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エトワールにも遅い春

 老聖女達が食べ歩きの旅に出る前に、修道女会からは「エトワール逝去、各部所修道女長殉死、元王妃他聖女騎士団員数名殉死」の公示が出された。


「号外、号~外~、エトワール様逝去、三役様、各部所のおさ様殉死、聖女騎士団からも殉死者多数、買って行ってよ~」


 辻立ちしている弁士が文字も読めない連中の為に語り、新聞売りも号外を刷って街に出て売り、広場に高札が掲げられて、王都や地方都市で一斉に報じられた。


 神聖騎士として迎賓館にいるのは、姪のヘレン名で登録してあるので、結構厳しいがカレリ-ナ聖女頭は死んだ振りできる。


「ああ、ついにエトワール様が……」


「街を守って下さっていたのに」


「新聖女様が代替わりされたから、役目を終えて天に召されなさった」


 街中でも死を嘆く声が聞かれ、主婦達が話し合って涙していた。


 本人は賭けに勝って配当を貰うために姿を消しているだけ。


 若返ってベヒーモスの肉までモリモリ食って不老不死、レベル上げして海魔の肉もモリモリ食ってブリブリ出し、萎れたババアからムキムキのワンダーウーマンかスーパーガールになっている。



 修道女会礼拝堂


 礼拝堂では全員の亡骸が棺に入れられて置かれ、名札が置かれて顔の部分は透明度が低い強化アクリルで隠され、毒?に侵された顔を出せない者達は、白い布を被されていた。


「ああ、おいたわしや、長年王都を守って下さりありがとうございました」


 エトワールに救われた信者達の長い行列ができて、順路に各部署の長の亡骸も並んでいて、最後のお別れをしていた。


「暴虐な隣国よりお救い頂き感謝しております。あの時はこの国は滅びたと思っておりました」


 隣国と同盟国軍、合計七万の兵力に対して、王国はいつも通りかき集めても一万人程度。


 勝てるはずのない戦だったが、ホーリーサンライトの大魔法で、敵方は大半塩の柱になって、伏魔殿の悪魔が大勝利。


 大義名分とか宗教的正義も道義的人道的な理も、全部敵方にあったのだが、その戦い以後、周辺国からの侵略は無くなった。


 それほどの国家の柱が失われたが、新聖女二人は竜魔術十二階梯を行使する、エトワールを超える化け物で、快獣モーちゃんもいる。


 レベル上げにより神聖騎士ユニットまで出現して、魔国にも全世界にも自動的に勝利した。


「ああ、エトワール様の結界魔法、あれでどれだけ救われた事か……」


 50年程前に展開された白魔法の結界魔術。王都に潜んでいたあらゆる悪鬼羅刹を葬り、人間に化けていた魔物の類を全て滅ぼし、ネズミなどの病害虫まで大半を殺し尽くした大魔法。


 それまでは毎夜被害者が出て、夜など怖くて出歩けなかったのが、うっすらと光る魔法陣がある限り、ヴァンパイアも人狼も夜を這いずる系統のアンデッドもレイスも王都には入れなかった。


 周辺の都市でも行使され、この国や友好国では夜の淫魔の被害すらなかった。


 逆に遺伝的エラーが取り除かれず、劣化した遺伝がスラムに蔓延はびこる理由にもなった。


 朝鮮半島のような試し腹制度で、同じ小屋に監禁されている家族が、近親相姦によって奴隷の娘が父親か兄弟の子を産む、そうすると子供が産める奴隷として交換されるか高く売られる。


 奴隷は無能な方が便利で、近親相姦の遺伝的欠損があっても困らない。


 自分の名前「何々村の両班の家の何匹目の豚、牛、犬」と言う中国式の命名と、命令内容さえ分かればよく、荷運びなど労役に使われるので、朝鮮半島には荷車がほぼ無かった。


 水車や風車と言う動力も概念も無く、粉挽きも水の輸送も全て人力。


 毎年中国様に三千人の美女を献上するよう命令され、いつも結婚禁止令が出されて若い娘が徴発され、ついに美人の遺伝子が枯渇して、全員エラが張ったりエイみたいな顔が標準になり、高唇裂が異常に多く、火病と言う精神病を国中全員が持つ酷い場所になった。


