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輪廻屋敷  作者: 愛車 風斗
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第三章:滝の間



「突然こんな事をしてゴメンね。だけど、どうしてもお話ししておきたくて」

 巡査はゴソゴソとしきりにポケットやら装備品やらを弄りながら、一度も隣に座る美鈴を見ることなく一人で喋り続けていた。

「あの、何でしょうか」

 なんとも形容しがたい不快感というのか、息苦しさというのか、嫌悪感を発散する人物だ。一緒に居て疲れる人ってこういう人の事を言うんだな、そんな事を考えた。

「貴女が見た西條という男……すごく無残な殺され方をしてね、木製の鈍器で後頭部を殴って気絶させられてから、大型トラックに右半身を三度、踏み均すように轢かれて殺害されてるんだよ」

 胃が締め付けられる気がした。

「誰が、そこまで」

 巡査はぎょろりとした眼球をこちらに向けた。

「この家の、前の住人だよ」

 衝撃の言葉だった。

「八木山……さん……?」

「そう。八木山株人。この男の仕業だよ、全部ね」

「もしそうなら、八木山さんは今、刑務所……ですよね?」

 その時、巡査の全身が膨らんだようになった。

「私には普通の人間が分からない、いや分かり得ない事でも察知する能力があってね」

 抑揚に欠ける早口で、背筋にゾッと響いた。

「残念ながら八木山は現在、雲隠れしている状態だね。警察はいまだに発見できていない状態だよ。自身が所属していた運送チームの三人を殺害して行方不明の娘の事もほったらかしにして、自分だけ姿を消した。それでいて浮かばれない霊達はこうして貴女たちの前に姿を現し、自身が如何に悲惨な運命を辿ったのかという事を必死で叫んでいる……だけど如何せん、霊っていうのは不器用なものでね。このような物騒なかたちになってしまったのもある意味で不可抗力とも言えるんだけどね」

 陰鬱な口調ながら妙に饒舌な巡査を横目に疑問を抱く。

「娘が行方不明なら、どうして八木山さんは警察を頼ろうとしないんですか」

 返事がない。

「あの、お巡りさん」

 制帽の鍔の下から覗く口元が、固く引き結ばれる。

「彼は自分が警察と関わりを持つことを避けてる。どこかでボロが出て、自分が仲間を手に掛けた容疑に問われるのを恐れて、姿を隠した。蓋然性として一番高いのはこの仮説だね」

「じゃあ、なぜ……警官であるあなたは、それを知っていながら知らぬフリをしているんですか?」

 巡査は微動だにしない。

「貴方は他の人には無い能力があって普通の人が知る事が出来ない物事の真相が視える。自覚もある……それなら、どうしてそれを警察官という立場に活かそうとしないんですか……?」

