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モーちゃん爆誕

 竜の巣、人間側控室


「ついに和平が成った……」


 エイシェントドラゴンと各種契約を済ませ、和平条約、軍事同盟、貿易の独占、魔の森の開発、古代文明の遺物の調査発掘持ち帰り、魔の森の砦か商業都市への転移ゲート開設など、夢のような契約が成って本当に宝の山を持ち帰ることが出来るので、放心している先王。


「ほんに、素晴らしい成果だ」


 先王だけでなく元大公も涙ぐんで、今回の成果に感動した。


 帰ってから神聖騎士がいると分かっても色褪せるような成果ではなく、今後の開発次第では領土は数倍になり、成人した竜騎士団の火竜飛竜を解放する程度の譲歩で済み、それも復帰した老竜騎士がテイムすれば魔の森で一緒に働ける。


 魔女からも強すぎる現竜騎士団への脅威もちらつかせられたので、解散と言わずとも家畜扱いと兵器扱いの解除さえすれば存続も許され、竜の尊厳が守られるなら新たに生まれ変われる。


「良かった、本当に来てよかった」


 新領地となる魔の森を開発できるのは、クローリア家で竜騎士団でなければ不可能なので、自動的に新天地の開発権はトリーが独り占め。


 現侯爵は今回の様々な武勲により、公爵に昇爵されるのは確実。


 勇者と養父家から連名で献上される国宝の数々からも後押しできるので、取り潰された各家の領地が貰える。


 孫で現竜騎士団長と勇者、竜騎士団の平民騎士は、個人的な武功などで新たな貴族として叙爵される。


 先王と元大公との良好な関係からも、今回の竜国との和平や同盟の功績からも、トリーには仮の辺境伯や開発省主管としての叙爵が内示されている。


「新領地で魔の森は其方に任せることになろう。竜と高レベルの竜騎士でなければ魔獣には勝てぬ。飛竜陸戦隊となった飼育員たちも、数日前なら勇者を名乗れたほどの使い手。きっと開拓には役立とう」

「は、有難き幸せ」


 先王からの許可も下りて、元大公も目の色が変わっていた。


「はて? 魔の森は其方に任せるとして、古代エルフ国の超文明の遺産、錬金術師や魔法のエンチャントを研究しておる学者達が黙っておらんぞ? 諸外国からも研究者が殺到してくる」


 飛空戦に鉄道、建設機械、架橋技術、河川の浚渫機械、作業用巨大ストーンゴーレム。


 全て喉から手が出るほど欲しかった技術が、これから自国だけで独占でき、各技術を売ることもできて、工事を請け負うことまで出来る。


 勇者と番の白竜は多数の大型魔石を持っているようなので、それらを供出させて地位や領地なり、金を与えておけば全て国宝として取り上げるのまで可能。


 魔女は竜国の聖竜騎士として、国への鉄道敷設権まで持っているので、転移ゲートや天候に頼らないで、土竜が鉄路さえ敷けば巨大施設を運送するのまで可能。


「竜国には伝説の飛空船まであると言うではないか? もしそのような遺物まで復活させることが出来れば、我が国の発展は約束されたような物だ」


 先王の夢まで広がリングで、三人とも泣いてしまい、護衛に残っている六名ほどの者も貰い泣き。



 国に帰ると世界最強の竜騎士団を取り上げようと躍起になっている連中がいるので、謀反の試みだとか竜国と通じて国を転覆させようとしているなどなど、あらゆる因縁を付けられて失脚させられるが、その対策も魔女から提示されている。


「まさか竜騎士団を解散してしまい、駐屯地と古くなった施設丸ごと、空にした竜舎だけ儂の息子に明け渡す手段があるとは思いつかなんだ、ははは」


 今回の和平条約と軍事同盟の文言に、成人した竜の解放が含まれているため、竜舎の檻を全部撤去するので、テイムしていない竜は出て行くことも可能。


 ジジイ達やゴッドフィンガーがテイムしてしまうが、番がいない者は竜の巣内や単独で生活している火竜飛竜を探して彷徨うことになる。


 残りは幼竜舎にいるカーチャの兄と姉の、まだ成人していない竜だけが残り、そこも条約の文言通り檻の扉は撤去しておかなければならないので、カーチャが竜語で呼びかければ魔の森でもどこにでも行ける。


