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『お主も悪よのう』

 次男が退出した後、次の来客が呼ばれた。


「トリニクレス、入れ」


 ドラゴニュートの使用人で担当官は、先代侯爵とも言わず家名も呼ばず、自分以下のただの人間を、家畜か何かのように呼んで入室許可を出した。


 立場を分からせるように広間にいた所からの呼び出しから命令口調で、言葉の端々に「犬如きが」「ゴキブリめ」「汚らしい」の形容詞を付けるよう命じられていたドラゴニュートの蔑みの言葉を理解して、反抗した元大公を諫めた。


 どうしても同行すると言って聞かない元大公に「今すぐ皆殺しにしてドブに捨ててもかまわんのだぞ」と宣言され、先王も折れて着席させた。


「聖竜騎士ターニャよ、こやつを使役して見せよ」

「はい」


 入室したトリーはまず一発かまされ、立ちもせず握手もせず挨拶も名乗りも無く、エイシェントドラゴンに命じられた聖女に全て任せ、瞑目して目も合わせようとしなかった。


『どうぞおかけください』


 魔女からも竜語で話され、理解できなかったトリーは諦めてこう言った。


「申し訳ありません、竜語は簡単な挨拶しか解しませぬ、人間語でお話しください」


 わざとらしく少し驚いたような表情をした魔女は、やっと人間語で話し始めた。


 京都風のイケズである。


「失礼しました、初代竜騎士団長とお伺いしたもので、きっと竜語をお話になるものとばかり」

「お恥ずかしい、長年竜と暮らしておりますが、日常の挨拶か方向や行動の単語程度の理解から進めません」


 エイシェントドラゴンの第一声は人間に分からせるために言い、聖女も人語で返答した。


 ドラゴニュートの塩対応の時点で分かったが、まともに対応して貰える状況ではないと思い知った。



 魔女は室内なのに聖帽を被っていて、聖女の法衣を着ていたが、わざわざ脱帽して上着を脱いで、椅子の背もたれに掛けて着席した。


「どうぞお座りください、ここからの発言は人間国の修道女ではなく、竜の国の聖竜騎士としての発言となります、ご理解ください」

「はい、承りました」


 ここで人間国の常識でも持ち出し、大公のように「養女とはいえ平民風情がっ、竜の側に立って儂に意見しようとしたかっ!」と激高されると全てが台無しになるので、連れて来ないで本当に良かったと思えた。


 大公も地下牢から魔女に救い出され、モーちゃんを紹介された時点で、心の根幹をへし折られているので逆らえないのは知らない。


 目の前で母親を塩の柱に変えられ、この世に母親より恐ろしい女が存在するのを見せられ、メスガキに分からされている。



「竜の巣の方針として、まず竜騎士団の存在を一切認めません。初代団長である先代侯爵様の説かれた、竜との友情、愛と言った思想は素晴らしいものでしたので、設立の邪魔をしませんでしたが、先代団長に代替わりされ「竜とは兵器である、竜騎士も兵士であり、的確に動作しない物は兵器たり得ぬ」この思想を竜の巣では、竜を家畜扱い、兵器扱いする考えとして弾劾します、すぐに解散解放を要求します」


 これも魔女の口から出まかせで、長老も解散までの意志は無く、家畜扱いは許容できないが、間引かれた飛竜や火竜、その他の幼竜がストナと言う稀人の元で生き残れているのには感謝すらしている。


「ああ…… どうかお許しを」


 トリーもある程度の厳しい要求は覚悟していたが、竜騎士団の存在を全否定されるとは思ってもみなかった。


 一発かまされたので、ここで相手側にも絶対許容できない通告をしなければならなかったが、米軍と日本以上に戦力差が有り、バーンと机を蹴って「日本国代表、国際連盟堂々退場」で出て行くこともできない。


 他の竜騎士ジジイから「あの小娘が抱いてる子牛、先代の牛魔王じゃ」と聞かされ、心強い味方と思っていたが、完全に竜側の目線で話し、テーブルの向こうにいてエイシェントドラゴンの指示の元動いている。



