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頂上決戦

 王城、奥の院


「聖女よ、衣服を整えて来る、しばし待たれよ」


 王太子は、ローブ一枚羽織っているだけの変質者スタイルだったので、祖母に会う前に「王太子府がある離宮」に客人を大量に連れて来てしまった。


 もちろん執務中の別動体と言うか影武者と言うか、頭脳体が操作していた外見が40歳ぐらいの複製体が活動停止している、王太子死亡satsugai現場その物でもある。


「何者かっ、今ここは誰も出入りできぬっ」

「私だ、我こそが王太子ザレクトスである、通せ」


 そうは言ってもお連れの者もおらず、側近でも15歳ぐらいに若返った姿を知る者など、幼い頃から一緒で地下牢まで同行してくれた爺やか、地上に残っていた婆やか乳母の姉やぐらいしかいない。


 その連中は今「若様、若い頃からご苦労なさって、やっとこれからと言う時に……」とか言って亡骸?に縋り付いて号泣していたり、爺やなど若様の亡骸を整えて綺麗にするのが終われば、殉死する準備もしている最中。


「殿下が亡くなられたのを知っての狼藉か? 者どもっ、こ奴を捕らえよっ」

「はっ!」

「馬鹿者っ、大公である我が保証する、こちらこそが王太子殿下である、控えよっ」

「何を言うかっ、謀反人めっ」


 どうやら駄目そうなので、天使形態を保持したままの魔女が前進して王太子が捕縛されるのを止める。


「て、天使様っ」

「使徒様、お許しをっ」

「我が心は天と共にありっ、神を恐れ敬う者なりっ、この身は神の遣いに従いっ、精霊を敬い御心に従順なるしもべたらんっ」

 

 恒例のパターンで、雑兵で田舎から出て来た若くて敬虔な信徒は、光る翼とか後光が差している姿とか光輪を見ると、失明するか塩の柱になると教え込まれているので、土下座して地面を向いてしまい、頭の上で合掌して天罰を受けないよう、南無阿弥陀仏的な祈りを繰り返すだけの生き物になった。


「あ、あ……」


 直視してしまった王太子府所属の隊長らしき人物も、膝から崩れ落ちて平伏した。


「さあ、御一緒しますのでお着換えを」

「ああ、助かった、聖女よ」

「モーーー」


 勝手知ったる我が家なので、色々と済ませる間、来客用の部屋で待たされる一同とモーちゃん(元魔王で従魔)。


 離宮の外にも配下にした衛兵を待たせ、大公なども塔の住人を逃がしたり周囲を警護したり、魔法でのスナイピングポイントを確保するのに陣頭指揮を続けた。


 まあどれだけ塔から逃がしても、毒婦の敵で息子殺しの犯人である、第一夫人とその子達や実行犯、ついでに第二夫人は、手足を切られて舌なども引き抜かれ、あらゆる拷問を受けたり肉便器にされた後、視力も無い状態で魔封じの魔道具付きで下水道の便壺に投入。


 沖縄のフルの中の豚みたいに、人豚として生かされていたが、発酵して暖かい便壺でも長生きはできず凍死したとされているので、天命が尽きるどころか人間に生まれ変わるのだけは拒否するよになっているので、聖女の人体蘇生でも助からない。



 王太子の私室


「王太子殿下御帰還です、魔王封印の間より御帰還っ」


 まず、王太子の亡骸に抱き着いて泣いていた年寄りが、殿下帰還の先触れに驚いて、毒杯を飲んで殉死するのを取りやめて駆け寄った。


「ああっ、若様っ、そのお姿はっ?」

「爺、こちらの聖女ターニャに救われてな。我は魔王が封印されていた場所で、地下水や魔王の肉など喰らって頭だけ巨大化していたのだがな、こうして若い頃の体に戻して貰えたのだ」

「それは、それは宜しゅうございましたなあ。聖女様ありがとうございます、どのように感謝すれば宜しいか……」


 両膝を着いて手を取って額に当てて感謝してくれるこの老臣も、長い地下牢暮らしで年齢よりも老けて見え、地上に戻して貰えるまでに、足やあちこちに拷問のダメージが残っていたようなので治療してやる。


「長年の御忠義と働きの数々、お疲れさまでした」

「おお、召喚門より天使が……」


 片目が白濁しきってほぼ失明したのも治り、食料が無かったり貧しかった時は、自分の腿の肉をそぎ落としてでも王太子を飢えさせなかった、忠義の証も全て治した上で若返らせた。


