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「どうして・・・?」
驚きと、混乱の波が引いた後
信じられない現実に次々疑問がわいてきた。
やさしい微笑みは以前のまま。
大きなため息を一つついて
ユーちゃん
いや、専務は話し始めた。
「あの日、俺はめでたく100ポイントを達成した。
で、やっと免許証を返してもらったんだ。
でも、毎度おなじみ越権行為の代償は
やっぱりついて回って
あの後一週間は傷だらけ・・・」
そう言ってふっとおかしそうに笑った。
「天使の世界って
平和なだけかと思ってたら
結構、厳しいこともあるんだね。」
あたしがしみじみ言ったら
「何が困るかって、
黙ってても筒抜けなとこ。」
確かに・・・
「最後の日、俺があんたにしたことは
人間の世界ではとがめられはしないけど
天使の世界ではご法度なの。
こってり絞られて、大きな傷がついて
想像を絶する痛みの中で
俺は、時々あんたのとこに行ってたんだぞ。」
そう言って
からかうような口調になった。
「あんた、ずっと泣いてたよな。」
「だって・・・・」
また涙がにじんできそうになった。
そんなあたしを優しい笑顔で
ユーちゃんはそっと抱きしめてくれた。
「一人で泣くんじゃねーぞって言ったのにな・・・」
そんなの守れるわけないでしょ・・・
「で、そんなあんたを毎日見てたんだけど
耐えらんなくなった・・・
俺の声はあんたに聞こえねーし。
何もしてやれねー自分が情けなくってさ。」
そう言うと照れくさそうに笑った。
そうか・・・一人だと思ってたけど
側にいてくれてたんだ・・・・・
ということは・・・
全部知ってるんだ・・・
二人分ご飯を作ってたのも
ご飯食べられなくなったのも
ユーちゃんの名前を呼んで泣いてたのも・・・
「で、俺は辞表を出してきた。」
?天使にも辞表ってあんの?
「そ。あんの。」
うそ、
ユーちゃん、人間になっても
あたしの考えてること分かるの?
「あんた、思ってること顔にすぐでるから
心ン中が読めなくても
顔見てりゃわかるさ。」
ユーちゃんはそう言ってあたしのほっぺを突っついた。
「みんなの幸せを願う天使は
誰か一人に執着しちゃいけねーの。
でも、俺は・・・・
そんな風に出来なかったから
もう、みんなのために頑張るのは
やめることにしたんだ。」
そして、ユーちゃんはあたしの顔をまじまじと見つめた。
「あんたのために・・・」




