閑話休題4
竜の巣
途中からスゲエ雨が降り始めて、それも土か埃が混じってるのか真っ黒で、防御魔法ではじきながら進むと、巣の近くでは降ってなかったので助かった。
まず城壁の上にある受付に行って、兄貴の安否を確かめる。
『グリーンドラゴンとその番です。炎竜の娘と番は来てますか?』
『確か、勇者とホワイトドラゴンと一緒に通った』
『ああっ、生きてるっ』
兄貴とベル姉は生きてたようなので入館証に記入して、炎竜の娘と番に面会と書いて通過。
祝福が降り注ぐ麻雀卓で碁会所で将棋倶楽部だろうと思って行くと、外に異常な量の食い物と酒を配り終わった箱があった。
食い物と酒はまだ配ってて、若いのや雇われてるドラゴニュートが空箱ばらして積み上げてる。
「祭りでもあったのか?」
オッチャンオバチャンが通りすがりに、鱗とか皮とか牙に骨とか、誰かが置いたアイテムボックスに、まるで捨てるように放り込んでいる。
公共の鱗捨て場でもできたんだろうか?
『兄ちゃんも食べるかい?』
『は、はあ』
袋入りの乾き物のツマミはまだまだ有るようで、人化してるオバチャンに渡されたから有難く頂戴して、酒はまだ早いのでジュースらしき物のカップをくれた。
『喉乾いたか? お前も飲め』
竜のままのグリーンに、口を開けさせてカップ丸ごと流し込む。
『うま~~~~~いっ!』
ジュース飲ませると、上向いて口からビーム吐いて、何やら有らぬことを叫んで、ドップラー効果で音が遠ざかりながら走って行ってしまった。
『口の中の味覚を感じる所が全部「幸せ」って言って、のど越しを感じる所まで「幸せ」って言って、食道から胃袋まで全部全部「幸せ」って言って……」
あいつがあんな早口で、長セリフ言うの初めて見た。
『誰でも最初に飲んだらああなるんだよ、ハッピーッて言うらしい』
『はあ』
『あんたの姉ちゃんが販売機ごと置いて行ってくれてね、金貨で払ってくれてるから、ここ押すだけで出て来るんだ』
あのセコい姉ちゃんが金貨? まあタダなのか俺用にもう一杯貰ったので飲んでみた。
『うま~~~~~~いっ!』
俺も飲むのが止まらないで、最後まで飲むと口からビーム吐きながら、グリーン追い掛けて同じ方向に走り出した。
『頭の天辺まで「美味い」が突き抜けて、腹の中まで「美味い」が降りてきて、両手の先まで「美味い」が通って、つま先までも「美味い」がっ……』
兄貴とベル姉探さないといけないのに、俺達は竜の巣一周してから戻って来た。
「「ハーハーハー」」
「走って来て喉乾いただろう? もう一杯飲むかい?」
「「ハイ」」
もう一杯貰ったので、飲みながら碁会所で将棋倶楽部に入って、兄貴とベル姉を探した。
「いた~~~~っ!」
こっちは心配してたのに、二人と白竜の兄ちゃんは、甘い物配り終わった箱片付けてて、兄貴はスイスロール一本食いしてた。
「おお、来たのか?」
「来たのか?じゃねえよっ、炎竜のオバチャン殺されたみたいだし、家吹き飛んでるし、王都でも窓ガラス全部吹き飛んでんだぞっ? 何で平気な顔してスイスロール食ってんだよっ!」
「ああ、俺も一回死んだみたいでよ……」
そこからはカクカクシカジカで説明されて、炎竜のオバチャン帰ろうとしたのに竜騎士団に爆撃されて、真下にいたからまだ生きてた兵士も凍らされるわ爆発させられるわで滅茶苦茶。
そこで気絶してどうなったか覚えてないらしいけど、ベル姉が竜化して掴んで逃げて、自分でレジストできなかったからどっかの時点で死んでたそうだ。
「あたしも、笑って人焼いて、ゲラゲラ笑ってベル鳴らして母さん呼んだって、姉さんに殴られて前歯全部折られて、鼻も折られて…… お腹の中の卵全部割られそうになって」
「何てことしやがんだ、あのバカ」
そう言やあクソ姉がいない、好き放題しやがって、全部お前の仕業だろうが。
「そう言わないで、姉さんの呪文じゃなけりゃ、こいつ生き返らなかったんだから……」
「はあ」
顔赤らめて何か人間らしくなったというか、前みたいに人間をゴミとして扱わなくなったベル姉。
まともになった番ってのも羨ましかったけど、妙に色っぽくなって兄貴といい雰囲気なのが羨ましい。
「ガアアアアッ!」
またグリーンに怒られて噛まれた。お前、ここではデカ過ぎるから人化しとけ。
こっちもカクカクシカジカで説明して、正教会に挨拶に行かされたら、暗黒竜の兄ちゃんが一回ヤラカシてたらしくて、竜関連嫌われまくり。
異端審問受けそうだったけど、奴らの方が天使召還とか天使みたいな魔法生物作ったり、人造勇者製造実験とか牛魔王蘇生実験やってたんで、最後は下級天使に通報して、野望だとか蔓防とか粉砕してやったと話した。
「スゲエな、その天使みたいな魔法生物、神竜のおっちゃんレベルで、天使が太陽の光まで収束させて潰すってよっぽどだぞ? 一番上のアニキでも竜化しないで倒せるかどうか?」
ああ、そんなヤバイ奴と戦ってたんだ。そりゃあ下級天使数百匹来るよな。
話してたら自販機の取り合いしてたとこでクソ姉の声が聞こえた。
