Ⅱ.始まりの朝
朝
琉來が目覚めると
枕には頭一つ分の跡だけが残っていた。
眠い目を擦ってベッドから体を起こすと
半開きの扉から真面目な表情でケータイを耳に当てるルシフェルが見えた。
「−はい。
はい、分かりました。
・・それは義務ですか?
・・・分かりました、連れて行きます。」
ピッと通話を切るとルシフェルは
扉の向こうでゆらゆらしている琉來に気付いた。
ふ、と微笑み
琉來の方へ真っすぐに歩いてきて、
その隣に座った。
「おはよう?」
ニコニコしながらルシフェルはその髪を撫でる。
「・・・。」
それでも琉來はぼーっとしている。
目も虚ろのまま。
ルシフェルは少し考えて、
「・・んっ!?」
琉來に目覚めのキスをした。
琉來は驚いて逃げようとしたが、
いつの間にかルシフェルの手が背中と後頭部に回っていて
すでに逃げられない状態になっていた。
「ん〜〜〜っ、っはぁ
んんっ・・っ。」
ルシフェルは角度を変えて何度も琉來の唇を捕らえる。
琉來の力が抜けて、やっとルシフェルがその手を離した。
琉來は顔を赤らめ今度は違う意味でぼーっとしていた。
そして、はっと意識を取り戻し
「もぅっ!!朝っぱらから何やってんですかっ!!」
と
枕をルシフェルにぶん投げた。
しかし琉來は気が抜けてしまったので力が入らない、
よってルシフェルにもたいしたダメージは与えられなかった。
軽く手で枕を払い、突然琉來をお姫様だっこした。
「-なっ!?」
部屋から運び出し、そのままリビングの椅子に座らせた。
テーブルの上には出来立ての朝食が乗っている。
「・・今日私仕事休みなんですが。」
「ん?それで?」
ルシフェルは笑顔で琉來に向かい合うようにもう一つの椅子に座る。
「なんでこんな早くに起きなきゃいけないんですかっ!」
琉來が机を叩いた。
ただ今の時効
-03:33
もちろん24時表記である。
「ルシフェルさん子供じゃないんだから
仕事なら一人でさっさと行ってくださいよ~。
せっかくの休みなのに・・。」
琉來が本気で落ち込んでいる。
ルシフェルはため息をついて申し訳なさそうな顔をして、
「ほんとなー。
俺も琉來寝かせて起きたかったんだが、
そーいうわけにもいかなくなっちゃったんだよ。」
「・・それってどーゆーことですか・・?」琉來が何かを察して聞き返した。
「・・確かに俺の仕事なんだか・・琉來を連れてけって。」
「・・へ?」
まさかの事情に目を丸くする。
-Workerは普段個人で仕事をするが、
難易度の高い仕事については助っ人を呼ぶことがある。
しかし、
それはランクが近い人に限る。
ましてNクラスのトップと
Fクラスに入って半年も立っていない初心者が組むことは有り得ないのだ。
「な、なんでですか・・?」
「何か知らないけど上からの指示だ。
訳は教えてもらえなかった。」
ルシフェルはその言葉を聞いて
考えこむ琉來の肩を叩いた。
「考えたって無駄だ。上の連中の思考なんて誰にも分かりゃしないんだから。
そんなことより、俺は琉來と仕事が出来るなんてこんないい機会はないと思うけどな?」
「それでいいんですか・・?」
はーぁ、と琉來は楽観的なルシフェルにため息をついた。
「まぁ、クライドも問題はないっていってんだから大丈夫だろ。」
「え?クライドさんが?」
クライドとは唯一ルシフェルと親しくしてくれるSクラスの一人である。
つまりルシフェルの上司。
「そっかクライドさんも・・。
っていうか助っ人が必要だということは
難しい仕事なんですか!?」
琉來が目を輝かせる。
ルシフェルはそんな琉來にウケて机をばんばん叩いている。
「何がそんなにおかしいんですかっ」
琉來がむくれるとルシフェルは笑いを堪えながら頭を撫でた。
「ぃや、ほんとにお前この仕事好きなんだな。
フツーは嫌がるぞ。」
「いいじゃないですか。
私はただ、この仕事に誇りを持ってるだけです。」
かつて自分を救ってくれたWorker。
まさかなれるとは琉來も思っていなかった。
クライドがためしに受けさせてくれた能力試験に合格した時の喜びを琉來は思い返していた。
「・・そっか、
じゃー仕事行くかっ。」
ルシフェルが立ち上がって真っ黒なコートに袖を通す。
琉來もそれに続く。
「はいっ!」
そして事件は始まりを迎える。
つづく~
なんかグダグダになっていますが;
次回からちゃんと始まりますんでっ!
よろしくです
m(._.)mw