おうちかえる、ここに住む
迎賓館、催し物大ホール
本日の催し物と言うか表彰は、魔王の石棺が置かれていた封印の間を長年閉じ、自分達も一緒に封印してそのまま亡くなり、死んでからも石棺の秘密を守り続けて、先日聖女による死者復活呪文で蘇った、35名ほどが当時の階級より昇爵されたり、報償を受け取る事となった。
「御来客の皆様、これからご紹介するのは、先代勇者が倒したとされる、先代魔王を封印の間で数百年封じていた先達の皆様であります、どうか拍手でお迎え下さい」
「おお、噂は本当であったか、魔王の亡骸は浄化されたと聞いたが?」
「封印していた者達もエトワールの力で蘇らせたか」
いつもの悪い顔した正教会の猊下とか、魔法帝国のオッサン達も、長年の懸案が解消してニッコリ。
「先日、養牛大王で牛魔王の亡骸は新聖女により浄化され、封印の石棺や封印の間は廃止されました、お喜びください。先達の皆様は新聖女様がお連れになった聖女達により復活、本日この善き日を迎えたのであります」
壇上にいる先達達は、一週間ぐらい前まで死んでいた一同なので、ここ数百年の出来事は知らないが、隔離されて学習させて箝口令も終わり、外に出して日常生活を送らせても良さそうなので解放された。
「おい、エトワール以外にも死者復活の呪文を唱えられる者はいるのか?」
「いえ、聞いたことがありません」
修道女会では、今日もデイジーを中心に、周辺から集めた修道女や見習い聖女に聖女を極めさせたり、適性やストレングスもある者は聖騎士に加工中。
孤児院村でテロリストキャンプ、別名「とらのあな」ではミズXと名乗っている元修道女長が、子供兵で暗殺者?を量産している。
暖かいミルクとパンを約束しているが、そんな物ではキンニクが付かないので、どこかの極真空手道場みたいに外国から来た練習生が「もう食べられない、お腹いっぱい」の状態でも、大山倍達館長が「おかわりしなさい」と命じて食べさせるぐらい、ちゃんこ鍋やタンパク質の摂取を命じられる。
ずっと空腹で貧しく、盗みやスリなどをしていた頃とは雲泥の差。
封印していた数百年前の人物の表彰が終わると、魔王を浄化した人物も当然呼ばれた。
「続きまして、魔王を浄化した新聖女をご紹介しなければなりません、そして…… これ、発表して良いのですか? はい、はあ……」
急に発言が不明瞭になり、袖にいる人物に確認をとる広報官。
「牛魔王をテイムし、従魔とした新聖女、ターニャ様であります、皆様拍手でお迎えください」
「な、なんだってーーーーっ(AA略)」
「話は聞いた、人類は滅亡する(AA略)」
魔法帝国のオッサンでも、キバヤシみたいな難しい顔して人類の滅亡を予言した。
もう公表しておかないと、旧伏魔殿の者も含め、魔女を暗殺しようとする者も多数いて、護衛のニンジャも含めて「フフフ、風下に立ったウヌの負けよ」「カゲヌイーーッ」が連日ある。
一緒にいる子牛が何者なのか周知しておかないと、毎日王都が火の海になる危険に晒されているので、ついに公式発表。
ついでに小国として舐められているので、最終兵器彼女がいるのも公表。
「モーーーーッ」
ママが表彰されるようなので、上機嫌のモーちゃんで牛魔王も壇上に登場。
「くそっ、あれが牛魔王っ」
「倶に天を戴かざる敵っ」
命を賭して封印した魔王が、のうのうと生きていて、子牛になってモフモフされている。
事前に説明は受けていたが、もちろん耐えられない者も出た。
「ホワイトブラストッ」
「ホーリージャベリンッ」
「開け地獄の門、悪しき者よ地の底へと帰れっ」
魔王暗殺を計画していた者達が魔女も巻き添えで、口々に牛魔王に白魔法や錬金術の奥義を披露したが、絶対防御呪文に到達する前に、魔王の魔法無効化によって全部寝言に変えられた。
「モーーー?」
牛魔王的には「やるならやんよ、表出な、ぼてくりこかしちゃる」ぐらいのステータス。
「やめなさいっ、モーちゃん騒がないの」
「モーーーー↓」
抱っこして貰っている魔女に、ケツをぶん殴られて情けない声を出すモーちゃん。
「完全調伏……」
鑑定眼を持つ者が見ると、やはり完全テイム済み。「竜騎士村ターニャママの従魔の子牛」と表記され、レベル1だがママを守る時だけ括弧内のステータスに戻る。