 大公家から公爵家になって領地を多少減らされる息子には事情を話すが、何も知らないで竜騎士団を乗っ取ると、大金を投じて政治力を駆使して、あらゆるコネと讒言を使ってクローリア家を潰したとしても、手に入るのはもぬけの殻になった維持費だけが莫大な駐屯地のみ。


 肝心の中身である竜達は自由に飛んで行き、レベルを上げた竜騎士達は、自分に与えられた領地を見に行って引退している。


 領地経営を任せられる代官が見つかるか、質が悪い友人に持ち逃げされないようになれば、参集を呼びかけて魔の森で魔獣を倒す日々を送らせ、大金を稼ぐ冒険者にも新竜騎士団として旗揚げすることもできる。


 動くシャーウッドの森をメルカッツ司令トリーに任せ、同盟りゅうきしだんの最も濃いエッセンスだけを受け継がせた艦隊?を遊兵として扱える。


 ローエングラム王朝?には今五つほど及ばないが、魔の森の要塞か砦でイゼルローン政庁でも開設すれば勝つる。


「今も竜騎士団には、飼育員になればレベルを上げて貰えて、騎士爵にもなれると思っておる冒険者や酪農家が殺到しておりましてな。屋敷の方にも勇者の家来にと志願しておる者も多数。二人ほど雇い入れましたが捌ききれぬほどおります。有能な者は採用して魔の森に連れて行き、使えない者は竜騎士団に残す、これで如何でしょう?」


 力士が勇者に負けて以降、従者として大公家からクローリア家に転籍したのは話してあるので、大した問題にはなっていない。


「はは、貴族共の子息も竜騎士団入団を願っておる者も多いぞ? 魔国先遣隊に勝ったとなればさらに増えよう。そちらにもふみが行っておるだろうが、大公家に取りなして貰おうとする志願者の家族からの手紙が多くて困っておるのだ」


 騎士学校卒業予定者や、魔法師団に行けるほどの魔力も無い者は騎士団に入るが、余程体力とガタイが良くなければ弱兵の腰掛け。


 貴族なので士官にして貰えるかもしれないが、先任の伍長や十長が全て取り仕切っているので言いなり。


 竜騎士団に行けば凄まじいレベル上げをして貰え、貴族家の次男三男でも新たな貴族家として叙爵されるのもあり得る。


 新卒で内定を貰おうと足掻いている貴族の三男四男がいて、騎士団にも魔法師団にも受からなかった者が、公務員試験?や自衛隊?や警察の幹部試験を浪人しながら受験している。



「条文にはドラゴニュートが指揮する一団も送り込まれるとある。王都や都市で職にあぶれている者達を働かせるとあるが、そこまでの弱兵、どうやって魔の森で動かすのか?」

「まずは城壁で囲って、その中で農奴として働かせるのでは?」


 実際には、一般人でゴミクズが送り込まれる終末収容所で冒険者ギルドができて、そこから貸し出し用の安物の剣と盾だけ持たされて出陣させられる馬鹿が多数。


 よく故障して使い物にならない、穂先が抜けやすくて敵に刺さったままになる槍、掴みや拵えが壊れて中身が抜けてしまう簡単に折れる剣。すぐに割れてしまう盾、多少補修してあるが大穴が開いていて、前の所有者が死んでいると思われる皮鎧や鎖帷子。


 入り口に「ここを訪れた者は一切の希望を捨てよ」とか「働けば楽になれる」などのスローガンが書いてある系統の収容所。


 ついでに「欲しがりません勝つまでは」とか東側で共産党の系列のスローガンやポスターなどもあり、労働ノルマや狩って来る魔物のノルマもある地獄。


 トリーには存在すら知られない所に置かれるか、馬鹿共を始末するのに同意が得られれば、竜の空爆などの援助を受けられるかもしれない。



「まあ、まずは祝杯など上げようではないか? 我が国に永遠の繁栄を」

「ああ、素晴らしい日であった」

「永遠の繁栄を」


 会議で話し合いは深夜にまで及んだので、飲食も忘れて話し合ったため、脳の糖分不足を補うために乾杯。


 ツマミなども食べて飲んで、それでも疲れ果てていたので三人共倒れるように眠った。


 一仕事やり遂げたような充実感に包まれ、幸せな夢など沢山見ながら眠った。



 竜の巣側控室


『あれほど譲歩してやっても良かったのか? 開発資金などもこちら持ちとはいささかやり過ぎなのでは?』

『ええ、使い道がない古代金貨や、樽の中で置き場所をとって遊んでいるだけの金貨を動かすだけです。貸し出しなのですぐ帰ってきます』


 金を動かして血流を増やし、銀行的に預かっている金の九割を貸出し、それを証券化してまた九割貸し出し、更に九割貸すのが現在の銀行の錬金術で信用創造。


 実際にそんな金は存在しないので、返却や引き出しを要求すれば「資金が必要なら貸し出しもできます」と馬鹿な事を言い始めたり、それでも引き出すと銀行団で金を集めて融通して返金する。


