正体
次男と三男は剛に指示された通路にたどり着いた。幸い、まだそこには敵は来ていなかった。しかし、光が動いており、そこに敵がいるということを物語っている。
「俺がやる。大は光を見ていてくれ」
次男は拳銃を持つと、右手を上に上げ引き金を引いた。拳銃の乾いた音がし、銃口からは煙が立ち上っていた。
「兄さん! 光がこっちにきた!」
と、三男は次男に告げる。
「よし、逃げよう」
遠くから銃声が聞こえ、作戦が開始されたのだと直感した。しかし、西本はまだ剛の言葉に引っかかりを感じていた。ここまで出かかっているが出てこない。先ほどの剛の発言を思い出してみることにした。
––––奴。
剛は敵のことをそう呼んでいた。妙に知り合いのようなニュアンスを感じた。剛がよく知る人物のような。
「始まったね」
と、恵梨香。
「ああ––––」
このまま作戦がうまくいき、敵を倒せればそれでいい。しかし、何か嫌な予感がする。
「離れよう」
と、西本は不意に立つ。
「え?」
「なんか嫌な予感がする。爺さんはさっき敵のことを奴って言ってただろ? 俺はなんかあいつのことを知ってるのかなって思った。それに、爺さんの言う通り本当に刺客ならあんなメッセージは書かない。少し離れたところで様子を見る」
次男と三男は咄嗟に近くのダンボール箱の裏に隠れた。光は遠ざかり、右へと横切る。ほ……と息を吐いた。西本と宮沢が隠れている場所に戻る。
「どこに行こうとするんだい?」
と、背後から男の声がした。次男は慌てて振り返ると、そこには武器を持った男が立っていた。そしてショットガンを構えている。
「がっ––––」
「これはこれは。お久しぶりです。兄上」
男はなぜか次男に深々と頭を下げた。
お久しぶり? 兄上? まさかこいつは!
次男は男の正体に気づき、気負いするが男と目を合わせる。その目は次男のよく知る人物の目だった。
「やはり充だったか」
剛は笑いながら言う。
「親父、知ってたのか?」
「ああ。なんとなくじゃがな。ワシらが向かうのは食料の倉庫じゃ。そこにはなにがある?」
剛に聞かれ、長男は一瞬考える。
「食料供給用のエレベーターか!」
「ククク。そういうことじゃ」
「でも、それだと二人を見捨てることに––––」
「それがどうした? 今日の戦いでワシは会長の座を継ぐのはお前じゃと確信した。あいつらはもういらん」
剛からは狂気のオーラが発してある。実の息子を見限り、敵に売るという行為に長男はゾッとした。
「お……親父……」
剛や長男、西本、宮沢が隠れているはずの店へと行ったが、反応はなかった。もう一度言うが、やはり反応はない。それを見ると充は「ククク」と喉から笑った。
「そういうことか」
「え?」
充の言葉に、次男は聞き返した。
「つまり、お前らは見捨てられたんだよ」
「い……いや……そんなことは」
両手を振り、違うという仕草をする。
「では、なぜ今ここに現れない? 現実はこうなんだよ。チッ面倒だな」
充は満面の笑みを浮かべたが、舌打ちして愚痴をこぼす。そして携帯の妨害電波を解除し、某所へ電話をかけた。
「ああ。俺だ。少々厄介な事になってな。少し手間取りそうだ」
『手伝おうか?』
「いや、お前はそのまま見張っててくれ。心配するな。もう奴らも袋の鼠。逃げ場なんてな……い……」
充はエレベーターの事に気づき、最悪の出来事が頭をよぎった。
「おい! 右側のシャッターだ! シャッターを下ろせ!」
『え?』
「逃げ場があった! 倉庫のエレベーターだ! そこは電気室での操作も通用しない!」
『わ、わかった』
充は電話を切ると、慌てて二人を連れて倉庫へと向かった。しかし、遠くからシャッターの閉まる音が聞こえ、剛の断末魔が聞こえてきた。それを聞き、ニヤニヤと不気味な笑みをこぼす。
さぁて、料理はこれからだ。




