王城での戦闘
王城奥の院
内城にも跳ね橋で封鎖された場所があり、そこも文官の指示なのか魔物の指令なのか、固く閉じられていて渡れない。
「そこで止まれっ、これは国家への反逆であるっ、王女と言えども攻撃を許可されているっ、武器を捨てて降伏せよっ」
この一行が全員レベル200~300と理解していない人物が多いようで、まだ雑兵を集めればどうにかなると思い込んでいる。
まず王女が最前列に立って口上を述べる。
「跳ね橋を降ろすがよい、下郎共っ」
「掛かったなっ」
王女や最前列の衛兵の足元に転移トラップが開き、付いて来た衛兵は飛ばされたが、王女にも渡していた護符や防御呪文、聖鎧と呼んでも良い純白の装備のお陰で飛ばされなかった。
「ほほう、地の底か石の中にでも転移させたか? 不敬罪と王族暗殺の罪で九族まで殺し尽くしてやろうぞ」
「ヒイイッ」
転移先にも魔法陣を開く設備が無いと転移できないのと、埋めたり石を乗せると発動しないので、「石の中にいる」みたいな必殺のトラップではないが、転移させられた衛兵たちは広い地下牢に直送されていて出られない。
跳ね橋が降りていないので普通なら渡れないが、魔女とデイジーは平然と進んだ。
ブーツの効力で水の上でも歩けるし、空中でも歩くこともできるが、まず視覚効果が高い手段で渡る。
『『羽ばたけ』』
背中に光る翼を生やしてやり、何なら頭の上に光輪を出すこともできるので、視覚効果として光る輪も出してやる。
「て、天使だっ」
「聖女様はやはり神の御遣いっ」
「使徒様、お許しをっ」
スッと飛んで跳ね橋を操作している両側の塔の上に着陸してやると、兵士が泣いてドゲザスタイルになり、頭の上で合掌して泣き叫んだ。
「我が心は天と共にありっ、神を恐れ敬う者なりっ、この身は神の遣いに従いっ、精霊を敬い御心に従順なる僕たらんっ」
聖句の一節を唱えて神の怒りに触れないよう、ひたすら懇願する哀れな信徒。
田舎から出てきた青年達が、背中から光る翼を生やして頭の上に光輪を付けて飛行する生き物を見て連想されるのは、天の遣いである天使しかいないので、それは王様の命令よりも優先される。
竜の翼の形をしているので、言い掛かり的に「悪魔の翼だ」と言う事もできるが、光っているので輪郭がぼやけ、カクカクした所は判別できない。
「橋を降ろしなさい」
「我が心は天と共にあり、神を恐れ敬う者なりっ」
「この身は神の遣いに従いっ、精霊を敬い御心に従順なる僕たらんっ」
神罰を与えられないように、すぐに昇降の取っ手に飛び付き、楔を緩めて自重で橋を降ろした。
「橋が降りるぞ~~っ!」
「退避~~っ!」
聖なる光を直視すると目が潰れるか塩の柱にされると教わっているので、まるで溶接の光を見ないようにする如く、目を閉じて細目で機材を確認して操作した若い兵士達。
「開も~~んっ!」
門番の兵士も警告と安全確認のために大声を出し、大きい閂を複数人で操作して巻き上げ、外開きの門を橋の上まで開いた。
神の軍勢の邪魔をしないよう、全ての兵士の心が折れて、一切反抗を受けず通行できた。
「通すなっ、攻撃せよっ、弓と魔法を放てっ」
「ギーーー(死ね)」
文官の手下で左大臣の残党は、あっという間に魔物に書き換えられ、周囲の兵士に刺されて死んだ。
魔女は暗黒竜から耳元で「殺すな」と命令されて、子宮がキュンキュンしたので殺さないが、デイジーの方は何も言われていないのでsatsugaiする。
それ以降はまるで無人の野を行くように、全兵士が道を開いて道の両側で平伏して、聖句を唱えながら神罰を受けないよう合掌。
「我が心は天と共にありっ、神を恐れ敬う者なりっ、この身は神の遣いに従いっ、精霊を敬い御心に従順なる僕たらんっ」
目を瞑って顔を下に向けて、低空を飛行しながら進む天使?二柱を無事に通すことだけを考えさせられた兵士。
やがて王城の奥の院に到達し、大公がいる場所に近付いて来た。
「先に地下に参りますね、宜しいですか?」
「ああ、私は先に陛下に会いに行ってみるわね」
穢れた場所で拷問部屋もある地下牢、大公は王族なので座敷牢に軟禁だろうが、貴族の聖女騎士団は穢れた場所に入れないのでエトワールに随伴、暗部の者は魔女と一緒に地下牢へ。
