13話 家庭崩壊
今日は席替えがあった日だった。
新しい席に着いた私の心は少し落ち着かないままで、けれどその後の時間が思ったよりも静かに過ぎていった。
そして、4時間目がやってきた。
体育の時間でマットだ。
いつものように、 更衣室で着替え、みんなが教室を飛び出し、広い体育館へと向かう。
私は医者からは1年間運動を禁止されていたため、もちろん見学だ。
周りが笑い合う中、私は一人静かにその場に立ち尽くしている。
独りぼっちの私は、楽しさよりも寂しさを感じることの方が多かった。
今日は、同じ班の長谷部さんも見学らしい。
そして、私は彼女に話しかけた。
「長谷部さんって放送めちゃくちゃ上手いよね!!コツってあるの?」
長谷部さんの目が細められ、心からの笑いが溢れた。
「黒川さんありがと!笑コツはね文節ごとに区切って抑揚を付けるだけだよ!
例えば"今日の献立は"は今日の⤴︎︎献立は⤵︎ みたいな感じに言うんだよ〜!」
「めっちゃわかりやすい笑今日の⤴︎︎献立は⤵︎ ホントだ!すげーー笑誰かに教えてもらったの?」
「いやぁ〜笑独学!小学校の時からこういう風に放送やってたんだよね」
「すごいな⋯⋯1年の時から長谷部さんすごいなって思ってたんだよね。その時は全く話したこと無かったけど」
1年の時は声があまりにもかっこよすぎて男子だと思っていたなんて言えない。
「ありがと笑嬉しいな笑」
私は心の中でいつも"長谷部さん"と呼んでいるが名前で呼びたいし、呼ばれたいと思っている。
「そういえば、長谷部さんってなんてよく呼ばれる?」
「親からは蒼って呼ばれて、友達にはちゃん付けが多いかな〜」
「じゃあっ!蒼ちゃんって呼んでいい?」
「いいよ〜!じゃあ黒川さんはなんて呼ぼう⋯⋯」
「うーん⋯⋯"杏ちゃん"と"杏"1回どっちも呼んでほしい!」
「杏ちゃん!」
キュン
可愛い
「杏♡」
キュン
可愛い
「杏の方が良いかなー!」
今まで杏呼びしてくれた子は親くらいだ。
蒼ちゃんとより仲良くなった。
蒼ちゃん可愛いなぁァァァ
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家に帰り、とりあえず、すぐレアちゃんとラインをした。
新川に告白って何を言えば良いんだァァァ
一瞬で既読がつき、返信が来た。
うーん、外見と内面の好きなところを1つずつ伝える。
最後に返事は今すぐじゃなくて大丈夫。と言う
とか?
あーー!いいねそれ。
レアちゃんって今まで告白したことあるの?
したことはない
私は思った。この子はモテるから告白しなくても向こうからしてくることを。
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風呂から出て、ドライヤーを手に取り、髪を乾かしながやスマホを開いた。
髪の毛が湿って重く、風に靡いては顔にかかる。
そのたびに、画面が見えにくくなり、指先で何度も髪を払いのけながら、スマホをスクロールする。
すると、レアちゃんからラインが来ていることに気がついた。
今ね
家庭崩壊しかけてて
学校も行けなくなるかもしれない
のよ
でね
奈良に行くかもしれない
実家だから
私は返信をした。
まじか、、そうなった場合、転校生するの?
すると、一瞬で返信が来た。
わからん!
私は恐る恐る聞いた。
暴力とかはあるの?
あーね
体は元気
暴力って言っても言葉の暴力よ
だから大丈夫
心がちょっとやばいがな
もっと相談乗って欲しかったら言ってね
えーいいの?
泣いちゃう
ありがとね
でさ
もしかしたらラインもできなくなるかもだから
電話番号教えて?
そして、 私はレアちゃんに自分のスマホの電話番号と家の電話番号を教えた。
また、 1つ質問をした。
警察に相談ってした?
警察はねー
なんか返されるだけらしい
あ、杏ちゃんこれプライベートなことだから誰にも言わないでね!!
もちろん!
そうか、彼女は誰かからの助けが欲しいんだ。
人に話を聞いてもらいたいんだ。




