死亡
息子––––?
剛の突然の告白に西本は動揺を隠しきれずにいた。息子は四人までではなかったのか? この男は一体……。
「つ……よし……」
一言一言言うこの男の発音は、どことなく知的障害者のそれを思い出さされた。
「俺が教えてやろう。こいつの出生をな……」
と、充。
「こいつはお前ら四人とは別の母親……つまりこいつはこのジジイの隠し子ってわけだ。名前を光。遠藤光。色々あって俺は光と母親と一緒に暮らしてた。しかし、金がなかった母親は保険金をかけて自殺したよ。それからこれまで俺たち二人は一緒に暮らしてた。お前らを惨殺する夢を見ながら! なァ? そうだよなァ? 剛お父様」
剛はグゥの音も言えず、無言で俯いていた。その剛の顔に、充はマシンピストルの銃口を押し付ける。
「兄……さん」
と、光は言うと、充は冷静になり深呼吸をした。
「ああ。わかってる。やる時は二人で……だろ?」
「ああ……」
光の顔に笑みが入る。一瞬、緩んだ空気が漂った。
今だ!
西本は大股で飛び上がり、瞬時に充との間合いを詰めた。
「うおっ!」
充は慌ててマシンピストルを構えるが、一瞬遅く西本の裏拳が充の顔に入った。鼻先の急所を狙われ充は鼻を押さえた。その時、マシンピストルを落とす。すぐさま拾おうとするが西本はマシンピストルの先を蹴り上げ、弾き飛ばす。太ももから自動小銃を構えるが、時すでに遅し。西本は充の背後に立ち、ヘッドロックをした。そして胸ポケットのケースに入れているナイフを取り出し、充の右腕の上腕二頭筋を刺した。これで腕に力が入らなくなり、その腕は使い物にならない。
「くおお……」
充は自動小銃を落とし、腕からは血が流れている。それは腕を伝い、指先までいきポタポタと血の球が落ちる。充は右腕を苦しそうに抑えていた。
「早く止血するんだ! 今ならまだ間に合う! 早く!」
「西本オオォ!」
逆上した充は左手でもう片方の太もものホルスターに入れていた自動小銃を西本に構える。
クッ––––。
身動きが取れずにいた。その時。
「うがあああっ!」
後ろから光が西本に抱きつき、拘束した。これで狙えとでも言わんばかりの迫力だった。
「親父……もう少しだ」
「ああ」
剛と勉は偶然西本が蹴り飛ばしたマシンピストルがこちら側に届き、それを奪おうとしていた。しかし、この騒ぎだが敵に気づかれないため細心に細心を重ね、物音を立たずにコッソリと移動していた。そして、その距離は手を伸ばそうとすれば届く程だ。
「くく……く……」
剛は必死に腕を伸ばした。そしてそれはマシンピストルの引き金に手が触れた。
二人は同時に悪魔の笑みを浮かべた。
くそ……。
光は充のサポートのために西本にしがみついたが、その行為は皮肉な事に充の言動を縛っていた。拳銃の扱いは上手くない。もし、少しでも外れてその弾が光に当たれば……と、充は逡巡していた。だが、しかし、その油断が––––。
はっ!
背後で何かが動く気配がし、振り返ると剛が西本に蹴り飛ばされたマシンピストルを構えこの世のものとは思えない形相で立ちふさがっていた。マシンピストルを充に構え、狂ったように連射した。幸い防弾チョッキを着ていた充には怪我は無かったが、衝撃で尻もちを突いた。起き上がろうとするが、勉に腹を踏まれ起き上がる事ができない。そして、それを見て剛はマシンピストルの銃口を無防備な充の喉元に当てた。
……。
剛は引き金を引き、今日何度も見た火花が散る。0距離射程でヒットし、充の身体はガクガクと痙攣した。
ば……かな……。
西本はこの光景が夢に見えた。自分の息子をこの男は何の躊躇いもなく射撃した。さかも、その顔には狂気……いや、これはもはや凶気としか言いようがなかった。充を撃つ時の剛の表情は、西本には笑顔に見えた。あり得ない。こんな事……。
「兄……!」
慌てて光は西本をその辺に突き飛ばし、充の元に駆け寄った。誰がどう見ても助かるような状態ではなかった。充は微かに息があり、ピクピクと身体が震えている。
「充兄さん……」
充の手を包み込み、光の目には大粒の涙がこぼれ落ちていた。充はゆっくりと口元を動かす。しかし、喉をやられ声が掠れていて充の声は正確には聞き取れなかった。だが、西本には「頼んだぞ」と、言ったような気がした––––。




