竜騎士団出撃開始
竜騎士団上空
魔国軍先遣隊への爆撃をする第一陣が進発している。
「帽振れっ」
「必ず帰って来るんだぞ~」
「行ってこい、息子(竜)」
飼育員達が飛び立っていく火竜に帽子を振っていると、他の飼育員も担当の竜は子供同然なので目を潤ませながら見送った。
竜騎士にも脱出用の落下傘的な物が支給されるのだが、坂井三郎さんの著書にあるように「負けて尚生きようとは浅ましい」という思考回路の元、相棒である竜を討たれてまで生きようとする行為は騎士的ではないと考えられ、第二次大戦時のパイロットと同じように、搭乗時に最初にする仕事は「座席に置いてある小便を吸わせる布」を地上に捨てる所から始まる。
「気を付けてな」
「おう」
ストナも息子である暗黒竜を見送り、上空で旋回している団長をはじめ、約半数の火竜が出撃して行くのに同行して、滑走路を飛び立っていった。
元々の計画が「無茶しやがって」なのだが、勇者から魔法の行使許可が出て、急遽竜のレベル上げもされたので、以前とは比べ物にならない強さ。
上空で編隊を組んだ火竜騎士団は、騎士が行使する加速魔法で音速を超える寸前まで加速。縮地魔法まで掛かって雲を引いて、ワープスピードにも見える航跡を残して現地まで飛んで行った。
「私も第一陣に参加したかった」
「馬鹿言うんじゃないよ、お前は行かないでおくれ」
暗黒竜からの拘束時間が終わったので母親と面会し、無理して出撃を進言して制服に着替えて来た小隊長。
歩兵師団で弟の一人が死んだのは聞いたが、第二陣には参加する気でいる。
「儂らも久々に出撃してみたかったのう」
「多分儂らでは足手纏いなのだろうよ」
デジタル物が苦手で最新の魔道具などは操作に困るジジイなのだが、アナログでマニュアル操作の火竜などは平気で運転して、地上ギリギリの高度まで降ろして、弓矢を回避しながらブレスを吐かせ、士官や司令部などの目標に正確に当ててから飛び去れる変態操縦者揃い。
スマホのアプリ操作に困るベテラン工員なども、バルブが30個以上あるボイラーとかスイッチも30個以上ある工作機械でも平気で運転し、計器見ながらバルブ操作して、若い現場猫が死んだ目で見守るような曲芸が起こせる。
この後、王や大公、勇者が戻ってくれば一緒に竜の巣に行くジジイ達も、まずはペアになってくれた相棒と、遠い所まで飛んで問題が出ないか、相性はどうかなどが試される。
引退する前の相棒は新しい相棒と組んでいるので、今回元鞘に戻す手間は割けなかったので新ペアと飛ぶ。
「デクケコリバストラカ」
「すまんのう、儂は竜語は分からんのだ」
昨晩、相撲の取り組み相手に続いて、寄って来た若者の喉の下をべえべえしたり、尻尾の付け根をカキカキしてテイムしてしまった、中坊のオスメスがストナに何か話しかけていたが、親父はカタコトの竜語しか喋れない。
テッペン目指して暴れていたはずの若竜は、目覚めてから憑き物が落ちたような穏やかな表情になっていた。
野良猫みたいに親からの愛情を受けずに育ったので、険しい目付きをしていたのが、飼い猫みたいな可愛らしい目付きになって、「新しいパパ」でテイムした主人にゴロニャン状態。
「こいつら、俺達も出撃しないでいいかって聞いてる」
「ああ、そうなのか、こんな若い奴らに戦争なんかさせられねえ、それも人間と魔国の戦争だ、入っちゃいけねえ」
『お前らは若すぎるから、人間と魔族の戦争なんか行っちゃいけねえってよ』
次男が翻訳してやると竜達が親父にスリスリしてきて懐き、同年代のヤンキー竜だったとは思えない笑顔を見せた。
『ねえ、パパ、もっと抱っこして』
『ウチも抱っこしてべえべえして』
父親の愛を知らずに育ったヤンキー娘竜も、「早くに両親が離婚した女の子は、凄い年上の父親年齢の男と恋をする」法則で、学校の先生とか牧師に恋をする、西洋で言う「神父の恋人」になって、ラブラブな秋波をストナに送っていた。
屋敷に作り替えられた家に戻ると雑魚寝しないので、人化の術を覚え次第、娘?の方から全裸のまま夜這いしてくるので、片翼の姉竜が阻止に失敗すると「新しいお母さん」が複数誕生してしまう。
親父本人に落ち度は無くても、発育が良すぎる娘と一夜を過ごしてしまうと、いつも通り娘からは「助兵衛親父」と馬鹿にされ睨まれ、姉竜からも「父ちゃん、私と言うものがありながら」と泣かれ、氷竜辺りから祝いの品が送られてくる。