「デイジーは上に行って」
「ええ」
光る翼と輪っかを生やしたまま移動してやると、牢番など逃げ出すか土下座を開始するかの二択で、2フロアほど降りるとすぐに大公に面会できた。
「お待たせしました養父様、エトワール様は陛下の所に向かっております。不当な扱いなど受けませんでしたか?」
「ああ、流石に拷問までは受けなんだ」
大公から見ても、光の翼を生やして光輪がある生き物は天使にしか見えない。
自分と同じ悪逆な娘だが、本当に天の使いで、天に召されるエトワールに代わって下生した存在ではないかと思えた。
先程まで横柄な態度だった牢番も、土下座して頭の上に座敷牢の鍵を差し出して震えている。
「我が心は天と共にありっ、神を恐れ敬う者なりっ、この身は神の遣いに従いっ、精霊を敬い御心に従順なる僕たらんっ(ループ)」
光る翼を見ると失明するか塩の柱になると思っている牢番も、顔を上げて視線をむけようとはしなかった。
「どなたか? お救いをっ」
大公を牢から出していると、近くの牢から声がして暗部の者が調べに行った。
特に危険も無いので魔女も見に行く。
「さて? どのような罪で入牢させられたのですか?」
「おおっ、天使様が舞い降りられたっ、王女殿下をお救い下さいっ」
これまたカクカクシカジカで説明されると、政争に破れた姫が収監され、身を穢されて強制的に王位継承権剥奪。
魔眼も取り外されて視力も失い、逃げられないように膝から下も取られ、グリフィスさんに近い刑を受けている、ブラッディーマリーさんみたいな殿下がいるらしい。
まあ姫と言っても、王が60歳超えなので40のオバハン、王子も40超えのオッサン。
「他にも捕らえられた王子殿下や王女殿下はいらっしゃいませんか?」
「おられます、どうかお救いをっ」
よくある第一王子派とか第二王子派の派閥争いで、弱小派閥は潰され殺され、それでも捕らえた王族を殺すのは許されないので、毒殺暗殺された者以外は収監されている。
逃げたとか亡命したとか魔国に国を売ったとか、適当な理由を付けられて政治的にも人生も葬られた人物が多いそうで、とりあえず全員救出する。
「この地下牢に犯罪者などいないようです、全員救いましょう」
「はっ」
暗部の者が展開して、全ての牢を開けて負傷者は治療してしまう。
王の首を挿げ替えるにしても、第一王子とか第二王子は魔物が降りて来るはずなので全員処刑。
助け出した者の中から、魔女に好意を持ったり忠誠を誓う者がいれば、王にしてしまうのも可能。
(これは拾い物、貴貨まさに置くべし)
拷問の結果ズタボロにされた者も、時間を巻き戻せば苦痛の記憶を消すことも出来る。
第五王女は早々に継承権など捨てて、一生を修道女会で過ごすと決めたので被害を受けなかった。
魔女は牢にも入らず、通路を歩きながら外から全員治療してしまい、事情聴取は全て暗部に任せた。
「殿下っ、殿下ああっ! よくぞご無事でっ」
「爺っ! 天使様が足も目も治してくださいましたっ」
感動の対面なんかもあるようだが、利用できる殿下の体を汚したと言う人物を完全に口封じしなければならない。
「先程逃げた牢番や拷問官、人としてやってはならぬ罪を犯したようです、処罰を」
「はっ」
探査魔法を駆使して、暗部の者が追跡する。穢れた場所や行為を見て聖女が義憤に燃えていると勘違いしたニンジャやアサシンは、可能な限り残酷な手段で拷問官と牢番を全員処刑した。
責任者だけは手足や下半身を取り外して、軽量化してから尋問用に持ち帰った。
結局数名の王子王女が救出され、他にも塔に軟禁されている、ベテラン?の虜囚がいると証言があった。
全員心の芯までへし折られていて、治療はしたがPTSDで夜中に泣き叫んだり、こどおじニート無職みたいな、今の自分の状況を正当化し続ける、腐った嘘と言い訳だけ垂れ流す負け犬に加工済みになっていた。
全員執事やメイドが一緒に収監されていて、視力も奪われて足も無い王子や姫の面倒を見させられていた模様。
相撲令嬢物ならここで、獣人の血を引いている正当な継承権を持つ、尊いネコミミショタ王子とか救出するのが王道だが、無傷なのは我が儘放題で育った腐ったダメ王子か、ロリょぅじょ姫ぐらいしか得られなかった。