 誰かが銀行で借金をして初めて通貨が産まれ、リスクを取って利子を返し続ける者がいて初めて金が生きる。



 どこかの弱い国にカツアゲしに行くか、因縁を付けて焼き畑農業で滅ぼしてしまい、残骸から略奪するぐらいしか入金制度がない竜の巣。


 でも日用品を人間の国から買って来るぐらいしか、使い道も投資先も無いので死に金。


 土地などの担保主義だけの日本では金も何も発生せず、それも国道沿いの優良な角地を持っている者に車の販売事業を持ち掛け、過剰在庫で飛ばして倒産させ、担保として握っていた優良な土地を車屋が盗み取るような、焼き畑農業しかやっていない国では何も発展しない。


 リスクを取って借金をして、酒屋や商店をやっていた人物がコンビニを開始しても、あらゆる仕入れが契約で縛られていて、コンビニのフランチャイズ側社員が仕入れを決定するので、値引き販売すら許されずに泣きながら弁当やクリスマスケーキや恵方巻を売り続けなければならない。


 商品を売り続けているフランチャイズは決して損をせず、大量廃棄になるのも構わず、経営者は何年も売れ残り弁当しか食えない生活でも、休日が存在せず息子が自殺しても、葬式の日でも休むのは許さず営業させ、無理矢理仕入れさせて店主が倒れると倒産させて飛ばす。


 土地を持っていた所からは土地を奪い、観光地や商店が少ない所で大成功した店には、ドミナント出店と言う卑怯過ぎる手段で真横に直営店を出店し、成功している店を塞ぐ位置に出店して古い個人商店を破産させて、土地でも違約金でもあらゆるものを奪い取る。


 韓国的に40歳定年後には、チキン屋を開いて成功しなければ破産して餓死、就職できなければ借金してでもチキン屋を開いて成功しなければ餓死するヘル朝鮮。


 喫茶店でも、ラーメン屋しか、と言う「でもしか」出店をして九割が失敗して破産する日本。


 馬鹿みたいな名前の焼きたての高級?パン屋か、餃子持ち帰り店、タピオカミルクティーとかホワイトクリームタイ焼きなど、引き際を知らないと出店数分の借入金や運営費用が雪だるま式に負債になって死ぬ案件。


 そんな未来の知識を人間如きが持っているはずがないのに、平面世界側のキャラなのか、支配されたか下級天使にウィスパードされたり、夢枕に立たれて統合失調症的に耳元でイマジナリーフレンズに囁かれたのか、人類が知り得ない情報で知識を扱っている魔女。



『これからは竜の巣が広がって、火竜山脈側からも魔の森へ侵攻。働かずに争って殴り合ってばかりの若い者も、魔獣の死骸を集めて冒険者ギルドに持ち込めば、そんな金額すぐに回収できますし、効率よく稼ぐ手段を覚えた者が次世代の四天王や神竜になるのです』

『そのように上手く行くか?』


 殴り合って殺し合って地位を決めていた伝統を崩してまで、新しい価値観やドクトリンに乗り換えたくはない長老。



『お金を使いたい、新しい物や便利な魔道具が欲しい若い者が、親からお小遣いを貰って狩りをしに行く。或いは狩りをしてきたからお駄賃に金貨を貰う。貰った所で欲しい物も無いので粋がって殴り合って地位を決める。そんな不毛な時代が少し動くのです、どうかご期待ください』


 現金を使って、人間が持ち込んだ便利で面白い娯楽に金を使ってみたり、メスに奉仕したり面白い遊びを紹介したり、美味しい物を食べさせたり、プレゼントで装飾品を送ったり、強くて使える奴なんだと証明して、そこから番になって子供をなす。