「おらはまだ、二台の自販機を持っておりますだ」
「「「ナンダッテーッ!」」」
まだ二回の変身を残してるとか私の戦闘力は53万です、みたいな話してるクソ姉を見付けたんで一言言っておく。
「おい、余計な事ばっかりしやがって、クソ弱いままの竜騎士団だったら、炎竜のオバチャンも兄貴も殺されずに済んだのに、全部お前のせいだろっ?」
「ああ? 口からクソ垂れる前と後には「押忍」付けろつっただろうが? 魔王軍も来てるんだぞ? 兄ちゃん一人に押し付けるつもりか?」
色々とギャーギャー言い合ってたら、腹に一発スゲエの入れられて黙らさた。
やっぱり口より先に手か足が出るクソ姉。さっき飲んだハッピーとか出さないように努力してたら何か言って去った。
「これから長老のとこに詫び入れに行く、邪魔すんじゃねえぞ」
「ガアアアアッ!」
俺が殴られたからグリーンが食って掛かってるが、ソイツにだけは歯向かうな、ベル姉みたいに前歯全部折られて鼻も折られる。
妹でも平気で腹パン堕胎してくるし、膝蹴り堕胎とかされたら内臓破裂して子供産めなくされる。
兄貴とベル姉も連れて行かれて、結局処罰無しで厳重注意ぐらいで済んだみたいだ。
クソ姉は報告か何かしに竜騎士団に戻ったみたいだから、兄貴とハッピーでも飲んで飯食ってダベってた。
「俺もベルも修道士会行ってりゃあ良かったな、そうすりゃあ先代魔王か修道院長ぶっ倒して兄貴(暗黒竜)に褒めて貰えるか、十字勲章物だったのにな?」
「はは、弟の手柄取んなよ」
竜騎士団に爆撃されてその程度で死んだり、ベル姉に助けて貰って義理の親殺されて生き恥晒したり、兄貴にもカッコワルイとこ見せて、最後にクソ姉に借り作っちまったから、ソッチの話題には出来るだけ触れないようにしてる。
女の前で何もできないで逆に助けて貰って、義理の母親殺されたなんて、俺だったら自殺モンの恥だ。
兄貴も当然そう思ってるだろう。
ベル姉も手の震えが止まらないみたいで、母親目の前で殺されて、もう少しで兄貴も死んで番無くして一生独身、クソ姉に「悪魔の子だ」って卵割られてたら何も残らねえ。
もう自殺するぐらいしか無くて、俺ら男手の弟ではどうしようもなくなって、仲悪い片翼の姉ちゃんにギューっとして貰っても、クソ親父が一緒に泣いてくれてもどうもならなくなるとこだった。
仲良さそうなグリーンが慰めてくれるかと言ったら、人間の兄貴死んでも笑うようなクズだし、今まで喧嘩した分「ざまあみろ」というぐらいのクズだから、下手すりゃ殺し合いになる。
ベル姉は改心したんじゃなくて、人間の怖さ叩き込まれて心折られて、もうツッパレなくされただけだ。
長老からも止められて、親の仇討ちにもいけねえ、仲間も食い物と酒にでも釣られたのか大半捕まって黙らされた。
弟も来なかったから、どっかで治療してるのか、ダインに止められてここまで来れない。
兄貴も今すぐ動けないから、身軽なのは俺だけだ。
まあ、軽~く炎竜のオバチャンの仇でも取りに行きますか?
竜騎士団長だか隊員の誰か、ベル姉逃がそうと反対方向に飛んでった炎竜のオバチャンに、メテオストライク撃ち込んだ奴だけは殺しに行こう。
「ちょっと便所に、今日は早かったし忙しかったからどっかで寝て来るわ」
「ああ、また明日な」
俺は軽く便所でも行って、そのままグリーン連れて雑魚寝できそうな場所でも探す雰囲気で席を立った。
「行かないで」
お、流石俺の番、目がビカビカビカーって光って狂ってて、はらわた煮えくりかえってるの、見ただけで気付いたか。
兄貴にもバレないぐらい抑えたんだけどなあ? まああっちもベル姉もお察しで「任せた」って所か?
「お前は来るな」
「いやっ、相手はあの姉ちゃんだよ? きっと殺される」
「なあに、乱闘の最中に、竜騎士団長か誰か、炎竜のオバチャン殺した奴暗殺するだけだ、バレやしねえ。何なら人間側に付いて、仲間の振りして後ろからグッサリだ」
「もうやめてっ」
こいつが改心したりするはずがねえ、あるとしたらベル姉みたいに、俺がクソ姉にぶっ殺されたり、こいつも殺されそうになってグリーンドラゴンの母ちゃんも助けに来て、ミナゴロシにされてからだ。
「やめてっ、どっかで私、無茶苦茶にしていいから、今日は堪えてっ」
そう言われてもおっ立ってるモンも違うし、はらわた煮えくり返ってるのは女抱いても収まらねえよ。
まあ世間様とは価値観も考え方も違うし、竜の子供育てて一緒に暮らして、兄弟姉妹だと本気で言ってる馬鹿家族だ。
綺麗事しか言わねえ村長やら役人とか宣教師とは、家ごと喧嘩して村八分の世界。
正教会みたいな腐り果てた嘘とキレイゴトしか言わねえ奴らとは、死んでも同じ空気吸えねえ。
どいつもこいつもキッチリ型に嵌めてやる。
本編に戻る
ちょっと短いですが、お正月スペシャル?で一人称の練習を止めて本編に戻します。
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