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第42話 クィーンスパイダー

☆★☆★ 6月14日 書籍第1巻発売 ☆★☆★


「ハズレスキル『おもいだす』で記憶を取り戻した大賢者〜現代知識と最強魔法の融合で、異世界を無双する〜」第1巻がサーガフォレスト様より発売されます。

イラストレーターは「チート薬師のスローライフ」の松うに先生です。

ヒロインがめっちゃかわいいので、ご予約お願いします。


挿絵(By みてみん)

『ココココココココココッ……』


 奇妙な音が広い空間に響く。

 まるで大きな獣の胃袋の中にでもいるかのようだ。

 実際、それは的を射ているかもしれない。


 ここはもうクィーンスパイダーのテリトリー。魔鉱獣の巣の中なのだから。


(まずい……)



───────────────────────────────────────────


 【名前】 クィーンスパイダー  【ランク】 A-  

【クラス】騎士 lv3

【スキルツリーレベル】 85


───────────────────────────────────────────



 俺はスキルツリーレベルは47。ミィミのスキルツリーレベルはようやく20を越えたところだ。2人足してもクィーンスパイダーに届かない。


 加えて、俺が知るクィーンスパイダーのレベルは85でも、ロスローエン鉱山の魔鉱獣が、モンスターブックに書かれているようなレベルとは思えない。

 最低+5。最悪15は加算しても言い過ぎではないはず。仮に後者だとすれば、俺たちの倍以上だ。


(甘かった……)


 1000年前の経験があれば、なんとかなると思っていた。事実はここまではそうだった。

 でも、今回は違う。


 いや、迷っている時間はない。

 怯むぐらいなら頭を回せ。

 恐怖に怯えるぐらいなら身体を動かせ。

 俺の肩には、俺自身の命だけじゃない。ミィミの命もかかっているんだ。


(【隕石落とし(メテオラ)】も、【緊急離脱(エマージェンシー)】は論外。いや、クィーンスパイダーの弱点は光……。【隕石落とし(メテオラ)】を使って、鉱山の山体を破壊するのは? ダメだ。鉱山を壊滅させることになる。じゃあ、〈収納箱(イ・ベネス)〉に収納されている転送の杖を使って逃げるか? これもダメだ。今いる場所が複雑過ぎる。前回のように無事に脱出できるかわからない)


 様々な案が浮かび上がり、そして儚く消えていく。

 どれも現実感がない。まさに机上の空論に近いものばかりだ。


 その間も、魔鉱獣たちは大人しくまっていてはくれない。着実に、俺とミィミとの距離を詰めて来る。


 やはり方法はこれしかない。


「ミィミ、俺が隙を作る。お前は地図を持って、真っ直ぐ目の前の横穴に飛び込め」


「あるじ?」


「俺は大丈夫だ。いざとなれば、【緊急離脱(エマージェンシー)】がある」


「ダメ! ミィミもたたかう! ミィミもギフトをつかえば」


「ダメだ。狼になったミィミとクィーンスパイダーが暴れれば、鉱山が崩れる可能性がある。エイリアさんと戦った時の教訓を忘れたか?」


「それで、イヤ()ッ!! あるじは、あるじはミィミをまた1人にするの!!」


「ミィミ……」


「ぜったいイヤ()ッ! ミィミはあるじといっしょがいい!!」


 ミィミは新しく装備した斧槍を構える。ミィミは俺の方を見ようとしない。だけど、肩は震えていた。今、ミィミがどんな顔をしているか。子どもでもわかる。


「すまん。ミィミ」


「あやまらないで、あるじ。ミィミはあるじのほんとうのことばをききたい! めーれーして! ミィミに! あいつをやっつけろって!!」


 斧槍の切っ先をクィーンスパイダーに向ける。その姿は予告ホームランを告げる四番バッターのようだ。


 きっともうミィミはテコでも動かない。彼女を動かせるとしたら、『戦え』という指示だけだろう。


 あるにはある……。


 今、ミィミの斧槍を見て、ふと思い出したのだ。俺に隠された奥の手が……。


 俺は周りを見渡す。


(今、スキルツリーレベルは47か……。推奨は60……。間に合うか。いや、その前に足りるかどうかだな)


 でも、やるしかない。

 2人で生き残るために。エイリアさんとの約束を守るために……。


「ミィミ、しばらくの間クィーンスパイダーを1人で相手できるか?」


 はっきり言って、酷のお願いだ。

 とてもじゃないが、小さな女の子に任せる類いのお願いじゃない。死ね、と言っているようなものだ。


 それまで俺の方に頑なに顔を見せなかった少女は、ようやく俺の方を向いた。


 ミィミは笑っていた。


「いいよ。どれぐらい?」


「わからない。……いや、1時間になるか、30分かかるか。それでもやってくれるか」


「やる! それがあるじの命令なら」


 俺はミィミの頭を撫でる。


「帰ったら、ご馳走を食べるぞ」


「牛がいい!」


「ああ。鴨も付けてやる!


