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第三話 ファルサ皇国

俺は虚無感に襲われていた。俺の宿敵を倒したことで、目標がなくなったのだ。それで、今は放心状態だ。何のために生きているのかと言うとユウキのギャグを聞くためなのだ。強くなるためとか。でも、サルモネラのせいで困っている人もいるのだ。そのために俺は生きよう。そう思って目覚ましを止める。六時三十分。あーあ、眠い。夜は遅くまで起きてたいのに朝は遅くまで寝てたい。なんでだろうな。

それはともかく、俺のところには毎日魔獣の討伐依頼が来る。白犬みたいな弱い魔物のときも荒れば、四角獣テトラホーンや鬼人のような上位種族のこともある。俺たちは能力テストからはすっかり成長し、今では一人で鬼人を二匹相手できるほどだ。さて、最近なんだか不穏な噂を聞く。上空一億キロメートル付近に武装集団らしきものが見えたらしいのだ。師匠の固有スキル『千里眼』で見つけたそうなのだ。そんなところまで探知できるのか。恐るべき千里眼。齋は『千里眼』を知り、超音波を鍛えている。現在、五百万メートル付近までは探知可能で、格段に使い勝手は良くなっているが、師匠には及ばない。そんなわけで、今日は上空からの偵察である。飛行は一度やってみたかったんだ。ワクワク。俺は『サイコキネシス』『神速移動』が使えるので何ら問題もないのだが、問題はユウキと齋である。彼らは最近『ホバリング』を身に着けたばかりで、とても上空に自力ではいけない。そこで、赤丸に投げ飛ばしてもらうことにした。

さて、上空一億百メートル付近についた。人がゴミのようというか見えない。因みにここは宇宙空間だ。地球は青かった。

「地球って、こんなきれいな青色だったんだな」と齋。

「そうだね」とユウキ。

これこそまさにちゃいなはちっちゃいなである。

そろそろ真面目に偵察を開始しよう。宇宙ゴミがあるので親切な俺は拾って資源にして持って帰ろうと思う。まず、武装集団から探すか。これは簡単だ。だって、あいつら空飛んでるし。

あれ? なんか変だぞ。あいつらは人間じゃない。というか生き物でもない。ロボットじゃないか! おいおい。マジかよ。まさか、ロボットだとは思わなかったぜ。ということは、黒幕がいるということだな。しかし、ロボットとは弱った。どうしたものか。

とりあえずそいつらが味方か敵か判断しよう。俺らは百メートルを降下する。すると、その物体も近づいてきた。うわっ。こっちにも来やがった。しょうがない。

俺は『テレパシー』で全員に伝える。

「いいか。今から戦闘を開始する。まず、敵か識別してみる。それで敵なら戦う。わかったな?」

「OK」

会話は通じるのだろうか。

「こんにちは」

「コンニチワ」

通じたようだ。

「俺はサイクロプスの齋だ」

「僕はユウキだよ」

「俺はリンだ」

「俺たちは狂者を断罪する仙士というものだ。あなた達は誰だ。」

「私はサキュバス、サキです。よろしく。」とロボット。

「僕はサルネランです。」ともう一人のロボットが言う。

「私たちの目的は、ファルサ皇国を防衛することです。」

どうやらどこかの国の傭兵だったようだ。それなら、ファルサ皇国と友好関係を結びたい。

「ファルサ皇国と、友好関係を結びたい。サイキックアカデミーとの相互不可侵条約と相互防衛条約、貿易をしよう。」

「ぜひとも。」とサキ。

こうして、俺たちは新たな仲間を手に入れた。そして、この星にはまだ脅威が残っていることを確信したのであった。

ロボットたちと共に帰還中のことである。

「あなたたちは何者なんですか?」とサキが聞いてくる。

「俺らは超能力者で冒険者のチームだ。人間に被害が出ないよう魔物の討伐などを行っている。」

「ファルサ皇国は農業が盛んな国だ。中でも果物が美味しいのだが、高い軍事力を有していながらもファルサ皇国の知名度が低く、貿易相手に困っていたところなのだ。どうもありがとう。」

