Who needs Assisted Suicide?
今回が、初めての投稿で、色々とミスはあると思います。作品のテーマは、自殺幇助。現代の日本では、合法化されていませんが、この小説をキッカケに考えて貰えれば光栄です。勿論、私は、作品内のファーストとナターシャの言うとおり、100%正しい制度だとは思いませんし、否定する意見もあっていいと思います。
ファースト「患者ナンバー82、時田奈津子さん(82歳)、2040年8月7日、自己の意思決定による自殺っと。患者の遺体管理お願い。」
ナターシャ「はい、了解。」
薄暗い病室。病室のベットで、患者はまるで安らかに眠るように人生にピリウドを打った。ナターシャは、何事もなかったかのように、遺体を布で覆った。
自殺幇助制度。
世間一般では、安楽死制度として解釈されるが、安楽死とは違い、医師は患者にペントバルビタ-ルと呼ばれる錠剤を渡し、その錠剤を口に含むかは、患者の判断次第。直接、錠剤を投与した医師は処罰の対象となる。
2035年を境に、日本で制度化された。しかし、当然のことながら、制度化されても尚、未だに制度に対して、否定的な意見もあり、自殺幇助専門の医師も大きく不足していた。そうした状況もあってか、3年前、ファーストは自身の母国であるスイスを離れて、東京の病院で、医療業務をこなすことになった。ナターシャもファースト同様にスイス出身で、ファーストの側で、ナースとして勤務している。
ファースト「最近は、随分と件数が増えたな。ナターシャ。」診断書を覗きながら、ファーストはナターシャに話しかけた。
ナターシャ「そうですね、年々、増加しているのが判りますね。来日してまもなくは、もっと少なかったような。」
ファースト「日本人も色々と大変で、悩みがあるんだろう。」
ナターシャ「来日前から、日本は介護ストレスだとか、過労死とかが、問題だって。癌の件数だって増加傾向にあるって。」
ファースト「確かにね。僕だって、今は、医師として十分なキャリアは積めているかもしれないし、毎日を不自由なく過ごしている。けど、もし、ある日突然、重大な病にかかって、痛みに耐えきれず、キャリアだって、不自由のない生活を投げ出してでも、死を選ぶかもね。生きる権利もあれば、死ぬ権利だって尊重されるべきだよ。」
ナターシャ「ただ、果たして本当に自殺幇助が正しいのか、働いている身でありながら、疑問に思ってしまいますが。」ナターシャは、少し困惑した表情で語った。
ファースト「僕だって、自分のやっていることが100%正しいとは、思わない。ただ、日本の場合、この制度は必要なんじゃないか。一応、この制度って、否定する人はいるけど、国民の多数決によって制度化されたのだから、日本国民にとっては、必要っという認識でいいんじゃない。まあ、確かに、やっていることは、人殺しと変わらないといっちゃ変わらんが。」そして、ファーストは続けて、何かを思い出すかのように付け足した。
ファースト「でも、人殺しって、必ず悪い行いだと僕は思わない。もし、人殺しが悪い行いであれば、死刑だって悪い行いになるし、正当防衛だって、悪い行いになっちゃうからね。」
ナターシャ「何事も、状況次第という事ですね。」
ファースト「なにはともあれ、今日の患者はこれで最後。あとは、待合室で待っている遺族への報告。遺体を霊安室に移送して、書類の整理。明日は、土曜日、休日さ。」
ナターシャ「私たちの業務が、絶対に正しいとは言えないけど、外科や内科みたいに、緊急手術で休日出勤がないのは救いね。」とナターシャはほっと一息ついた。
ファースト「まあ、少なくとも、満面の笑みで感謝されるような仕事ではないね。休日はなにをするんだい?」
ナターシャ「のどかな場所に行きたいかな。東京だと、毎日が忙しすぎる。休日なのに休んだ心地がしないわ。」
ファースト「そっか。んじゃ、ご遺族に状況報告せねばならないから、少しの間、ここで待ってておくれ。」
ナターシャ「了解。」
ファーストは病室を出て、ご遺族が待っている待合室へ向かった。