「やった!」


 ミィミはピョンと跳びはねると、すぐさま俺に背中を向けた。


 俺もまた刀を抜き、ミィミに背中を合わせる。


「ねぇ、あるじ。1つきいていい?」


「なんだ?」


「あるじがおそかったら、ミィミこの蜘蛛をたおしてるかもしれないよ」


 一瞬、ミィミの姿が昔連れ添った仲間と重なる。


 1000年前に聞いた言葉と、そっくりだったのだ。


(あの時、俺はどう返したんだっけな?)


 名はアドゥラ。『剣神』と呼ばれた男だ。


「ミィミ……」


「ん?」


「生き残るぞ」


「うん!!」


 威勢のいい返事が呼び水になる。


 ソルジャースパイダーをはじめ、クィーンスパイダーが一斉に俺たちに向かって襲いかかってきた。



 ◆◇◆◇◆ ミィミ ◆◇◆◇◆



 ミィミとクィーンスパイダーの丈は、まさに象と蟻の関係だった。

 それでも先に仕掛けたのは、ミィミだ。新たな相棒を両手でしっかりと握りしめたミィミは、真っ直ぐ向かって行く。

 クロノに時間稼ぎを頼まれた彼女だが、残念ながらそれに準ずる戦略的な知識は持ち合わせていない。


 ただ緋狼族の本能のままに突っ込んでいった。


「やぁぁああああああああああ!!」


 強烈な跳躍力を見せて、クィーンスパイダーの顔面に躍り出る。そのまま躊躇することなく振り下ろす。

 次の瞬間、持っていた斧槍が光る。ミィミの意志を無視して、動くとパッと火花を散らして、何かを弾いた。


「なに?」


 ノックバックで明らかにミィミより大きなクィーンスパイダーが後ろに下がる。その前面には、あの死神の鎌のような前肢が光っていた。


 自分よりも大きなものが後ろに下がるという奇妙な光景を見ながら、ミィミは自分の持っている斧槍を確認した。


「ミィミ、守ってくれた?」


 若干呆然としつつも新たな相棒を見つめると、斧槍についたミスリルが頼もしく輝く。

 しかし、今は戦闘中だ。

 後ろに下がったと思ったクィーンスパイダーが、すぐさま反撃に転じる。1本1本がまるで薄い刃のような8本の足を動かし、想定よりも速い速度でミィミとの距離を詰めてくる。



 〈全力斬り〉!!



 魔獣でありながらスキルを発動させると、先ほどの敵の胴を切り裂かんとミィミに迫る。まさしく全力の薙ぎは、ほんの刹那刃の軌道が見えないほどであった。



 〈パリィ〉!!



 甲高い音を立て、再び斧槍がクィーンスパイダーの攻撃を弾く。


 ちなみにミィミのクラス【獣戦士】には〈パリィ〉のような繊細な技術が伴うスキルはない。


 今、〈パリィ〉したのは、ミィミではなく持っていた斧槍――マテリアルデバイスのおかげだ。


 マテリアルデバイスは、それ自体が言わば物言わぬクラスそのもの。使用者のレベルがふさわしいものであれば、そのマテリアルデバイスに内包されたスキルや魔法を使える。



 ─────────────────────────────────────

 【名前】 ミスリルハルバード

 【レア度】 ★★★★☆ 【クラス】 重戦士 LV 1

 【使用推奨レベル】 LV 10

 【スキルツリー】 LV 30 

 [力]LV 10 +30%上昇

 [技術]LV 10

  戦士の魂

  戦士の勘

 [剣技]LV 10

 振り下ろし

  パリィ

  亀甲羅斬り

  ※本来の重騎士の能力より劣る


 ─────────────────────────────────────



 斧槍――ミスリルハルバードに込められたクラスは【重騎士】。【獣騎士】であるミィミでも、そのスキルの一部を使えるというわけだ。


「きみ……、すごいんだね」


 ことごとくクィーンスパイダーの攻撃を弾くミスリルハルバードを見て、ミィミは驚きを禁じ得ない。やがて、それは手応えへと繋がり、ミィミを走らせた。


「いくよ!」


 ミィミはミスリルハルバードの動きと〈パリィ〉のタイミングに合わせて、全力で振る。


 轟音が響くと、クィーンスパイダーが吹っ飛んだ。

 ダメージこそ皆無。すぐに起き上がろうとするが、すでにミィミが距離を詰めていた。


 大きく身体を捻転させて、スキル発動の体勢を作る。


 〈フルスイング〉!!


「足す!!」



 〈振り下ろし〉!!



 ゴンッ!!


 大きな鐘を倒したような盛大な音が広い空間に響き渡った。


 クィーンスパイダーの顔面に叩きつけた一撃は、その額を捉える。衝撃は凄まじく、顔面を地面に叩きつけた。


「どう? ミィミとハルバン(ヽヽヽヽ)のコンビは強いでしょ!」


 早速名前を付けたミィミはドヤ顔でふんぞり返る。心なしかハルバンと付けられたミスリルハルバードも得意げに見える。


 しかし、戦闘は終わらない。


 クィーンスパイダーはゆっくりと起き上がる。その額からは血が滲み、女王にふさわしくない無様な姿であったが、赤黒い瞳は吊り上がり、猛っていた。


 対する表情を見て、ミィミの様子は変わらない。ペロリと唇を舐めると、薄く笑みを浮かべた。


「あるじ、早くしないと、ミィミとハルバンが取っちゃうよ!」


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