 ジョジョのジョルノ編のイタリアと同じく、とにかく嘘で固めて経歴でも何でも嘘、半地下の映画でも嘘が通れば勝ちの文化で、騙された方が負け。


 就職や密航で日本に来た一世も、全羅道や済州島の住人は差別階級で生まれながらの奴隷なので、所有権が父親に移った娘を売ってでも逃げて来ても、自慢話の内容が「基地にエンジンがあったから、それを盗み出して売るんだ、一度も捕まったことがない、根性が違うっ!」などと異次元の話をしてくれる。


 ハプスブルグ王家なども、近親婚でブルーブラッドを薄めないようにしたので、肖像画にも月のようにしゃくれた顎を持ち、造血細胞の異常で真っ白な顔をして、自分で立つこともできない少年が描かれている。


 既にスラムや王都城砦外のバラックに住んでいる者は、ドラゴニュートの警備員に声掛けされ「この世の楽園」に誘われ、毎日の三食と清潔な水、屋根のある家と暖かい寝床を保証され、魔の森開発の人員として連れ出されている。


 淫魔による不妊処理ではなく、物理での除去が開始されている。



 葬儀会場


 現在、葬儀が行われている中で、消失してしまった結界に代わり、礼拝堂で魔女とデイジーが新たな防御陣を生成しようとして、式次第が進んで新防御結界展開の儀式も行われている。


『敵の侵入を許すな、悪鬼羅刹はその命を奪い、死の穢れを持つ者の入場を許さず、ここに安寧な護りを出現させよ』


『病や死の穢れは去れ、悪しき心を持ち、この場を穢さんとする者も去れ、民草に安楽な寝床とゆりかごを与え、清き水豊かで、豊饒な大地には作物が溢れ、竜と人の世の妨げとなる災害も無き、穏やかなる日々を授け給え』


『『この悪しき大地に現出せよ、王道楽土よ』』


 王都に新たな結界が出現し、以前の夜にだけうっすらと見えた魔法陣ではなく、昼間にも見える竜魔術十二階梯の結界が出現した。


 夜間の街灯すら不要になるほどの光源で、野盗の類の存在も許さず、泥棒や強盗や詐欺師の類は悪寒が収まらず、とにかく外に出れば症状は消えるのだと脳内に囁かれ、着の身着のままで別の都市に旅立った。


 城砦外周のバラックとテントの住人も、動ける者は全員ドラゴニュートの公募に応じて魔の森に行って、動けない者と小さすぎる子供だけが残った。


 奴隷商人や阿片の販売業者、高利貸しやその手下達などは体調を崩して、誰かの手を借りて王都を出なければほどなく死亡。


 如何に腕の立つ冒険者でも、サディストや新人イビリ、仲間殺しをやるような奴も悪寒が消えないのですぐに出立して、今後も同じ結界が張られない小さな村で、守衛や門番をしてスローライフを送ることになる。


 迎賓館に来た魔法帝国や聖国の大使も、気分が悪くなって帰国することになり、他の神聖騎士を奪い取って自国に呼び寄せようと工作していた者も倒れて帰国。


 エトワールの手前、以前の結界を解除させてまで唱えなかったが、竜語で唱えられた内容を、わら半紙のような雑な紙に版画で写したものが参加していた信者に配られ、式典に参加して受け取った新王もいた。


