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赤目のナイト  作者: 芦田香織
始まりの場所
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一話

晴天。目に飛び込んでくるのは空の鮮やかな青と、目の前にある煉瓦で作られた門の横にある木に咲く花のピンク。

齢十六の少女は大きな建物を見上げながらその場に立ち尽くしていた。

心地よい風が彼女の一つに束ねた水色の髪を揺らす。

まだ着慣れていない制服の裾をまっすぐに伸ばした。

春、新しい始まりの季節。

彼女の赤い瞳の中には強い使命感に駆られた光が宿っていた。


彼女の名前はクリスティア・フォルストルム。

愛称はクリス。

そしてクリスが立っているこの建物の名前は騎士養成学校、アルベルツ。

この学校はこの国のいたる地方から騎士志願者が集まってくる。

この国、フェナメールには4つの地方がある。

北をノゥスズ、東をイースフォレス、南をサウジスト、西をウェウサという。

各地方には一つずつ城が存在しているのだが、今はあまり関係ないので省略。

そしてこのアルベルツはそんな国のど真ん中に位置している。

フェナメールは比較的小さな島国だ。

しかし科学的技術の進歩や、他の国では滅多に見ることのできない植物などが点在していることにより、他国から狙われることが少なくない。

他国からの攻撃から自国を守るため、そのために今武力を増大させることにフェナメールは力を入れている。

そして出来たのが、このアルベルツだ。

アルベルツには二つのクラスがある。

十六から十八の未成年者のみが入れるAクラス。それ以外の成人済みの者が入れるのがBクラス。

どちらのクラスに入るにしても厳しい試験がいる。

そしてその試験を乗り越え、クリスはこの場所に立っている。


しかし、入学早々クリスは少し遅刻してしまったらしい。

本来入学生であふれかえっているはずの正門前にはもう誰もいなかった。

まずいな、と少し眉間にしわを寄せ、門の前にいた守衛に荷物を預けると急いで入学式が行われているであろう講堂へと向かった。


いけないことだとはわかっているが、非常時であるので許してもらおう、とバタバタと廊下を駆けていると、曲がり角で誰かとぶつかってしまった。

ドンッという衝撃音とともに、廊下に尻もちをつく。


「いった……なんなの……?」


どうやらぶつかった相手は女の子らしい。

クリスは素早く立ち上がって、さっと女の子に手を差し伸べた。


「すまない、私の不注意だ、怪我はないか?」


紫のふわふわとした長い髪をツーサイドアップにして、それと同じ紫の目をした女の子は、キッとクリスを睨むとその手を払いのけて自分で立ちあがった。


「……もしかしてあんた新入生?最悪!」


女の子はパッパと制服についてしまった汚れを払うと、またパタパタと駆けて行ってしまった。

自分も新入生だろう、とクリスは少し首をかしげて、彼女の後を追いかけた。

多分、行く先は同じだろう。



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