枯樹の終焉 【短編ハードボイルド】
閑静な街である
そう言えば聞こえはいい
新興住宅地と言われるようだが、既に
その響きは風化している
古い巨木に成長した、いや最後の役目に
近い桜並木
桜を散らす暖かな風だが、風そのもの
が余計なものだろう
そっとしておいてくれと
この街には、風さえも平穏を乱すものなのか
整った古い家並
苔むした石垣
息の詰まるような新緑の香り
どの家にも歴史を感じさせ、来るものに
威厳を発している
いや生命を謳歌することすら否定している
木々の切れ間から木漏れ日に漂う軒を見る
強面の老人が今にも顔を覗かせる錯覚に陥る
このまま桜の古木とともに朽ち果てるのだろう
この街の発展は、わたしが生まれた昭和の時代
40年前である
高度成長期と呼ばれた頃だ
この街を取り巻くように、更に新しい街が
できた
40年後
新しい街も、同じように枯れていくのか
そして、このあたりはどうなっているのだろう
枯れ草の中に立つ、枯樹と倒木
わたしもこの枯れ草で静かに眠るのであろうか
無数の老いた視線に押され、わたしは立ち去った