再会
見ていただいてありがとうございますです。
「失礼しました。」
校長先生の部屋を後にし、ウィズ先生と歩く。
長い間話し込んでいたからか、外は夕暮れに染まっていた。
「…残念だったな」
校長室では終始無言だったウィズ先生が、僕をちらりと見る。
「…はい。」
ギリッと奥歯を噛み締める。
何を思ったのかウィズ先生は止まり、
「…奥歯を噛み締めるのは癖か?」
質問をぶつけてきた。
「…そうです…ね。」
「…。」
ウィズ先生は、それから何も言うこと無く、また歩き出す。
「今日はゆっくり休め。寮はこの道を真っ直ぐ行けばある。」
校舎を抜け、中庭へ出る。
「はい。それでは「ロット。」
ウィズ先生は僕の目を真っ直ぐ見つめ言う。
「…力を抜け。無駄に力み過ぎると視野が狭くなり、自分の進むべき道を狭める。私はお前の担任だ。力になる。」
「ありがとうございます…」
僕は、頭を下げウィズ先生から離れた。
魔法が使えないという事実。
それが重くのし掛かり、トボトボと歩く
(これから…どうなるんだろう)
少し前まで魔力があると、魔法を使えると信じ疑わなかった。
(まさか…魔力が奪われているなんて…)
「また迷子?」
考え事をしていたために、突然話しかけらて驚いてしまう。
「ふふっ。またびっくりした。」
クスクスと笑うのは、朝に助けてもらった女性だった。
「あ、…朝は助かりました。ありがとうございます。」
「間に合ってよかったね。…代表者だったのに遅れたら一大事だったんじゃない?」
朝の事を思いだし、顔が赤くなるのが分かる。
話を変えるために質問をする。
「あの…貴方は、どうしてここに?」
「んー内緒。」
彼女は口元に人差し指を持ってにこりと笑った。
「女の子には秘密があるものなのよ。」
「はぁ…」
「貴方…「シャルよ。貴方じゃなくてシャルって呼んで」
本日三度目の言葉潰し…
「よろしくね! 」
「よろしくおね「敬語はダメ」
シャルはニコニコと微笑んでいる。
「…よろしく。」
「そうね!そっちがいいわ」
シャルはうんうんと頷いて、僕に手を差し出す。
「友達になったら握手よね。」
…そうだっけ?
自信満々に言うシャルに僕は否定することが出来なかった。
「握手ー!」
と子供のようにはしゃぐシャルに腕をブンブンと振られる。
ふと、空を見上げれば太陽は沈み、夜がじわじわとやってきていた。
「そろそろ寮に行かないと」
「あ、そうだね。」
僕は、寮に向けて足を向けた。
シャルと一緒に行こうと思っていたのに、シャルは一歩も動くことしなかった。
「シャルは行かないの?」
「私は、まだここに居るよ。用事があるから」
にっこり笑われ、僕は次の言葉を言えなかった。
「またね。」
「おやすみ。イル」
シャルと手を降って別れる。
中庭を出た所で振り返るとシャルは居なかった。
寮の自分の部屋につく。
二人一部屋なので、相手がどんな人かドキドキする。
ノックをするべきだろうかと考えていると
ガチャ
あっちから開いてしまう。
「うわっ!」
扉の向こうにいて、目を大きくしてびっくりしているのは
隣の席のエミリオだった。
「えっと…この前に立ってるってことは…イル、君はこの部屋?」
「…うん。」
「…なら、四年間よろしくね。」
「あ、…よろしく。」
僕の顔はエミリオと同じくらいびっくりした顔だな
(…今日1日で何回びっくりしたんだろう…)
「ごめん。入るの邪魔してるね。」
エミリオは頬を掻きながら部屋へ招いてくれる。
部屋は真ん中を対称にシックな装いをしていて、ベットと勉強机、クローゼットがあるだけの簡単な造りをしていた。
「イルはどっちが良いとかある?」
「…特には無いかな」
「なら、僕左利きだから左側貰うね。」
「うん、大丈夫。」
エミリオはヘラっと笑うと、自分の荷ほどきを始めた。
「…エミリオ。少し聞いていい?」
「ん、なに?」
「さっき何処かに行こうとしてたんじゃないの?」
「…あ。そうだった!ありがとう!ちょっと行ってくる!!」
エミリオは早口で僕にお礼を言うと、バタバタと出ていった。
僕は、彼との四年間にため息をつくしかなかった。