戦闘準備
~プロローグ~
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・・・・」
呼吸乱れ
動悸激し
口乾き
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・・・・」
手震え
足動かず
目虚ろ
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・・・・」
右手ナイフ定まらず
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・・・・」
左手首傷跡有り
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・・・・」
出血少量絶命に至らず
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・・・・」
されど少年、思い切る
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・・・・」
思い切る
~1.戦闘準備~
日本
世界で最も機械の優れた『魔術後進国』
魔術が発達する前では『メイドインジャパン』の名で様々なものが幅をきかせていたが、こと魔術に関しては後れを取っていた。
未だに軍隊(自衛隊)は魔術よりも銃を扱うものの方が多く、国立魔術騎士団は最近出来たばかりだ。
「典型的な昔は凄かったんだぜ~・・・って国だよなぁ(笑)」
「何言ってんだお前?」
そんな国の中心部を歩いているふたりの青年。
一人目は黒髪のクセ毛、話し方通りヘラっとした少しだらしない顔をしている。
二人目は黒髪の短髪で野球帽を被り、幾分かキリッとした表情だ。
「ところで清雅。4人目は決まったのか?」
「まあな、お陰さまでお隣の県に面白い奴が居たよ」
それを聞いたクセ毛の方は更にニヤっと笑い・・・悪そうな顔をした。
「やっと出来んだな・・・『王立騎士団』が」
「騎士じゃねえよ。剣とか盾とか杖とかの時代遅れの物は一切持たねえからな」
「ウヒヒ・・・だな」
ふたりの格好からは似つかわしくない言葉が飛び交う。
冗談や妄想でなければ会話の内容はこの国に大きく関係することのはずだ。
それが、普通の街道で世間話のように話されている。
「お前、その笑い方やめろよ。仮にもその部隊のトップだろ」
「いやいや、実際に指揮するのは清雅だろ?」
何やら彼らはその会話の中心物のようだ。
鋭い人が聞いていれば、二人がこの国に何らかの影響を与える重要人物だと感じるはずなのだが。
風貌がそうは見えない。
「ところで名前決めたのか?」
「なんのー?」
「部隊の名前」
「・・・あー」
「・・・決めてないのかよ」
「いや決めてるよ。名前は・・・・・・」
無駄な溜めに清雅という名の青年は呆れつつも、その名を待った。
「正式名称『王立国衛特殊作戦小隊』。通称は『メタルウィザード』」
「『鋼鉄の魔術師』って・・・中二かよ」
「何だよ。かっこいーじゃないかよ」
ウヒヒ、と笑い・・・彼は清雅の反論を無視して前を見た。
「さあ・・・・・世界は変わるぞ」
「・・・やっぱり中二だ」
◇
俺たちは電車に揺られながら、目的地を目指す。
平日の昼との事もあり電車はガラガラ。
何も警戒する必要もない。
・・・一応警戒しなければいけないのだ。本来なら。
隣に座っている俺の友人は本来なら重要人物。
そして俺はその護衛・・・ってのが本当なんだが・・・
「なあ、さっきの営業っぽい女の子可愛くね?」
なんだかなぁ・・・相変わらずっていうか・・・
「ところでよ、前もそうだけどどうやって調べたんだ?」
「んー?」
「今日会うやつとかの情報」
「あぁ。ま、独自調査ってやつ?」
いや、こっちが聞いてんだが
「ところで俺も聞きたかったんだが」
「何が?」
「あの資料って事前に1000人分くらいなかったか?」
「1022人だな」
「・・・どうやってあのメンバーを探した?」
「・・・?全部読む意外にあるのか?」
「・・・素で言ってんのかよ」
なんで、頭おかしいみたいに見られてんだ?
「まあイイさ。今日の奴は期待できんだろ?」
「今日の奴もさ。それに、何といっても」
「俺の中で一番のオススメ・・・だろ?何度も聞いたよ」
食い気味に言われてしまった。
そんなに言ってたかな俺?
「お、着いたな。さ、お前のオススメとやらに会いにいくか!」
俺たちは電車を降りる。
ここは千葉県も沿岸部に近い土地。
俺たちはここに、『戦力』を求めた。
◇
これが絶望。
俺は絶望していた。
イジメ?
そんなの慣れた。
自分の無力さ?
そんなの知っている。
人生に疲れた?
17歳で何を言っている。
未来に希望を持てない?
元々望んじゃいない。
依り代が・・・・・・失くなったんだ。
例え教師やその他大勢、例え家族が信じなくとも、俺を信じてくれる人が居た。
そいつは何時も信じてくれた。
・・・・・・だがあれは・・・・・・あの目は・・・・・・
「あぁ・・・あぁ・・・・・」
もうだめだ、止まらない。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
留まらない。
◇
「おかしい」
明らかにおかしい。
彼が来ない。
「なぁ、ホントにここで待ってれば来んのか?」
「ここは彼の通学路だ。何時もならこの時間帯に下校してくる」
「まあ、確かに制服姿の子らは何人か通ってるけどよぉ・・・」
もう予定時刻を40分過ぎている。
「彼部活は?」
「ない。帰宅部だ。それに今日は学校行事もない」
「んじゃ病欠?」
「他の奴らに今日練習がてら張り付かせた。登校してるし15時まで早退の連絡もない」
「そうすると・・・」
そうすると・・・なにか不測の事態か。
予想外の事態となると。
事故、事件・・・
「・・・・・・・しっかし、アレはないよねー」
「まあ、あんな魔術もろくに使えないクソ野郎のことは・・・・」
・・・待てよ、今の
「あ、おい!」
やっぱり彼と同じ制服だ。
俺は既に会話している二人の生徒へ距離を詰めた。
「・・・やあ君たち。ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
きわめて冷静に。
できるだけ冷たい表情で。