いえいえ、こちらこそ。おかげでご飯のレパートリーが増える。

「国王に直々にお願いしたいのだが。」

「それなら一度頼んでみる。Okかどうかはテレパシーで知らせるから。」とサルネラン。

「了解。」

師匠に聞いてOKをもらえたのであとは待つのみ。

そうして俺らはテレパシーを待ち焦がれる。

テレパシーが来た!「ファルサ皇国との交易を正式に許可する。」だって。よし、これからも協力して行きたい。とでも返しておくか。

そうして平和は守られた。数日後、俺らは王城に呼ばれた。なんだろうな。

お城にはサキがいた。

「よくきてくれた。早速だが、君たちに頼みがあるんだ。」

なんだ?

「先日、我々の領土に侵入したものがいるのだ。そこで、調査隊を派遣したところ、奴らの基地を発見した。そこで、君たちの力を借りたいんだ。」

そういうことか。

「もちろん協力しますよ。」とユウキ。

「ありがたき幸せ。では、すぐに出発してくれ。」

「はい。」

俺らは基地に向かって飛ぶ。ユウキと齋も飛ぶのがだいぶうまくなったものである。

「ところで、その集団とは何なのだ?」と俺。

「それがよくわからないのです。」とサキ。

じゃあ今日は基地の偵察に来たってことなのか。任せろ!

侵略者に備え念のため齋はファルサ皇国で防衛をすることになった。

俺は作戦を考えた。まず、マイクロカメラを砦の中に入れる。どうなっているのだろう。ッッ!?電波妨害を使われた。電波妨害は上位スキル。相当な強者達なのだろう。だが問題ない。予めマイクロカメラに生命を吹き込んでいた。テレパシーで伝えてもらう。

「見たことのない種族ですが、最上位種族であることは間違いないです!」

「どんな奴らだ?」

「機械のような体を持ち、頭に角のようなものがついているものがいます。」

「わかった。ありがとう。」さて、どうやって倒そうか。

「敵のリーダー格と思われる人物のステータスを確認しました。」

え?

「十一段。」

えー!! 嘘だろ? 俺たちよりも強いじゃないか。どうすれば勝てるんだ?

「どうやったら勝てますかね?」とサキ。

「まず、『カメラアイ』で敵のボスの顔を見てみましょうか。」

「はい。」

「カメラ、戻ってこい。」

「了解」

三分ほどでカメラが戻ってきた。『カメラアイ』で映像を映し出す。空中には鬼と械人属サイボーグが混ざったような姿が映し出されていた。「あいつですね。」とサキ。

「あいつを倒す方法はあるのか?」とユウキ。

「おそらく、あいつは上位スキル持ちなのでしょう。ならば、こちらも同じ条件にする必要がありますね。」とサキ。

「どういうことだ?」とユウキ。

「まず、私たちのスキルを統合します。そしてより強い上位スキルを作り、相手に匹敵するスキルを手に入れるのです。」

「なるほど。」

その頃、ファルサ皇国内では会議が行われていた。敵の侵略に備え、作戦を考えているのだ。

「大量生産した弱い兵を送り付けてくる可能性があります。強い兵の足止めのためにも罠を地面に作りましょう。」

「空を飛ぶ軍隊であった時のために空軍を出発させます。無人機で撃墜しましょう。」と齋。

ファルサ皇国の兵士は準備体制に入る。そしてすごい速度で罠を作っていく。さすがロボット。因みに空にも罠を作ったらしい。すごい技術力である。

順調に準備が進められていくその時。

「ビーッビーッ」警報が鳴る。

「相手がファルサ皇国に接近中です。直ちに戦闘状態に入ってください。」

どうやら決戦の時が来たみたいだ。ファルサ皇国の総勢ロボット千体。すべて飛行型ロボットだ。空中から攻撃する作戦なのであった。そして、無人機はサルネランが操縦する。戦闘態勢完了。

「出撃!」

「おお!」

齋たちは一斉に出撃する。

一方、俺は。

(おい、あんまり音をたてんなよ)

(わかってる)

