表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

40/53

第38話 ギルドマスターの事情

☆★☆★ 6月14日 書籍第1巻発売 ☆★☆★


「ハズレスキル『おもいだす』で記憶を取り戻した大賢者〜現代知識と最強魔法の融合で、異世界を無双する〜」第1巻がサーガフォレスト様より発売されます。

イラストレーターは「チート薬師のスローライフ」の松うに先生です。

ヒロインがめっちゃかわいいので、ご予約お願いします。


挿絵(By みてみん)

「やったー、あるじ!!」


 エイリアが倒れると、直後ミィミが俺に飛び込んできて喜びを爆発させる。エイリアにはかなり殴るなり蹴るなりされていたが、本人はいたって元気だ。この時ばかりは緋狼族の頑丈さに感謝した。


 俺は赤い毛と耳を一緒に撫でる。


「ミィミもよくやった」


「わーい! あるじにほめられた! あのね。あのね。あるじの言うとおりにしたら、スキルをおぼえてね。そしたらぶわーっていろんなものが見えやすくなったんだよ」


 土壇場でミィミが覚えたのは、『鷹の目』というスキルだ。名前の通り、フィールド全体を俯瞰して把握することができる。室内全体を常に監視していれば、〈シャドウステップ〉で影の中に隠れようと、ミィミの反射神経なら対応できると考えたのだ。

 その予想は見事当たり、俺たちは〈シャドウステップ〉を攻略したというわけだ。


「なるほど。〈鷹の目〉か……。室内空間でそれを使われたら、さすがのあたしの〈シャドウステップ〉も形無しか」


 エイリアがむくりと起き上がる。

 おいおい、嘘だろ。ちゃんと顎を抜いたはずだ。少なくとも3分は昏倒していてもおかしくないはず。あの一瞬で、打点をずらしたとしか思えない。


「さすがギルドマスターか。まだやりますか?」


「いや……。あたしの負けだ。君たちの実力もよくわかったしね」


「やはり今のはテストだったのですね」


「気づいていたのか。クラスレベルは新人も同然なのに、知識、動作、対応能力はまるでベテランだな。特に黒髪の君は……」


「ま、まあ……。こちらも色々と事情があって」


 というより、事情を話したところで信じてもらえないだろう。

 1000年前に魔王を倒した賢者とか言われてもな……。


「最後のは隠行スキルか?」


「ええ。あなたの戦法を参考にさせてもらいました」


「人の戦術を素直にパクる(ヽヽヽ)切り替えの速さ……。これは完敗だな。よくやった。合格だ」


 すると、エイリアは俺とミィミの肩に手を置く。さらに何か言うのかと思ったが、何故かエイリアは固まってしまった。


「エイリア……さん……」


「ところで、君たち……。袋みたいなものは持っていないかね」


「へっ?」


「今頃酔い……」


「うぇ……。ちょっ! ストップ! 待って、エイリアさん。耐えて! たえ――――」


「もう無理……。ごめん」


 洞窟の底のような暗い室内に、汚い虹がかかったのだった。



 ◆◇◆◇◆



「あるじ、臭い……」


 ミィミは鼻を摘まむ。人族と比べて匂いに敏感なミィミにとって、今ギルドに漂うすえた(ヽヽヽ)臭いは、さぞ不快だろう。


 一応床を水拭きしたのだが、まだ臭いっている。アルコールと混じっているから仕方ない。


「すまないね。メイドみたいなことをさせて」


 肝心の主犯はすっかり元気になっていた。心なしかお肌が艶々しているように見えて、正直もう少し殴っておくべきだったと、今さら後悔している。


「いや~、酒って初めて飲んだけど、あんなに気持ち悪いものだったなんてね」


「初めて飲んだんですか?」


「飲みたくもなるさ。鉱山は閉鎖され、ギルドは開店休業状態。やることといったら、酒を飲むことぐらいしかないだろう」


「だからって、酒を飲んだ後にあんなに動けます?」


「いや、だから知らんし。酔うってあんな感覚なんだな。あっはっはっはっ」


 飛んだビギナードランカーがいたものだ。この年で初めて酒を飲むというのも驚きだけど、酔った状態であれほどの動きができるとは……。


 この人、実は『酔拳』の才能とかあるんじゃないだろうか。


「改めてクワンドンのギルドマスターを務めるエイリア・オレバインだ。見ての通り、殺風景な場所だが、まあゆっくりしていってくれたまえ」


「クロノです」


「ミィミだよ!」


「クロノに、ミィミか。名前からしてクロノくんは異世界から来た勇者だね」


「まあ……」


「そう警戒するな。あたしは君たちを認めている。危害を加えるようなことはしないよ」


 ありがとうございます、と言っていいものか。正直、第一印象があれだったから、妙に信用できないところがある。老獪という言葉もあるしな。ここは言葉半分に聞いておくのが無難だろう。