 二代目竜騎士団長は父親を反面教師としたのか、息子の代では兵器は的確に動作し、誰が乗っても同じ行動ができる、飛行兵器としての側面を求めたのが裏目に出た。


 絵物語にも出て来る「竜と搭乗者の騎士との友情や愛によって起こる大魔法」などと言う、一切信頼できない物に戦局を左右されるのは許されない。


 どこかのソウスキーセガール軍曹が、完全動作しないラムダドライバなど信用しなかったように、必ず正常動作するのが兵器である。


「初代様の時代なら、竜騎士は愛馬のように家族のように竜と共に暮らし、戦場でも竜は搭乗者を守ろうとして、竜騎士は竜を守ろうとして、絵物語にも出て来る大魔法を行使できたとか? 今はもう見る影も無く、ただの兵器として酷使し、竜舎での扱いも変わり、閉じ込めて家畜のように飼う、それが竜騎士団」


 吐き捨てるように言われ、返す言葉も無く黙っていると、思いがけない事を言われた。


「先代団長は竜語を理解できないので、あらゆる警告を無視しました。何度も襲撃して破壊して家畜化された竜を開放しましたが、心まで家畜に落ちぶれていた者だったので、奴隷小屋に帰って飼い主にエサを強請るブタを見て諦めたそうです。それ以降間引かれた竜を我らはブタと呼んでいます」

「申し訳ありません」


 ここで何かデカイ事でも言って、相手の意見や主張をちゃぶ台返しして、ドーンと全否定しなければならないのだが、聖女の主張があまりにも的確過ぎて反論できない。


 竜的には親からしか食事を受け取らないのだが、ストナ→飼育員→竜騎士と引き渡された順番に全員から受け取る。


 生餌で狩りの仕方は習うが、子象サイズになると飼えないので、魔の森で無双するのを覚えた竜は少ない。


「今代に入っても飼育員の実家に幼竜を託しに行った者からも、警告の伝言があったはずです。竜から竜語を解する子供へ、さらに飼育員ストナに伝え、竜騎士や騎士団長にも伝言。それらをすべて無視しましたね?」

「そんな……」


 全く初耳で、どの時点で伝言が消えたのか分からない。


 現実ではいつも通り、竜からきつく言われた息子や娘から父親に報連相。


「訳分からんこと言ってんじゃねえっ」


 親父に怒鳴られて一発かまされて、氷竜も暗黒竜も黙らされたが、やっと喋れるようになったカーチャからも。


「死ぬよ、みんな死ぬよ、竜を守ってあげないとみんな殺されるよ」


 と真顔で言われ、怖くなって平民騎士に上申すると?


「何を馬鹿なこと言ってんだい、飲み過ぎて幻覚でも見たのか」


 などと笑われて無効。


 無礼討ち覚悟で貴族にも団長様にも言うと。


「うむ、改善の余地はある、もう少し清潔にしよう、病気が蔓延して戦時に動作しないでは困る」


 と言う明後日の方向に結論が出て、家畜小屋への改良や清掃が増やされ、仕事が増えた現場からは大文句が出たが、寝藁の交換頻度や病害虫の大発生からは、トヨタ的にカイゼンされた。


「それ以降も竜騎士団破壊が竜の巣の総意でしたが、何度か直接攻撃がありました。人道的ではないので記録には全く残されていませんが、何度かあった天然痘禍や流行病は、どうも人間国で竜騎士団を維持できないようにする攻撃の一環だったようです」


 これはいつもの魔女の口から出まかせだったが、姉を失っているトリーにはガッツリ効いた。


 56年前のは竜騎士団設立前なので辻褄が合わないが、冷静さを失ったトリーは姉の死にまで自分の失態が関わったのではないかと思い始めた。


「ふっ」


 魔女の余りの嘘に、長老も人化したままで笑ってしまったので、トリーは別の意味に勘違いし、攻撃が成功して人間がバタバタ死んで行ったのを思い出して嘲笑ったのだと思った。


 ここで怒りが湧いて反抗作戦を開始すればどうにかなったが、トリー最大の弱点「姉」を使われたので屈服した。


「人間や動物、魔物やコウモリまでは同じ病気に感染します。でも竜は感染しません、この意味はお分かりですね?」


 魔女は哺乳類と鳥類や恐竜に近い竜の病気は違うと言っただけだが、トリーはどこかの村が全滅したような病原の村から、わざわざ竜が死体を持ち込んで王都に捨てる光景まで見えた。