とこ超えで会話する。テレパシーを読まれる可能性があるので、ジャカニマショ語を使う。これは俺らが独自に開発した言葉だ。なので、もし聞かれても解読は不可能である。思考回路も全てジャカニマショ語だ。相手は上位スキルの持ち主。かなり用心は必要である。「着きました。」

「よし、行くぞ。」

そうして、潜入を開始する。まずは基地の中を調べよう。

「侵入成功」

「よし、このまま進むぞ。」

俺らは進んでいく。すると、一人の男に会った。

「誰ですか?」

こいつのステータスはかなり低い。サキに葬ってもらって俺らは先に進む。

地下水路を通っていくと大きな部屋へ出た。ここが本部らしい。まずは奇襲を仕掛ける。「『テレポーテーション』『テレキネシス』」

俺らは一瞬にして敵の頭上にテレポートした。

「なんだお前らは!?」

「サイキックアカデミーの生徒だ!覚悟しろ!」

「うわぁ」

こうして戦いが始まった。

雑魚どもから葬っていく。兵の実力は一段から十一段まで様々。数が多いので厄介だ。

俺は『神速移動』と『サイコキネシス』を同時に起動して五段以下の奴らを虚数空間に閉じ込める。六段から八段はユウキが順調に捕まえている。サキはみんなの回復を手伝い、『サイキック・ヒーリング』を起動している。