従魔の封印の首輪と、ロープでお散歩させられているのを見た先達達も、信じられない物を見せられて、牛魔王のケツをシバける人類がいるので驚いた。
「あれが今代の勇者か?」
「いや、その妹らしい」
来客も先達も周囲の人物全員、少女漫画的に白目剥いたり、現場猫的に白目剥いた。
魔女は竜国との和平にも貢献したので、ラブラブな新王から表彰と同時に、気前よく子爵として貴族位を開始させ、領地も良い所を握ってやった。
「聖女よ、よくやってくれた。魔王を浄化しテイム、我も魔王の封印の間より救い出してくれて、一人の人間としても感謝している。さらに竜国との和平の交渉、軍事同盟に魔の森の開発許可、感謝してもしきれない、是非婚姻の申し込みも受けて欲しい」
祖母をぶっ殺されて、自分の野望も崩壊、それでもこの魔女なら天への道を開いてくれて、浄土で王道楽土を出現させてくれると信じている新王。
「一修道女で聖女として、既に一等級の聖女と言う過分な立場を頂いております。これ以上の身分は聖女としての研鑽の妨げになるかと思われます。お気持ちだけ頂戴して、領地などは金銭として賜り、貧しい者へ分配したいと思います」
などと固辞されてしまった。結婚の申し込みも受けて貰えない哀れな新王。
来客も国内関係者も「喜ばねーのかよ」とは思ったが、新王の妻の座で王妃の座まで蹴った女なので、何か修道女的で聖女的な法悦を求めているのだと思って引いた。
姉とか長老とか関係者には知られている、「お兄ちゃんダイスキ」で「お兄ちゃんの愛だけが欲しいのぉ~~」な奴なのはごく一部で有名。
固辞しても三度断ると失礼に当たるので、結局叙爵された魔女。領地と結婚は断れたが、新王の妻として迎えられる予定の地位は押し付けられた。
表彰された先達達は、実家が残っていると昇爵もしているのでそいつら大喜び。本家が無くなっていても傍流でも親戚でも英雄は大歓迎。
英雄の帰還で連日お帰りなさいパーティーを実施して、
「オマエラ、今も生きてられて、デカイ面して生活してるの誰のおかげだ?」と宣伝。
当時の勇者パーティーの聖人聖女や、後方部隊の錬金術師もいて、そっちは大英雄なので、還俗して貰って上位の家と婚姻関係結んでウハウハ。
俺を残して先に行け、と言って十年経過した英雄とか、魔王が残した瘴気を浄化するのに二十年掛かった聖女が目覚めたのより、数百年余分に掛かってしまったが英雄達は家に帰った。
他にも次男と三男とグリーンにダインは、修道士会の野望で王太子本人の願望を砕いた?ので十字勲章貰って騎士爵。
他にも駐屯地を回って治療したり、三男とダインは駐屯地村まで回ったので感謝状なども出る。
一応牛魔王に操られていた設定になっているが、野望を砕かれた新王本人から渡す訳にも行かないのと、平民で貢献度も低いので、別室で係官からの授与になった。
「我が闇の覇道に敵なし」
「姉ちゃん(姉竜)に褒めて貰ってうれしいだって」
三男はご要望通り、片翼の姉竜に褒めて貰ってナデナデもして貰い、金貨でお小遣いまで貰って超ご満悦になったので、ダインにも本心がバレている。
「これで俺らも騎士爵か、竜の巣でも貰えたけど、あっちでは前科者なんだけどな」
「ガルルルルッ」
「何で噛むんだよ? 勲章貰うのもダメなのかよ」
「ガルルルルルルッ」
独占できないで、村でも結婚希望者多数なのが許せないらしい。
それ以外にも、土竜を使役して周囲の村で仮設住宅などを建設させたとされる、貧相で背が小さく幸薄そうな天使?の行方も探されていたが、家で巨大な土竜を飼って?いて、土竜の幼竜が二匹もいる家は一軒しかないのですぐにばれる。
王城奥の院
「御使い様、各国の要求や申請を纏めました、宜しければ本日のご予定として解決してやって下さいませ」
今回も「下級天使が一晩でやってくれました」なので、昨日泣き叫んでいた天変地異とか水害が起こった所から来た、使節団の要求を纏めて来たペガサス。
ホログラフの地図で示されているが、遠距離過ぎて飛んで行っても何日かかるか分からない。
「え~と、こんな遠くですけど、行くのに何日かかりますか?」
「わたくしが空間転移でお連れしますので一瞬です。天使の武官たちも空間転移します」
「はあ……」
余りにも常識外れ過ぎて言葉を失った聖女頭。裏面にある空間転移局の仕事なので、ほぼ魔法と言うか本当に魔法。