人化しても背が小さくて子供状態の姉竜は、幸薄そうで貧乏な感じが付きまとっていてド貧乳で洗濯板。
ラストアマゾネスに変身する前の委員長みたいな眼鏡地味子さんでは、竜の巣でも間引かれずに乳もケツもバインバインに育った「大艦巨乳主義」の、女の良い匂いしまくりな黒ギャル系の娘と遭遇すると、砲?の威力が違い過ぎるので88サンチのアハトアハト対戦車砲?を使われ、一瞬でクソ親父が撃チンされてしまう。
同じ巣で育った兄弟姉妹には発情しないのが普通だが、竜と人間ペアの場合はオッケーだったり、出合ったばかりの「新しいパパ」にはガッツリ発情する。
滑走路の発進側が空いたので、上空にいた白竜とカーチャが着陸して来た。王と大公や護衛数人、トリーを乗せた飛竜は上空待機。
『兄ちゃん、姉ちゃん、爺ちゃん達乗せて竜の巣まで行ってくれるか?』
『ああ、ええぞ、最近運動不足だったから丁度ええ』
『デブったからダイエットするよ』
幼竜舎に閉じ込められ、カーチャが虐められていたので女中を踏み殺した姉竜も、ダイエットのために飛行する。
火竜なのでアホ女を踏んだのは悪いとも思っていない。
「さて、今日は先任の儂が隊長機じゃ、行くぞ」
「応っ」
管制塔からグリーンフラッグが降られ、近傍には飛行中の竜も巨大鳥もいないと判断され、隊長機から発進して行く。
全員魔法が使えるので、竜と一体化する竜魔術もかけて貰って背面飛行でも平気。
若返ったので当時の腕前を披露して、正確に距離を置いた編隊が上空を旋回し、先程発進して行った現役騎士よりも美しい曲線を描いて飛んでいた。
「おお、素晴らしい、これが竜騎士団」
「儂も乗ってみたいのう」
トリーも現役復帰して飛びたかったが、道中は休息に当てて眠ることにして、交渉が深夜に渡っても活動できるよう自重した。
さらに次男とグリーン、魔女と姉の竜が飛んでデイジーは修道女会でお留守番。
「兄貴の所まで行くぞ、飛べ、グリーン」
「ガウウ」
「ヘヘ、ベル姉、感謝してチューしてくれるかな?」
「ガオオオオッ」
「だから飛びながら噛むな」
「私も行くよ」
「聖女様、修道女会にお帰りをっ」
「伏してお願い致します」
今回の暗黒竜のお兄ちゃんからの指令は「竜の巣まで行ってベルとあいつ(長男)に報告して来い」なのでついて行く。
暗黒竜は次男に言っただけで、魔女は員数外なのだが自分も範囲に入っている事にして移動する。
「此度は竜の巣で問題が起こり、戦乱が吹き荒れる事でしょう、私たちはそれを鎮めに征くのです」
「それならば私共もご一緒に」
「いえ、あそこは常人には入れぬ場所、竜騎士の中でも入れぬ者も出るでしょう」
いつも通り口から出まかせで嘘を言ったが、護衛の中には感心して納得する者まで出た。
結局、魔女の護衛は竜の巣までの足が無いので放置された。
「モ~~~っ!」
モーちゃんも魔女に抱っこされて着いて来たので、竜の巣に前魔王出現の大惨事。
「加速っ、加速っ」
竜騎士のジジイ達も、昔は使えなかった加速魔法で高速飛行。
竜の生活魔法の飛行は空中浮遊程度の効果しか無く低速、羽ばたいて推進してさらに魔法で加速。
『縮地』
最後に勇者の縮地の竜魔術で、こちらも雲を引いて音の壁を破ってドッカンドッカン鳴らして音速飛行して消えて行った。
聖女頭の実家
王城に登城するなら、いつもなら整然と行動して遅れはしないのだが、長年エトワールがグズグズするのと行動を共にしてきたので、ちょっと実家で挨拶する程度なら良いかと思い、名前を借りている姪にも挨拶して行く。
「開門っ、カレリーナ・ラリマリウ帰還なり、開門っ」
正門の壁の方は既に飛び越え、天使100人も連れている大所帯なので庭園に降着した元聖女頭。
庭を清掃していた庭師などは、天使100人とペガサスに乗った天使を見たので、いつものドゲザスタイルで頭の上で合掌。
誰も迎えに来ないのでペガサスに騎乗したまま屋敷の車止めで正門まで移動。
「天使様……」
正門にいた執事も天使とかペガサスを見て土下座寸前。
「爺、私よ、カレリ-ナよ。新聖女様に若返らせて貰って、レベルも上げて貰って聖騎士になったらね、今度は神聖騎士に転職したのよ、そしたら何か大騒ぎになって、空では星が輝いてるし、鐘とか祝砲とか聖歌も鳴りやまないし」