さて、八段までは全員倒したので、あとは強敵だ。九段からは必殺・『サイキック・阿修羅』を使う。俺は、異形と化した。腕は三十六本。避けられるわけがない。

「な、なんだこの技は!?」

「うっ……」

「くそぉ!」

どんどん倒れていく。そして、十一段の奴を見つけた。

「お前がリーダーか?」

「そうだ。」

「俺らの勝ちだ。降参してくれ。」

「嫌だ。俺は死ぬわけにはいかないんだ。」

「じゃあ死ね。」

「残念だったな。」

「何!?」

「俺は時間を操ることができる。つまり、俺に勝つことはできないのだ。」

「なに!?」

「さらばだ。」

その瞬間、俺は『クロノスタシス』を起動する。時間という概念をなくすのだ。

「さあ、これでよいだろう?これでお前とタイマンで勝負できる。」

「望むところだ。」

俺は『神速移動』と『クロックアップ』を発動する。

「さあ、始めようか。」

「ああ。」

俺は拳を突き出す。しかし、避けられてしまう。

「そんなもの当たるか。」

「甘い!それは囮だ。」

「なにぃ!」

そのまま蹴りを入れる。命中したようだ。

「ぐはッ!!!なぜわかった?」

「なんとなくだ。」

「ふざけんなァァァ!」

敵は怒りに任せて殴りかかってくる。

「無駄だ。」

俺は全て避ける。

「くらえぇ!!」

今度は手刀で攻撃してきた。

「遅いぜ。」

「なに!?」

俺は回し蹴りで敵を吹き飛ばす。

「ぐはぁ」

まだ立てるのか。しぶといな。

「もう終わりか?」

「いや、まだまだ!」

敵は立ち上がってきた。そして、

「『時空切断』」

「なに!?」

俺は切られてしまった。だが、俺には通用しない。

「なんだと!?」

「今度はこっちの番だ!」

俺は敵の腹を殴る。

「ぐはぁ」

「トドメだ。」

俺は全力で敵を蹴った。

「グハッ…」

「どうだ?参ったか?」

「いや、負けない。」

「なら、とどめを刺すしかないみたいだな。」

「ああ。」

「いくぞ!」

「おう!」

そして、俺たちは同時にこう叫んだ。

「『タイムスリップ』」

俺らは過去に戻った。

そして、敵の大将を潰せばこの戦いは終わる。

「『神速移動』」

「『クロックアップ』」

「『タイムスリップ』」

「なに!?」

「ならば、倒すのみ!」

「ああ。かかってこい!」

「トドメだァァァ!」

実は会話中、『凶剣』(ワザワイノツルギ)を練り上げていたのだ。『神速移動』で移動する。そして今、剣が敵の空間を切り裂く。

こうして大将は戦闘不能となった。

齋は、順調に戦っていた。すべてが、気持ちいい位予定通りに進んでいる。そして、齋も空中からの攻撃をしていた。

『三角関数』

「Sin最大値=1000000」

超高範囲攻撃。これに耐えられた兵士はほぼいない。耐えた兵士も、ロボットたちによって攻撃されていく。

だが、全く効いていないものがいた。恐らく種族は魔械だろう。悪魔のサイボーグってことか。

ステータスは齋より格上。だが、齋は迷わず向かう。

『神速移動・三角関数』

相手の周りを旋回し、的を定めさせない。

『残香』

残像を残す。攻撃してくるが、「馬鹿め、そっちは残像だ」と嘲笑う。

しかし、高範囲攻撃には対処しきれない。相手は極大の魔力弾を練り上げ始めた。

『インフェルノ』

地獄の炎。

相手は死ぬ気らしい。だが、そんなことは関係ない。

「『複素数平面』」

これは齋が開発したスキルだ。相手を平面に永遠に閉じ込めることができる。

「『封』」

相手の動きを完全に封じる。

最後は「玉手箱」で締めた。「『時間逆行』」

相手は未来に封じられた。

ユウキは順調だ。こちらも、どんどん倒していく。そして、サキが回復をしてくれているので、ユウキは体力を気にせずに戦い続けることができる。

「これで最後だ!」

「うおおおおおおおおおおおおお!」

最強コンボで相手を封じた。「『サイキック・テレポーテーション』」

ユウキは時空を超えた。

そして、齋たちのいるところへと戻った。

「お疲れ様です。」

「ああ。サキさんも回復ありがとうございます。」

「いえ、当然のことですよ。」

「みんな、よく頑張ってくれた。」

「はい!」

「では、帰還しよう。」

そうして、戦いは終わった。サキは、ファルサ皇国へ戻って行った。

齋たちは、アカデミーへ戻ることにした。

道中、齋はこんなことを考えていた。

(あいつら、大丈夫かな?)

心配性な齋である。

一方、サルモネラはというと……

「フハハ!遂に完成したぞ。最強の兵器を!」

齋たちの戦いは終わっていなかった。

齋たちが帰還した時には、既に戦争は終結していた。どうやら、齋たちが帰ってくる前に、全ての決着がついたようだ。だがしかし、サルモネラの陰謀でアカデミーは被害を受けていたのだ。

「齋くん、お帰りなさい。」

「ただいま、ナナミさん。戦況を教えてくれますか?」

ナナミさんは、新しく入った生徒で、情報を統制している。特待生だ。

「えっとね、まずはこちらの被害状況だけど、死者はいなかったわ。重傷者は多数いたけど、全て治した。」

「流石ですね。」

「でも、敵側は全滅よ。」

「なに!?」

「つまり、私たちは勝ったのよ!」

「なるほど。それは良かった。ところで、敵側の被害状況は?」

「それが……」

「どうかしたんですか?」

「実は敵側が壊滅する前に、一人の男が自爆したの。その男は私たちと戦っていた敵のリーダーだったんだけど、結局捕えることができなかった。」

「そうなんだ……」

「あと、敵側にはアンドロイドがいて、それもかなり強かったのよ!」

「マジですか!?」

「うん。だから、こっちにもかなりの被害が出たの。」

「なっ!?」

「まあ、とりあえず今はゆっくり休んで。それと、サキは無事だって。」

「よかったぁ〜」

こうして、齊とサキは再び会うことができた。

それから数日後、

「みんな、集まってくれ。」

「なんでしょうか、師匠?」

「実は、今日から君たちに新しい仲間を紹介する。入ってきていいぞ。」

すると、扉から少女が現れた。

「はじめまして。私はサキと言います。これからよろしくお願いします。」

へぇ?