「まず最初は天使達が作業をしますので、ご見学ください」
言った側から空間ゲートが開いて、下級天使も付いて来た。
その場にいて警護していた聖女騎士団と聖女護衛隊の暗部、修道院長、魔女もついて行った。
災害地域
転移先では洪水の跡も生々しく、川の氾濫の土砂で家が流され、泥の山ができてしまい撤去するのにどれだけかかるか分からない。
その泥の山から人間の手足が生えていて、もう死んでいるが遺体だけでも救い出そうと、家族らしき者が泣きながら掘り返している。
行方不明者多数で、海まで流されたか川底で埋まっているのか、人間の手で救出するなど不可能。
ここも盾の勇者とかこのすばと同じ「なろう型標準的コピー城砦、平面世界設計の城砦3型」ぐらいの建築物で、川の支流をど真ん中に通して、運河などを張り巡らして物資を運搬できるようしていたが、支流を止める川の水門で堰を破るほどの大洪水で決壊して災害になった。
「なんて酷い……」
修道女会の純粋培養で育ったので、ここまで酷い災害現場は見た事が無く、せいぜい救急医療室に運び込まれた酷い怪我人たちを見た程度。
鋼鉄の肉体と鋼の心に変えられたので、失神したり泣き出したりしないが、自分の実力を知らないので何もできない。
「聖女騎士団、救助開始っ、無辜の住民を救えっ」
「ヤーーーーッ」
腕力と聖騎士としての法力はあるが、最早人力では救えないレベルの災害。
「て、天使様だ」
「お救いに来て下さったのか?」
「どうか、どうかお救い下さい、埋まっている子を外に出してやって下さいませ」
遠巻きに見ている人達から頭を下げられ、声も掛けられずにいると、天使の武官が整列して、責任者らしき者が命令した。
「それでは始めさせていただきます。災害状況解除、30分。要救護者の救出、復活作業、負傷者の救護、川底の浚渫、堤防の建設、始めっ」
「ヤーーーッ」
自衛隊員みたいな天使が50人ほど展開し、まるで時間を巻き戻すようにして泥の山を空中に上げて、埋まっていた人物を外に出し、同時に復活魔法で元に戻し、破損が酷すぎる者は新たな体をプリントアウトしてやる。
川の浚渫に行った者は、川底の土砂を掘り返し人がいれば生き返らせてやり、真空状態で乾燥させ、何かの溶液を混ぜてコンクリートブロック状になると堤防として積み上げていく。
ゼロメートル地帯を解消し、川底を5メートルほど掘り下げ、堤防も5メートル以上積む。
死体の山も全部生き返らせ、天命が尽きているとか、そんなもん関係なしに全員復活。
魂まで管理している平面世界なので、偽造の魂を入れてあるNPCの生死など自由自在。
前の住宅よりましな仮設住宅を大量に建設し、土竜どころじゃない建築能力で法隆寺でも金閣寺でも一瞬で建築。
給水所と食料の配給所を出現させ、付属品の生体アンドロイドが配給開始。公民館でも風呂場でも教会でも、以前の航空地図に合わせて再建する。
「奇跡だ……」
「ああ、ありがたや、ありがたや」
川の動きや土の動きまで平面世界で管理している訳ではないので、自分で起こした災害を救っているマッチポンプではない。
長い年月では土まで流体で土地は動く、大河の流れや大雨など制御できず、何かの影響で雨が溜まると自然災害は起こる。
「ああっ、坊やっ、天使様が生き返らせてくれたんだよっ、もう大丈夫だっ」
「死んだ子まで生き返らせて下さるとは、神に感謝をっ」
神話の中の光景を見せつけられ、信心の心など無かった者まで神と天使を敬うようになった。
これだけの物を見せられると、幼女戦記の方のターニャ・デグレチャフでも即シスターに転職する。
「ああ、何と言う出来事、まるで神話の世界……」
第五王女も泣き出して、アホ顔と言うかアヘ顔で、目が上空の出来事に釘付けになり、泥や虫が入るぐらい口を開け広げて、唖然として奇跡の光景を目に焼き付ける。
「これが神の国」
ついに浄土で神の国の一端を見てしまい、元王妃も泣きながら跪き、目を閉じようともせず、震えながら神話の出来事を目に焼き付けようとした。
神聖騎士を中心に放射状に救いの手が伸びて行き、数が足りないので下級天使達が自分と同一存在を呼び、転移ゲートを開いて数千柱降下。