 今までのように暴力的で家庭を持つには一切相応しくない、全てが喧嘩と暴力で決定していた時代から、「知力」と言うステータスが物をいう時代。



『色々な手続き、手順を踏んだ行動、予定を組んだ後でも臨機応変に変更できる自由度。雌を楽しませることが出来た者が番となって子供を成す。政治的にも必要なことが出来た者こそが子供を残していける。今までのような力だけ、先程処分された何も先が見通せない、暴力で全てを決する馬鹿の時代は終わったのです』


 長老にも、この者が言っている意味は分かったが、何かが失われてしまうのを感じ、口先だけ上手い人物が立身出世する時代が来たようで嫌悪する。


『頭が良く口が上手いと言う事は、今も大勢いる嘘で誤魔化すのも上手い奴と言う事だ。手下の手柄を奪って盗み、何をするにも上手く行ったら自分の手柄、失敗すれば部下の責任。そんな世界になってしまう』

『今と何が違うのです? あらゆる汚い事は手下にやらせ、自分は格好だけつけて上手く行ったのは自分のお陰と言う腐った頭領。そうじゃなかったかしらって一人しか見た事がありません』


 手柄を立てた部下は褒めて出世させ、何なら自分の手柄まで部下に与えてしまう。そうやってツッパリ全国制覇して、今も尊敬されているのは最近では暗黒竜一人しかいない。


 誰もが部下の手柄を奪ってしまい、自分の指示でこうなったんだと、後付けで声高に叫んで手下を騙らせてきた者ばかり。


 後になって口数も少ない、朴訥とした竜の手柄だと分かっても時既にお寿司。


『奴を手放したのは竜の巣全体の損失だった。一旦間引かれても、運命によって導かれた者は、巣に戻って貰い強い子を成すよう手配したい』

『ええ、よろしくお願いします』


 魔女が望んでいるのは、暗黒竜ダリーシュの復権。


 間引かれても生きている「ブタ」ではなく、父を殺して食べて力を奪った孝行息子だとする名誉回復。そしてその番の座に自分を入れること。


 長老も目の前にいる逸材を竜の側に付けられるのなら、実力も持ち合わせている暗黒竜一人の市民権や現暗黒竜の座など、反対派を黙らせるなどどうとでもできる。


 魔国撃退の戦功や、修道士会の様々な悪行愚行に立ち向かった善行、下級天使による都市消滅から人間に飼われている飛竜を救った竜の巣への貢献は既にある。


 二等市民扱いだったのを勲章など与えてみて上級国民としたが、ふいっと姿を消してしまい、勝手気ままで自由が利く人間の都市に戻って、番も作らず多数の人間と子作りをして、竜の巣にもレディースの中から少数の父無し子を作り、掟破りをして年寄りを怒らせ、間引かれた幼竜も何処かに持ち去った。


 間引いたのは竜の巣に置いて行った子の方かも知れない。


『奴に地位を与えるなり名誉回復するのは可能なのだが、お主を竜の巣に迎えて市民とするには抵抗が多すぎる。何か手段を思いつかぬか?』


 暗黒竜本人は遺伝的には竜なので、純血派も黙らせるのは可能だが、この悪辣な娘を竜化させても巣に迎えるには困難が多い。


 牛魔王をテイムしている人間なのだと、現在のパワーバランスを一切理解できない無能が多すぎて、宗教的に褒めて貰いたい馬鹿が暗殺など試みると、牛魔王が竜の巣を襲うのにも気付けない、価値観や所有権、立場認識すらできない障害持ち。


 きつく言い渡しているが、それでも竜原理主義的宗教家は、声高に魔女で人間の排斥を叫び続けているので殺すしかない。


 長老になった人物なら、竜とは人類から派生させた遺伝子改造生物で、素体である亜人に翼を付けて、恐竜や鳥の遺伝子も導入して強い体を作成したキメラなのだと知れるが、普通の竜は自分達が神に選ばれた、強く尊い生物として生まれたのだと思い込んでいる。