「彼女はこの前の戦争で、我々のサポートをしてくれた。いわば、我々にとって恩人だ。」

「そんな、私なんか全然役に立てませんでした。」

「いや、君は素晴らしいことをやってくれた。」

「はい?」

「君は、あの戦場で怪我をした兵士たちを全員助けてくれたじゃないか。」

「ああ、あれは私の力ではありません。」

「どういうことだ?」

「私は、ある人に力を貰ったのです。」

「そうなのか。」

「はい。」

「じゃあ、改めて自己紹介をしてくれないか?」

「わかりました。名前はサキです。歳は14歳です。種族は魔械族で、能力は時間操作系魔法が得意です。好きなものは、甘いもので嫌いなものは辛いものです。よろしくお願いします!」

こうして、新たな仲間が加わった。

「さて、サキは俺たちの仲間になったわけだが、サキには任務を与える。」

「はい!」

「サキの任務は、サキ自身を強くすることだ。」

「強く……ですか?具体的には何をすればいいんですか?」

「そうだな、まずは基礎的なトレーニングから始めよう。」

「わかりました。」

「それと、俺と一緒にダンジョン攻略をしていこうと思う。」

「はい!」

こうして、サキは修行することになった。


ーーよく使う技名解説ーー

「『クロックアップ』」

「『サイキック・テレポーテーション』」

時空を超える。

「『残香』」

残像を残す。

「『サイキック・テレパシー』」

思念伝達。

「『クロックダウン』」

時間の流れを遅くする。

「『タイムスリップ』」

過去に戻る。

「『クロックオーバー』」

時間を止める。

「『インフェルノ』」

地獄の炎。

「『神速移動・三角関数』」

超高範囲攻撃。

「『残香』」

残像を残す。

「『サイキック・テレポーテーション』」

戻る。

「『ループ』」

繰り返す。

「『阿修羅』」

腕を増やす。


それからしばらく平穏な日々が続いた。だが、突然支障に呼び出されることになる。

「お前、大阪支部へ今すぐ仲間を連れて向かえ」

「は?」

「大阪支部がピンチなのだ。俺は、襲撃に備えてここに残る。」

サイキック・アカデミーは東京支部と大阪支部がある。大阪支部は、時々交流するために行くことがある。だが、今回はちょっと要件が違う。大阪支部、今何らかの者によって襲われているのだ。人手不足ということで、アカデミーの非戦闘員まで駆り出されることになったのだ。

「ちょっと話が違いますよ!なんで私が戦わないといけないんですか!」とナナミさん。

「仕方ないだろ、人手が足りないんだから。」と俺。

「私そんな戦闘力高くないんですけど」

「ナナミさんは、後ろからのサポートに徹してもらう。」

「なんだか地味ですね。」

「じゃあ前線に出て戦うか?」

「それだけは絶対嫌です。」

さて、大阪についた。どうやら大荒れのようだ。大阪支部の人から話を聞くと、モンスターを呼び寄せるものが支部の中に置かれ、巧妙に隠されているようだとのこと。弱い魔物たちが暴走している。強い魔物は自我を保ち、作戦を考えて来ているそう。一体どうしたのだろう。「とりあえず、そのアイテムを破壊しよう。」と俺。

「よし、行こう。」とユウキ。

俺たち3人は、支部の中へと入っていった。すると、早速魔物が現れた。

「ここは任せてください!」とナナミさん。

彼女は杖を構え呪文を唱えた。すると、杖の先端から光が出て、それが矢の形になり飛んでいった。そしてそれは命中し、魔物を倒した。

「すごいな!」と俺は言った。

「えへへ、ありがとうございます。」

その後にも何体も現れたが、ナナミさんのおかげで簡単に倒せた。

戦闘員としていけるんじゃね?

それはそうと、齋はナナミさんと相性が良いらしいので、二人で魔物を倒して回るそうだ。

「リア充!!ヒューヒュー」

と囃し立てたら、睨まれた。怖い……。

さて、奥へ進むと大きな扉があった。ここにアイテムがありそうな気がする。ドアを開けるとそこには、人間くらいの大きさの蜘蛛がいた。これは、阿修羅グモという種類の虫だ。キモい。

