第62話 大賢者様!!
☆★☆★ 本日コミカライズ更新 ☆★☆★
「ハズレスキル『おもいだす』で記憶を取り戻した大賢者~現代知識と最強魔法の融合で、異世界を無双する~」の最新話が、ピッコマとシーモアで更新されました。
こちらぜひ読んでください。
ついにグリズ・ダ・ルギアこと、騙好海邦は消滅した。跡形もなくだ。
『闇属性の魔法は強力だが両刃の剣だ。使えば使うほど、精神を蝕まれ、次第に人ではないものになる。案外あいつが1番心の闇って奴を抱えていたかもな』
グラディスは刃に黒い布の切れ端を引っかけながら、喋る。口調の端には、どこか一抹の寂しさのようなものがあった。人ではない、という意味で、少し自分に重ねているのかもしれない。
「あるじ!!!!!!」
背後からミィミに抱きつかれる。
奇襲に近いスキンシップに、俺は堪えることができずに前に倒れる。それでもミィミは容赦しない。背中に乗って、「あるじ! あるじ!」と顔を埋めて、甘えてきた。いつか舐められるんじゃないかってぐらいの甘えん坊ぶりだ。でも、その目には涙が滲んでいた。
勝利を信じ、勇猛果敢に戦い、最後は禁じ手を使って、ついに望みの結果となった。ミィミは俺以上に俺の言葉を信じ戦ったけど、内心不安だったのかもしれない。
『ミィミ、それぐらいにしとけ』
「お。剣のおっちゃんもひさしぶりだな」
ミィミは俺が持っているグラディスから漏れる声を聞いて、気さくに手をかける。
『我が輩のことを覚えてやがったか。若いだけあって記憶力がいいな。どっかのポンコツ賢者と違って』
「お、俺は覚えていたぞ!」
ホント口が悪いな、この剣。もう1回封印してやろうか。
「ミィミ、ちょっとまえまで忘れてたよ。だから、今おもい出した!!」
『今かよ!』
おそらく俺のギフト『おもいだす』によって、ミィミとの記憶の共有が行われたのだろう。覚えていなかったのは、ミィミの記憶力の問題ではなく、単純に封印されていた記憶が蘇ったからだ。
『……はっ。相変わらずお前らのボケっぷりは底が知れねぇぜ。ほれ。そろそろ早くどいてやれ。あるじ様がつぶれちまうぞ』
「あ! あるじ、ごめん」
ミィミは慌てて俺の背中から立ち上がる。
相変わらず手荒い称賛であったことは確かだが、いずれにしろミィミが無事で良かった。クィーンスパイダー戦もそうだが、今回も無理をさせてしまったな。グラディスのおかげで結果的になんとかなったが、早いところクラスアップして、楽をさせてやらないと、いつか取り返しのつかないことになるかもしれない。
しばらくミィミのスキンシップに付き合っていると、風の精霊パダジアが俺の側に寄ってきた。側にはアリエラと、精霊士メイシーの姿もある。2人ともズタボロだが、どうにか元気のようだ。
パダジアの大きな身体が人間サイズに縮む。
すると、俺の前で膝を折り、頭を下げた。
『大賢者様、この度も我が身をお救いいただきありがとうございます』
「久しぶりだな、パダジア。グラヴィスもそうだが、よく俺が賢者ってわかるな」
『グラヴィス様も同様。我々は人の肉体ではなく、その魂の色を見ております。故に肉体が変わっても、我々には関係ないのです』
そういうこった、とパダジアの説明にグラヴィスも同意する。
「何だかお前たちを見てると、同窓会っぽくなってきたな。あの時も大変だったよなあ。魔族にパダジアが乗っ取られて……」
『そう言えば、そんなことあったな』
『その折も申し訳ありませんでした』
パダジアが平謝りする。
少し話したが、前にも似たような事件があった。
その時も、俺と当時の『剣神』アドゥラ、グラディスが一緒になって暴走した風の精霊を止めたことがあったのだ。
「悪い悪い、そういうつもりじゃなかったんだ。むしろあの時の経験があったからこそ、今回の異変にすぐ気づけた。怪我の功名って奴だな」