 美鈴には、その神経が理解出来なかった。このご時世、赤の他人にまで手を差し伸べるのは難しい話だろう。事実、美鈴も楓を助けてやる事でいっぱいいっぱいなのだから。

 しかし、彼は警察官だ。市民の安全を守り、悪から正義を守るという仕事。〝悪〟とは生きているものだけに限らないのではないか。なぜ悪霊という言葉が存在するのだ。

 霊能力を持つ者のさだめとは、身近な人間を悪い霊から遠ざけてやる事ではないのか。

 巡査は荒い溜め息をついた。

「角を矯めて牛を殺す――干渉する事で逆に問題を悪化させる事も世の中にはある……飛び火すると危険だから、これ以上の詮索はご遠慮願いたいところです」

 冷たく言い放ち、エンジンをかけた。

「さて、貴重な時間をありがとうね。何かあったら鵜集交番の方までご一報下さい」

 巡査は彼女を下ろすと、早々に去っていった。

「……ふう」

 美鈴はポケットの中に入れていた左手をそっと抜いた。

 しっかりと握られた携帯電話を操作し、再生ボタンをタップする。

 先程までの一連の会話が冒頭から順に再生されていく。

「間違いない」

 美鈴は液晶に向かって一人、頷いた。

 画面が切り替わり、母からの着信が入った。


*     *     *


「お父さん!?」

 自分以外の家族が戸口に立つ彼女を振り返る。事故から六時間も経っていたので、さすがに全員そろっていた。それが誰も、口を割る者が居ない。

「事故って聞いたけど……何があったの……?」

 美鈴は病室に入り、ベッドに寝かされた父の枕元へいった。

「いや、ははは……参ったよ、ほんと」

 見た目には全く無傷の父は心ここに在らず、という以外に形容のしようが無かった。

 無理に明るく振る舞おうとしているのが丸見えだ。

「何があったのか、ちゃんと説明して」

 美鈴はきゅっと口元を引き締めた。

「えっとね。大方はお母さんが言ってくれた聞いた通りだけど」

 彼は訥々と自分が経験した恐怖を語り始めた。

 正体不明のセダン車に追い掛け回されたこと、山中のダム湖に追い込まれたこと、威嚇をするつもりが、どういう訳か車がすり抜けて自分がトラックごとダムに突っ込んだこと。

「それで、信じてくれないかもしれないんだけど」

 義久は妻が持ってきてくれたスポーツドリンクをちびちびとやり、言葉を繋いだ。

「トラックが湖に落ちて、すぐにエンジンの重さで運転席が水没したんだけどね。思いの外、底まで見渡せるんだね、水の中って。お父さんびっくりしたよ。底からこっちを見上げて手を振ってる人が居たんだから」

 ゆっくりと顔を上げて、ポツリと言った。

 全身がゾッと戦慄(ふる)えた。陽平は携帯を片手に上目遣いのまま表情が凍り、母も訝るように眉根に皺を寄せた。

「それであなた、その後どうしたの」

「どうするも何も、ただぼんやりと見てたよ。水の中って音が無くてさ。すごく不思議な感覚で、フワフワ宙に浮かんでるみたいだった。そうしたら急に耳がキーンってなって、気が付いたらここだよ」

 幸代は小さい吐息を漏らした。言葉では到底説明がつけられない、様々な感情を含んだ吐息だ。

「とにかく、通報してくれた人に感謝だよ」

 珍しく陽平がそんな事を言う。背後で扉が開いた。

「あぁ、ご無事でしたか」

 紺色の作業着を身に纏った、中年過ぎた男性が訪問した。短い腕に黄色いヘルメット、もう片方の手には紙袋を提げている。

 美鈴以外の家族がさっと頭を下げた。

「吉永さん、この度は本当にありがとうございます」

 母が丁寧に二度お辞儀をした。

 吉永という男性はただでさえ細い目をもっと細めた。

「いやいや、とんでもないですよ。人として当然の事ですもんねえ。それよりも、旦那さんご無事で何よりでした」

 よくある社交辞令の会話を始めた二人をよそに、夢佳が「あのおじさんだれ?」と陽平に訊いた。陽平は逃げるように携帯に落していた視線をじろりとずらし「ダム工事の人。あの時一人だけ現場に居て、救急車を呼んでくれたんだってさ」と低く呟いた。

 美鈴は居心地が悪くて終始もじもじとしていたが、唐突に声をかけられた。

「あれ、娘さん、大分ようなってきたんでないですか」

 吉永という作業員は、妙に嬉々とした様子で言った。美鈴はどうしたものかと戸惑い、「えっと、私がどうかしましたっけ?」とあやふやに返す。

 不思議な事に、父も、母も、そのことについて何も言及する様子がない。

「ええ? どうかって、ねえ。こっちは心配してたんだから」

 怪訝そうに言い、母と顔を合わせて笑った。

 さっぱり意味が分からない。少しだけ腹が立った。

「あ、そうそうこれ、良かったらどうぞ」

 和菓子の箱を取り出して母に手渡しながら

「あと、旦那さん。あなたのトラックの周りにこんなのが沢山浮かんでたから、水道橋から取れる分だけタモで拾っておきましたよ」

 紙袋の中から赤くて艶のある物体を取り出した。美鈴の瞳孔はぎゅんと見開かれた。

 真っ赤な林檎。

「そんなもの、僕は知りませんけど……」

 義久は戸惑いながらも、なぜか受け取ろうとする。

「ダメ」

 美鈴は咄嗟に制止した。

「お父さん、受け取っちゃダメ。吉永さん、わざわざありがとうございました。父は今から精密検査を受けなければならないので、お引取り願います」

 我ながら驚くほど饒舌な嘘で吉永を追い払おうとした。彼は「なんです、そんな」などと困惑しながら、母が止めるのも聞かずに押し流されるようにして病室を去った。

 しんと静まり返る室内。

「美鈴。どうしたのよ、ほんとに」

 母がポツリと咎める。

 しかしそれには答えず、おや? と思った。

 いつもなら「なぜそんな事をしたのか」「どういうつもりなのか」と刺々しく詰め寄るのが母なのに、どことなくソフトな声色だった。

 振り返ると、顔貌がいつもと違った。強く苛まれるような、深く戸惑うような表情。

 夫が怪奇現象に巻き込まれ、更に実際に事故を起こしたという現実的な〝結果〟が出たことが母の中で大きな変化を生んだのか。美鈴は内心(やっとまともに聴く姿勢が整ったか)などと憎まれ口を叩きながら、しおらしく振る舞った。