「こいつは、かなり厄介な相手だぞ。」

と俺は言った。刹那、俺は動く。

『阿修羅』

阿修羅には阿修羅で返すのだ。

だが、相手を直接は叩かない。毒汁が出るのだ。俺には毒は効かない。ただ、単純にキモいので触りたくないのだ。

『珠玉』ユウキの技をパクった。

一瞬で倒した。阿修羅グモめっちゃビクビクしてた。

「なかなかやるじゃないか」とユウキ。

「まあな」とドヤ顔で答えた。

「ところでこの先には何があると思う?」と俺。

「わからない」とユウキ。

「行ってみよう」

齋は、三角関数により、広範囲攻撃を行う。ただ、数が多すぎて倒しきれていない。

そこへナナミさんが高さをつけることで、やっと勝算が見えてきた。

「流石だな、ナナミ」

「いやいや、齋のほうがすごいよ」

いつの間にか呼び捨てになっている。敬語も外れている。

「ナナミちゃんって呼んでいい?」

「別にいいけど……」

「やったー!」

そんな会話をしている間も戦い続ける二人。

「もうそろそろ終わりそうだな」

「そうだね」

「なんかあっさりだったね」

「ああ、こんなもの大したことない。」

格好つける齋。本当はギリギリのくせに。

「そういえば、齋って彼女いるの?」

「いないよ」

「ふぅん、意外だなぁ。モテそうだけど。」

「全然だよ」

「私とかどう?(笑)」

「えっ!?」

「なんて冗談だよ」

「ちょっと焦ったじゃん」

「ごめん、ごめん」

「お前らまだやってるのか」と俺。

「「うるさい!!」」と声を合わせて言う二人。

「息ぴったりじゃん」とからかったら、また怒られた。解せぬ……

俺は、ユウキと強者を探しに行く。道すがら、『阿修羅』でその辺の魔物をふっとばす。

「!!」

強者の気配を察知。何だ、こいつ。一見、ただの巨人だ。しかし、魔力はすごい。

そいつら二体は、突然俺に拳を放った。速い。だが、俺には到底敵わない。

と思ったら、拳は加速していく。重量のぶん、加速しやすいのだ。その拳が、四回俺をかすめる。

「クッ…」

どうやら俺の体は魔力で汚染されて言っているらしい。そんな事を考えていたら、また五発食らう。

あと一回で元に戻らなくなるらしい。ヤバい。しかし、回復方法が見つからない。ということは、ここから無傷で倒すしかないようだ。

『阿修羅』

腕を増やす。異形となった俺は、その三十六本の腕で巨人を殴る。だが、効果はあまりない。

「クソ!」

どうすればいいんだ。このままでは負けてしまう。何か策はないのか。

その時、ユウキの声が聞こえた。

「おい!リン!大丈夫か?」

「ああ、何とかな。」

その瞬間。また一発食らう。俺の属性が「漆黒」に変わった。体も、今の原型はとどめていられないだろう。

刹那、背中に、四つの熱いものを感じる。それは、一対の翼と二つの頭だった。頭は、龍のような形をしている。そして、額には角が生えた。

俺は、邪悪な力を手に入れた。「なんだこれ?力が溢れてくる」

「おお、それが悪の力だ。」

とユウキが言った。悪の力とは何なのか、よくわからなかったが、まあいい。

俺は、この力であいつを倒す。

「うおぉぉぉぉ」

俺は、叫ぶ。すると、腕の数がさらに増えた。合計百八本だ。腕だけ、神々しい輝きを放っている。

「死ねぇぇ」

俺は、巨人の体を貫いた。

しかし、巨人は倒れない。俺は、洛天依をまとい、殴り続ける。ユウキも、獅子玉を打ち続ける。

絶妙なコンビネーション。巨人が次第に劣勢になる。俺は、腕を巨人たちの心臓あたりに集約する。たくさんの腕が巨人たちの心臓を貫いた。

その後、ナナミさんと合流した。彼女は、俺を見るなり、「リン君?」と言った。やはり、俺の外見は変わったようだ。

「ああ、そうだよ。」と俺。

「かっこいいね」とナナミさん。

「ありがとう」

「えへへ」とナナミさんは笑う。

齋が俺の邪悪なかっこよさに嫉妬している。ざまあ。

「齋は相変わらずだな」と俺。

「ああ、全くだ」とユウキ。

俺たちは、支部に戻った。そこには、阿修羅の死体があった。

「この蜘蛛は?」と俺。

「阿修羅だよ。阿修羅グモの上位互換。俺とナナミで殺ったんだ」と自慢げな齋。

それって神様だよな?そんなことしていいの?

