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第4話「自信に繋がる」

その日、北野高校女子サッカー部の面々は、緊張で表情が固かった。

 練習試合の相手は、二か月前に0-8で叩きのめされた地元の強豪――東峰学院女子サッカー部だ。


「おい小娘ども」

 竜司がゆっくりと前に出て、全員を見渡す。

「今日は最初の10分でエースを潰せ」

 紗季が眉をひそめる。「潰すって……ケガさせるんですか?」

「バカ野郎、そうじゃねぇ。ゴールさせねぇように息の根を止めろってことだ。フィールドは戦場だ。最初に牙を折れば、あとの兵隊はビビる」


 ウォームアップ中、梨花がにやつきながら紗季の肩を叩く。

「エースはあたしがぶっ飛ばす」

「ルールの範囲でね!」と、すぐさま舞がツッコミを入れる。


 試合開始の笛。

 北野高校は、竜司の号令どおり序盤から“ドーベルマンの群れ”のようなハイプレスを仕掛けた。

 泥田で鍛えた足は止まらない。相手の最終ラインに食らいつき、パスコースをすべて塞ぐ。


「梨花、行け!」

 声と同時に梨花がエースへ体をぶつけ、ボールを奪取。そのまま紗季へ縦パスが通る。

 紗季が相手GKとの一対一を冷静に沈め、先制点。

「よっしゃあああ!!」梨花が拳を突き上げる。ベンチの竜司は、口元だけが僅かに笑った。


 動揺した東峰学院は後方からの組み立てをミスし始める。

 舞がインターセプトしそのままドリブルで右サイドを切り裂き、低いクロスを放つ!そして再び紗季が押し込む――前半20分で2-0。


 東峰学院のベンチから怒号が飛ぶが、流れは変わらない。

 北野の選手たちは呼吸を合わせ、守備時は全員でゴール前を固める。竜司の声が飛ぶ。

「シマを守れ! 命張れ!」

 その一言で、全員が体を投げ出すようにシュートブロックに入った。


 後半に入り、さすがに強豪は本領を発揮してきた。細かいパスワークと個人技で1点を返される。

 さらに終盤、エースが左サイドを突破し、GKとの距離を詰める――。

「行かせるか!」梨花が最後の力でスライディング。ボールがタッチラインを割り、ピンチを防ぐ。


 残り時間わずか。相手の猛攻を受けながらも、北野高校は身体を張り続けた。

 そして、試合終了の笛が鳴る。スコアは2-1――北野高校、初めての勝利だった。


 グラウンドに倒れ込みながらも、全員の顔には笑みが浮かんでいた。

「勝った……勝ったぞ……!」紗季が震える声で呟く。

「当たり前だ、ウチのシマで好き勝手やらせるかよ」竜司はタバコをくわえかけ、しかし女子高の敷地内だと気づいてポケットに戻した。


 美咲が声を上げる。「監督! 本当に勝っちゃいました!」

 竜司は顎をしゃくり、短く言った。

「泥も犬も米も、全部お前らの血肉になったんだ。今日の勝ちは、それで掴んだもんだ」


 梨花が笑う。「じゃあ次はもっと派手に勝とうぜ」

 舞も頷く。「今日の試合、絶対データに残すべきです」

 紗季は竜司を見上げ、心の中でこう思った――

 “この人、ただの素人じゃない。勝たせる何かを持ってる”


 その日、北野高校女子サッカー部は初めて“自分たちでもやれる”という確信を手に入れた。


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