 幼い頃に貴族街でも、病死して虫が集っている死体を見てしまったトラウマから、それが竜の仕業なのだと知って泣いた。



(勝った……)


 魔女はトリーのトラウマとか姉の死とか、知りもしない内容も利用して、勝手に地獄に落ちて泣いている子供?を見て、心の中で勝利の勝鬨を上げた。


「曾孫のお嬢さんを死なせたのも竜の暗部の仕事でしょう、今代竜騎士団長の奥様を狂わせて酷い状態に陥らせ、大事な方を次々に失わせて、団長を最も苦しい状態に陥らせたのも多分当方の仕業、これも書類や証拠など存在しませんので、お詫びのしようもありませんが、わたくし個人としてはこのような連鎖を終わらせたいと思います」


 こちらの方は長老がガッツリカミングアウトしたので事実。


「はい、竜を閉じ込めて家畜扱いするなど、大変な間違いでした。解散はお許し願いたいのですが、ここに来ている初代メンバーなど、竜と友人や番になった者もおります、何卒ご猶予を」

「ええ、あれほど竜を愛する初代様ですもの、きっと夢は叶うと信じております」


 ちょっと泣くような笑顔を見せてやると、トリーが堕ちた。



 絵物語では、竜騎士を好きになった竜が竜舎を壊して抜け出し、故郷の竜魔術師に相談、人魚姫みたいな制約だらけの秘法で人化して、決して正体を明かさない約束で竜舎に。


 竜と同じ名を名乗ったのに気付かないバカな竜騎士が、愛馬?を探しながらも竜の少女と恋に落ちて結ばれる。


 数か月後に卵を産んだのに驚いて少女が竜だと気付くが、正体がバレると人化の術も解けてしまい、どうせ間引かなくてはならない卵のうち、一個だけを持って竜の巣へと逃げ帰る。


 残りの一個は竜騎士の家で孵化し、イグアナの娘みたいなドラゴニュートが生まれ、愛する二人が引き裂かれる悲劇的な幕切れが受けて、以下続刊で女の子向けの絵物語になった。



 現実はバンバン卵産んで、ぶくぶく太ってババアになり古女房。間引いた幼竜は乳母が育てて、ドラゴニュートなので竜騎士や軍隊や冒険者で無双した。


 終戦直後から米軍基地で働いた日本人みたいに、配給時代に食い物は良いは給料はドル建て、竜の巣の給料も古代金貨で出るのでウハウハ、母親から竜語も教えて貰ってるのと人語もネイティブ。