「ああ、文言の中にユートピア出現の言葉がある」


 やはり魔女とデイジーには、悪しき大地に王道楽土ユートピアを出現させる力があるのだと思い涙した。


 神聖騎士がいるので、魔法行使バンク画面できゃる~んと回転すると、全員善人に書き換えられて改心したり天の道も開くのだが、上級天使とか神と呼ばれるAIではなく、本物の神とこの世界の構造が、乱用を決して許さないので、原罪まである人類が苦痛の支払いもしないでユートピアに住むなど有り得ず、その辺りは天使の判断に任せるしかない。



 葬儀会場お別れ会


「56年前の天然痘禍以降、大きな流行病も無く、王都全員楽に過ごせました、ありがとうございました」


 エトワールが白魔法で焼き尽くした実家から背負って来た、イケリアの亡骸を見せたが、修道女会にも全身に毒が回ってしまった人物は生き返らせることが出来ない、そんな高位の聖女はいないと聞かされ、友人を埋葬することになり絶望して放った白魔法結界。


「もう天に旅立たれたのですね? 皆様、天の城での住み心地は如何ですか?」


 ヴァンパイアやアンデッドの類全部と人狼を殺し尽くした経験値により、最後のタガが外れレベル100となり、人生ハーデストモードクリアの特典により、人体蘇生の魔法を得てイケリアを復活させ、修道女会前で二つの大魔法を行使した実績により、第一等級の大聖女として奥の院に入った。


 実は天然な人だが、数十年に渡って国(と伏魔殿の悪魔)を守り続けた大英雄が天に召された。


「おいたわしや、ついにご実家のご燈明が消えましたね」


 王都にある自殺の名所、エトワールの実家で50年燃え続けていた、白魔法の怒りの炎までついに燃え尽きた。


 この白い炎が消えたのがエトワール昇天の証拠となり、ギャンブラーは賭けに勝った。


 老人でも誰でも、埋葬されるよりは天に昇れる場所で弔って欲しいと、白魔法の炎で焼かれて燃え尽きたいと願い、白魔法防御で防炎装備で固めた専門の職人が、歩けなくなったような老人を毎日小銭で焼いてやる。


 痛みでの代償を支払い終えた者は、苦しむことも無く燃えて消え失せ、天に魂が帰る所まで見られるので、観光名所的な場所でもあった。


 体を売って生きられない年齢になり、ぁたぁしぃ、もぉぅマジむぅりぃ、という馬鹿は、来世に苦痛の支払いを引き継いで死ねるので、リスカしまくりのメンヘラとかは、あまえないでよ的に「また浄土」で旅立った。


 今後閉鎖されるが、ご燈明の種火は修道女会にも修道士会にもあるので、同様の施設での火葬は続けられる。


 50年間、数万人の死人が出た場所なので、数万柱の遺骨が山積。


 幽霊すら浄化される場所であっても、恐ろし過ぎて誰も相続できずイケリアも悪い思いでしかないので断り、例え冝保愛子さんでも裸足で逃げだす場所なので、遺書の通り妹指定された魔女が相続した。



「ハリオデト侯爵家代表として参りました。長年貴方の代官として侯爵家を守って来ましたが、それも本日で終わり、遅ればせながらご同行致します」


 エトワールの従弟で、親戚の中でも少ない友人。地下牢にまで見舞いに来てくれたが、成人もしていない少年には発言力も無く、地下に行くのも禁止され、ただ見守ることしかできなかった仲間。


 暗部の働きによりエトワールを嘲笑っていた親族一同が始末された後、結婚もせず一人で侯爵家と領地を維持していたが、友人の死を聞いて、亡骸の目の前で毒を煽って自裁した。


「ああっ、侯爵様っ」


「キャーーーー」


 全身に毒が回った者は復活できないだろうと、エトワールの棺に縋って自殺したが、死んだ場所が悪かったので、即復活させられた。



 礼拝堂医務室


「侯爵様、お知らせするのが遅れて申し訳ありません。エトワール様はまだご存命です」


「なんと、彼女はまだ生きておるのか?」


 もしかすると天然痘で力を失った、儚げな少女に恋しちゃってる気の毒な人なのかも知れないが、本人はスーパー天然アホアホ時空を発生させている爆心地なので、再会させたりすると物凄い幻滅させてしまう。