「大事な話だから、しっかり最後まで聞いてくれる?」


     *     *     *


 午前十時、美鈴は優の車の助手席から改札口を眺めている。大学生やワイシャツ姿の人々がひっきりなしに駅舎に吸い込まれていく様子を見ていると、だんだんと眠気が襲ってきた。鵜集駅。尤巫女との待ち合わせ場所。

「こんな駅でも日曜が人多いもんなんだな」

 優はハンドルに掛けた両手を伸ばし、アクセルをやたらと煽った。クセだった。

「そういえば、最後にコレでドライブに行ったのっていつだっけ」

 優は唐突な質問に(?)を顔中に浮かび上がらせながら「さあ、いつだろう」と考え込まさった。確かにドライブデートなんてご無沙汰だ。付き合いたての頃はそれこそ何かに急かされるようにひっきりなしにあちこち馳せ参じたが、今となってはどうも躍動感がない。その代わり、お互いにしっとりとした大人の関係を構築し始めている、と彼は内心愉しんでいた。

「また二人で旅行、行きたいね」

 唄うように言う彼女を見て、思わず笑った。

「こんなボロで?」

 片手でハンドルを叩いた。日焼けと摩擦で革の表面が平らになっている。この車は建設業を営む父親から貰った古いSUVで山で使われていた事もあって年季の入り方が並みのそれではない。

「これで行くからいいんだよ。普通の軽自動車とかじゃ味わえない感覚が、これだと味わえるでしょ。前みたいに山道で迷子になったとしても四駆だから安心だし、それに頑丈だから高速道路とかも安心して乗っていられる」