聖女頭は天然では無いのだが、10台初頭から修道女会入りした上に、15から加入したエトワールが展開している、スーパー天然アホアホ時空に常時汚染され続けたので、すっかり天然入っていた。
「お、お嬢様……」
何か地獄でも見て来たような老紳士は、下級天使が降りて来て家ごと消去されるのかと思ったが、それを引き連れているのは幼い頃にお世話したお嬢様らしいので、どうにか正気を保って応対を開始した。
「弟はいる? それと姪のヘレンちゃん。あ、これお土産」
ギルドで買って来たケーキと酒をくすねて来たので、爺やにお土産として渡す。
老紳士も情報量が多すぎて理解不能だったが、修道女会に行かれたお嬢様が、特に先触れも無く実家に帰還したのだと当主に伝えに行った。
お嬢様の変わり果てた姿?は伝えても信じて貰えないので、背中に光る翼が生えてるとか、頭に光る輪が有るのは伏せて、変わった装束なので驚かない程度に言葉を濁して伝える。
60前の当主も引退寸前で、デブってしまい登城して務めを果たせないので隠居して家にいるし、ご指名の姪は病弱なので外に出られない。
お嬢様が付いて来て、さらに下級天使の武官まで4名、文官1名とペガサスまで屋敷に上がってしまい、全員塩の柱なのかと恐れ、メイドも使用人も全員ドゲザスタイル。
「我が心は天と共にありっ、神を恐れ敬う者なりっ、この身は神の遣いに従いっ、精霊を敬い御心に従順なる僕たらんっ(ループ)」
使い物になる者はおらず、先触れに走らせる者もいないので自分が当主に伝える。
「少々お待ちください、わたくしがお知らせしてまいります」
「ええ、姉が来た、ぐらいが良いと思います」
天使が来た、家の悪行がバレて下級天使に塩の柱にされる、などと伝えると、どこの家令も執事でも、当主が地獄送りにされる前に毒杯を出して自裁を勧める。
当主が市中引き回しの上獄門貼り付けにされ、衆目の前で串刺しにされたり火炙りにされたり、魂まで失われる塩の柱にされないよう気を配る。
大抵はアンスバッハ(誰?)みたいな執事が、ブラウンシュバイク公を取り押さえて毒を飲ませる。
「旦那様、姉上様が修道女会より御帰還です、何でも病床のヘレン様のお見舞いだそうで。修道女会でレベルをお上げになり、聖騎士から神聖騎士になられたそうで、多少変わった格好などなさっておられますがお気になさらず」
「姉上が?」
こちらもハゲでデブでチビで、糖尿病から心臓病、足のしびれや壊疽、白内障まで各種疾患を抱えているので、アルコールなどの痛み止めが欠かせず、マイコーみたいに笑気ガスか阿片までヤっているので幻覚が見えるのが普通。
多少光る羽が生えていても頭の上にも光る輪があっても、幻覚だと思うのでキニシナイ。
「お嬢様、どうぞお入りください」
「ありがとう、爺や」
「おお、姉上、久方ぶりですなあ」
当主から見ると、若返った昔通りの姉には羽が生えているし、天使の従者まで付いていて、ペガサスまで入って来た。
幻覚とか夢を見るにしても、一藤二鷹三茄ぐらい縁起が良い夢なので喜んだ。
「そのお姿は?」
「ええ、新聖女の二人に若返らせて貰って、レベル上げもして貰ったのね。そうしたら聖騎士超えて神聖騎士になっちゃったみたいで城から呼ばれてるのよ。それでギルドで登録した時にヘレンちゃんの名前使っちゃったから、一声掛けてから行こうと思って。あ、これギルドで買って来たケーキとお酒、結構おいしいのよ、食べてみて」
神聖騎士で天使と平気で会話している主人にも少し驚いた老紳士だったが、阿片でイカれている途中なのかと納得した。
普段なら馬とかなど入室させると殺されるか、天使が入ってくれば何の罪で殺されるのか聞いたり、塩の柱だけは勘弁してほしいと泣き叫ぶかと思ったが、ダウナー系のドラッグ使用中ではなく、アッパー系でイケイケでシャキシャキになっているようで助かった。
「ヘレンちゃんも具合悪そうだから治してあげようと思ったけど、貴方も治した方が良さそうねえ。病よ去れ、ちょっと若返れ」
聖女頭がピンク色のマジカルバトンを振って、胸の前で指でハート型を作ってキャる~んと一回転すると、声が現実になる奇跡が起こり、当主に憑いていた病魔がことごとく払われて爆散し、死神も追い払われ、本当に若返ってしまった。
「姉上……」
ついでに阿片かモルヒネ的な物で、シャキシャキにカクセイしていたのも追い払われて、正気に戻らされた当主。
