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望みの果てに

夢が叶っても、望みが叶っても。

望みがなくなるまで叶ってしまったのなら。












「貴方の夢、叶えます」

使い古された、そんなキャッチコピーを掲げた店があった。

何を扱っているのか、どんな店主が店を営んでいるのか。

何も明らかにはなっていない。

ただ一つわかっているのは、私がこれからこの店に入る、ということだけだ。





私はしがない営業マンだ。

特に秀でたこともなかったが、まあそれなりに努力してこの仕事に就いた。


やりがいは感じないが、金がもらえる、食っていけるのだからそれでいいと思っていた。


そんな風に日々を過ごすうち、私は仕事のストレスで倒れてしまった。

これといった趣味もなく、ストレスを発散する機会もなかったから仕方がないのだろう。


まとまった有休を取り、私は旅行に出かけることにした。

都会の喧騒から離れれば、ストレスが解消されるかもしれない。

そう思ってのことだった。


旅行に行く途中、


「貴方の夢、希望、全て叶えます」


などと訳のわからないキャッチコピーを掲げた店があったのを見て、胡散臭いなぁと思った記憶が強く頭に残った。


旅行先はいいところだった。

都会の喧騒からは離れているし、景観も美しく、静養するには適していた。


しかし、静養すると言っても、何日も宿にこもりきりで飽きてしまった私は宿の外に外出した。


宿を出てしばらく行った、人通りの少ない通りで、


「そこのお兄さん、あなた、絵に興味はないかしら?」


明らかに胡散臭い文言で、そう声をかけられた。

振り向くと、そこには美しい少女がいた。


いくら見目が美しいとはいえ、明らかに怪しかったので、私も最初はきっぱり断っていたはずなのだが、気がついたら訳のわからない絵を詐欺紛いの値段で買わされていた。


そんなこんなで私は1億円ほどの借金を負ってしまった。

当然、しがない営業マンでしかない私に返せるあてもなく。


「人生詰んだな。そもそも何も望まなかった人生だったのが悪かったのか。多くを望まなかったのに、多くを失うとは皮肉なものだ」


そうぼやきながら、私は自殺を考えていた。

もうどうでもいい。


そんな諦観と、投げやりな感情に囚われていたが。


行きに見たあの胡散臭い店を見て、あの訳の分からん店に行ったら死のう、と。

何故かそう思った。


店に入ると、


「いらっしゃいませ。あなたの望みはなんですか?」


絵を売りつけてきたあの少女がいた。


「お前っ……!!!」


その少女を見た瞬間、今までにないほどの怒りがこみ上げてきて、大人気ないことに、


「死ね!!死んでしまえ!!私の人生を狂わせやがって!!」


と叫んでしまった。


叫んだ刹那。

その少女は死んだ。


「……は?」


訳がわからなかった。


私が「死ね」と言ったから死んだのであろうことは、直感で理解していた。


ふと目を上げると、目に入ったのは、


「貴方の望みは、全て叶います。貴方はどう過ごしますか?」



何故だか、その言葉に嘘偽りはないと思った。


実証することにした。


「1億円が欲しい」


1億円が目の前にポンっと出現する。


これであの言葉に嘘偽りがないことは理解できた。


さぁ、どう暮らそう。

これで、この世の全ては私の思い通りに動くのだから。


「ふふふふふ、あはははははは!!!!!!」



「せいぜいいい夢を見てください。望みのなかったあなたが望むことは全て、全て叶いますから。そして絶望してください。ありとあらゆる望みを叶えた後で、見えたものに。」


少女はそう言って笑った。

夢が全部叶ってしまう夢って、恐ろしいと思いませんか?

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