 これだけの人物なので当然天使が降りて来て、魔女にもその苦渋と労苦の履歴が見えたので、この人物を尊敬して王太子にも第五王女にも屈しなかった膝を屈し、あらゆる敬意を払って防御魔法などの祝福バフも与えた。


「もったいなや、私のような者にそこまで、天よりの御使いである大聖女様が、頭など下げないでくださいませ、お礼を言うのはこちらからでございます」


 政治力や謀略を振るって王太子を救う様な、器用で有能な人物ではなく、ある意味愚鈍で実直なだけが長所の人物であったが、魔女の目にも涙があふれた。


「爺は聖女殿に好かれておるな、我もあやかりたいほどじゃ、今までよくやってくれた」

「勿体ないお言葉です」


 魔女も王太子を突き出し、あらゆる罪を被せて処刑するなり、地下牢の住人に戻してやれば終わりだと思っていたが、そうするとこの忠義の人物も地下牢に帰るか、処刑してしまうと間違いなく殉死する。


 これで王太子を殺すことも牢に帰すこともできなくなった。


 毒婦の出身家から来た、魔法の能力も低く剣の腕前も大したことがない、勤勉実直なだけの老人が、魔女から王太子の命を救うことになった。



 それからも支度にグズグズしたが着替えも終わり、やっと毒婦がいる王の間に行けるようになった。


 同行者として大公にも声を掛け、今後の事を話し合うか、毒婦と直接対決になる。


 魔女も口喧嘩よりも力技の方が得意な場合もあるので、あらゆる呪いや防御呪文を貫通するための武具や呪物も用意した。


 王の私室


 王太子死亡の知らせからすぐ、毒婦は立ち直って次の指示を出した。


「あの化け物が地下にいる間に、範囲魔法で爆破してしまいな、どんな化け物だろうと、身動きできないほどの土の中に埋めて、息もできない所にいれば、何日かしたら死ぬだろうさ」

「はっ」


 それでも、爆破終了の報告ではなく、十分もしないで伝声管から別の答えが返って来た。


「王太子殿下ご存命の報あり。聖女の魔法により人の体を取り戻され、若返られた模様」

「やめよっ、あの子を生き埋めにするなっ」

「爆破中止っ、直ちに取りやめよっ」


 現地でも爆破命令を受けていた魔法士が王太子の反応を見付けていて、魔女の護衛に付いていた暗部の者が階段を駆け上がって、大公に報告した所で毒婦の側でも存命を把握した。


 魔法士も命令通りすぐに爆破しても、爆破しないでも叱責を受け、後で何故か責任を取らされて、口封じと王族弑逆の罪で九族まで殺されるので遅滞行動。


 ぐずぐずして命令を実行せず、頭脳体か何か生きていないか何度も探してみて、自分が殺されるのを少しでも遅らせたので魔法士の命も助かった。


「王太子殿下、聖女を伴って国母様の御前に来訪予定。殿下は聖女に感謝し求婚、聖女に対し永遠の忠誠を誓われた模様」

「何だって?」


 流石の毒婦も伝声管からの声を疑い、もう一度聞きなおした。


「殿下の夢、天への道を開いて浄土に至り、民草をも清浄な土地へと導く、それが聖女なら可能と判断された模様」


 伝声管からも、普段はしない返答とか、自分の考えを混ぜた考察も入れて返した。


「あの馬鹿は、もう……」


 夢破れて諦めるのかと思えば、若返らせられて、もっと妄想を拗らせて聖女を信奉してしまい、求婚までして永遠の忠誠を誓って、これから婚姻の許可でも貰いにここにやって来るのが確定した。


 余りの馬鹿さ加減に頭を抱えたが、毒婦と王太子の夢はまだ潰えてはおらず、これだけの大罪人を即座に処刑しなかったのだけは感謝した。


「エトワール、奴は何をしようとしてる? 王太子と結婚して王座と王妃の座を手にして、この国を牛耳るつもりか?」

「さあ、あの子は権力なんか欲しくないし、お金も欲しがらないし、一番大事なのは、お兄ちゃんであるダリーシュ卿から褒められて、可愛がって貰えるようにする事よ。昨日の夜会で「殺すな」とか「教会で全員治療して来い」って言われてね、それを全部守ってるみたいなのよ、案外可愛らしいでしょ? おほほほ」

