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「越権行為?」
「そう。」
ユーちゃんは元気のない声で答えた。
「何がいけなかったの?」
・・・・・・・・・・
「まぁ、いいじゃん。すんだ事だし。」
よくないよ・・・
しゃあないなぁって顔して
ユーちゃんは説明してくれた。
「天使って、清らかなもんだから
異性に触れるってのは違法なわけ。」
清らか・・・だれが?
噴き出しそうなあたしを制して
「最後まで聞け。
普通、接触しそうなときは
自分の姿を消すわけ。
どんな時も相手に触れずに
必要ならば離れたところから
空気の力で手を貸す。
俺はそれを守らなかった・・・」
そこでふーーっとユーちゃんはため息。
そうか・・・
あたしを抱きしめて
すごく安らいだときに
「それを幸せっていうんだよ。」
って教えてくれたことがあった。
あれ・・・しちゃダメだったのか・・・
もう一回は・・・
空飛んだとき・・・・
思いっきりしがみついてたっけ・・・
「もしも、うっかりそんなことがあったときは
記憶ごと消して、
なかったことにしてもいいんだけど
あんたには覚えてて欲しかったから・・・」
ユーちゃんはそう言って
あたしをじっと見つめた。
「記憶を消さなかったら
俺の持ってる権限を超越しちまってるから
罰則があって
大天使様の罰を受けることになるんだ。」
で、あの傷?
天使のくせに
規則を守れなかったら
根性焼きいれるみたいなことすんの?
信じらんない・・・
不良と一緒じゃん・・・
あたしは、不意に涙が出てきた。
ユーちゃんはあたしのために
あえて痛みを受けた。
記憶を消してしまえば
あんな傷を受けることはなかったのに。
大好き・・・
そんな思いがあふれてきた。
でも・・・
お願い。
その気持ちは読まないで。
申し訳ない気持ちと
嬉しい気持ちが入り混じって
なんだかめちゃくちゃ・・・
ユーちゃんは
やっぱりあたしの気持ちを
読んでたんだろう。
複雑な顔してた。
あたしには
ユーちゃんの気持ちは分からないけど
ちょっとは大事にしてくれてんのかな・・・
そこで、あたしは、
もうひとつ大事なことを思い出した。
ユーちゃんが、また傷つけられる!
「ユーちゃん、あたしはいいから
記憶消して!」
突然のあたしの言葉に
ユーちゃんはびっくり。
「え?何のこと?」
「昨日のこと!
あたし覚えてるって事は
またユーちゃんが・・・・」
必死に言うあたしに
ふっと微笑んでユーちゃんは
「ありがとな。」
って、言った。




