15話 新川と3学期
12月の凛とした冷気が街を包む頃、私の日常は静かに流れ、まるで氷に閉ざされたかのように、新川のことや友人のことなど何の変化も見せなかった。
家からすぐの距離にある、母方の祖父母の家へ、私は三泊四日泊まった。
築40年の静かな古家には、昔ながらの温もりと時の流れを感じさせる柔らかな影があった。
だが、家に着いても何も無かった。
持ってきた塾の宿題や自習も終わり、暇であったのでスマホを開いた。
すると、レアちゃんからラインが来た。
親がついに離婚することになって急遽規制したんだよね。
って言ってもまた東京に戻ってこられるけど〜
私は返信をした。
大変だね⋯⋯
スマホの画面を見つめながら、私は指を止めた。
簡単に「大変だね」と言葉にするのは、あまりにも軽い気がした。
だが、どんな言葉を選べばいいのかわからない。
少し考えてから、私は続けた。
戻ってこられるなら、まだ一緒に話せるね!
本当は、もっと気の利いたことを言えたらいいのに。
だけれど、きっと今はそばにいることを伝えるのが一番なのだと思った。
まあ帰れるもんね
私は困ったことないから気にしてないよーん
お母さんは謝ってくれた
子供でもわかるのにね⋯⋯
この意味は聞かなくてもすぐに理解した。
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冬休みが終わり、3学期が始まった。
すると、初日からレアちゃんは登校していた。
特に家庭状況を聞くことも向こうから話すこともなかった。
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この日、2月に予定されている鎌倉校外学習に向けて、班内での話し合いが行われた。
歴史ある大仏や神社を巡る計画が話題に上がったが、正直なところ、私はそれらに特別な興味を持っているわけではなかった。
この日の学校が終わり、私は独りで帰った。
駅に到着し、電車を待っていると、ふと目の前に新川が現れた。
心の中で「新川に話しかけなきゃ」と焦り、思わず口を開いてしまった。
「新川って、鎌倉行ったことあるの?」
「ない」
その問いに、新川は一瞬考えることなく、淡々と答えた。
「私も行ったことない!」
私は笑顔でそう答えた。
すると、新川も笑顔で話始めた。
「そもそも神社とか寺興味ないんだよね。よくわからんし。なんか『この神社の歴史はですねー』とか言われてもなんもわかんないんだよね笑」
「たしかによくわからないよねw」
「神社行ったことある?」
「初詣の時くらいに行くくらいかなー」
「あー⋯⋯どこの神社?」
「うーーん名前覚えてないんだよね。おばあちゃん家の近くのの神社なんだよね。場所は/◎*区なんだよね笑笑めっちゃ近い笑笑」
そう話している間に、電車が到着し、私達は乗車した。
そして、新川が話し始めた。
「正月他何した?」
「紅白見た!でも、10時くらいに寝ちゃった笑
新川は何してたの?」
「俺はじいじとコタツの上に缶を乗せて中に新聞紙を詰め込んで年越すまで眺めてたんだよね」
「へぇ〜⋯⋯楽しそうだね!笑」
「うん?楽しかったよ笑」
新川は首を少し傾げながら笑って言った。
すぐに電車は止まり、私は降りようとした。
すると、彼の方から
「じゃあな」
彼は私が降りる駅を覚えていた。
嬉しさに私の頬はじわじわと赤く染まっていった。
「じゃあね!色んな意味で楽しかった!」
私は逃げるように電車を降りていった。
冬の寒さは感じず、ただ心も体も温まっていった。