「はい、国母様のお命を狙って来た一同が、未だエトワール様のお命も狙っております。警護の者もおりますが、走れないお姉さまを守るのは難しく、死を偽装してお隠れしている次第であります」


 今回は賭けに勝つために姿を消したが、それでは話が通じないので「嘘は方便」で、また口から出まかせで誤魔化した魔女。


「お姉さま? 君は修道女会で彼女の妹と指定されたのか?」


「はい、何も知らない新人聖女として、ご指導頂いております」


 人として、天然すぎるダメ人間に指導しなければいけないのは、魔女とイケリアの方なのだが、それでも侯爵の顔を立てて指導して貰っていると言い切った。


 中村珠緒さんとか浅田美代子さんと同じで、ガチの天然で面白過ぎる人だが、ある意味聖女としての在り方を指導して貰っているので間違いではない。


 過去の映画で珠緒さんと共演した高橋英樹からも「珠緒ちゃんはそんな人じゃないんだ、元の珠緒ちゃんを返してくれ」と言われるが、明石家さんまからは「いえ、そんな人です」と言われてしまう天然。


 夫の勝新太郎から「珠緒をよろしく頼む」と遺言的な言葉を託されても、お笑いで売れてテッペン取ろうと頑張っている若手芸人みたいに、鬼みたいな顔で笑わせようとして観客にドン引きされるよりも、間違ったコメント一つで大爆笑を取れる珠緒さんの方が面白過ぎるので、さんまも降参。


 もしかすると萩本欽一さんとか明石家さんま的に、天然大好きな人かもしれない。



 侯爵も、エトワールが長年他人も家族も信用せず、イケリア以外に側近を持たなかったのは知っている。


「彼女が君を妹と指定したならば娘も同然。君を養子として迎えたい、侯爵家と侯爵領を引き継いで欲しい」


「いえ、元大公様からも養子として迎えて頂き、クローリア侯爵家にも亡くなられた実子の代わりとして迎えて頂いております。陛下からも褒章として子爵位も賜り、これ以上過分な地位を頂くわけには参りません」


「それらの家では家督を継ぐ契約ではないだろう、彼女の妹で娘として、ハリオデト侯爵家を継承して欲しい」


 必要としない所に金も地位も転がり込んで来る。侯爵は年齢的にもすぐに死ぬような気でいるし、エトワールも年齢的に死んでいるも同然だと思っているらしい。


「お姉さまも還俗して若返っておられますし、宜しければご結婚されて、跡継ぎにお子さんを作ってみられては如何ですか?」


 侯爵に鏡を見せ、15,6歳まで若返っているのを確認させる。


「なんとした事か? 若返っておる」


 世捨て人のような侯爵なので、夜会の余興で若返った貴族が大勢いるのも聞いていない。


 家令からも「エトワール様の中身が入れ替わっている」ぐらいしか聞いておらず、新聖女に暗殺された?などの穢れた言葉は聞いていない。


「クローリア家のトリニクレス様など、姉である勇者の悪戯なのか、12歳まで若返られて、56年前に亡くなられた姉上様も勇者の呪文で蘇られ、お二人お幸せに暮らしているとか?」