「それでエイリア……さん。俺たちは」


「鉱山にいって、ミスリルを取りたいんだろ。君たちの実力を鑑みて、特別に許可を出してあげてもいい」


「ありがとうございます」


「やったね、あるじ」


 俺とミィミはハイタッチをする。

 しかし、エイリアの神妙な表情は変わらなかった。


「ただし採掘できるのは、こちらが示した一定区画内までだ。……くれぐれも今回の魔鉱の暴走を調べようとしないこと」


「え? それは……」


「2ヵ月前……。魔鉱の暴走が収まらないため、ギルドで手練れを集って、鉱山の調査をさせた。結果、誰も帰ってこなかった」


「その時の冒険者のランクは?」


「Cランク以上の、クラスレベルもレベル3。1人はAランクの冒険者で、クラスレベル4も混じっていた。総勢20人だ」


 かなり規模のでかい調査隊だ。

 しかし、Aランクの冒険者まで混じっていて、誰も帰ってこないなんて。


「すぐに救出隊を向かわせたが、その救出隊も安否不明だ。もうあそこはあたしたちが知っている鉱山じゃない。高難度ダンジョンだからな」


「わかりました。エイリアさんの指示に従います」


 エイリアさんの言うことは至極真っ当なことだ。Aランクの冒険者すら帰ってこない魔窟。今の俺たちが挑むのはさすがにリスクがありすぎる。


 洞窟内となれば、頼みの【隕石落とし(メテオラ)】も使えないし、【緊急離脱(エマージェンシー)】は残念ながら1人用だ。ミィミを置いて、俺だけ街まで戻るわけにはいかない。


 それにエイリアさんほどの使い手が慎重になっている。長いものには巻かれろではないが、大人しく従うのが得策だろう。


「ふふ……」


「どうしました、エイリアさん」


「いや、素直だなと思ってな。若い冒険者ほど、勇猛を気取りたくなるものだが」


「ギルドマスターの指示です。当然、従います。それに命あっての物種ですから」


「うむ。では、これを持っていきたまえ」


 エイリアさんは胸元から何やらアイテムを取り出す。

 ちょうどスマホぐらいの大きさで、硝子の結晶化と思いきやミスリルでできていた。


「あたしが設計・開発に携わったマテリアルデバイスだ。軽く魔力を込めてみたまえ」


 指示通りにすると、マテリアルデバイスが光る。出てきたのは……。


「地図か!」


 ミスリルの結晶から地図が浮かび上がる。しかもただ地図が映し出されるだけじゃない。スマホのようにフリックすると、移動、あるいは拡大縮小することができる。操作性はまさしくスマホの地図アプリだ。


「これ……。エイリアさんが作ったんですか?」


「正確にはあたしの夫との合作だよ」


「夫って……。まさか!」


「そう。クロノくんと同じく勇者だった(ヽヽヽ)


だった(ヽヽヽ)? 旦那さんは……」


 つい口に出て尋ねると、エイリアさんは瞼を伏せて、首を振った。


「2ヵ月前にね」


 その言葉を聞いて、俺はすべてを察した。おそらく鉱山の調査隊か救出隊に、旦那さんが参加していたのだろう。そしてまだ戻ってこない……。


 たぶん、いの一番に鉱山に行きたいのはエイリアさんだろう。だけど、ギルドマスターの立場として抑えている。同時に経験からもうわかっているのだ。


 もう旦那さんの命はもう……。


「マテリアルデバイスには、今のところ安全な場所を記しておいた。といっても、強力な魔獣は出るがね。ま、あんたたちの腕なら問題ないはずだ」


「心遣いありがとうございます」


「それと余計なことを言っちまったが、くれぐれも英雄ぶるんじゃないよ。あたしが望むのは、旦那の形見でも骸でもない。これ以上犠牲者を増やさないことなんだからね」


「はい……。わかりました」


 俺はエイリアさんからもらったマテリアルデバイスを手に、十分な用意をした後、鉱山へと向かったのだった。


☆★☆★ 6月新刊 ☆★☆★


6月25日発売!!

「魔王様は回復魔術を極めたい~その聖女、世界最強につき~」1巻

レーベルはブレイブ文庫!!

イラストレーターはふつー先生です。

回復魔術を極めたい魔王様は、聖女に転生し、聖女の訓練校で大暴れをするお話になります。こちらもご予約お願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シリーズ大重版中! 第7巻が10月20日発売!
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『公爵家の料理番様~300年生きる小さな料理人~』単行本7巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large




3月12発売発売! オリジナル漫画原作『おっさん勇者は鍛冶屋でスローライフはじめました』単行本3巻発売!
引退したおっさん勇者の幸せスローライフ続編!! 詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large





6月14日!サーガフォレスト様より発売です!!
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『ハズレスキル『おもいだす』で記憶を取り戻した大賢者~現代知識と最強魔法の融合で、異世界を無双する~』第1巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


6月25日!ブレイブ文庫様より発売です!!
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『魔王様は回復魔術を極めたい~その聖女、世界最強につき~』第1巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