第61.5話 聖剣復活!
「ハズレスキル『おもいだす』で記憶を取り戻した大賢者~現代知識と最強魔法の融合で、異世界を無双する~」のコミカライズが、ピッコマ&コミックノヴァにて最新話更新されました。こちらもよろしくお願いします。
力強い言葉とともに、白い光が収束していく。その元の部分には一本の聖剣があった。
それまで風の精霊パダジアの首元に深く突き刺さっていた剣は、徐々に、かつゆっくりと引き抜かれていく。そこに匂い立つ殺気も、怨嗟の気配もない。神々しい眩い聖気に満ちあふれていた。
「馬鹿な……」
ルギアは奇跡の光景を仰ぎ見ながら、おののく。
そう。それは奇跡だった。
そして星が誕生するような美しい光景だった。
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【名前】 グラディス
【ギフト】 けんそうび
【クラス】 聖騎士 LV 8
【レア度】 ★★★★★★
【スキルツリー】 LV 230
[能力アップ LV80]
全能力 800%上昇
[白魔法 LV70]
ヒーリング 聖光闘気
邪気払い 断聖界
ヒーリングⅡ レジストシャワー
天使の翼
[剣技 LV80]
十字斬り 聖撃
閃光剣 聖痕の光
セイントバッシュ 千光閃刃
ホーリーショット ホーリーフレア
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ついに聖剣グラディスがパダジアから抜かれる。
俺はそっと聖剣の柄に手を伸ばしたが、途中で止めた。
「グラディス、いいんだな?」
『お前以外に、誰が我が輩を使いこなせるんだ、馬鹿賢者』
「……相変わらずの減らず口だな。持ち主そっくりだよ」
『我が輩の持ち主は数多存在する。だが、先代を指すなら間違いだ。あいつは我が輩より口が悪い』
「ふふ……。じゃあ、行くか」
『ああ。その前にちょいとこの状況を元通りにしてやるか』
スキル〈時元斬り〉
グラディスは空間を切り裂く。
その瞬間、崩れかけていた神殿が一瞬にして元通りになる。
『今の起こっている事象の時間部分だけ斬ってやった。とりあえず生き埋めはなくなったな。……おかげで嬢ちゃんの『へんしん』まで解除しちまったが』
「あ、あれ? 『へんしん』が解けちゃった」
ミィミは『へんしん』が解かれ、元の愛くるしい緋狼族の娘に戻る。
『さて、憂いはなくなった。あいつが死んでからざっと800年分、暴れてやるか。…………っておい。馬鹿賢者、どうした?』
「馬鹿野郎! いきなり人の魔力を使って、大技使うなよ」
『なんだ、お前。そのレベルは? 全盛期の5分の1にも満たねぇじゃないか』
「色々あったんだよ」
俺は〈収納箱〉から魔力回復薬を取り出し、2本を一気のみする。先ほどの魔法は『時師』と呼ばれるレアクラスだけが使える魔法だ。クラスツリーレベル200という、今の俺から見れば途方もないレベルで覚える上級魔法で、故に大量の魔力を消費させる。『大賢者』というクラスで魔力量が高かったため事なきを得たが、他のクラスなら死んでいたかもしれない。
『ったく、仕方ねぇ……。合わせてやるか』
「グラディス、あいつだ。倒せるか?」
『誰に言ってんだよ』
俺は聖剣グラディスを構える。
その切っ先はルギアに向けられていた。
『覚悟しろよ、人間。我が輩の硝子のハートに土足で踏み入りやがって。誰に喧嘩を売ったか教えてやる!!』
聖剣グラディスが黄金色に燃え上がる。
「怒りは結構だが、ほどほどに頼むぞ」
『我が輩より若い奴が何を弱気なことを言ってる』
グラディスはジェットエンジンのように飛び出した。俺もその流れについていく。
その姿を見て、ルギアの表情が変わった。慌てて、手をかざす。
「パダジア!!」
俺たちとルギアの間には入ったのは、パダジアだった。聖剣を抜いた後でも、未だに暴走は止まらない。禍々しい歯牙を見せて、俺たちに襲いかかってきた。
『人間に操られていた我が輩も情けないが、精霊――お前も情けねぇ! いつまでもクズの言いなりになってんじゃねぇよ!!』
〈レジストシャワー〉!!