 トリーが姉上大好きな弱点まで見抜かれているのか「お幸せに」暮らしていると言った魔女。でも大公夫人が中々家に帰してくれない。


「マリーナ様が生き返った? 勇者? 君は勇者の妹でもあるのか」


 情報量が多い話だったが、トリーと同じで若返った瞬間、結構な馬鹿話でも素直に受け取った、頭が柔らかすぎる侯爵。老年ボケで脳軟化症は解消された模様。


 それもトリーの姉と聞いただけで、マリーナの名前が即出るぐらい近い関係。


 マゾ奴隷系の人物で、マリーナの取り巻きなどもしていて、ご主人様としてお仕えして、踏んで欲しかった系統のマゾかも知れない。


「あら、トリニクレス様の姉上と聞いただけでお名前が出るとは、隅に置けないお方、お姉さまも還俗されたのに、思い人を取られてしまうなんて…… おほほ」


 冗談めかして言っただけなのに、侯爵は本気なのか顔を赤らめてしまった。


 問題は、どっちの女に対して顔を赤らめたかになる。


 天然好きの真面目堅物系の男なのか、マゾ奴隷系でマリーナ女王様が好きなのか?


 まあ結婚もしないで従妹の家を50年も守り続けた人物なので、超が着く堅物決定。


 それでもマリーナ女王様を14歳で失ったので結婚など諦め、哀れな従妹の帰る場所を守って来たのか、どっちか決めさせなければならない。


「お姉さまでしたら、今は北側の冒険者ギルドで、ケーキや焼肉食べ放題の旅に出ておられます。マリーナ様はクローリア家か大公夫人と御一緒だと思われます。お二方はとても御親密でいらっしゃいますので、男性が入り込める隙間があるかどうか?」


 夜会でも、ちょっと引き離せないぐらいの間柄だったので、その点だけは警告して置く。


 元大公も「レズが嫌いな男なんていません」的に、単行本の表紙では女同士で向き合って、目を逸らさない一途な状況を求める。


 ちなみにBL本の場合、男同士のカップルが読者側を向いて、ソッチの世界の中に誘っているかのような、エロい目付きの表紙が求められる。


 魔道具で覗きまでして、二人がヒーヒー言って、女にNTRされているのを楽しんだり、自家発して空打ちするのももったいないので、隣の部屋でメイドなどを使ってお楽しみしたりもする。


「夜会で56年ぶりに再会された時も、ご高齢の大公夫人が当時そのままのマリーナ様に駆け寄られて、足を骨折しても這いずって歩み寄る、まるで少女小説か絵物語のような光景を見せられ、多くの奥方様や令嬢様も涙を誘われたようで」


「そうであったか、あの二人が再会していたか」


 ぁゃしぃ関係なのは知っているようで、ショックを受けている様子はない。


「面倒を掛けてしまったな、侯爵家継承の件は考えておいて欲しい、まずは彼女に会ってみたいと思う、世話になった、子爵よ」


 死にに来た割には、若返ったので元気な感じで出て行こうとしたので、別の連絡事項も伝えておく。


「ああ、それと、お姉さまの妹はもう一人おります、新聖女の一人で、わたくしの契約竜デイジーと言います、水竜の娘で、我が家で一緒に育った姉妹です」


「なんと、妹がもう一人? それも水竜の娘」


 国の建国神話が、勇者と竜の花嫁なので、忌避される話ではない。


「ええ、その子でしたらまだ大公様の養子にもなっておらず、自由の身ですので、もし侯爵家を捨てて、お姉さまかマリーナ様と逃避行なさるのなら、押し付けて行けば良いかと存じます」


「そうか、次回にでも会ってみたい、話を通しておいてくれぬか」


「承りました」


 どちらかの女に面会するため、侯爵は足早に修道女会を出て行った。



たれかある」


「はっ」


 背後で護衛についていた暗部の者が答えた。


「侯爵様を追跡して、お姉さまの所に行くか、マリーナ・クローリア様をすぐに探すか、どちらを選ぶか判別して下さい」


「御意」


 話の内容は理解していたのか、そこそこの使い手達が侯爵を尾行して行った。



 王都北側冒険者ギルド


「あ~、このケーキ美味しい、イケリアも食べてみて」


「ええ、頂きます」


 修道女会で数人の殉死者とか、侯爵の自殺者まで出たとか全く知らないで、甘いホールケーキをツマミに酒飲んでいるダメ人間。


 侯爵も真面目系のカチコチ人間で、アホを見ると「君はいつも風のようだった、誰にも捕らわれることが無く、自由で」と歌いだすポエマーなのかもしれない。


 外見だけでも若い娘がこんなことをしていると、ギルドなのでナンパされたりからかわれたり、馬鹿にされたり絡まれるのが普通だが、乙女騎士団と暗部の者が外側を向いて取り囲んで飲み食いして、鬼のような顔して本気オーラ出しているのと、声掛けする前にニンジャに喉笛かっ切られて声も出せないまま殺される。