 危険はないのに軍隊とか冒険より儲かるので、大抵のドラゴニュートは竜の巣で働くのを選ぶ。


 物語のような悲劇的展開ではなく、デブいババアが居座っていて「その竜はまだ家にいるのです」「クケーーーーッ!」みたいなホラー展開が事実で現実。



 そこでドラゴニュートが入室してきて、エイシェントドラゴンにメモを渡した。


 魔女から見ても「店内で若者が大量テイムされた」と見えた。


『ちょっと見に行こうか、こ奴はここに残せ』

『はい』

「何かありましたか?」

「ええ、店内で揉め事が、少々ここでお待ちください」


 エイシェントドラゴンと魔女は店側に移動して行った。


 店で麻雀クラブは、祠で洞窟だった場所を、人間界で得た技術でドラゴニュートが改装したもの。


 ちゃんとした来客とか使節団なら、迎賓館的な物を土竜に建設させているが、勝手に来た者とか肩ひじ張らない対話の時は店で応対。



 店内


 一斉通報されたので、次第にヤンキー竜が殺到し始め、少数で入店すると一瞬でべえべえされてテイム済みにされるので屍累々。


『な、何故殺したし……』


 麻雀勝負で大敗した店長も、次々にテイムされて行く若造を見守ることしかできない。


 もし渦中に飛び込むと、自分もカキカキコリコリべえべえされて一瞬でテイム。


『テメエラッ、負けてらんねえぞっ、捕まった奴を取り返すっ、数揃えて一気に突っ込むぞっ』

『おおっ』


 ジジイ共は入り口にバリケード的に色々積み上げ、突入を阻止しつつ少数に絞って入場させ、数人で囲んでカキカキしてやり即テイム。


「ん~~? ここがええのんかあ?」

『あう~~ん、もうらめぇ~~』

『キャイイイインッ』


 亡骸?を後送してテイム済みの若造を積み上げておき、ゾンビが突入してきたホームセンター?で籠城する。


 ゾンビ物と違うのは、最初の方にテイムして麻雀勝負中に目が覚めた者はこちらの味方、時間経過するほど仲間が増えて行く。


『突貫っ』

『おおっ』

「ここが踏ん張りどころじゃ」

「応っ」


 過去最大の人数で突入してくるゾンビ? こちらも仲間になった竜の若造で突進を止め、スクラム組ませた所で全員カキカキ開始。


『はう~~~ん』

『んほおおおおおっ』


 両端からバタバタテイムされて行き、次の若造が突っ込んできても、会って5秒でテイム。


 俺の屍を乗り越えて行け、的な奮戦もあったが、契っては投げ契っては投げ、次第に数が減らされて行き、踏まれて目が覚めた者は既に人間の味方。


 向こうは噛まれたらゾンビと言うか、カキカキされたらゾンビにされて人間側に寝返る。


『駄目だっ、みんなヤられたっ』

『引けっ、引け~~っ』


 どうやら勝敗が決したようだが、ドスドス逃げ出した象みたいなのを、光の速さで駆け抜けて追う。


 荒木調のデコ出しでセル画の前髪が横に流れて行き、腕を後ろに下げるNARUTO走りで追い掛けると、路上にテイム済みの屍を並べて行く状態になり、黄泉平坂か三年坂みたいな所も屍累々。


 集まって来た若造と娘が全員テイム済みにされて、少数しかいないはずのコンキスタドールが、小銃も大砲もないのに勝利した。



『何だ? これは……』

(負けたというか、勝ったというか?)


 長老と魔女から見ても、トリーとのアメフト的な空中戦とか、ルチャリブレ的な空中殺法では勝ち、トップロープからのトペも敢行して、空での戦いでは完全勝利したはずが、地上戦で平原戦では人類側に完敗した。


「モーーー↑」


 牛魔王とジジイ達は、もうオトモダチなので戦ったりしない。


(案外役に立たない……)


 祝福が降り注ぐ店での負けだけで収まらず、高校生世代がレディースまで100人以上ほぼ壊滅したので、これから数年かかる「次世代の神竜は誰だ? 最上位決定戦ドンドンパフパフ」が実行不能にされた。


 鎧の巨人をガビが継承する前に、ライナーがライフルフェラして脳みそ吹き飛ばしたり、マーレにいったはずのユミルはいつの間にかガリアードに食われていて脂肪。


 脊髄液飲んでしまったポルコが巨人になっても、ライナーも食えずガリアードも食えず継承が失敗するぐらいのステータス。


 何なら若造全員竜騎士団に移住してしまい、鵜飼の鵜みたいに魔の森で狩りをさせられ、鷹匠みたいなテイマーが帰ったら加藤鷹になって、ゴッドフィンガーで「おお~~出る出る出る、あ~~~~、一杯出たねえ」されたりする。


 さらにチョコボール向井みたいな、アメフト選手ぐらいガタイが良いジジイに駅弁ファックされ、駅弁のまま撮影用のマンションの部屋の外まで連れて行かれ、エレベーターの呼び出しボタン押されて、「ちょ、待って」と女優が笑いながら抵抗しても籠の中まで駅弁で歩いて行かれ、1階に降りるボタン押されて慌ててキャンセルする羽目になる。


 最近ならミニマム系AVで145cm程度の、あべみかことか跡見しゅりみたいな合法ロリに人化させられて「種付けプレス20連発中出し」とか「11人に輪姦された女子高生」シリーズに出演させられ「ゴッツイオッサンがデカイケツ乗せて種付けプレスして、中だし契約してるの二人だけで、後は汁男優がぶっかけてるだけじゃねえかっ?」みたいな詐欺にあうかもしれない。



『な、何故殺したし……』


 竜の巣の将来を悲観した長老は、半泣きになって人間の恐ろしさを思い知ったと言われる。


 魔女はエトワールから感染させられた、スーパー天然アホアホ時空を、自分の魔力か法力で発生させている自覚がない。



 面会室に戻っても、トリーより長老の方がダメージが大きく、立ち直るのに少々時間が掛かる。


「どうでしたか?」

「ええ、元気なお爺さんたちで、若い子が集まったのに、みんなテイムしてしまって、おほほ」

「そうですか」


 ちょっと喜ばせたので、現在の残念な地獄的状況もお知らせ。


 平原戦では大敗したので、その事実を掴まれる前に「キャイン」と言わせなければならない。


「今代勇者が父親に従い、竜騎士団に採用されたので竜や騎士を強化したようですが、炎竜討伐と言う事態により、竜の巣と人間国は小規模な紛争から戦争状態に入ったと判断します、同意していただけますか?」