 美鈴はドラマのヒロインのように淡々と車の良い点を列挙した。

 その様子を茫然と流しながら、妙に納得した。

「……お前、やっぱ俺とくっついて正解だ」

 突拍子もなく、自分で笑えた。

「でも、悪い所が一つ」

 顔の前で人差し指を立てた。

「な、なんだ」「車内が男っ臭い!」

 元気に言って、豪快に笑い飛ばす。さらりと靡いた髪から柔らかく、くすぐったい香りが舞う。

「仕方ねぇだろ~。バイトで汗かくし、車種が車種だから山にも行くんだよ。ツレと泳ぎに行ったりとか」

 優は珍しく赤くなりながら必死に弁解した。

「ま、それもそれでいいけどね。優にお似合いだし」

「なんじゃそりゃ。俺ってそんな泥臭いキャラか」

「まさしくそうだよ。泥臭さナンバーワン」

「なんとでも言え。どうせ凸凹カップルにゃ変わりねえんだから」

「猫に小判だよね。豚に真珠かな?」

「どっちも一緒だ」

「だ~よ~ね~」

「俺は猫より犬の方がいい」

「じゃあ犬に論語?」

「ああ、そんな言葉もあったかな。でも、それじゃお前は論語だぞ、物ですらなくなったじゃないか」

「あ、え、そんなのいやだ」

「じゃあ猫に小判だな」

「真珠がいい!」

「冗談じゃない、豚なんてゴメンこうむる」

「じゃあ、こうしよ。猫に真珠。カンペキ」

「犬に真珠にしようぜ」

「なんか違和感あるなあ」

「なんでもいいわ、正直」

 他愛無い会話を終え、ふと窓の外を見た途端、頓狂な悲鳴を上げた。助手席のすぐ外に尤巫女が佇んでいる。

「二ツ橋、趣味が悪いぞ」

 優が窓を開けつつ呈した苦言を、さらりと躱して

「旅行なら、軽井沢がオススメよ」と囁き、後席に滑り込んだ。

「あれ、ロック開けてたかな……」

 男臭い車内が、一瞬にして花のような香りに満たされた。


 車は乱暴に街を疾走していく。

 美鈴が普段使っているバスを追い越した所で、尤巫女が話題を変えた。

「二人は自分達の未来について考えた事があるの?」

 途端に、前席の二人は黙り込んでしまった。

「なに、俺たちの未来?」「そんな深く考えた事ないよね」

 二人して笑い合った。

「そう。変に気負わない付き合いっていうのも、イイものね」

 しんみりと言った。

「ちょっと、どうしたの尤巫女?」

 美鈴がジュースの缶を呷りつつ後席を振り返る。

「いえ別に……二人とも仲好()さそうねと思って。なんだか理想的よね、あなたたち」

 よそよそしく言って、車窓に目を託した。

「そうかな~? よく凸凹カップルだって言われるよね? それも身長じゃなくって」

「お前が凹で、俺が凸だな」

「何が根拠?」

「何がって……そりゃ、おまえ」

 一瞬だけ沈黙を挟み、美鈴が急に赤くなった。

「ばか。ありえない! 最低!」

「いててて、なんだよ、割りかし正しいだろう!」

 その後姿を見て、尤巫女は溜息を漏らした。

「それはそうと、どう理想的なの?」

 尤巫女は一瞬ぎょっとして、考え込むような素振りを見せた。

「なんでしょうね。上手く言えないけど、お互いがお互いの潤滑油になれている。二人出会って人生が上手くいく、そんな印象を受けるわ。私もこういうこと、したかった」

 また、しみじみ。

「え、そこまで言ってくれるの? なんか照れちゃうなあ」

 美鈴はぶっきらぼうに運転を続けている優の横顔を見やった。

 笑いを堪えるのが難しいくらい真っ赤になっている。

「……よせよ。運転に集中できねえだろ」

 笑い合う二人の美女にすっかり辟易してしまう。

 車はいよいよ急な峠に差し掛かった。MT車なので、優はアクセルを煽って三速にギアを入れトルクを掛けた。

「……前より強くなってる」

 尤巫女は車窓を流れる緑を眺めて、さも涼しげに言った。 

「強くなってる、とは?」

 ローリングする車内の空気が張り詰めた。

「あなたから感じるエネルギー」

「私!?」

 ど肝を抜かれた。

「そうよ。初めて会った時に言ったでしょ、()(ンパ)の(ス)気幕(オーラ)。あれが強くなってる。あなたが家に近付くにつれて、距離に反比例してる。今もまさに拡大してる。よっぽど抗わなければいけない何かがあるんだと思うわ」

 尤巫女は淡々と解説してくれるが、その表情はまさしく本職の陰陽師だった。

「抗わなければいけないモノ?」

 果てしなく嫌な響きを伴って頭蓋に木霊する。

「おい、なんで警察が下りて来る」

 突然、優が声を荒らげた。前方を見上げると、上から一台のパトカーが下りて来ていた。美鈴は一目で分かった。あの旧式の車体は下北巡査のパトカーだ。

「あの人、電話で言った警察官。陽平と私にいろいろ教えてくれて、ついでに聞き出してきた霊感お巡りさん」

 優はよく分からない唸り声を返した。しかしチラリと横目で伺った尤巫女の顔色は決して穏やかではなかった。パトカーとすれ違う時、美鈴は咄嗟に目を逸らした。なぜそうしたのかは自分でも釈然としないが、身体が勝手に判断した。

「なんだ、あいつの目。警官らしくねえな」

 優のこの一言で、背筋がザッと冷え込んだ。


 車は小道へ逸れ、あれよあれよという間に牧浦家へ辿りついた。

 SUVは勢いよく敷地に入り、庭の端まで突っ切って乱雑に駐車された。

 父は病院、母と妹は買い物、弟はバイトで誰も居ない。

「ここが私の家だよ。どうかな」

 車から降りて、改めて見る我が家は壮大だった。家の建坪や外観だけではなく、そこから発散される気迫というか、長年月の風雨に耐え忍んできた眠れる獅子のような貫録というのはやはり生半可なものではなかった。自分が毎日このような怪物の中で寝起きし生活していると思うと、今までとはまた違った恐怖が湧き上がって来た。

 美鈴と優は本日の乗客、尤巫女を振り返った。

 一人でゆらゆらと家に近付いていき、引き戸の前に立つ。

 無言のまま、家全体を眺め、しきりに頷いている。

「どう? 何か分かったりする?」

 恐る々る、その後姿に声を掛ける。尤巫女の後姿は美しいと同時に、何か禍々しい。

「……る」

「え?」

「……生きてる」

「生きてる? 何が?」

「この家に危害を加えた人物が二人。生きてる」

芒洋としてそう言った。

「生きてるっていうのは、どういう事?」

 危機感のようなものがみるみる心に押し寄せて、肺を締めあげる。

「近くに居る。あなた、この家に越してくる前にちゃんと下見に来なかったの?」

「下見には来たよ」

「その時に、何も感じなかったの」

「いや、感じた。その時から、かなり気味が悪くて」

「それでも、それを表には出さなかった?」

「いや、それはない。ちゃんと家族には伝えたよ。ここは嫌な感じがする、って」

「だけどそれを押し通そうとまではしなかったのね」

「う、うん……」

 尤巫女の細く研ぎ澄ましたような視線は瞬かず、美鈴の戦慄く心を更に蹂躙していく。

「あなたの霊感が働くのは〝霊〟に対してよね?」

「そうだよ」

 尤巫女は顔だけ近づけた。

「それは〝死んだ霊〟? それとも〝生きている霊〟? どっち?」

「え?」

 尤巫女の両の瞳が、まるで宇宙空間の入り口のように果てしない暗闇となって大きく渦を巻き、美鈴を飲み込もうとする。

「はあ……まず結論から言わせてもらうけど、この家に霊は居ない」

「うそ。本当にいないの?」

 信じられなかった。霊がここに居ないのであれば、自分や弟が今まで視てきたモノは一体なんだというのか。決して期待なんてしていないのだが、どこか落胆のようなものを感じる。

