刺客
「そんな……銃が無力だなんて……」
三男はヘナヘナと床に倒れる。
「確かに攻撃用としては無力だ。しかし……」
その先を言おうとした時、剛は「ふふ」と笑う。
「わかるよ。確かに君の話を聞く限り、一撃で葬ることは不可能に近い。じゃが、なんだかんだ言って“奴”もこの拳銃は怖いはず。厄介な奴から殺すのは定石。じゃから逆に利用するのじゃ。そういうことじゃろう?」
剛に聞かれ、視線を剛に向け頷く代わりに目を閉じだ。
「どんなプロでも呼吸……もっとわかりやすく言うと一定の流れがある。まずその流れを断ち切る。俺と爺さんが言いたいのは、この拳銃をあいて囮に使おうと思う」
「囮?」
「まずは遠くで誰かがこの銃を一発ぶっ放す。そして、敵を翻弄させる。そうすると隙ができる。その時に俺が背後に回り、倒す。心配するな。接近戦では銃よりナイフの方が速いんだ。銃だとコンマ二秒ほどのラグがある」
––––コツッコツッコツッ。
足音が反響した。
きた!
慌てて西本は五人を奥に隠れるように言い、西本は一人厨房の方へと隠れる。
反響する足音が西本の恐怖心を引き立てる。心臓の鼓動はだんだん大きくなり、呼吸も荒くなる。目をつぶり、敵がこのままスルーしてくれることを祈る。数分店を物色すると、男は離れて行った。安心し、ほっと一息。再び全員集まり、話し合いを再開する。
「今夜ここに家族が集まることを知っていた者は?」
「わからん」
と、剛。
「鳳林家を憎んでる人に心当たりは」
「フン。そんな奴ら吐いて捨てるほどおるわい」
剛は吐き捨てる。
「質問を変えよう。鳳林家を憎んでいて、かつ今回のように実行に移しそうな危険な思想を持つ者に心当たりは?」
「知らん」
フーと息を吐いた。お手上げだった。
「刺客……じゃろう」
「は?」
「今夜、ここにワシら以下全員が集まることを知り、刺客を差し向けた。一人でボディーガード十六人を倒せるほどの男を––––」
剛の話には筋が通るがどことなく引っかかる節がある。本当に刺客なら、あんな大仰なメッセージを残すだろうか? 西本は逆に鳳林家に強い恨みを持っている者の犯行のように思えた。刺客ならあんな形を残したりはしない。もっと静かにやるはずだ。それに、エレベーターがきた時全員集まっていた。少なくとも二人以上はいたかもしれない。なら、その時に乗ってきて殺すこともできたはずだ。しかし、敵はそれをしなかった。恐らく敵は鳳林家の人間を一瞬で殺すよりももっと残酷のことをしようとしているのではないだろうか? おぞましいようなことを。
「ワシが配置を決める。誰かメモ用紙とペンはないか?」
長男が手帳を、恵梨香がボールペンを剛に渡すと、真っ白のページを開き地図を書いていった。それはこの階の見取り図だった。
「今“奴”はここを出て行き、そのまま左へ通って行った。つまり、奴の現在位置は恐らくこの辺り。そしてワシらが今いるところはここ」
と、剛はボールペンで丸を囲む。
まただ。
また何か違和感を覚えた。しかし、それが何なのかがわからなかった。
「そこで、この中で一番足が速いのは輝お前じゃ。お前と大がここにいき、拳銃をぶっ放す。数分で奴もそこに行く。その間にお前らはどこかに隠れろ。そして走らせてその隙に武術に長けている西本君が倒す。今この配置に文句を言う時間はない。これは命令じゃ。西本君、拳銃を。ワシと勉も囮役に一枚買おう。うまく行ったら輝と大はここに戻れ」
拳銃を渡すことに不満があったが、西本は剛に銃を渡した。
「西本君と宮沢君はここに残っていてくれ」
二人は頷いた。この状況で、適切な人員配置だった。
「では、別れろ」
四人は料理屋から離れ、剛が指示したところに各々移動した。