傀儡として置くにはこの程度が望ましい。
「ああ、天使様、姫殿下をお救い下さってありがとうございます」
「あ、ありがとうございます」
まだ物心つく前の王子なら、亡国となった家臣の爺やが自分の孫として育て上げ、どっかの集落でガリアン掘り出してマーダル軍と戦ったり、いつものブチメカに乗った声が速水奨さんの騎士が、色々乗り換えても毎回負けてしまうのがお約束だが、拷問もレイプもされていない、性格もまともで無傷と思われる姫を使う事にした。
「このような恐ろしい所からはすぐお逃げになりますか? まず修道女会にお越し下されば出立の準備させて頂きます。以後は継承権など捨ててしまい、心穏やかに一生をお過ごしください」
「はい、お連れ下さい」
魔女は要救護者一同を連れ、ブラッディーマリさんとかルイ17世でも監禁されているような塔がある広場に向かった。
王の居城
エトワールとデイジー達が王の居城に入場しようとすると、最終防衛線らしき兵団が封鎖していた。
「王を暗殺せんとする魔物どもめっ、これ以上通さんぞっ、武器を捨てて降伏せよっ」
兵士全員薬飲まされてイカれているようで、立場認識ができないで「投影」という自己紹介を始める一団。
この連中が伏魔殿の最後の生き残りで、こいつらを締め上げてしまい、王様を確保して伝国の玉璽を手に入れて、武力を持たない文官を始末すれば事態は解決する。
「我こそは王国第一の武芸者、近衛兵一等の騎士なりっ、剣での一騎打ちと剣士による十番勝負を申し込むっ」
力士での相撲十番勝負なら受けても良かったが、魔物を呼んで始末しようとすると、第五王女が一騎打ちを受けてしまった。
「面白い、我が剣を受けてみよっ」
レベル300程度の聖騎士と、レベル99辺りの武芸者で近衛隊長ぐらいの敵。
数日前なら最強で通ったのだが、竜騎士団や夜会での余興でレベルアップがあってからは雑魚。
「なんのっ、儀仗兵の聖女騎士団なぞ、ただの一太刀でっ、アカーーンッ」
竜の鱗の剣と刃を交えると、腕力の差と武器の差で、ミスリル程度の剣はすぐに切り落とされてしまい、シールドバッシュで吹き飛ばされた。
「弱いっ」
「そ、そんな馬鹿な……」
まず一名が脱落し、その後も自称勇者とか衛士長とか千人長が名乗り出たが、薔薇様が対戦したり、平民上がりの戦士にはやサムライが対戦してやり、攻撃力が一桁か二桁違うサムライソードで瞬殺。
王子派の悪行を知りながら、相手方の剣士を全員斬り捨てて来た、近衛隊長達の野望が砕かれたようなので、ロボ戦が出来る大きさにしてやるため、大きめの魔物を呼んだ。
「ギーーーー(死ね)」
戦隊物の大きさではなく、仮面ライダーの小ボス程度、1クール終了時か、オーズの四天王最弱ぐらいのCG製作の敵がプリントアウトされた。
「ああっ、近衛隊長は魔物だったのか?」
「それで尋常ではない強さを得たのか」
上半身はそのままで、下半身がタコかワームのような触手が出現。
「ぬははははっ、ついにバレたかっ、そうだ、第二王子も近衛隊長も魔物である我らが食い殺し、脳の記憶を奪い去ったのだ」
「なっ?」
この場で陣頭指揮を執っていて、魔物に食われた記憶などない第二王子は、デイジーに喋らされている近衛隊長の言葉に絶句した。
「ちがうっ、違うぞっ!」
もうそんなもん聞いてる奴はおらず、薬がバッチリキマちゃっている兵士も、第二王子は魔物に食われて入れ替わられていると言うのが定説?で既定路線になった。
十数名の聖女騎士団と、サムライ職の者と暗部のアサシン少数でどうにかできそうな敵なので、半包囲してまず魔法を撃ち込む。
「距離を取って魔法を放てっ、ライトニングブラストッ」
「ヘルトルネードッ」
白魔法、第八階梯の攻撃魔法と、サムライからの第十階梯魔法が放たれ、ちょっとオーバーキル気味だったが、魔物の自動回復でどうにか回復した元近衛隊長。
「たわけがっ、この程度で高位魔族を倒せると思ったか?」
聖女騎士団一同と元修道女のサムライが物理攻撃を敢行し、刃物で触手を切り落とすがすぐに再生してしまう。