あらゆる病気が快癒したので、姉が若返っていて昔の姿になり、背中から光る羽生やして頭に光る輪っか浮かせて後光が差していて、天使の従者まで連れてペガサスも連れてる、絵物語の天空の騎士とか神聖騎士になっているのも確認した。
「て、天使っ、儂の何の罪を裁きに来たのだっ? あれか? それとも……」
「や~ね~トンちゃん。さっき言ったでしょう? 私が神聖騎士になったらね、天からペガサスが降りて来て天使の文武百官が私の部下になってくれたのよ。ホラ、何か星が輝いてるし、空で鐘も鳴って聖歌も聞こえてるでしょ?」
薬が抜けても情報量が多すぎて、イミワカンナイ当主。
中世の人物なら、一生に得られる情報は新聞紙一枚程度らしいので、ここまで情報が多いと処理しきれない。
姉の方も修道女会で長年エトワールと一緒にいたので、この程度の出来事は何でもない。
「ちょっとヘレンちゃんの病気も治して行くから、一緒に来なさいっ」
姉からすると弟など下僕で奴隷なので、犬か牛でも引っ張って行く程度のつもりで、弟の当主を姪の部屋に連れて行く。
「あ、歩けるっ、自分の足で歩けるっ」
「ああ、旦那様の足が治って、あれだけ酷かった目も心臓もっ」
歩いている本人とか、侍従で執事の老紳士も泣いているのに平然と歩いて行く姉。
屋敷の者も相変わらず平伏して土下座スタイルで天使達を見送って、屋敷の中でペガサスがパッカパッカ言わせて歩いていたが、何の抵抗にも合わずに姪の部屋に到着した。
ちなみに人工物の喋るペガサスなので、馬糞はしないし草も食べない。
アンチシズマドライブの中でも制止させられない先進技術なので、バベルの塔と間違えられるかもしれないが、天使と同じでこの世界の生物如きには破壊できない物なので、対消滅エンジンとか電子頭脳で動いている。
「ヘレンちゃん?」
「叔母様……」
病床にいて立ち上がれなかった姪は、当主の部屋で放ったフレッシュピーチシャワー?が到達したのか、既に病が治って泣きながら立ち上がり、自分の両手や板で修復した窓の外を見つめていた。
まちカドまぞくの桃と違い、工場の分厚い壁を桜の花びら型にくり抜いたり、天井とか工場街を吹き飛ばしたりしないようだが、実力を発揮すればレベル1神聖騎士でも結構やれる。
この姪は病弱でも、叔母の願いで地下牢や座敷牢送りにならなかったようで、敬虔な叔母の祈りや願いが天に届いたのか、やっぱり今までに積み上げてきた死体の山が天に届いたのか、ついに病から解放されて、軽度のALSなのか治療呪文すら通用しない呪いが消えた。
「叔母様っ」
「治ったの? よかったわねえ」
泣きながら叔母に抱き着いて、この奇跡を起こしてくれた人物は、間違いなく目の前の天使だと気付いて号泣した。
多分、日本のアニメ的にエンディング前に歌うと大抵の事は解決して、ボリウッド映画的に出演者全員の群舞になって、色とりどりの衣装を着てダンスマスターの振り付け通り躍ると全ての懸案事項が解決する。
軽くムーンウォークとかロボットダンスでも見せてやると「10ドル貸しだぜ」と言えるぐらいの値打ちがある。
マイコーのゲームとか映画みたいに、歌って踊ってやると魔王でも魔王軍幹部でも魔国軍全員でも踊り出してしまい「アオッ」と叫んでキメポーズが入ると、全員折伏して仏に帰依して部下になってエンディング。
「ごめんなさいね、冒険者ギルドで貴方の名前名乗って登録しちゃったのよ、そしたら神聖騎士になっちゃってね、今も王城に呼ばれてるとこなのよ、貴方も一緒に来る?」
「い、いえ……」
叔母は天然になってしまったようで、絵物語でも神聖騎士とは、王族でも傅いて諸侯として仕えるべき存在とは知らないようで、何の教育も作法も知らない姪は王城になど到底付いて行けない。
「誰か一族の者も行かないとだから、トンちゃん連れて行こうかしら?」
寝巻にスリッパ履きの弟が犠牲になって、王城に連れて行かれる羽目になった。
「すぐ支度なさい、私は天使と一緒に王城に行きます」
「はい……」
王城へ復帰して登城する第一回は、神聖騎士になった姉の付き添いになった哀れな弟。
「面白い」「続きが気になる」と思われましたら、是非ブックマーク登録をお願いします。
画面下に評価がありますので、評価して頂けるとポイントが入ります。
ランキングが上がる、感想を頂けるなど、とても励みになりますので、よろしくお願いします。