 やがてハリオデト侯爵の馬車が、家令や護衛を伴ってギルドにやって来た。


 マリーナの方は探す素振りも見せずに来たので、こちらが本命らしい。


「カテリーヌ、ここにいるのかい? カテリーヌ、出てきておくれっ」


 エトワール的には一番呼ばれたくない名前、馬鹿親が付けた本名を連呼する人物が来たので、ほっかむりしたり猫の皮三枚ぐらい重ね着をした。


 確かに代官を頼んだ従弟に連絡する前に死んだ振りしたが、棺前で殉死するとまでは思っていなかった。


「おい、誰探してるんだ? 俺が案内してやろうか?」


 路地裏にでも連れ込んで、強盗に及ぼうとしている屑が来たので、暗部の尾行者が吹き矢で即始末した。


「またどっかの忍軍かよ」


「あれ、聖女騎士団だろ」


 またお里が知れてしまったが、元は男の乙女騎士団の方である。


「ここよ、ベリミタス」


 余りに騒がしいので若返っている従弟を呼び寄せると、暗部の者がエトワールに耳打ちした。


「侯爵様は、エトワール様の後を追うため、棺の前で毒を飲み、殉死なさいました」


 流石の天然も顔を顰め、幼馴染には連絡しないで姿を消したのを後悔した。


「ああ、カテリーヌ、生きていたんだね、私はてっきり……」


 自分から殉死したとは言えなかったのか、言葉を濁してくれた相手に申し訳なくなる。


「ごめんなさい、早く姿を消してしまいたくて、貴方に連絡しなかったのは悪かったわ」


「いいんだ、君が生きていてくれたらそれだけで」


 ハグされてしまい、男性に第三種接近遭遇されたのは数十年ぶりなので赤面した。


「ヒューーヒューー」


 冒険者だけでなく、乙女騎士団なども冷やかして口笛など吹いている。


「還俗したそうだね、今なら言っても許されるだろうか? 私と結婚して欲しい」


「ええっ?」


 イケメン少年Aとでも、適当に性体験して済ます予定だったのが、幼馴染に求婚されてしまい、もう一度赤面。


 どうしたらよいのか分からないので、イケリアの方を向くと、とても力強く何度も頷いていたので、親友の決定に従ってこう答えた。


「あ、お受けします」


「やったあああっ!」


「おめでとうございますっ、姐さんっ」


 乙女騎士団の面々から、やたら威勢が良い祝福を受けたが、老聖女、老修道女からも拍手されて祝福された。


 前回の食べ歩き参加者のように、竿役が一人だけで、ラッコ鍋で発情させられ、男一人を奪い合ったり「女同士」にならないで済み、それも修道女になる前からの淡い恋を成立させた二人に、ギルドの冒険者までが祝福した。


「いよう、やったな、兄ちゃん姉ちゃん」


「めでてえなあ」


 イケリア的には、こんな良縁、それもド天然だと知った上での求婚。伏魔殿の悪魔ともタッグを組んだ悪行の数々まで知っている相手が求婚するなど、金輪際有り得ないので何度も頷き、絶対に断ったりしないよう誘導したので成立した。


 こうなるよう仕向けてくれた魔女に、イケリアもエトワールも感謝した。


 侯爵も、身軽になって逃避行するため、魔女かデイジーに家督を譲って死んだ振りする気になった。

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