四話
ちゅんちゅんという鳥の鳴き声と、顔にかかる光で目が覚めた。
どうやら昨日はあのまま寝てしまったようだ。
なぜか体にはタオルケットがかかっていた。
もしかしてレイがかけてくれたのだろうか。
そのレイ本人は部屋にはいなかった。
もしかしてすでに今日のスケジュールが始まってしまったのだろうか、と慌てて時計を確認したが、始まりの時間よりまだ二時間も早かった。
クリスはほっとして、顔を洗おうと思い共用の洗面所に向かおうとドアノブに手をかけかけたとき、ガチャリと扉が開いて、クリスは慌てて後ずさった。
あと少しで扉とぶつかるところだった。扉の向こうにはレイがいた。
「……何してるの」
レイはその問いに関して答えは求めていないようで部屋に入ってくると、自分の机に座って、もうクリスのことなど見ていなかった。
クリスは特に気に留めず、洗面所に向かう。
部屋を出たところで、カインと出会った。
「カイン、おはよう」
クリスがそう声をかけると、カインはまるで幽霊でも見たような顔をして一瞬後ずさった。
「わ、あ、あ、クリス……おはよう」
おはようと言った笑顔は少しぎこちなく、すぐにうつむいてしまったが、クリスは自分と同様に話すのが苦手なのかもしれない、と解釈して、そのまま洗面所に向かった。
顔を洗って戻ると、隣の部屋からあくびをしながら寝ぼけまなこのユースが出てきた。
「よう、クリス」
「あぁ、おはようユース」
「なぁ、今から食堂に行くんだけど、お前らも行かねえか?朝飯食うだろ」
「そうだな、レイを呼んでくる」
よろしく、とユースは軽く手を挙げて、それからカインを探しに行った。
クリスは部屋を覗くと、先ほどと同じ体制のままのレイに声を掛けた。
「レイ、今からユースたちと食堂に行くんだが、行かないか?」
「行かない。あんたたちだけで行けば」
レイに冷たく断られ、あまり無理やり誘うのもどうかと思ったので、クリスは大人しく引き下がった。
食堂に向かうと、すでにユースとカインが席についていて、こっちこっちとクリスを手招いた。
食堂にはすでにまばらに人が入っており、厨房からは朝食のいいにおいがする。
「あれ?レイは?」
「行かない、と断られた」
「まじかー、フラれちまったか」
ユースはそう言ってけらけらと笑う。
いつも楽しそうだなこの男は、とクリスは特に反応もせず自分の朝食の皿にのっているパンに手を付けた。
カインもユースも黙々と朝食を食べ進める。
「なあ、これ今日のスケジュールなんだけどさ」
ユースがそう切り出して、ひらりと机の上に紙を載せる。
「この昼からの訓練さ、本物のモンスター使うらしいぜ」
ユースは声を潜めてささやくようにそう言う。
案の定カインはひえっと小さな悲鳴を上げて、おびえていた。
「大丈夫だって!そんな強くねえやつだろ?平気だって」
お気楽そうにユースが笑う。
さすがにクリスでも本物のモンスターと戦ったことはない。
でもカインのような恐怖はなく、むしろ好奇心が勝っていた。
ただそれと同時にこの二人は大丈夫なのだろうか、という不安も芽生えた。