デイジーの竜魔術で消し飛ばしても良かったが、十階梯を超えると王の居城まで吹き飛ばしてしまう。
そこで王の錫杖を構えたエトワールが、白魔法最大の魔法を行使した。
「ホーリームーンライトッ」
現在の時刻では月が出ているので、月の光が収束し始め、分厚い雲を貫いて、降り続いていたブラックレインを一瞬で蒸発させ、高位魔族?の体を塩の柱に変え始めた。
「うあああっ、あああああああっ!」
真昼よりも明るい光の中で、元近衛隊長は神罰を受け、苦しみながら聖なる炎と光で浄化され、やがて動くことも悲鳴を上げることもできなくなり、塩の柱にされて崩れ落ちた。
「あれこそがエトワール様最大の攻撃呪文」
「隣国との戦争でも、悪しき者を全て塩の柱に変えた神聖魔法っ」
「あのお方こそエトワール様だっ」
「まだご存命であらせられるっ」
薬と暗示を与えられ、竜の魔女に殺されたエトワールの仇討ちの為に死兵となり、宗教的な陶酔と高揚感で死も恐れない兵となっていた者達が、大聖女の法服を着た人物が神々しい錫杖を振るい、霊験あらたかなマントまで羽織っているのを見て、あれこそが神の使いである正当覚者で救世主で預言者だと確信した。
変数XやYを埋めるまでも無く、足し算引き算しただけで悪の根源がはじき出された。
「第二王子に化けた魔族を捕らえよっ」
「応っ」
「違うっ、我は魔物にあらずっ」
一般兵に捕らえられる寸前の第二王子。それでも変な証言とか自白とかカミングアウトをされると困るので、いつもの手段と言えば?
「ギーーーー(死ね)」
見る間に第二王子は青い肌をした高位魔族に変えられ、頭から大きな巻き角まで生やされ、まだ収まっていない月の光が第二王子に収束し、塩の柱へと変えた。
「ああっ、あああああっ!」
悲鳴と言うよりも、浄化されて魂までも清潔にされ、輪廻の輪からも解放され、現世の煉獄で地獄でもある場所での苦行や、原罪でさえも消され、穏やかな表情で消えて行った。
全身が塩の柱になる前に、討伐証明としてデイジーが飛んで行って首を落とし、首桶のようなホルマリン入りの瓶詰にして、青い皮膚の色や角を判別できる状態で保存した。
ちなみに仏陀というのは、輪廻の輪の苦行からも赦された悟りを開いた人物の意味なので、新興宗教で言う「仏陀の生まれ変わり」が教主や猊下と呼ばれている所は全部詐欺師の集団。
苦渋の塔
いつも苦痛の叫びや苦しみの声、世を呪い続ける怨嗟の声が絶えない場所なので、通称苦渋の塔と呼ばれる場所。
ここにも王族や貴族が収容されていて、最下層には先代の魔王、ミノタウロスの最上位種まで進化し、ミノタウロスの同胞を大量に繁殖させた養牛大王、牛魔王の屍が厳重に隔離されていると言われる。
『開錠』
呪いや魔術での厳重過ぎる拘束を、竜化術や見えない手で引き千切り、最終安全ロックをたやすく開錠した魔女。
「おやめ下さいっ、ここは先代魔王が封印されていると言われる場所、絶対に地下に立ち入ってはいけませんっ」
その呪いの余波で、地上階にいる者は呪いを受け続け、ある者は魔物に姿を変え、リッチやヴァンパイアに変化した者までいると言われるこの世の地獄。
年老いた管理人も魔物化が始まり、魔に堕ちた時に一般兵や近衛に始末される番人が、泣き叫んで死のケガレを外に出さないように懇願する。
現在天使形態で後光まで差している魔女なので、番人の顔や頭の魔物化している所からジュージューと煙が立ち上り、人間へと戻されて行く。
「貴方も治療して差し上げましょう」
「あああっ?」
老人の上にも天使が舞い降りて、この穢れた仕事に志願?する前の清浄な姿へと戻された。
「ああ、貴方様こそ神が遣わされた使徒、どうかこの塔に隔離された哀れな者達をお救い下さいっ」
他の兵士たちのように、土下座謝罪?で頭の上で合掌し、塔の中の各種鍵を提出した老人。
「ええ、死の穢れを全て消してみましょう」
「ありがたや、ありがたや」
先代勇者にすらできなかった前魔王の完全調伏や消滅。それすらもこの天使?になら可能ではないかと思い始める暗部の修道女たち。
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