、射撃場にこだまする。的には銃弾がかすった跡すら無く、銃を撃った本人である高峯くんは衝撃で後ろにひっくり返っている。

「小銃であれだけ当たらなかったから狙撃銃ならどうかと思ったけど、全然ダメだね」

「そうだね……」

「そうだねって、自分のことでしょう? しっかりしてよ」

 私は高峯くんに手を伸ばし、起き上がらせる。

「いっそのこと、近接武器にしちゃおっかな。こう、剣とか槍でシュシュシュッってさ! ぬへへ」

 高峯くんは武器を持ったようなポーズで素振りをする。

「気持ち悪い笑い方しないで。そもそも近接武器は初心者向けじゃないよ」

「え、気持ち悪かった?」

「戦闘が苦手な人はやっぱり無難に距離を取った方がいいと思う。でもどの銃も上手く扱えなかったからなあ」

「え、無視?」

「わかった!」

「なになに! 僕にあった武器がついに閃いちゃった! それで僕もこの世界の覇者になっちゃうわねだね! ぬへへ」

「ハムスターボールにしよう!」

「ハムスターボール……?」

「高峯くん、ハムスター飼ったことある?」

「いや、ないけど」

「チョコはあげちゃダメだよ」

「ハムスターにチョコあげたの?」

「ハムスターボールっていうのはね、セントラルの隅っこにある雑貨屋さんで売ってる、一応武器アイテムだけど武器屋に売ってないアイテムなの」

「あげたんだね?」

「ハムスターボールは、防御アイテムとしての使い方が多いかな。そもそも使う人自体少ないんだけどね。見た目が見た目だから」

「見た目が見た目なせいで人気のない武器アイテムを僕に装備させようってこと?」

「仕方ないでしょ。それが今の最善なんだもの。とにかく雑貨屋さんに行くよ」


 店の外でハムスターボールを装備した高峯くんはかなり笑えた。衣装はは世紀末の盗賊みたいなデザインなのに、彼自身は大きなボールの中に入っている。

「それで? 笑ってないで説明してよ。このアイテムの効果は?」

「わかったわかった」

 私は小銃をポップアップさせ、銃口を高峯くんに向ける。

「ちょっ、ちょっとちょっとちょっと! 何をする気……!」

 私は高峯くんのボールに向かって銃弾を連射する。

「ね、大丈夫でしょ?」

「精神的に良くないよこれは」

「ボールはあらゆる武器の攻撃を無効化するの。無効化するダメージの上限はアバターのヒットポイント上限よ」

「上限って言ってもランクによって変わるじゃないか」

「常に最高ランクのヒットポイントが基準なの。アップデートが来るたびにこのアイテムの上限も更新される仕様になってる」

「じゃあ、最高水準のプレイヤーが一撃で死ぬくらいのダメージを一度に浴びない限り、無敵ってこと?!」

「そうなるね」

「俺、これにするよ! ちょっと慣らしてくる!」

 高峯くんはそう言って、ハムスターのように器用にボールを転がし、走っていった。すぐに階段で転んで、ずっと遠くまで転がっていったけれど。


 ハムスターボールを使用中は自分も一切攻撃できないとあとから私に聞いて、高峯くんは肩を落とした。


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