「何だってぇ?」


 エトワールの所にも、魔女の一家や来歴に友好関係や敵対者カーチャ、それまでの行動や村の教会での成績、好きな物嫌いな物、昨日の夜会での一部始終が調べ上げられて報告され、「お兄ちゃんダイスキ」とか恥ずかしい情報がすべて暗部から漏洩していた。


 毒婦からしても、そんな頭の中がお花畑の連中が来て、これから断罪イベントが起こって、孫からババア関係解消の宣言をされたり、王子の隣にいてヘラヘラ笑っている聖女だか乙女ゲーの主役が王太子の腕に絡めていたり、信じていた婚約者?から国外追放とか処刑宣告をされたり、農業とかスローライフとかモフモフとか魔法具師や加護縫いをさせられたりするのを予想した。


 ついでに断頭台で処刑されてから幽霊になって、鈍臭そうな令嬢に憑依して断罪イベントを回避して相手を叩きのめしたり、エリスの聖杯を探したりするかもしれない。


 そこでまた伝声管から鈴の音が鳴り、傾聴していると信じられないことを言った。


「聖女が伴っている子牛は復活した牛魔王です。既に聖女にテイムされ、従魔として追従しております。聖女が封印を解くと以前のステータスが解放され、聖女を救うために活動する模様」

「「「「ナ、ナンダッテーーーーッ(AA略)」」」」

「話は聞いた、人類は滅亡する(AA略)」


 謀略とか政治力以外には、自前の魔力とか腕力は大したことはない毒婦は、どんなことをしようと最後には牛魔王に蹂躙されて「くっ、殺せっ」から、信じて送り出したのに農家の牛のテクニックにド嵌りして、みさくら語で「んほおおおお」と鳴いたり、アヘ顔ダブルピース極めて携帯で動画送って「やっぱり〇ンポには勝てなかったよ」とか言う羽目になりそうな気がした。


 ミノタウロスの生贄に差し出されても、身代わりになってくれるハーフエルフの男の子の幼馴染がいないので、公開凌辱されたりア〇ルレ〇プされて、幼馴染が見守る前でケツア〇メをキメるのは自分なのだとメスガキに分からされた。



 牛魔王の方も、操縦者である大作君?を守るためなら、通常の50倍のパワーで国際警察機構の基地であるサイロを破壊して発進。


 BF団の放ったロボとかB級の操縦者が来ても無双、例えアンチシズマドライブが働いてビッグファイヤのロボが全電源喪失して停止しても、魔王は原子力?で動いているので活動停止しない。


 アトミックエナジーでタービンが回ってピストン運動もする、アメリカ風に言うと「奴はエネルギーの塊だぜ」みたいなパワーセックスをすると、首とボディがセパレートしている毒婦でBF団ロボ?でも、首から上だけ逃亡することはできない。



 茶でも飲んで待っていると、また他人事の侍従が客人の入来を知らせた。


「王太子殿下御入来です」

「御婆様っ!」

「おお、ザレクや、無事だったかっ」


 出来の悪い子ほどかわいいのか、自分と同じ不遇の極致を歩んで尚、他の候補を追いやって勝ち抜いた強い子が好きなのか、毒婦でも立ち上がって迎え抱き合い、孫が生還したのを泣いて喜んだ。


「聖女ターニャに救われたのです、頭の中に掛かっていたもやのような物も全て払われ、数十年ぶりに気分爽快であります」

「そうかい、良かった」

「御婆様、紹介したい方がおります」

「ああ。あの聖女だね、ここで対決せねばならん」

「対決ですと? 私は彼女を妻に迎えたいと思っております、あの聖なる力と法力なら、いつか天への道さえも開けると思うのです」

「もういい加減にしな、そんなものは無いんだよ、天を目指した者は全員下級天使に焼かれる、高く飛ぼうとしただけで天から撃ち抜かれて、それを超えた所で凄まじい力で爆破されて消し炭にされる。ここは高く飛ぶことも、隣の世界に行くことすら禁じられている牢獄なんだ」