「はい……」


 先程心の根幹をドチャクソに踏み潰されたトリーは、賭け麻雀の結果も忘れさせられ、外での大勝利は知らないので、切れるカードの一つとして使用できなかった。


 勇者を介しての話では、接待攻勢で長老は怒っていないと聞いていたのだが、仲介する人物が違うとここまで違うのかと驚かされた。


「ですがわたくしも人間の一人で聖女として任命された身。故郷が焼かれたり王都が火の海になり、住人が逃げ惑って命を落とすような事態は看過できません。どうにか戦乱を防ぐ手段を模索して行きたいと思います、ご協力ください」

「分かりました、何用でもお命じ下さい」


(もっかい勝った……)


 トリーという、全権大使的な人物を取り込めたので、後は自由に譲歩させられる。


 会談前に「こやつを使役せよ」というお題をやり遂げたので、後で姉が先王と元大公を連れて来てゴネた所で?、


「エイシェントドラゴンがここまで譲歩して、ようやく合意したのに、それを最初からやり直せと言うのですかっ?」


 などとマヤって泣き真似すれば、ちゃぶ台返しができる。


(ウフフフフフフ)


 長老的には、地上戦で大敗した直後にこの申し出ができる、鋼のメンタルを持つメスガキを見て「流石伏魔殿の悪魔を殺した女」と分からされた。



(さて、後は「これで家のもんに甘いもんでも買うて帰ってやりいな」してやりましょう……)


 後は甘い物でも舐めさせて、絶望状態からの飴はよく効くので、まず角砂糖でも出してみる。


「此度の魔王浄化や、弱兵化してのテイムなどの功績により、わたくし個人に人間国との貿易独占権、竜の巣での採掘権や漁業権などが許されています。こういった物を利用して友好関係を深めていきたいと思いますが如何でしょう?」

「おお、それは素晴らしい」


 貿易独占権があれば、炎竜死亡への制裁金であるとか弔慰金など幾らでも払える。


 竜の巣側から、王国か竜騎士団が痛みを感じる程度の出資や入金を求められるので、その原資が必要。


「お許しいただければ、人間国から便利な品物をいくらでもお持ちします。本日と昨日の物品や販売機、あれは現在我が家で負担させて頂いておりますが、国家から賠償や弔意、親善の品として贈りたいと思います」

「ええ、まず寄贈品に感謝します。後は竜騎士団の竜舎をもっと解放的に、竜騎士を伴えば自由に狩りに出られるように改装して頂いて、独身寮や家族単位の巣も作って下されば宜しいかと。今日テイムした少年少女も、竜騎士団に連れて行かれるなら、今後は婚姻関係などを増やしたり、里帰りも簡単にするようゲートを開くなどの処置も必要かもしれませんね」

「おお、それはっ」


 クソガキメスガキはテイム解除しようにも有効な手段も無く、どうせ連れて行かれるなら向こうで竜同士で子作りさせるか、多数が人間と結婚してしまうと純血派がうるさいなら鎖国もするが、物品の輸送を楽にするのに転移ゲートを開く手段もある。


 ニ、三年分の高校世代がごっそり減るが、中坊が育つまで持ちこたえれば何とかなる。



 トリーの方も皮算用して、古代エルフの超文明(笑)の産物が転移ゲートで運べるなら、周辺国に売り捌くだけでも莫大な利益が出る。


「もし友好条約など締結するなら、表面上は高額な懲罰金を書くかも知れませんが、数十年掛けて利益の中から減算して行く手段で無償にしてしまえますので、特に支払いは必要ありません」

「ありがたい、友好条約まで結べ、転移ゲートもあれば、様々な品が空輸やアイテムボックス頼らずとも移動できる」


 トリーは魔女が今までに撒いた問答の罠に引っかかり、交渉団として来た連中全員が、自国に神聖騎士が出現していて、凄まじく有利な状況にいるのを知らないんだとカミングアウトした。


