拘束
エレベーターが下がっていくのが、命のカウントダウンのように思えてきた。エレベーターには我々を殺すために三人が乗っている。そう思うだけでも不気味だった。
「行こう、西本君、宮沢君。ここからはもう戦うしかワシらに道はない」
「本当にそれだけでしょうか?」
と、西本。
「何が言いたい?」
「もうすぐ彼らがやって来ます。話しはどこかの施設に隠れてからで––––」
西本達はラーメン屋に忍び込み、ゆっくりとドアを閉める。その時、エレベーターが三十階に着き、ドアが開いた。三人が降り、全員手には拳銃、ペンライトを持っている。
「西本君……」
剛がヒソヒソ声で話す。
「さっきの話しを中断して申し訳ないが、携帯で警察に電話をしてくれないか?」
「それが、俺もさっきそうしようとかけようと思ったのですが、携帯の電波が圏外になっているんです。恐らく奴らが電波を妨害する装置を仕掛けているんでしょう」
剛は小さく舌打ちした。西本は物陰に身を隠し顔を覗かせる。彼らが近づくたびに心臓の鼓動が早くなる。
彼らは部屋を一つ一つ確認し、中をきちんと確かめようとせず次の部屋を見ている。
「なるほど。奴らはとりあえず全容を把握しておくつもりじゃろう」
「そういうことですか」
「つまり、このまま身を潜めていたらいいわけですね」
と、宮沢。
そして、西本達が潜んでいる部屋のドアが開かれた。ペンライトの光が部屋を照らしてゆく。そして、確認するとドアを閉めてゆく。しかし、その時だった––––。
ジリリリリリリリ!
携帯のベルがけたたましく鳴り響いた。音は剛のポケットから流れている。
「そこか! ネズミ!」
「な……!」
クソッ!
西本は腕を伸ばし、身体を持ち上げて椅子の上を登り入り口から逃げようとした。そして、剛を上げようと手を伸ばした時、乾いた銃声が響く。そしてその弾は机に貫通した。
「追い詰めたぜ? ネズミさんよぉ……」
「くぅ……」
三人の銃口が西本達に向けられ、西本はジリジリと奥まで追い込まれてゆく。
何か……何かないか。
西本は視線を泳がせその場にある物を探した。
待てよ……ラーメン屋なら、あれがあるはず!
西本は視線を机に向けた。机にはラーメンにいれる調味料が置かれている。その中には当然コショウがあった。
「はあっ!」
西本は机に向かい、コショウを取ると素早くその蓋を開け、三人に放り投げた。コショウを吸い込んだ三人はクシャミが止まらず、目をゴシゴシと擦っている。
「今だっ! 爺さん!」
西本は剛の手を握り、外へ出た。
しかし––––。
「させるか!」
長男は板を掴み、それを剛の足元に投げつける。板に足を取られた剛は派手に転んでしまった。そして、長男に腕を掴まれ捕まえられる。
「会長!」
宮沢は剛に近づくが、その腕を西本が掴む。
「ダメだ! こんな時に行ったらあんたまで捕まっちまう! ここは俺らだけで逃げるんだ。機は必ず来る。俺たちで爺さんを取り戻すんだ」