信用
なるほど……そういう事だったのか。
物陰に隠れ、一部始終を伺っていた西本は一人納得する。それと同時に理解した。この男は絶対にこれ以上罪を犯させてはならない事を。過去に何があったのかは定かではないが、とにかく人を殺させてはだめだ。人を信用しないのではない。信用したいが、出来ないのだろう。 では、どうすれば奴に信じてもらえるか? その答えは決まっている––––。身体を張る事だ。
「死ね! 剛!」
男はショットガンの銃口を剛の口元に押し込んだ。このままでは……。
「やめろっ!」
西本は咄嗟に物陰から身体が飛び出る。だめだ。殺してはだめだ。絶対に––––。男は西本の思わぬ登場に少し驚き、平常心を失ったが、すぐに冷静に戻る。
「なんだテメェは!」
ショットガンを西本に構え、男は威嚇射撃をした。しかし、ショットガンは近距離武器。遠くにいる西本には少し届かなかった。西本は壁際に隠れ、難を逃れる。
「た……武さん」
恵梨香は祈りながら西本を見ていた。何回も大きく息を吸い込み、緊張をほぐす。
「おい! 出てこい!」
男はショットガンを肩になおし、代わりにマシンピストルを構え、西本が隠れている物陰に威嚇射撃を連射する。
「やめろ! 俺は……俺は無抵抗だ! とりあえず撃つのはやめてくれ!」
壁から叫ぶ。
「なら出てこい! 貴様……もう隠れるなんて真似はするなよ?」
射撃が終わり、西本はゆっくりと身を出した。そして両手をあげ、一歩ずつ男に近付いてゆく。男はマシンピストルを構えているが、西本の行動に驚き、手が止まっている。
「俺はお前の味方だ。俺は確かにお前が過去に何をされたかは知らない。しかし、まだやり直せる! ボディーガードを十六人殺したとしても、仮にもこいつらに雇われている奴らだ! 警察もバカじゃない! こいつらがもみ消しするために行動する。こいつらから金を巻き上げ、俺の紹介で裏医に非公式で顔をソックリ変えてもらい、指紋やDNAを捏造! そして偽造パスポートを用意する。それを利用してお前は沖縄に行け! 沖縄に行って、そこからボートに乗せる! そこから中国に行って一からやり直しだ!」
男はゆっくりとこちらに近付き、充はボーッと立っていた。こんな事、本来ならあり得ない。人間など皆いざという時は自分の身可愛さで自分を最優先で動くはずだ。こいつらがいい例だ。しかし……この男の行動は––––。
考え事をしていると、ゴソゴソと何か後ろで動く気配がした。後ろを振り返ると、輝が掴みかかろうとしていたところだった。
「バカッ! やめろーー!」
男は走り出した。しかし、その行動より早く充はマシンピストルを二丁持ち、輝の身体に弾丸を連射した。輝の身体はガクガクと震え、大量に血を流し身体に力が無くなり、目を閉じて動かなかった。




