思考
荷ほどきを済ませ、自分のベットに寝転がる。
(今日は疲れたな…)
朝、この学校に着いてからの事を思い出す。
迷子になって助けてくれたシャルと友達になるし、入学式じゃ大勢の人の前で喋って、担任はあのウィズ・アルバーノだし、隣の席のエミリオはルームメート
(自分の魔力のことだって…)
僕の魔力は何処に…誰に…
僕には精霊が居る訳じゃない…
(あぁ、頭がおかしくなりそうだ。)
「入って一日目でこれじゃ…これからどうなるんだ…」
「楽しんだら良いんじゃない?」
!?!
いきなりの声に僕は起き上がった。
「…何時から居たの…?」
「ん?今さっき。」
エミリオはニコニコとしながら答える。
(…凄く恥ずかしい…)
「何処に行ってたんだ?」
「んー?外にねー」
エミリオは荷ほどきをゴソゴソとし始めた。
その姿を横目にまた僕は考える。
(精霊では、無いとしたら…人?
…でも、魔力は人それぞれ。魔力の受け渡しは出来ない筈。
他には何がある…?)
と、考えている横でエミリオはうろちょろするだけで全く進んでいない
「手伝おうか?」
「少ないから大丈夫!」
と断言したエミリオはまた同じ場所を行ったり来たり。
「…本当に手伝わなくて良いんだよな?」
「…ごめん。手伝って…」
頬掻きながら、エミリオは苦笑いをこぼした。
考えるのはまた今度にしておこう
ベットから降りた瞬間、魔法時計塔から鐘が鳴る
「…続きは後からにして先にご飯を食べに行こうか…」
結局エミリオの荷ほどきは、1つも進まなかった。
エミリオが荷ほどきに手こずっていたため手伝うことになったが、腹が減っては戦は出来ぬ
ということで、食堂にやって来た。
全校生徒400人以上であり、丁度ピーク時ともあってか、人がごった返していた。
所狭しと机や椅子が並び、友人と話している人、黙々と一人で食べる人、早めの時間に来てさっさ帰る人など様々だった。
「座れるかな…?」
エミリオと同じ事を考えていたようだ。
「先に食事を取りに行こう。」
ビュッフェのように大皿にてんこ盛りの料理が乗っている。年頃の子供の食べる量は多いからだろう。
エミリオと目当ての料理を何とか取り、二手に分かれ席を探そうとした、その時
「席ならここ空いてるよ。魔力無し君」
濃い茶の髪にチャラそうなの先輩に話し掛けられる。
「何か?」
低い声が出る。
「どうどう。睨むなって!話がしたいだけだよ!」
とヘラヘラと笑う先輩
ゴスッ!
食堂にしては重い音が響いた。
「お前が悪い。そしてヘラヘラするな…」
男の先輩は隣に座っていた女の人に横腹に一撃をもらった。
「隣の奴が申し訳ない事を言ったね。私はマルゴー。三学位だ。是非一緒に食べない?」
マルゴーと自己紹介した灰色の髪をした人は、自分達の前の席を促す。
僕は隣にいるエミリオを見て、席に座った。
「イルビア・ロットです。」
「エミリオです。…よろしくお願いします。」
「よろしく。隣のクソ男はエンバートだ。私の腐れ縁だ。」
「クソは酷くない…ってか横腹はマジで止めて。吐くから…」
とエンバートさんは悶えている。エミリオの目は心配そうに覗きこんでいる。
「…で、話とは何でしょうか?」
「単刀直入に聞く。君は本当に魔力が無いのか?」
「無いです。」
本当は魔力が何処かに奪われているのだが、校長と話し合いの結果、これは機密にした方が良いとなっている。
マルゴーさんは、僕があまりにもすっぱりと言い切ったからか、一瞬キョトンとした顔になって、フッと笑った。
「本来なら聞くべき事では無いんだが…もう割りきっているんだね。」
「…いえ、まだ割りきれてません。でも真実を隠すのは好きでは無いので。」
「へぇー格好いいねー」
痛いのが無くなったのか、ヘラヘラした顔でエンバートさんは話す。
「流石はロット伯爵の息子だね。羨ましいなー。俺にもそんな事言えるかなー。」
「…お前は喋るな…空気が汚れる。」
「ちょっと!そこまで言わなくても良くない!?心外なんですけど!!」
僕はエミリオと苦笑いをするしかなかった。
エンバートさんとマルゴーさんの漫才ではなく話を聞きながらご飯を食べ進める。
といきなり、エンバートさんがこっちを向いて言った。
「心優しいロット君に頼みたいんだけど、あのさ…
実験させてくれない?」