「本当よ。ただ、家には居なくても、もっと別のところに確実に憑いてる。しかも、それが徐々に近づいているわ。もう後戻り出来ないところまで来てる」

 尤巫女は抑揚の無い声で、ニュース原稿を読み上げるキャスターのように言う。

「何だそりゃ」

 優が険しい態度で口を挟む。

「こいつの家に居ないのに、こいつや弟に視えるっていうのはどういう理屈だ。別のところに憑いてるってどういう事だ、一から十まで説明してくれ」

 ダボッとしたジーンズのポケットに両手を突っ込んだまま仁王立ちする。

 尤巫女は態度を微塵もささくれ立てる事無く、ゆっくりと体を反転させて家の玄関に向かって足を進めた。

「おいこら、二ツば」「ねえ」

 美鈴が太い二の腕に縋った。

「なんだよ」

「任せようよ。尤巫女に……尤巫女の中の何かに、頼ろうよ」

 どう返答していいのか分からなかった。

「……ああ、分かった。ただ、お前も油断すんじゃねえぞ全く。危なっかしいからな」

 彼はしぶしぶ後を追った。玄関から家に入ると、広い土間がある。三和土で靴を脱ぎ、床を踏む。経年劣化で乾燥の進んだ建材がミシ、パシッと乾いた――骨をへし折るような音を高い天井に無遠慮に響かせた。

 右手に長く庭に面した廊下があり、正面に急勾配の階段が構え、左手に台所、その先に風呂場と物置が続く。古民家にしては妙に〝寄り弁〟方式の手法をとられ、居住性と機能性を(主人と使用人の空間をはっきり隔離するように)区分けた日本らしさが特徴だ。

 優が意識を戻したとき、尤巫女は廊下の方を向いていた。

 近付いてみて、ぎょっとした。尤巫女の表情が生気の感じられない無表情だった。それは彼がこれまで出会ってきた人間の中で誰にも当て嵌まらないくらい空洞(・・)だった。

 それなのに、唇だけが別の生き物のように速足に蠢いて何かを唱えている。

「るさ……なら、だい……らえ……なば、しお……い」

「何を言ってる、おい、しっかりしろ二ツ橋! こら!」

 彼女の肩を掴むと、不意にぐるりと振り向いた目が彼を据えた。市松人形のように冷徹に整った顔貌が、光の無い真っ黒い瞳が、脳の中核まで一直線に見通した。

「おい、何があるんだ、答えろよ」

 途端に尤巫女は正気に戻ったとみえた。

「あら? あぁ、ごめんなさい……ちょっと昔を思い出して……この部屋、いいかしら?」

 呆気にとられる二人を尻目に尤巫女が立ち止った先に【滝の間】の黄ばんだ障子戸が佇む。

「う、うん。お父さんとお母さんと、それから妹の寝室に使ってる……」

 美鈴がそっと戸を引くと、ふわりと柔らかい香りが流れてきた。

 寝室特有のひやりとした空気。尤巫女は一度、深呼吸をした。

 深く、絞り出すように息を吐き、次いで胸一杯に吸い込む。

 感情の布が風を受ける帆のようにバタバタと靡いた。

「どう?」

 美鈴は尤巫女が別の人間と入れ替わってしまうのではないか、そんな恐怖を全身で感じた。

「……しい」

「え?」

「……かしい」

「……懐かしい……って言った?」

 尤巫女の目が髪で覆われる。部屋の奥でおかしな音が鳴った。そうかと思えば幾重にも重なり合い、地響きのようになって音量を増し、こちらに迫って来た。床の下から何か大きなモノが迫って来る――

「避けろ美鈴ッ!!」「ぎゃあっ」

 優の咆哮と共に、美鈴は床に引き倒された。

 貨物列車が真横を通ったような轟音と振動が襲う。

 目を開けると、そこに尤巫女の姿は無く、先ほどと全く違う風景が広がっていた。

「見て! 部屋の中が……」

 美鈴は四つん這いのまま部屋に頭を突っ込んだ。見覚えの無い調度品が置かれた室内。今よりも手入れが行き届いた畳や障子戸。静まり返っていても、現実感の皆無な、微睡みながら重い感覚が脳を蕩かす白昼夢(デイドリーム)