グラディスから黄金色のシャワーが溢れ出す。あらゆる状態異常、呪いをすべて解いてしまうチート級回復魔法だ。グラディスは剣技だけじゃない。聖剣の中にはクラス【聖騎士】が実装されており、一部の白魔法を使うことができる。
光のシャワーを浴びた風の精霊パダジアの表情が穏やかになっていく。文字通り憑きものが落ちた精霊は、菩薩のような笑みを浮かべて、俺たちの方を見つめる。
『聖剣グラディス、そして大賢者様……。ありがとうございます』
「礼はあとにしてくれ、パダジア。今はこいつを断罪する」
『そうだ。手伝え、風の精霊』
聖剣グラディスの切っ先がルギアを捉える。
いよいよ進退窮まったか。
ルギアの表情に当初の余裕は微塵もない。
「インノシマ! 私を連れて逃げろ! インノシマ!!」
倒れたインノシマに怒声を浴びせるが、ぴくりともしない。パダジアは元に戻り、メイシーもアリエラによって正気に戻った。もはやルギアに味方するものは、この神殿内にはいない。
「形勢逆転だな、ルギア」
『てめぇ、聖剣である我が輩を虚仮にするとはいい度胸だ。お尻ペンペンじゃすまねぇぞ。覚悟しろ』
「ふん! ならばもう1度、精神を掌握するだけだ」
ギフト〈せいしんは〉
ルギアの手から薄い波のようなものが広がる。一帯を覆い尽くし、その場にいる生命の精神に食い込んでいく。たちまち周囲は悲鳴が響き、ミィミ以下、俺の仲間は苦しみ始めた。しかし――――。
〈セイントバッシュ〉!
グラディスが一振りした瞬間、人の精神を絞め付けていた黒い波はあっさりと切り裂かれる。心臓を直接絞め付けるような焦燥感は失せ、仲間たちは元に戻った。表情に安堵感を見せる一方、ルギアは息を呑んだ。
「ば、馬鹿な! これはギフトによる攻撃だぞ!! それを一瞬で」
『ギフトだの、スキルだのと、この聖剣グラディス様には関係ない。我が輩はお前の祖先が生まれる前から聖剣をやってきてるんだ。年季が違うんだよ』
そしてグラディスと俺は飛び出した。
真っ直ぐルギアに向かって行く。
ルギアは最後まで足掻く。
「我が声を聞き、叫べ!!」
〈死霊の声〉!
たちまちルギアの周囲に大量のゴーストが浮かび上がる。俺が帝国で見たゴーストとは質も量も違った。おそらくこれがルギアの奥の手なのだろう。
ルギアはゴーストに命令し、俺たちにけしかける。向かってくるゴーストを見ても、俺とグラディスは怯まない。何故ならゴーストにとって、聖剣は最大の敵だからな。
「殺せ! 奴らを殺せ!!」
『聖剣にゴーストって馬鹿かよ、お前!!』
〈ホーリーショット〉!!
聖属性を帯びた無数の弾が撃ち出される。俺の〈弟子の知識〉によって全体化された弾は、確実にゴーストを浄化していく。ルギアとの間に壁のように立ちはだかったゴーストは、膨らませた風船のように撃ち落とされてしまった。
「くそ……!! まだだ!!」
〈呪いの奔流〉!!
黒く、巨大なレーザー光線のような一撃がルギアから放たれる。
「あいつ、まだ隠し技を……!!」
『かまわねぇ! 突っ込むぞ!!』
俺とグラディスは黒い奔流の中に突っ込む。それを見て、ルギアは半狂乱になりながら笑い、ミィミとミクロは息を呑んだ。
一瞬、周囲が静まり返る中、黒い奔流の中で光が満ちる。次の瞬間膨れ上がると、奔流は真っ二つに切り裂かれる。その衝撃は凄まじく、ルギアの身体が袈裟に切られるほどだった。
黒い奔流の中から出てきたのは、俺とグラディスだ。タンッと地を蹴ると、一気にルギアとの間合いを詰める。グラディスから光の奔流が燃え上がるのを見た瞬間、俺は迷わずルギアに振り下ろした。
「うおおおおおおおお!!」
『おおおおおおおおお!!』
ルギアに纏わり付いた呪い。
それを一枚一枚無力化し、最後にその身を切り裂く。
ルギアは瞼を大きく見開き、ついに天を仰いだ。
「神よ!! お助けを!!!!」
〈閃光剣〉!!!!
光の剣の切っ先がついに地面を叩く。
もはや呪いそのものといっていいルギアの肉体は、光の奔流に呑まれていった。塵芥と成り果て、そして光の中で呪いとともに消滅していく。
それがグリズ・ダ・ルギアの最期だった。






