不安
ご飯を食べ終え、エミリオの荷ほどきをするため部屋に戻る。
一応伝えておくが、エンバートさんの言葉は、マルゴーさんの肘鉄(にしては重すぎる音がした…むしろバキッて音が…)をくらい、もちろんエンバートさんはKO
返事は保留になっている。まぁ断るのだが…
(実験って何するのか分かったもんじゃない…)
部屋に戻って荷ほどきを開始した僕達だったが、摩訶不思議な体験をしている。
夜の8時過ぎ位に始めたのに今終わった時点で夜の12時
たかが5箱程度の箱を片付けるのにこんなに時間が掛かったのだろう…
一言で表すなら、エミリオが全て悪い!
エミリオはとてつもなく優柔不断であり、運動音痴なのが原因である。
何処に物を置くのか考え、置いたとしても一歩動くとぶつかる等して全てチャラに。
最終的には、エミリオはベットの上から出ないように言いくるめ、僕が荷ほどき全てした。
これからの寮生活に多大な危機感を感じている。
「ごめんよ…イル。」
ベットの上で土下座をしているエミリオ。
…この場合僕は何と言えば良いのだろうか
「…これからは、僕が部屋の掃除をするよ。」
大丈夫だよ、何て言える精神力を僕は持ち合わせていなかった。
「ありがとう…!!」
エミリオはキラキラと神様でも見るかのような瞳で言う
「ハハハ…」
乾いた笑いで口は引きっているがご愛敬としてほしい。
夜も更け、明日からの授業に備えるため僕達はベットに潜り込んだ。
僕は、寝ることが出来ず、 寝返りを何度もする。
「…イル。起きてる?」
どうやらエミリオも起きていたようだ。
「何?」
「質問しても良いかな?」
「良いよ。」
「…イルは、どうしてルクシュルージュに来たの?」
暗くて見えないが、エミリオが真っ直ぐ僕を見てるのが分かる。
「物凄く特別な理由ではないんだけど…僕の父と母が出会ったのが、この学校だったんだ。色々と話を聞くうちに来たくなって…必死に勉強をしたんだ。まさか、代表に選ばれるとは思わなかったけど」
「そうなんだね…」
「エミリオは、どうしてだ?」
「…僕は、色んな事に挑戦して、可能性をみたいんだ。未来は不確定で怖いから…」
癖の頬を掻きながらエミリオは言った。
僕は、エミリオの目を見て言う。
「僕も怖い。魔力が無い事、これからのこと、考えたくも無いよ。でも未来はやって来る。でも、まだ入学して一日目だからゆっくり考える事にするよ」
あれから二人とも喋ることなく布団に潜って眠った。
朝、外から太陽が起きろと照らしてくる。
「…う…ん」
何とか眠気を振り切り目を開く。
(…あぁ…ルクシュルージュに来てるんだ)
入学式以上の実感を受けた。
布団から這い出し、クローゼットの制服に身を包む。
備えつきの鏡で身だしなみをチェックし、綺麗にする。
(……あのモコモコとしたブツをどうするべきか…)
遠くから魔法時計が鳴っている。
もうご飯を食べないと授業に遅れてしまう。
「エミリオ、起きろ。」
声を掛けてみる。…反応なし
「エーミーリーオ!」
揺らしてみる…反応なし
「お!き!ろ!!!!」
叩いてみる…少し動いた。
こうなったら最終手段
「起きろって言ってるだろ!!!」
バッサーー!
僕はみのむしの皮を無理矢理引っ張って布団を強奪した。
「うー…ん?…おはよう、イル」
ヘラっと笑うエミリオに殺意を抱いたのは、許してほしい。
何とかエミリオを起こして、ご飯を食べる。
エンバートさんとマルゴーさんと途中会ったが…相変わらずな感じだ。(マルゴーさんは低血圧らしく、殴る鋭さに遠慮がなかった。)
僕達はルクシュルージュ一回目の本格的な授業を受ける
魔法学の勉強だ。
教科書は分厚く、角で殴れば確実に死人が出る…
隣に座るエミリオは緊張しているような嬉しそうな顔をしている。
…僕も同じ顔をしているのだろう
ガラリと扉を開け、入ってきた人物に僕は驚いた。
「ゴホッ、授業始めます。ゴホッゴホッ」