 デイジーの方が巣への復帰を願っているのなら比較的簡単だが、あちらの方は竜の試練などに少々参加しただけで、巣での地位など何の興味も持っていない模様。



『はあ、わたくしを巣に入れるには、竜転生の儀しか無いと思われます』

『やはりそれか』


 何処かの祠で始まりの竜が誕生したと伝えられている神儀。


 弱く寿命も短い人間が、神話の世界での手柄の褒美として、強き体と高い知能、長い寿命を神に願った時、竜となって空に羽ばたいたとされる儀式。


 もう記録も何も残っておらず、神の奇跡でのみ起こると言われる儀式。


 天竜騎士の地位になれば起こるのだと言う者もあれば、神話戦争での手柄を得なければ、神と直接対話することも叶わず、何事かを成して初めて得られる褒美とも言われる。


 長老からすれば竜化の術と何ら変わりはないが、ネームバリューや格式の違いが求められる。


『お主からも竜転生の儀を調べてみてくれ、人間国には記録が残っておるかも知れん。それまでに宗教家や竜原理主義者共は「騙らせておく」、くれぐれも気を付けてくれ』

『はい』


 聖竜騎士になった魔女は殺しても死なないし、毒殺など暗殺はほぼ無効。


 なのでお気に入りの子竜幼竜や人間の妹を警告で殺したりすると、やらかしてしまった馬鹿への報復で「モーちゃんが怒って勝手にやったんです」と言って、巨大な牛魔王が竜の巣の城壁を、神具と呼ばれる大斧で壊して攻撃開始。


 七色の魔法で無力な住民の半分ほどぶっ殺して、起きていてどうにかレジストできた住民が逃げ出し、ネームドの竜達が全力で防戦。


 巣の中を焦土にして戦っている間に、使者か長老本人が土下座謝罪して泣いて頼んで「もうおやめなさい、モーちゃん」と言って貰うまで潰される。


 そこまで叩き潰されると竜の巣としては終わりで、少ない集落の中で生き残りの竜が卵を産んで、間引かないで数十世代経たないと、人口が足りないので文化的な生活は失われ、野生の竜の生活が続く。



 翌朝、城壁関所前


 先王や元大公は、復帰した竜騎士団の連中が帰還するのも待てず、盗んだ宝の山を持ち帰るのに、逃げるが如く素早く撤収。


「この度はありがとうございました、尊敬する竜の巣の長老よ。これからも末永く平和に、共に繁栄して行きたいものです」

「和平、成った、友人、共栄」


 魔女もトリーも護衛も帰還するので、魔女の姉の火竜と数羽の飛竜だけで帰る。


 牛魔王もいるので道中の襲撃は無いと思いたいが、もし竜原理主義派が仕掛けてくるとすれば今しかない。


『長老様、それでは一旦持ち帰って条約の発効を待ちます。何かあればまたこちらに参ります』

『うむ、お主にはこれを渡して置こう、儂とのホットラインの魔道具。緊急時には連絡すればよい』

『はい』


 バベルの塔で妨害されるので、普通の通信機で携帯電話的な魔道具では竜の巣との会話など不可能。


 これはそのバベルの塔を経由して会話する魔道具なので、数百キロ離れていても通話可能。


 まず魔女と姉竜が飛び立って、周囲の安全を確認。先王たちを乗せた飛竜と飛竜騎士も離陸。


 上空で合流して編隊を組み始め、加速や縮地の準備をする。


『あれは? 竜か?』


 太陽に隠れていた竜が十羽ほど降下して来て、滑空音を響かせながら飛竜を追尾する。


『先に行っておいて、私は後から』

『了解、加速、縮地』


 魔女からの念話で、レベル上げしてあるクローリアの飛竜は、飛竜騎士が加速する前に超音速に達して、ドッカンドッカン言わせながら王国への帰路に就いた。


『第二目標喪失っ、第一目標へ攻撃開始っ』


 高高度からの優勢と速度があり、圧倒的に有利な状態から、魔女が騎乗している火竜へと襲い掛かる一団。


『加速、縮地』


 魔女が加速して消え失せた。例え降下速度があったとしても、所詮はレベル100にも到達していない竜達。パタパタ飛ぶことはできても加速魔法も縮地も使えない。


『敵人間騎消失っ、対空警戒っ、現在位置不明っ』


 まず横滑りして逃げて、加速して降下。敵の視界から消えると上昇して旋回、敵後方に着く。


『この私に勝てるとでも思ったか?』


 まるで複葉機と、ジェットエンジンのメッサーシュミット262で戦っているように、速度差も何もかも違い過ぎる相手。


 勝てる部分があるとすれば、極低速での旋回性能と、体も翼も捩じって即座に失速して、落ちてから羽ばたいて飛行を継続する事だけ。


 逆に恐ろしい速度差を失速によって並走飛行にされ、魔女が両手から順次魔法を放つ。


「ギーーー(死ね)」


 編隊の最後尾にいた二騎は、一瞬で惨めで無様な空を飛ぶだけの魔物に書き換えられて、脳の容量が全く足りないので竜の知能や知識を全て失い、何をしようとしていたのか、自分の名前さえ忘れて降下して行った。