なんだか懐かしくて、しばし3人で話し込んでいると、側にいたメイシーたちと目が合う。精霊と気さくに話す俺を見て、エルフの姉妹はカタカタと歯を震わせていた。
「く、クロノ……。パダジア様と、聖剣様と、ど、どういう関係なんですか?」
あ……。しまった。
2人は何も知らないんだっys。
弱ったな。なんて説明しようか。
『この方は1000年前に、私を……、いえ魔族の襲撃を受けていたパダジア精霊国を救ってくれた大賢者様なのです』
「パダジア様を……」
「精霊国を救った英雄……!!」
2人とも真っ青になって息を呑む。
びっくりするよな。俺だって他の世界に転生して、元いた世界に戻ってきて、しかも記憶が戻るなんて思ってもみなかったんだからな。可能性すら考えなかった。
「ご、ごめん。私、とても生意気なことを言った。ごめん」
「わたくしも申し訳ありません、大賢者様。もう少しであなたに刃を……」
「いいって! アリエラもメイシーも頭を上げてくれ。ほら。パダジア。こういうことになるから、素性を明かすのは嫌だったんだよ」
とびっきり恨みがましい目を、空気の読めない風の精霊に送る。
1000年前もこうだった。人助けと思って、人を助けていたら、いつの間にか精霊と国を助けていたのだ。思えば、勇者だ、英雄だと祭り上げられるようになったのは、パダジア精霊王国を救ったのきっかけだったけ。
『良いではありませんか。あなた様が大賢者であることは間違いないのですから』
できれば、2周目の人生は普通に暮らしたかったんだがな。知り合いが困ってるから今回は助けたけど、やってることは前回と同じなんだよなあ。
認めたくないが、結局俺はそういう星の下で生まれてきたのかもしれない。いや、ダメだ。俺は諦めないぞ。ミィミと一緒に、まったりスローライフの未来を歩むのだ。
『くわーーーーー!』
突然大きな声で嘶いたのは、ミクロだ。忘れてもらっては困るとばかりに、大きくなったばかりの翼を広げて、風を巻き起こした。そのミクロをあやすように、ミィミが鼻先を撫でる。人懐っこい目を細めて、喜んでいるようだった。身体が大きくなっても、まだまだ甘えたい盛りらしい。
「ミクロ、なんでこんなに大きくなったの?」
「アリエラ、忘れたのか? ここに来る前に『宝籤箱』を拾ったろ。あの中に『金翼の炎』というアイテムが入ってたろ」
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【名前】 金翼の炎
【種類】 アイテム
【レア度】 ★★★★★
【使用推奨レベル】 なし
【効果】 霊獣のクラスレベルを上昇させる。
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『宝籤箱』に入っていたのは、霊獣戦用のクラスアップアイテムだ。言わずもがなレアアイテムで、こうして『宝籤箱』から拾うことができたのは、幸運中の幸運だ。
以前ミクロの卵を拾った時もそうだが、俺たちはかなり運がいい。この世界では、様々なものが数値によって評価されているが、運ばかりはわからない。もしかして、パーティーの中でかなり運の強い人間がいることになるが、果たして誰だろうか。
「成長にはタイムラグがあってな。たまたまそれが戦闘中だったというわけだ」
でも、ミクロがあの時戻ってきてくれなかったらヤバかった。最後は無双できたが、ルギア戦は薄氷の勝利だったのだ。
「大賢者殿、これからどうするかお聞かせください」
「まず帝国の仕業だったことを、お姉ちゃんの口から話してもらう。精霊士であるお姉ちゃんの口から聞けば、みんなも納得すると思うよ」
アリエラの意見に頷きつつ、俺は提案を付け加えた。
「それでいいと思うが、根本的な部分は治さないと、同じ過ちを繰り返すことになるぞ。こういう時は、帝国と長老たちの癒着もセットにしないと……」
「では、どうすれば?」
「あいつを使う」
俺は未だに意識の戻らないインノシマを指差すのだった。