 暫く眺めていると、背後に気配を感じた。

 振り向いた途端に自分を通り越していったのは、見知らぬ幼い女の子だった。

「誰?」

 声を上げてもまるで反応は無く、女の子は部屋に入ると、まるで美鈴が見えていないかのように抱えていたぬいぐるみと戯れ始めた。

 部屋はすっかり闇の(とばり)が下ろされ、強烈な西日に照らされて幻想的な、しかしどこか陰気な雰囲気を湛えて狂騒的な絶望感さえ纏っていた。

 突然、部屋に男が一人駆け込んできた。その身振りたるや尋常ではなく、彼は部屋を一望して絶句した。

 するとそこへもう一人、長身の男が追い縋るように現れる。

「俺の娘に手を出したろ!」

 男は恨めし気に問うが、長身の男――八木山は気持ちの悪い笑みを洩らした。

「僕があんたなんかの子供に興味を持つわけがないだろう? そもそも僕は君が誰かも知らないしね。警察官の友達なんて作った覚えはないよ。逆通報しますよ。さぁ、早く退散願いますよ」

 淡々と言う八木山に対し、男は更に感情を高ぶらせた。

「冗談じゃない! さっきこの部屋で男を一人手に掛けたろ。目に菜箸が刺さっていた。うちの娘にも手を上げたのは分かってる、殺人罪で現行犯逮捕する!」

 どうやら私服警官らしい男は、一息も入れず丸腰の八木山に飛び掛かった。

 八木山は血相を変えてそれを躱すと、警官の足を一息に刈り払った。バランスを崩してまともに倒れ込んだ警官は、持っていた伸縮警棒で八木山の腿を突いた。少々怯んだものの、すぐに駆け出した彼の後を追い、警官は長い廊下を蹌踉としたまま疾走した。

 やがて急階段を駆け上がって行くと、すぐそこにある部屋の中で怯える小さい女の子の姿を認めた。傍らには、その子を庇うように抱く八木山の姿。

 洞穴の中で震える動物のようだ――右脳の端で火花(スパークル)が散る。

「貴様……こんな小さい子供が居ながら人の子に手を出すとは。外道が!」

 警官は近くにあった大柄なコケシを掴むと、一息に突進を仕掛けた。

 数秒間、音が無かった。

 警官の手からコケシが落ちる。彼女がぐったりと頭を垂れた時、警官はガクガクと揺れる両手をそっと目の前に持ってきた。

「っ……!!」

 全身が瘧のように戦慄いた彼は、全てを置き去りにして、さっさと部屋を出た。急階段を踏み外して七、八段転げ落ちたものの、額から出血しながら家の外へ駆け出していった。


 美鈴は肩に置かれた手に飛び上がり、振り返った。

「聞こえてるのかって言ってんの」

 優が怪訝な顔で見下ろしている。

 自分が今まで見ていた光景は、何だったのだ?

「とにかく、今は経過を見るしかないな」

 優はどこか遠くを眺めるような目で囁き掛ける。

「経過を見るって?」

 美鈴は痴呆症患者のように訊き返す。返事は無く、くるりと向きを変えると台所の方へ行ってしまった。台所には既に尤巫女がおり、流し台に向かい、胸を押さえていた。

「尤巫女、どうしたの? 気分でも悪い?」

 振り向いた尤巫女は前髪の隙間から妙に尖った両目を覗かせた。

「いいえ……ちょっと持病が悪化しただけ……こういう所は苦手で」

「持病?」

「ええ、幼い頃から喘息持ちなの。だからあまり外出は、特に山の上の方には行くなって言われてきたけど、気にしないで。驚かせちゃったわね」

「そうだったの……ごめんね、私が頼んじゃったばかりに無理させたみたいで」

「いいのよ、そんなこと」

 尤巫女は緩慢に微笑んだが、それが人間でない〝何か〟が、人間の真似をして無理矢理に顔をクシャクシャにしているような、そんな擬態の一環に見えた。

 その後、三人で茶や菓子を摘まんで尤巫女を駅へ送り届け、再び優と美鈴だけ家に戻ると、前日にこっそり録音した下北巡査との会話を優に聴かせた。彼は今にも舌打ちをしてしまいそうな仏頂面で貧乏ゆすりをして聞き入っていた。

「ってーと、どうだ。お前が視た幻覚(ビジョン)だか何だかに出て来た私服の警官っていうのが、お前に話をした下北っていう巡査じゃないのか、と」

 優は緑茶を一息に飲み干した。

「そうだと思う。声が似ていたのと、陽平から聞いた話で、この家の床下から少女の白骨化した遺体が発見されてる。その少女は行方不明になっていた子で、八木山とは何の関係も無かった子らしい」