「そうですね、今後このような事故が起こらないよう、竜の巣と人間国で平和条約や軍事同盟でも結べるのなら、きっと幸せな未来が……」

「おお、平和条約……」


 もしそうなれば、王国から魔の森へ続く広大な大地、火竜山に至る竜の巣までの狩場、そこに竜騎士団の駐屯地から自由に狩りに飛べて、魔法を覚えた火竜の力を用いて、魔獣の数がゼロに近付けられたのなら、城砦や都市さえ建設できる。


 広大な土地を持つ辺境伯、土竜に依頼して城壁を作り、王国の領土よりも広い場所を制覇し、今のように国家転覆や反逆の疑いなどと言われれば、本当に新領土だけで独立してしまえる。


「お互い、譲歩できるところは譲歩してしまいましょう。そうすれば揉め事など起こさず、広い所を開発したり、人が住める場所にして畑も沢山作って、浄土と呼べるような王道楽土を……」


 トリーには、自分は与しやすい宗教女で、頭の中までお花畑な低能と思わせる単語をたくさん並べてやった。


「素晴らしい、是非和平条約も、可能なら軍事同盟なども」

「それでは、こちらでも必要な内容を纏めてみます、是非そちらでもご意見を出して下さいまし」

「分かりました、持ち帰って検討してきます」

「それでは後ほど。ああ、姉はこういった込み入った話は得意ではありませんので、弟達も外で遊ばせておいて、先王様と養父様ぐらいでお話したいと思います」

「ええ、是非」


 あのクソ姉は、クサイと感じたら絶対譲らず、詐欺にあうと分かったら徹底的に争うので、先王やトリーを沼に嵌める場所に居て貰うと困る。



 トリーが大喜びで退出して行った後に長老も口を開いた。


『平和条約と軍事同盟は行き過ぎではないか?』


 そこまでの権限を与えたつもりはないので多少機嫌が悪くなる、テイムされた若者が多数攫われる寸前なのに、同盟まではあり得ない。


『あの者たちは自分の国に神聖騎士が出現したことも知らないマヌケです。今のうちに「完全に平等な」平和条約と軍事同盟を結ばせ、貿易の独占など、まるで宝の山を持ち帰るつもりで喜んでサインさせ、魔法的な契約も結ばせてしまうのです。今日、今ならそれが可能です』

『ああ……』


 目の前の娘が想像を絶するほど悪辣なのを忘れていた長老、この娘なら自国の王でも平気で沼に嵌められる。


『出発前に近隣国最強の、魔法帝国と思われる使節団が到着するのを見ました、きっと絵物語の通り神聖騎士に諸侯として仕えるつもりでしょう。その場に長老は出ないで済むのです。何せ平等な軍事同盟なのですから』

『分かった』


 この魔女の怖さを知り始めた長老、本来なら使節団を派遣して諸侯の一人として自分も馳せ参じるか、屈従する条約を結ぶが、主催国と完全平等な同盟国なので、挨拶するだけで済む。


『若者は連れ去られるのではなく竜の国からの駐屯、他の火竜も飛竜も軍事訓練と称して逆テイム。魔の森辺りに新しい駐屯地を作らせて、自由に狩りをさせて食料はこちらで総取り。人間国からの距離を遠く取って、できるだけ竜同士で結婚させ純血派も黙らせる。今の竜騎士団長は引退させ殺害、初代団長を復帰させる。この際、竜騎士団そのものをこちらで乗っ取りましょう』

『よく言った』


 重鎮も集めて話し合うが、竜の巣にいる下級天使に依頼すると2秒で草稿で草案をでっち上げて来て「ジェバンニが一日でやってくれました」も可能。


 魔女的には竜の巣と平和条約を締結して軍事同盟など結べると、国家的英雄で教科書にも載るレベルだが、今の発言は外観誘致罪で国家反逆罪相当で、イギリスのサイクスピコ条約並みの三枚舌外交。


 魔女が何を目指しているかと言うと、いつも通り「お兄ちゃんをテイムして私が独り占めするのぉ」なので、お兄ちゃん強奪計画も発動された。


 なんか希望で野望が広がリングで、嬉しくて泣いているトリーと違い、長老と魔女はいつもの悪い笑顔で笑った。

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