 まるで見て来たように語るが、その光景を見た者でなければ知り得ない事ばかり。


 高度150メートル以上を飛行できるよう、領域を解放する大魔法を行使する、その後にバベルの塔、言語の塔の頂上を目指して飛ぶ。


 この世を支配している上級天使であり神と対話して、愚かな人類の存在を終わらせるか、もっと高い位置にある生物や天使へと昇華する。


 誰も死なない、苦しまない、餓えも乾きも無く、苦行の様な生活や山河すらない生活。


 望むなら世界の果てまで飛んで行き、その境界すら超えて隣の平面世界にまで冒険をする。


 いつかこの永遠の箱庭で、閉じられた安息のエデンで、窒息しそうな窮屈な場所すら飛び出して、卵の殻を割って宇宙にまで羽ばたく。


 永遠の命を得て、眠りながら隣の星系まで旅をして、別の世界の生き物がいるなら対話もする。


 彼岸や涅槃と呼ばれる場所を探し、ついに56億8千万年の彼方に有ると言われる浄土をも目指す。


 誰もが目指して叶わなかった夢で希望、そんなことは何代も何世代も繰り返されて来て、全てが水泡に帰した。


「もう諦めるんだ、お前は出来ることは全てやったよ」

「御婆様?」


 この老婆も、何度も失敗したにもかかわらず、下級天使に塩の柱にされるのすら避け、首から下を挿げ替えてでも別人になって逃げている逃亡者であった。



「続いて大公閣下、聖女ターニャ様、従魔モー様、御入来です」


 執事で家令の爺やも、修道女会の暗部の護衛も、第五王女や聖女騎士団もいたが、客では無いので室外で待機させられた。


 牛魔王は人語は喋れないが、当事者なので入室して客人扱い。


「母上、ご無沙汰しております、ご気分は如何でしょうか?」


 大公が三男なので母として遇する。息子自ら断罪イベントをして、親子関係の破棄とか国外追放とか、聖女を守って剣で立ち向かって切り倒したりはしない。


 そっち系の断罪は魔女が担当する。


「ついに来たか化け物が、望みは何だい? 王太子と結婚して王を退位させ、王座を手に入れるつもりか?」

「お初にお目に掛かります、聖女職を拝命したターニャと申します、お見知り置きを」

「モーーー」


 この部屋を生きて出られるのはこの二人のうち一人、エトワールや王などは圏外と言うか対象外なので、雑魚は生死を自由に選べる。


「はっ、何でザレクをすぐに殺さなかった? 一番の禁忌である魔王の石棺を開いて復活させようとして、複製も作って蘇生実験、新しい体に魔王の体を素材にした天使に似せた魔法生物の製造、どれも王族でも処刑されても仕方がない罪だよ」


 魔女は少し考えてからこう答えた。


「そうですねえ、護衛の皆さんにも相談すると、法の裁きを受けさせるべきだと仰る方もおりましたし、もう弱り切っておられてお命を絶たねばならない状況ではありませんでした」

「フンッ」


 余りの発言に鼻を鳴らした毒札が、この人物が綺麗ごとだけを言う聖女と同じとは思えない。


「それに、地下ではそうして置かないといけないような気がしまして、案の定、忠義の家臣で執事のお方が悲しまれたり殉死なさる事態にならず助かりました」

「はぁ?」


 父王が悲しむ、国母が悲しむ、叔父が悲しむ、国民が嘆き悲しむ、それらを全てすっ飛ばして、何の変哲もない執事が悲しむのを一番に挙げた化け物の思考形態に疑問を持つ。


「あれが一体何をしたって言うんだい」

「地下牢で王太子殿下の目がくり抜かれる時も、手足を切り取られる時も、抵抗して代わりに拷問を受け続け、せめて利き腕と指だけでも残そうとして、拷問官からの有り得ない要求にも耐え、殿下が餓えると自らの腿を削いで肉として供する、常人ならざる人物でなければ出来ない事ばかり、わたくしも感服致しましてございます」


 王太子も自分が食べていた肉が爺の腿肉だとやっと気付いた。


「あれは…… 父がお下げ渡し下された、誕生祝では無かったのか?」

「ぐううっ、ううっ」


 外から老臣が口を押えながら嗚咽する声が聞こえた。


「私如きに母上に歯向かい、地下牢の住人への配給や配膳など許されなかった、許してくれ」


 王までが泣いて頭を下げ、実の息子にすら親らしいことは何もできなかったのを詫びた。


「爺、爺っ、済まなかったっ、何も知らず滋養が付くと喜んでしまった馬鹿な我を責めてくれ。弱く何もできず、虫をテイムする程度の能力しか無かった、愚かな我に忠義を尽くしてくれた恩、必ず返そうと思っていたが、そこまでの苦痛を強いたとは、許してくれ……」


