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メタルカンパニー  作者: アーキ
2/2

異世界へようこそ

意外と血って出ないもんなんだな



錯乱してる自分の中に冷静な自分もいた。



「ふ、はは」



何がおかしいのか・・・変な笑いが込み上げる。




いや、おかしいのは知っている。

ああ、知っているとも。

知っているけど・・・



「はぁ、はぁ、・・・ふー」



覚悟決めろ。



「う・・・あ・・・ああああああああああああああああああああああ!!!」

「人生捨てるには・・・ちょっと早いんじゃないか?」



肉に深く入れたカッターを引き抜こうとした瞬間、誰かに止められた。


止めた人間には見覚えがある。


半月くらい前に俺をスカウトするとか言ってた男だ。



「それに、要らないものなんだったら是非俺にくれないか?」



前もそうだ。


何をするかも、どんなグループなのかも告げずに俺を引き入れようとする。


しかも・・・それが本気の目だからタチが悪い。



御巫みかなぎ・・・さん」


「久しぶりだな郡上(ぐじょう) 七生(ななお)君」




「カッコつけてるとこ悪いんだけどさぁ、結構やばかったんじゃね?」


「うるさい」



まあ実際ギリギリだったけどな。



「ところで君・・・どうしてこんなファンキーでロッカーなことを?」


「・・・・・・・・」


「言いたくないなら言わなくていいぞ」



まあ、さっきの奴らの話から大体の想像はつくけど。



「それじゃあ、先の話をしよう」



こっからが本題。

七生の能力いのちを貰えるかどうかはここ次第だ。



「七生君にはこれから幾つかの選択肢がある」


「エロゲみたいだな(笑)」



茶々入れるなバカ。



「一つは今日は諦めて(・・・・・・)この先も生きる未来」


「一つは今日ここで諦める(・・・・・・)未来」



そして・・・



「そして・・・一つは今の世界を諦める(・・・・・・・)未来」



このままでは恐らく彼は長くない(・・・・)だろう。

それほど絶望している。


なら、一度リセットして新しい世界ものをあげよう。



「悪いが答えは直ぐに出してもらう。こちらも忙しい。今ここで決めたもらう」



焦った状態であれば素直な感情が出やすい。

それを狙ってのことだ。



「さあ、これが最後のチャンスだ」



もしここで否定するようなら彼はそこまでだ(・・・・・)


そんな奴俺のチームに要らない。


そして・・・そんな奴の未来さきなんて知ったこっちゃない(・・・・・・・・)



「さあ、どうする・・・郡上七生」






なんて目をしてんだこの人は。


真面目で常識人で普通だと思ってた。

けど全然違った。


「幾つかの選択肢がある」だって?


嘘を付け。


根本的にはdead or aliveじゃないか。


しかもこの人・・・「俺の力になれないならお前なんてどうでもいい」って思ってんだろ。


人ん家勝手に上がってきて何言ってやがる。





・・・でも実際何をしても俺の置かれてる状況なんて変わりゃしねえ。


生きるか死ぬかだ。


いや、どっちも死ぬのかもしれないけど・・・





あぁ、クソ


こんなの消去法じゃねえか。




どんなに考えても変わんねえんだろ?


なら乗ってやるよ。


乗ってせいぜい・・・



「・・・あがいてやる」







すごいなこの少年は。


清雅が逸材と言ってた意味がわかった。


精神状態不安定な所に、あんなに鬼畜清雅に追い込まれてたのに、急に思考が戻りやがった。


そして・・・答えが無いようなものだったとは言え・・・ちゃんとした思考で答えを出した。



彼は恐らく・・・自分を客観視するのに長けているのだろう。


周囲の状況、自分の状況を瞬時に考え、私情を挟まずに最適解を出す。



今年18になる少年がやれることかよ。



つーか俺が18の時って何してたっけ?


清雅たちと馬鹿やってた思い出しかねーぞ(笑)


まあ、今もその「馬鹿」の延長なんだが・・・






「それじゃあ、話も決まったことだし行きますか」



俺の予想だとそろそろくるころだ。


彼を引き止めさせないためにも急がないと。



「・・・・・っつ」



立とうとした彼がふらつく。


それもそうか。

死ぬ程じゃないとはいえかなり血はだした。

貧血気味になって当たり前だ。


とりあえず方を貸してやる。


病院にも行っておこう。



「アラタ。車呼んでくれないか?」


「お前なぁ、普通護衛対象をパシらせるか?」


「護衛役にアラタって呼ばせてる奴に言われたくねえよ」


「・・・っちぇ。わかったよ」



「・・・あの、あの人は?」


「・・・ん?あぁ、あいつはなぁ・・・」



なんて説明するべきだろうか?


いや、もううちの部隊に入るわけだし・・・


『上司』の名前くらい覚えてもらおうか。


軽い痛み止めにもなるかもだしな。



「あいつの名前・・・ってか本名は新宮しんぐう


「・・・・・・・・・・・・・・・・は?」



目を丸くした七生はありえないといった表情をしている。


恐らくさっきまでの痛みも吹っ飛んだろう。



「・・・冗談ですよね?だって今アラタって・・・」


「それ、あいつが俺らに言わせてるあだ名。本名が好きじゃないんだってさ」


「・・・でも今パシらせてますよね?」


「まあ、それは俺らの仲っていうか・・・」



確かにやっちゃいけない事だよな。


学生時代からの間柄とは言え身分が違いすぎる。



「とにかく、あいつは本物だよ」


「・・・俺、もしかしてとんでもない事になってる?」



なってるに決まってるさ。


なんせこれから、王様の下で働くのだから。











彼女は駆けた。


息が切れても、足がふらついても。


急げ急げ急げ



やってしまった


他の有象無象と同じことをしてしまった


今までそんな事しなかったのに

しようとも思わなかったのに



彼を傷つけた

親愛な人を傷つけた

弟を傷つけた



見てしまった


絶望に満ちた表情を


そして失くなった(・・・・・)表情を



やばい


何をするかわからない

何をしてしまうかわからない



急げ急げ急げ


急げ急げ急げ






私はは勢いよく自宅の玄関ドアを開けた。


弟の靴は・・・ある!


家には居る!



急げ!

きっと部屋に居るはずだ!



私は希望を持って階段を駆け上がる。


大丈夫。きっと大丈夫。


彼は強いから。

うちの弟は強いから。

七生は強いから。



部屋の前についた。


私は一度深呼吸して息を整える。



先ずなんて言おう。

素直にごめんがいいかな?

大丈夫、七生なら許してくれる。

きっと七生なら・・・・・



「七生!」




私は弟の名前を呼びながらドアを開けた。

しかし・・・・・




「・・・・・え?」



もぬけの殻。

誰も居ない。


七生は?

七生はどこ?

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