 兄の命令には従い「殺してはいない」が、それでも死んだ方が遥かにマシな処理をされた二羽。


『ガーー、ガーーー』


 ご丁寧に竜の呪いまで掛けてやり、魔女かそれより高位の者でしか解けないようにして、解呪や復活も不可能にしてやる。


 もし愚かな魔物を捕まえて、家に連れ帰ることが出来ても、親からも番からも「このような下等な化け物、息子ではない、夫ではない」と却下され、事情を聞いた所で名誉殺人によって出生から存在しなかった者として処分される。


『何だ? あれはっ?』


 転職したての聖竜騎士とは言え、レベル400の竜戦士が持つステータスは継続され、長老からも十二階梯魔法の全てを継承されているので、一般兵や普通の竜には勝つ手段が存在しない。



 失速状態から反転降下再加速、錐もみで回避されて横滑りで逃げられる。竜達がどれだけ四階梯魔法など放っても、全弾回避されて魔法障壁でも弾かれて無傷。


 実力差を見せつけるために、木の葉落としからインメルマンターン、あらゆる飛行技術を見せられて次々に撃墜されて行く竜達。


 竜の僧院に属する、十二使徒の名を持つ戦士達だったが、魔女には成す術も無く叩き落される。


「モーーーーーーーーーーーーーーーーッ!」


 魔女の腕の中から振り落とされていた牛魔王が怒りの雄たけびを上げ、ついに封印を解いて全盛期の力を取り戻す。


 人型では戦えないので、最大サイズまで拡張し、全長50メートルほどの大きさにまで成長。


『牛魔王だっ、大きいっ』

『こんなもんどうしようもねえだろっ、全員逃げろっ』


 城壁の上にいる竜達も、関所を捨てて逃げ惑う。


 牛魔王はアイテムボックスから、天を切り裂く悪魔の斧を引き抜き、空間を断ち切ってズタズタにして、真っ黒で光も無い異次元の入り口を見せてやり、普通の竜では飛行できない状態を作り上げた。


『ここはどこだっ? 操縦不能、飛行不能っ』


 次元の裂け目に落ちてしまい、もう戻って来れない竜も出た。


『この巣は終わった……』


 馬鹿共の突出で、これから牛魔王が竜の巣に侵攻してくる。


 長老も諦念の域に達し、この場で死ぬことにして、叶わぬまでも全盛期を超える魔王に立ち向かおうとした。


『全住民よ、家を捨てて今すぐ逃げよっ、名前と家名を持つ大丈夫ますらお達よ、今こそ命を捨てる時、城壁に集まり牛魔王と対峙せよっ』


 悲壮な念話が巣全体に響き、集参の言霊に曳かれて空間転移門が開き始める。


 炎竜に地竜、氷竜の姉妹、神竜に風竜、暗黒竜の名だけ継承した絶対防御呪文すら持たない弱兵も到来する。


『モーちゃん、邪魔しないで、全部私がやるから』

「モーーーー?」


 次々に到来するネームドの竜達の前で、残りの僧院からの刺客も、愚かで惨めな魔物へと変え、竜だった生き物は何もかも忘れて野生の獣へと堕ちて行った。


『帰るよ、来ないと置いてくよ、早く来なさい』

「モーーーーー?」


 牛魔王は周囲を見て、集まってきた竜達にガン付けしてから、何やら捨て台詞を吐いた。


「カトレモンテアラヘニルタ!」


 まあ「舐めてると承知しないぞ」ぐらいの事を言って、城壁に斧を叩き込んで、空間ごと切り裂いてから引いて、魔女を追うように空を駆けて行った。



 ダイソンスフィアの防御壁内に空間の亀裂があると、地球を卒業して太陽系に出る試験に落第して死滅寸前になった人類が、別の太陽系で繁殖しているのを好ましく思っていない、本物の神からの侵攻があるので、平面世界の機能で空間の裂け目を修復して、城壁の破損だけが残った。


 魔女的には大したインシデントでは無かったのか、先程渡された魔道具で通話もせず、降りて来て事態を収拾しようともせず、先王の飛竜を追ってそのまま帰った。

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