 優は貧乏ゆすりが抑えられない。

「どうもおかしいのよ」

 美鈴は虚空に向かって呟いた。

「家の床下から見つかった白骨は、八木山にとって赤の他人のものだった。だけど身近な仲間が相次いで死亡して、幻覚の中では八木山が殺したような事を私服警官が言ってた。陽平にこの事を話した時の下北巡査は、はっきりと八木山がやったとは言わなかった。幻覚の中では、私服警官は自分の娘が八木山に殺されたと言っていて、激昂して八木山の娘を撲殺した。これじゃあ、決定的に〝犯人〟なのは私服警官の方になる」

「なるほどな」

「もう一つ気になった事。あの下北巡査、本当に霊感があるのかな? って」

「その心は」

「録音聞いてて気付かなかった? 八木山の話になると決まって口調が荒くなるでしょ。それに、質問の答えがどこか穴だらけなの。それに」

 美鈴の目が光る。

「〝行方不明の娘の事もほったらかしにして〟って言ってるでしょ」

「ああ」

「幻覚の中で八木山は自分の目の前で娘を撲殺された。なのに、行方不明っていうのは辻褄が合わない。つまりは、一連の出来事は公に晒す事は躊躇われる事だって思う」

「確かに」

「仮に病院に担ぎ込まれたとして、こんな酷い傷を負ったのなら病院側が絶対に警察に通報するはず。なのに八木山の娘については一切触れられてない。という事は、つまり」

 美鈴はわざと一呼吸置いた。

「警官も八木山も、それぞれに後ろめたい事があった、という事に他ならない」

 下北巡査は、自身が犯した罪の意識とそれが発覚するのではという恐怖感に桎梏され、強いストレスにさらされている。それが、言いようのない高圧的な物腰となって表れているような気がしてならない。

 生きる屍。

 心理学を専攻する美鈴にはお見通しだ。ボディランゲージは嘘をつかない。目付き、声の張り、口調、手振り、姿勢、表情の移ろい……それらをすぐ隣に座って観察する機会に恵まれた美鈴からすれば、下北巡査のソレはまさしく『強迫性障害』を持つ患者と酷似していた。

 そして次に、アンテナとなった美鈴の能力から、下北巡査には何も霊能力など無い事が窺えた。

 陽平が視たものや美鈴が視たものをズバズバと言い当てる事が出来たのは、資料の下に貼られた小さいメモに目を通していたから。乱暴に資料を捲っていたのは、そそっかしいからでもなければ気性が荒いからでもなく、メモの存在を誤魔化したいという心理が無意識のうちに働き、反って証拠を強調させてしまっていただけの事なのだ。

 そして、そのメモを作成するにあたって、死亡した三人の八木山の仲間達について知っている者が間に挟まっていなければ、遺体の状態は知る事が出来ない。

 メモを作成後、下北巡査に流した者の存在。下北巡査は、自分を守る為だけでなく、何者かに脅されて霊能警官を装わざるを得なくなったのではないか。

 それだけの権力と力を持った者。果たして、一体どのような人物が絡んでいるのか。

 本当に問題視すべきは、そこだった。

「あの様子じゃあ自分の娘も殺されたと思い込んで、復讐したつもりだったんだろうね。娘さんは今どうしているか知らないけど、下北巡査の娘さんが一番かわいそう」 

「そういや、下北の娘ってどうなったんだろうな」

「……さあ」

 美鈴は温いコーヒーを啜った。

 縁側から原付バイクのエンジン音がした。スタンドを立て、大急ぎで家へ上がってこちらへ駆けて来る。思い切り開かれた引き戸の向こうには、汗だくになった陽平。茫然とする二人に向かって、ヘルメットを被ったままの彼は新聞のコピーを突き出す。

「これ。下北が言ってた、前にあった白骨事件の記事」

 六年前の四月二十七日付で『民家の床下から白骨体発見、行方不明の女児と断定』と大きく書かれている。

「本当だったんだ」

 目を丸くする姉に対し、陽平は激怒した。

「そこじゃねえ! これ、ここ! 被害者の名前」

 恐る恐る見ると《佐藤楓ちゃん(十歳)》とある。

「……かえで……?」

「佐藤と同姓同名じゃねえか。冗談だろ」

 さすがの優も顔を顰める。

「それとな、お二人さん」

 陽平は殊勝にも、一拍置いてから言った。

「ようやく分かったんだ。この家に危害を加える諸悪の根源が、何かって」

 衝撃的な告白。

「教えろ」

 優が身を乗り出す。

「アレさ」

 一方で陽平は食卓の椅子に腰かけると、自分の分の茶を淹れ、一息ついてから言った。

「アレだよ」

 指し示された先には、杉野宅が構える。

「杉野さんの家!?」

 美鈴は驚愕の表情を見せた。

「あの爺さんの家か、あの爺さん本体に憑いてると俺は思った。この家にも影響こそ及んでいるけど、だけど霊達の本拠地は間違いなくあのジジイだぞ」

「どうして、杉野さんは何も悪い事をしていないし、問題を起こす人にも思えないけど」

 陽平は柔らかく目を閉じた。

「そこが危ねぇんだよ。パッと見はただの年寄りだけど、過去に何をしていたかなんて誰も知らないだろ? ましてや、この辺りはちょっと前まで八木山とあのジジイしか住んでなかったんだぞ。八木山が消えた今、あのジジイにとってここは楽園同然だろ。身の潔白は、一切の努力もせず手に入るんだよ」

