好きな子の瞳を奪いたい!
ぐちゅっ、ぶち。ぶちぶちぶち......どこかで聞いたオーケストラの演奏より遥かに素敵な音色が鳴った。
「あはっ、これがひーちゃんのくりくりおめめかあ...」
ころころしていて丸っこくてかわいらしい球体。ずっと、ずーっと欲しかったものがようやく手に入ったんだ...。その嬉しさからつい頬が緩んでうっとりしちゃう。今日は人生で最高の日になりそうな予感。
ぽかぽか暖かい太陽の陽だまりにかざしてみる。か、かわいい...この世のどんな宝石よりも綺麗だよ...。
優しい生暖かさを手だけじゃなく直接感じたくて、我慢できずにそのまま口に放り込んでみた。
「んっ、あったかい...」
血の味と食べ物では絶対に有り得ない味覚が口いっぱいに広がる。ショートケーキの何十倍も甘くて舌が蕩けちゃいそう。
食感は...大きくてぶよぶよしている。奥の方にある硬い筋がコリコリしていて楽しいなあ。
でも正直そんなことはどうでもいい。
今私はひーちゃんの体の一部を口に含んでいる。今私はひーちゃんを直接感じている。今私はひーちゃんと一つになっている。その事実さえあればそれで良かった。
「大好きだよ、もう二度と離さないよ。この先何があっても愛し続けるからね...ひとみちゃん。」
返事はなかった。でもそれでいいんだ。
だって私たちは心で繋がっているから。だから瞳なんていらないよね?心の瞳さえあればそれで十分だもんね?
返事はなかった。