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最後の葬儀

作者: 尚文産商堂

これを読んでいる者へ。

実際問題、俺はこれは誰が読んでいるか、なんていうことについては興味がない。

だが、俺が確かにここにいたんだという証拠を、なんとしても遺しておきたかった。


西暦、といわれてもこれを読むのはきっと人類じゃないだろうからわからないだろう。

太陽が昇り、沈むのを1日として、それが365回で1年。4年に1度だけ1日増やすという暦だ。

1年は12の月と呼ばれる暦に分けられていて、1つの月はだいたい30日か31日、2月だけは28日か29日ある。


さて、こんな事態になったのは今から10年位前のこと。

どこかのアホが間違ってボタンを押したことが発端だ。

何のボタンか、今分かっていたのは兵器製造の研究所で、実験のボタンを押したということで、その兵器というのが大気中の酸素をわざと核融合やら核分裂やらさせて、一定の範囲を窒息させるというトンデモ兵器だった。

研究だったらだいたい直径20メートルくらいの範囲で収まるはずだった。

だが、実験というのは大体は暴走する瞬間が訪れる。

今回も、その例に漏れず、ボタンを押した瞬間に、酸素のみならず鉄までの軽い元素が瞬時に核融合を引き起こした。

どうやってこんなことをしたのか、については全く残っていない。

だが、研究所は、これが発生した瞬間に太陽のようになり、文字通り周辺とともに消滅した。

これがきっかけとなり、地球は一気に寒冷化へと進んでいくことになる。


氷河期に突入することがはっきりとした地球では、他惑星への植民計画が一気に盛り上がった。

だが問題となるのは何処に行くのか、そして誰が行くのか。

そんなことを言い合っているうちに氷河期は刻一刻と近づいていた。

そして、素材を求めて醜い大戦争が始まった。


発端は大国と呼ばれる国々がその技術を独占しているという大多数の中小国家からの発言だった。

全ての国に平等に、というのが建前だった国際機関だって、わが身可愛い国同士の争いの場と化した。

これをもって、大国対中小国家という戦争へと突入する。

テロはテロを呼び、戦闘は戦闘を呼ぶ。

自らその繁栄を誇っていた人類は、こうして自滅の道を急激に転がり落ち始めた。


研究所の爆発から10年も経った今日では、俺以外の人はもう連絡がつかない。

運が良ければどこかにコロニーでも作って、暮らしているかもしれないが期待は薄いだろう。

最後の人類となる俺は、いつの日にか来るかもしれないほかの惑星の住民に宛てて、この手紙を書き記すことにした。

どうせいくばくしかない命だ。

思いを、できるだけ未来へと遺しておきたかった。

手紙は俺が一緒に持っておく。

願わくば、こんな無益であほらしいことが、他の惑星でも起きないことを切に願う。

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