その下では天使の羽根が舞い踊り聖遺物として回収され、黄金に光る風が吹きすさび、怪我したり病気の者は誰もいなくなり、病老死苦の全てが消え失せ、この地域にだけはあらゆる救いが生み出された。
遥か下流や海まで流された死体も回収され、違う時期に死んだ者まで生き返ったので多少問題になったがキニシナイ。
「30分、終了、撤収」
「ヤーーーッ」
「大体このような感じになります、如何でしたでしょうか?」
ペガサスに話し掛けられたが、御使いで聖女頭も奇跡を見せられ跪いてしまい、神と天使に祈りを捧げていた。
「我が心は天と共にありっ、神を恐れ敬う者なりっ、この身は神の遣いに従いっ、精霊を敬い御心に従順なる僕たらんっ」
自分が神の遣いなのを忘れ、全部自分の力と徳によって、天使を使役して周囲を救ったのだが、神聖騎士本人が南無阿弥陀仏的な聖句を唱えていた。
「いえ、これらは貴方様の行った救いで奇跡、どうぞお立ち下さい」
中々立ち上がらないので、ペガサスが制服の襟を噛んで、引き上げて立たせた。
「ああっ、他人の地位を羨むなど、修道女にはあってはならないこと。でも、私は貴方の地位が羨ましいっ、それだけの力があれば、どれだけの人々を救うことが出来るかっ?」
そこで何か修道院長が発狂して、膝を着いて座り込んで、顔を覆って泣き始めた。
(乙女か……)
「わたくしも同じです、私にもこれほどの救いの力があればっ」
泣いている元王妃と第五王女まで参加して、左右から修道院長を抱きしめた。
(なんぞ、これ?)
魔女から見ても、修道院長は決まり事とか制約が厳しく、少々ウザイので、こいつもガッツリ沼に嵌めてやる事にした。
「お姉さま、聖女頭様と修道院長様に大きな差は無いのですよ」
座り込んで泣いている修道院長の肩に、後ろからそっと手を添えてやり、いつもの悪い笑顔で囁いてやる。
「いいえ、慰めの言葉などいりませんっ、このような大きな救いの力、私には無いのですからっ、おおっ」
「お姉さまは修道女長様と「正義を成して悪を討って来た(各種処刑)」だけ、そのほんの少しの違いだけで、業に差があっただけなのです。表の綺麗な道を歩かれた聖女頭様にはその穢れが無かったので、すぐに神聖騎士となられたのです」
魔女の鑑定眼でスパウター?で、ゴーストもそう囁いていた。
「そ、そうなのですか?」
「ええ、ですので、その穢れを落とす旅に出て見られては如何でしょうか? 先日出立された王族の方や、新たに聖女や聖騎士となった方たちは「巡礼の旅」と呼んでいるようです」
何かさっきまで号泣していた修道院長は、ピッタリ泣き止んでブルブル震え始めた。
「たった一人の力で徒手空拳で戦い、ある時は従者や民衆と共に蜂起し、野盗や魔獣を討ち、病に侵された村では独力で病を打ち払い、悪徳領主の行いを正し(死刑)、街を支配しているやくざ者を追い出し(この世から)、高利貸しや奴隷売買業者の魔の手から民を救う。そうするだけでお姉さまの業は落ち、清潔な手と曇り無き眼になった時、神の恩寵は舞い降りるのです(ドヤァ)」
目の周辺に斜線が一杯入った、主人公チームのヒロインがやってはいけない顔で言い切る。
進撃の巨人のファイナルシーズンみたいな物凄い悪い顔で囁いてやると、修道院長はガッツリ沼に嵌められた。
魂のゴングが鳴って、猪木ボンバイエのテーマとかジャンボ鶴田のローリングドリーマーのテーマが、頭の中で無限ループしたかのように、ヒンズースクワットを開始して立ち上がった。
「ああ、神よ、お導き下さい。我に巡礼の旅と、あらゆる艱難辛苦をお授け下さいっ」
元々アッチの世界の住人だったので、ガッツリスイッチ入っちゃってON側に固定。
有らぬ方向を見ながら、猫みたいに突然何もない空間を凝視する感じで、瞳孔開いちゃってる狂信者の目でアッチの世界を見てしまい、目の前の出来事は何も見えてなくて「神の国」とか「浄土」とか、見えてはイケナイ系統の物を凝視。
元の国に戻ると多分、修道女会で荷物を預け、皮鎧とか剣や着替えだけの軽装備で出て行こうとする。
「御使い様、この地に祝福をお与え下さい」
「え? ええ」
ペガサスに指示されると魔法行使バンク画面になり、きゃるーんと回転したり、胸の前でハート型を作ってラヴ注入すると、汚泥や下水交じりの臭い荒れ地が清浄な場所に戻り、花が咲いて草木が育ち始めた。
