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会社では何とか普通の生活を送っていたけど
あの日からあたしは
もともと少なかった笑顔が消えた。
定時で帰り
ご飯を作る。
お皿もお箸もお茶碗も2つずつ
テーブルの上に用意する。
でも・・・
減ることのないご飯を見ると
胸が一杯になってお箸をおく。
ユーちゃんがあと3日って言ったから
もしかしたら・・・
と思い続けてはや一ヶ月。
最後の日、20ポイントついちゃったんだね・・・
それが分かったから
ユーちゃんは涙ながらにさよならを言った・・・
頭では分かっていたけど
あたしはそれを受け入れられなかった。
せっかく作った晩ご飯
捨てるのがもったいなくて
今日も近所のネコに食べさせた。
おいしそうに食べるね・・・・
そんなにあわてなくてもたくさんあるから。
必死に食べるネコの向こうに
ユーちゃんを重ねて見てしまう。
会いたい・・・
部屋に帰って
ベッドに転がる。
枕をぎゅーーっと抱きしめる。
あたし、もう幸せになんてなれない・・・
ユーちゃんのところに行きたい・・・
死んだらユーちゃんの所に行けるのかな・・・
「幸せになるんだぞ・・・」
あの時言ったユーちゃんの声が
何度も耳の奥で聞こえる。
無理・・・絶対無理・・・
泣き疲れて眠りに落ちる毎日。
優子が心配そうにあたしに言った。
「すごく辛そうだよ・・・
話聞くから今日、晩ご飯一緒にいこ。」
夕方、優子とレストランで晩ご飯。
優子が気を利かせたのか
話がほかに聞こえない個室だった。
「何があったの?」
優子の問いに、
「好きになった人が消えちゃったの・・・」
とだけ答えた。
「え?逃げたの?」
「ううん。そうじゃない。」
「今どこにいるか真希は知ってんの?」
「うん・・・たぶん。」
「じゃ、会いに行けば?どこなの?遠く?」
「・・・・たぶん天国。」
優子は絶句した。
話の流れからすると
あたしは嘘は言っていないけど
きっと、死んじゃったと思ってるだろう。
ま、それはそれでいい。
天使に恋したなんて
誰も信じちゃくれないだろうし。
「元気だしなよ。いつでも付き合うからさ。」
そう言って優子は優しく微笑んだ。
あんなふうに笑えたらいいな・・・
ユーちゃん、あたしの笑顔
見たかったって・・・
もっと一杯見せられたらよかったな・・・
一人になると我慢できず
涙が止められなくなった。
たった独りぼっちになった気がして
消えてしまいたくなった・・・
翌日、あたしは上司に呼ばれた。
「急な話だが、今日から
部署を変わって貰うことになった。
すぐに5階に行って、詳しい話を聞いてくれ。
廊下の一番奥の部屋だそうだ。」
気の毒そうな顔してあたしに告げる。
「急には困るって言ったんだけど・・・
聞いてもらえなくてなぁ。すまん。」
5階・・・・
そんなところ行った事ない・・・
何があるとこだっけ?
そんなみんなが行かないような部署に
行かされるなんて・・・
あたし、何かミスでもしたっけ・・・
とりあえず行ってみた。
あたしがいた2階では
廊下も忙しく人が歩いていたが
5階は誰も歩いていない。
こんなとこで働くのは嫌だな・・・
誰も知り合いなんかいないし・・・
何であたしばかり
つらい目にあうのかな・・・