「ああ、そうかい」とユウキ。反応が淡白すぎる。

「齋って強いね」とナナミさん。

「まあな」とドヤ顔で答える齋。

「まあ、阿修羅グモは雑魚中の雑魚だからな」とからかってみる。

実際、そんな雑魚ではない。俺が簡単にやっちゃったのだが、十一段相当だ。

「うるせえ。」

と怒る齋。

「ところで、齋は何しに来たんだよ」と俺。

「いや、忘れてた」

「おい!」

「ごめん、ごめん(笑)」

「お前なぁ……」

そんな感じで会話していたら、支部長が来た。

「いやー、今回は助かったよ」

「いえいえ」

「そういえば、君たちはどうしてここに?」

「師匠からのお呼び出しです。」

「そうか」

「ところで、あのアイテムは?」

「ああ、忘れてた。」

「そうですか。」とナナミさん。

そうですかじゃねえよ!

と内心思ったが、口には出さなかった。

「あれは、阿修羅系モンスターを呼び寄せるものだ。」

「なぜ?」

「わからん。だが、阿修羅の暴走に便乗して暴れようとしている奴がいるようだぞ」

「そうなんですか」とユウキ。

ということで、俺たちはそのアイテムを壊しに行くことになった。

早速見つけた。よーし、(NHKを)ぶっ壊す!

齋は、謎の波動を放つ。原理も、謎だ。

便利だな。

そして、破壊した。

「よし、任務完了だ。」と齋。

「齋、かっこよかったぜ」とユウキ。

「ありがとよ」

「齋君は、私のヒーローだね」とナナミさん。

「ははは・・」齋が照れている。

「まあ、当然の結果だ」と俺。

「おい、リン。調子に乗るな」

「はい、すみません」

「まあまあ、喧嘩しないで」

「おう」

しかし、その時。

破壊したアイテムから何かが出てくる。

間違いない。これは聖明王だ。

阿修羅系では最強。だが、やるしかない。

「みんないくぞ!」

「ああ」「うん!」「了解!」

三人は同時に攻撃を仕掛ける。だが、相手の方が速い。

「うわっ!」

「きゃあっ!」

「くそ!」

ユウキは吹き飛ばされた。齋は、ナナミさんを抱えて距離を取る。俺は、反撃に移る。

『阿修羅』

腕を増やす。今度は、百二十本にした。

しかし、相手は止まらない。

『阿修羅』

腕を増やす。百六十本。

「まだまだァ!」

二百本。

『阿修羅』

三百二十四本。

「うおぉぉ!」

そうして、俺が出せるすべての力を注ぐ。

齋の謎の波動を再現できた。

そうして、心臓を貫く。しかし、心臓の位置を変えられた。「チッ」

俺は、阿修羅を解き、腕を戻す。そして、そのまま阿修羅の拳を叩き込む。

「うおぉぉぉぉ!!」

その攻撃は、聖明王に直撃する。

そして、聖明王がよろめく。

「やったな」とユウキ。

「ああ。だが、油断はできない。」

その時。聖明王の体がまばゆい光に包まれた。

そうして、聖明王は覚醒する。

物理攻撃は、もう効かない。そして、俺はちょっとやってみたかったことがある。俺の翼の横に生えている謎の頭だ。こいつは、おそらく龍の頭の形をしている。ということは、口から炎を吐けるのではないか? 俺は、炎を想像する。すると、右側の頸から本当に出た。