「で、そう言える証拠とかあんのか」

 優は腕を組んだ。

「俺の今までの経験と、今日観た夢ではっきりしたんすよ」

 陽平は始め、自分のスクーターのサイドミラーに映り込む若い男(木村と思われる)を目撃している。その次に、美鈴と共に林の中に佇む首を斬られた男(城島と思われる)を目撃。そして決定的なエビデンスを与えたのは、陽平の夢枕に立った左半身が激しく損傷した男の言葉だった。

 アスファルトの上をコンクリート片でも引きずっているような声で、三つの音を発した。


「す」   「ぎ」   「の」  


 ――杉野?

 美鈴は、自分の夢に現れた木村も「す」「ぎ」の二文字を発音した事を証言した。

「要するに、八木山に殺されたっていう三人は、揃って杉野に何らかの恨みがあるという事になる」

 陽平は声を太くした。

「さっきまで俺、親父のとこに行ってたんだよ。母さんは用事で爺ちゃんとこに帰ってるから着替えだけ交換してやれって用を頼まれた。俺、テスト週間で帰り早いから。そこで親父と喋ってて、変な事聞いたんだよ」

 

 義久がベッドの上で、陽平に淡々と聞かせた。

 数日前、夜中に幸代に起こされ、妙な事を言われた。翌日になって改めて聞いてみると、夜中に開け放たれた雨戸から庭が見えていて、そこで夢佳がスキップをしていた。慌てて呼び戻そうとしたけれど、夢佳はまだスキップが出来ない事を思い出した。その時に背後から夢佳に話しかけられて初めておかしい事に気付いた。しかし、家の玄関の扉を開ける気配がしたので自分を起こした――

 陽平は傍らでただ相槌を打ちながら、全身に鳥肌が立った。

「それとね、お父さんが一人で居た時にあった事なんだけど」

「ああ……この際なんでも言ってくれ、親父」

 陽気さがすっかり影を潜めた父は、貯め込んだものを吐き出すように、自分が体験した禍々しい体験を暴露した。

 自分を追いかけ、事故に追い込んだセダン車のこと。

 それはまさしく、我が家の庭先に蹲っているそれだった。

「だから、あれだけ言ったのに」

 美鈴の目から涙が零れた。悔し涙だった。

「私が物件訪問の時に、もっとしっかり言えばよかったのかな……嫌だって、ここは駄目だってちゃんと言えば、こんな事にはならずに済んでたんかな……」

 次から次へと涙が流れる。

 どうして、こんな事になってしまったのか。

 なぜ、関わる人全員が不幸になってしまうのか。

 全ては、ちゃんと意見しなかった自分のせい。

 そう思うと、堪らなく悔しかった。

「おい泣くな、お前の責任じゃねぇだろ。お前は何も悪くなんかないのは分かってるはずだ、そうだろ弟」

「あぁ。そうだぞ姉ちゃん。姉ちゃんが哀しむ事じゃないよ。哀しむ暇があったら、真相を究明して、不動産屋と警察に殴り込もうぜ」

「弟の言う通りだ。泣いても事態は良くなんねえ。今すぐ行動を起こすべきだ、美鈴」

 優は小刻みに震える肩に手を載せた。

 信じられないくらい細くて、華奢で、小さい身体。

 その瞬間、彼は自分の中で不思議な力がムクムクと湧いてくるのを感じた。

 ――この人を、守らなければ。

 ――自分がこの辛さを代わってやりたい。

 ――助けなければ。

「うん……ごめんね、迷惑かけて……ほんとにごめん、この頃ずっと……」

 優は思わず抱き締めた。細くて柔らかい彼女を、広く頑丈な肩で包み込んだ。

「迷惑はかけて然るもんだろ……俺だっていつもそうだし。勘弁してくれ、お前がダメになったら、俺の方こそ……だから元気出せ、な」

 美鈴は赤くなった目をそっと上げた。目が合う。

 濡れた睫毛に、紅潮した目元、潤んだ瞳、火照った身体、柔らかな髪の香り。

 優はその刺激に耐え兼ね、再び力を込めて抱き締めた。


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