 王太子が膝を付いて老臣の腰や腿に縋って泣く、今は治療されて痛みはないだろうが、当時から先程までの苦痛や心労を察し、他の候補を追いやったり虫で脳を支配してやった鬼で悪魔の心も捨て、暖かい涙で何かが洗い流されるような気までした。


「いえ、宜しいのですよ、若様が王太子へと駆け上がり、更に天への道を歩む所を拝見する、それがこの老体には何よりの喜びでございました」


(ああ、私はなんて事を)


 老人の持つささやかな夢の行方を断ち切り、何もかも破壊したのを後悔した魔女。


 例え下級天使の軍団との大戦争になったとしても、老人の目に、殿下が新たな体を得て天使の如く羽ばたき、大魔法を行使して天への道を開いて、浄土へと至る所を見せてやりたかったと思った。


 毒婦や王がどんな野望を持とうとも興味は無いが、これからは老人の夢を叶えてやろうとまで思った。


「家令様、これから殿下とどうして行きたいですか? ご要望があればお伺いします。わたくしにできる事なら何なりとお申し付けください」


 また国母や王も無視して、老臣の願いだけを聞き届けようとする魔女。


「お主は何を言っておるのだ? ただの家臣、その務めを果たしただけの無能、ザレクを守り抜いて戦う事すらできなかった者に、褒美など取らせる必要などないっ」

「こういう子なのよ、私達みたいな目が節穴じゃなくて、ちゃんと働いた人には報いる、地位とか財産とか考えないで、王様の命令より、忠義の家臣の方が好きなのよ」


 エトワールにも解説され、魔女の特性を少しづつ知る一同。


「恐れながら、直言の許可を頂きたく存じます」

「許可する」


 王の許可が得られたので、ポツリポツリと願いを言い始める老臣。


「願わくば…… 殿下の地位をそのままに、いつか陛下が引退なさる時、次世代の王として御任じ下されば幸いです。此度の罪は全てわたくしが起こした物、処刑台の露と消えようとも悔いはありません」

「ぐううっ」


 ちょっと感動しすぎて、魔女まで嗚咽しそうになって口を押さえた。


「そして、聖女様に置かれましては、殿下のお側においで頂き、民草を浄土へと導く道筋をお示し下さいますようお願い致します」


 お側に、と言うのは、結婚して愛人でも妾でも良いので殿下を支えて、天への道と言う夢を共にかなえて欲しいという意味ではあったが、そこは聞こえなかったことにしてスッキリさっぱり無視した。


「それでは、今回は全て無かったことにして、前から申しておりました通り、魔国からの間者の仕業、修道院長などは全て魔物に入れ替わられて、封印の間の魔王の指示によるものとしては如何でしょうか?」

「許可する」

「ええっ?」


 とんでもない言い草に王まで許可を出してしまい、入牢させられた大公までが驚いた。


「殿下は地下牢におられた頃、魔王に呼ばれるように虫を放ち、僅かな綻びから封印の間に入ると、操り糸を逆に辿られて魔王にテイムされてしまわれ、今日この日まで操られていたのでございます」

「うむ、それが良かろう」

「兄上……」

 

 もう一度王が許可してしまい、自分の息子を救う為だけでなく、全て魔女の言いなりになったのも気になった。


「あ、有難き幸せ、この上はわたくしが全ての罪を背負って処罰を受けます故、殿下のお命だけは何卒っ」

「いかんっ、爺ッ」


 願いが叶いそうなので、すぐに命を絶って盟約の印としようとした老臣だったが、毒は王太子によって奪われた。


「見守るのなら、我が王座に就く日まで待たぬかっ、それまで自裁することなど許さぬっ」

「はい、かたじけないお言葉、この身果てるその日まで、殿下の臣下の一人としてお仕えさせて頂きます」

「うむ、頼んだぞ」


 魔女もデイジーも「ハンカチをご用意ください」の安っっすい芝居でガチ泣きしてしまい、本当にハンカチ出して涙をぬぐっていた。


 結構人情噺に弱い二人だった。


 他の連中が国母で毒婦などアウトオブ眼中だったのが気に入らなかったが、王太子が生き残れる道筋ができたようなので、その点だけは安心した。

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