「よし!」

これなら勝てるかもしれない。

俺は、聖明王に炎を浴びせる。

すると、俺の体に異変が起こった。魂が、黒い光によって燃える。俺の属性は、漆黒炎属性になった。

左側の頸を使ってみよう。そうすると、放電が行われた。俺は、漆黒電炎属性になった。

次は、阿修羅の分身だ。阿修羅の分身は、俺の意志で動くらしい。分身が俺の体を離れて、俺の思い通りに動くのだ。

阿修羅の足の裏で爆発を起こす。俺の体は、漆黒爆電属性になる。

俺は、阿修羅の脚力で高く飛ぶ。阿修羅の脚力だから、めっちゃ速い。

そして、阿修羅の腕で殴る。阿修羅の握力は、相手の強さに比例する。

つまり、阿修羅は最強の防御力を持っているということだ。

俺は、阿修羅で殴り続ける。そうして、電撃や爆撃を行う。はたからみたら、この戦場はすごく派手だ。

だが、聖明王もかなり派手なことをやってくる。目が焼き尽くされるほどの閃光。視覚を奪うということか。しかし、俺には他にも二つの頭があるので関係ない。こんどは、混沌の闇に包まれた。俺は、キャッツアイを使う。闇の中でものを見るスキルだ。

俺の体に、閃光がまとわりつく。痛い。なぜだ。俺は生まれてはじめて激しい痛みを感じた。

俺は、生まれつき感覚神経が弱い。故に、強い刺激を外部から受けることはほぼない。しかし、今の攻撃は、想像を絶する閃光だった。

俺は、なれない痛みを感じながらも攻撃を当てる。みんなも、全力で戦っている。齋が裏をかき、ユウキがサイボールをぶつけ、ナナミさんが魔法でアシストする。

そして、俺の攻撃が当たるたびに、俺の体は変化していく。俺の属性は、今や九種類ある。

雷神、嵐神、暗黒、獄炎、悪、魔、冥、霊、邪。

ちなみに、属性は強さを表すわけではない。ただ、使いやすい技の系統であるだけなのだ。

これまで、俺たちをさんざん手こずらせた聖明王への断罪の一撃。

そうして、俺は聖明王を倒した。

「ふぅ」

疲れた。

「おつかれ」とナナミさん。

「ああ」と俺。

「かっこよかったよ」とナナミさん。

「ありがとう」

「でもさ」とナナミさん。

「どうした?」と俺。

「なんでリン君はそんなに色んな属性持ってるの?」とナナミさんが聞いてきた。

「えっと・・・」

「答えられないんだね・・・」

「ごめん・・・」

「謝ることじゃないけどさ・・・」

「いつか話すよ」と俺。

「わかった」とナナミさん。

「ところで、ナナミさんの属性は何ですか?」と俺。

「私は、水だよ」と答えるナナミさん。

珍しい。色以外の属性を先天的に持っているというのは、非常に珍しいのだ。どのくらい珍しいかというと、全世界で百人いるかいないかぐらいだ。

「へぇー、すごいですね・・・」

「そうかな?私よりすごい人いっぱいいると思うけど」

「そうなんですかね」

「そういえば、阿修羅って何属性なんだろ?」

「わからん。調べてみよ」

阿修羅は、光と闇属性だった。こちらは、悪魔との契約によって手に入れた属性なのだ。

「おぉ!そうなのか」とユウキ。

「うん」

「ところで、阿修羅の技で最強なのは何かわかるか?」

「阿修羅は、全ての能力値が高いからわからない」とナナミさん。

「そっか」

「でも、阿修羅の一番強い技は阿修羅拳だと思う。」

「ふーん。」

「阿修羅拳は、阿修羅の攻撃力と阿修羅の防御力を合わせたものだ。」とユウキ。

「なるほど」と俺。

「よし、帰るぞ!」と齋。

「ああ」と俺。

こうして、俺たちは帰った。

アカデミーに帰って、俺は師匠の部屋に行く。

「師匠!」

「おお、帰ってきたか」

「はい!」

「これからも頑張れよ!」

「はい!」

「ところで、お前はもう二類だな。」

「はい!」

「もうすぐ卒業だな。」

「はい」

「卒業してもこのアカデミーに残ってくれるか?」

「もちろんです!」

「そうか。じゃあ、頑張ってくれ!」

「はい!」

「よし、今日は解散だ!」

「はい!」

そうして、俺は部屋に帰った。

俺は、部屋に帰りながら考えていた。

なんだか胸騒ぎがしてならない。

何も起こらなければよいのだが…

波乱の予感を含んだまま、俺たちの生活は続く。

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