50年ぐらい前にエトワールが行使した結界呪文と同じく、人狼であろうがヴァンパイアであろうが吸ケツ鬼でも、悪しき者は浄化されて滅びた。
高利貸しとか奴隷商人まで浄化され、ピキーンと目覚めて地下牢の奴隷を全員解放して泣いて謝罪し、借金の証文を全部破いて暖炉に放り込み、クリスマスキャロルで過去現在未来の夢を見せられたスクルージぐらい改心した。
王城で宮廷闘争していた伏魔殿の住人まで改心させられ、毒婦とか悪魔とか魔物とか、色々な呼び名を持っていた連中も浄化された。
でも爆心地でグラウンドゼロにいた魔女は、異常耐性が強すぎて改心しなかった。
最後の仕上げに町の広場に、幻のような上級天使が出現して、空には虹の橋が掛かり、どこかから鐘の音が聞こえ聖歌が合唱され、何か説法と言うか訓示?を残して行った。
『この街は天空の騎士と天使により浄化され救われました。言葉の混乱や原罪による神罰の数々からも赦され、痛みや苦痛による支払いを行わなくても良い浄土、神の国となったのです』
同じ言葉を話しながら、絶対に分かり合えない地獄で煉獄から救われ、この世である地獄の一丁目とか二丁目の煉獄で暮らし、苦痛によってあの世の勘定を支払う責めを済ませ、赦された地となったこの場所。
王太子で新王が求めてやまなかった浄土、王道楽土がこの場に出現した。
もしかすると大洪水と言う苦痛を最後として、その支払いを終えたのかも知れない。
『痛みと苦しみの時代は終わりました。隣人同士で憎み合い、家族の中でも信じあう事すらできない呪いは解かれ、話し合い愛し合うことが出来るようになったのです』
家族でも夫婦でも騙し合い、相手を奴隷的労働で使役する事だけを考えて、妻は調理人で清掃員で性奴隷か産む機械として扱ったり、夫は稼がせるだけの奴隷で下僕、子供を産むのは愛する既婚者やホストと言う地獄が終わった。
『始まりの時と同じ、千年を生きる者も多く出るでしょう、知恵の実のような害毒を捨てて生き、下らない欲や妬みによって支配された時代は終わり、草木に支配されて種を増やして地に満ちるための奴隷として生きる時も終わりました』
農耕によって人口は増えたが、その大半が草木の奴隷で、穀物や野菜の数を増やして地面をできるだけ多く支配して、冬を超える種も大量に残すための下僕。
種や果実を食べることは許されるが、翌年にはまた種を植えて水を用意させられ、土に養分を追加させられ、ずっと穀物が地に満ちる作業を繰り返し、やめると食べるための種が無く餓死、死ぬまで許されることはない。
平面世界にある遺伝子操作の極致を極めた種は、制限解除によって春に植えた種が夏に実り、秋に植えた穀物が冬の前にも実るようになった。
病害虫は付かず害虫の方が死に、人類の方はその毒に耐性を持たされている。
水撒きすぎて肥料やり過ぎて、緑の革命失敗でで塩害が出ようとも無傷。海水でも実る麦や米なので塩害程度余裕。
大麦にも麦角アルカロイドはできず、米や麦の花の中にも害虫は卵を産めない。
『さあ、天への道も開いてあげましょう、これで空に昇って羽ばたくことも可能になりました。貴方達は自由なのです』
人間達は天を飛べないガルビオン的なシグマバリアーが撤去され、オーガスみたいな高度150メートルの飛行制限も解除。
竜や鳥たちのような生物以外は飛べなかった制限がなくなり、簡単な生活魔法程度で空の移動も許されるようになった場所。
やがて説法で訓示を終えた上級天使は消えて行った。
聖女騎士団や第五王女、暗部の者まで、まるで子供のように声を出して泣き、「おうちかえる」ではなく「ここに住む」病を発病するものまで出た。
「ああ、ここが神の国、浄土で王道楽土」
「もし許されるならこの地で暮らしたい」
言語の混乱が解除された場所なので、言葉は通じるように処理済み、住もうと思えば可能。
金貨銀貨が違うので両替してくるか、古代金貨で平面世界のハードカレンシーなら使える。
(うわあ……)
魔女はアッチの世界の住人では無いので、「おうちかえる」病を発症した。
「面白い」「続きが気になる」と思われましたら、是非ブックマーク登録をお願いします。
画面下に評価がありますので、評価して頂けるとポイントが入ります。
ランキングが上がる、感想を頂けるなど、とても励みになりますので、よろしくお願いします。




