入学
花が咲き誇り、新たな門出を祝っている。
この日、国立教育院 ルクシュルージュに新たな生徒が入学してきた。
ルクシュルージュは、国立と銘打つだけあって最高峰の教育機関であり、国内で唯一の総合選択制学校だ 。
魔術師に必要な魔法学術
騎士になるための剣術
商人としての知識
未来の為に選択し、四年間学ぶ。
授業料が少し高いためか貴族が多いが、商会の跡継ぎなる者、特待生制度を使って門をくぐる者がいる。
ここにも新たな地を踏みしめた少年が一人。
(やっとここに来れた…!)
ふんわりとした黒髪に少したれ目な目をキラキラと輝かせ、学校内の中庭を眺めている。彼の期待が膨らむ胸には入学してきた証の白い桜が咲いている。
物珍しいのもあり、彼は奥へ奥へと進んで行く。
「…あれ?ここ何処だ?」
ふと気がついた時には入学式が始まる10分前で、右も左も分からない場所に立っていた。
自分の判断に血の気がサーっと落ちる。
(ヤバイヤバイヤバイヤバイ…!!!)
少年は元に戻ろうとあたふたと移動するが、ますます奥へ行ってしまう。
「ここで何してるの?」
突然後ろから女の人に声を掛けられ、ビクッと体が跳ねた。
茶色のくるくるとした髪に、印象的な緑の猫目が不思議そうに見て、何かに気がついたのか
「…あ、講堂ならここの道を真っ直ぐ行ったらあるよ。」
女性はすっと細い指を横に指し言った。
「え…?」
「桜。着けてるの忘れてたの?…あともう少しで入学式始まるけど間に合う?」
「ありがとうございます!!」
少年はバタバタと教えてもらった道を駆け出した。
「…入学おめでとう…」
女性はポツリと呟いたが、走っていく少年の耳には聞こえなかった。
何とか少年は入学式に間に合い、式の進行が進んで行くなか少年は考える。
(さっきの人にはお礼を言わないと…それにしてもあの人どうしてあの場所に居たのだろう?)
色々と考えている間に自分の名前を呼ばれ、考えるのを一度置いておくことにした。
「新入生代表挨拶。イルビア・ロット!」
「はい。」