エトワール(フランス語圏、輝く星)
正教会修道女会
少し戻って炎竜も出現していない時間帯。
戴冠式や任命式を終えていた魔女のターニャと契約竜のデイジーは、奥の院まで連れて行かれた。
その途中、貴族家から来ている腰掛けの聖女で、取り巻きまで連れている悪役令嬢の目に留まって側仕えに忠告された。
「そこの平民っ、子爵様の令嬢とすれ違いながら目礼で済ますとは何事かっ? 通路の端に控え、跪いて面を下げよっ」
同じ聖女の法服を着ているので通常は見分けが付かない。顔を覚えている聖女熟練者やベテラン修道士でなければ無理な注文。
「何を言っているのですかっ? 同じ聖女であるからには平等、その上このお二方はエトワール様に匹敵する大聖女なのですよ? 階位一級の聖女、貴方たちより上級な立場なのです、貴方こそ控えなさいっ」
案内の修道女が注意してくれたが、ここでも貴族優先。
「ふんっ、聖女とか一級の大聖女は貴族家出身がなるものよ。身分を弁えなさい」
「そうよ、平民のくせに何? その帽子、そんな高い帽子を被れるのはね、貴族の子女だけなのよ」
「アハハハハハ」
まずは取り巻きの側仕えからの軽いジャブ。
大公家で貰った聖女帽よりも高い、西洋のコック帽ぐらい高く、丸みを帯びた法王が被るような階位一級の冠を笑われた。
「およしなさい貴方たち、正教会での立ち位置を何も知りもしない平民に気の毒ですわ」
「おほほほほほ」
本命の悪役令嬢が出て来て先制パンチ。ここで魔物を召喚して全員魔物にしてやっても良かったが、祭壇前でミサの途中とか、夜会で断罪して来た時に衆目の前で魔物にしてやることにして見送った。
「何とか言いなさい、喋れないの? それとも貴族の言葉は分からないぐらい田舎者なのかしら?」
「アハハハハハ」
「クキーカカココケケ」
ここで契約竜のデイジーが軽い嫌がらせで悪戯をしてやった。
(え?)
(あれ?)
(何?)
(これ?)
取り巻き四人が自分の体に出現した「人間にはあってはならない突起」に気付いて他人を蔑む笑顔が消えた。
最上位の貴族にも同じ物を付けてやったが、気が付いてないようなので放置する。
「あら? 人間の言葉も喋れないの? 貴方竜なんですってね、今すぐ神聖な場所から出て行きなさいっ、化け物の異教徒っ」
扇子など振って、臭い物を振り払うようにして、吐き捨てるように言い切った悪役令嬢。
「わたくしが予想、いいえ、予言して差し上げるわ。貴方たちは一週間以内にここを出て行くことになる。それも命まで失って変わり果てた姿で家に帰ることになる、これは決定事項よっ、オホホホホホホッ」
殺人予告までしてから、高笑いして去っていく悪役令嬢。
「後で聖女騎士団の団長、第五王女様にお伝えしてお叱りを頂きますよっ、覚えておきなさいっ」
修道女が怒りの捨て台詞まで言ってくれたが、後でデイジーの悪戯に気付いて全員青くなって、周囲にバレると高い所に吊るされるか、毒でも飲むように命令されて自決させられる。
『もう、簡単に殺しちゃダメじゃない』
『うふふ、アレが自分の部屋に帰ったら、どうなるのか楽しみね』
案内の修道女達に気付かれないように竜語で会話。偉そうな貴族令嬢で、治療にも殆ど参加しない連中は、自分の処刑執行書類に自分でサインした。
その後、奥の院では、本日はどこかの貴族家に復活や治療に出掛けていた、杖をついた高齢の大聖女と面会させられた。
「あら?」
「あら?」
「クキーー?」
三人とも餌代の掛からない猫を飼っていて、どちらも猫の皮を三、四枚重ね着している相手で、自分の同類なのだと分かったので比較的早く打ち解けた。
「貴方が新しい大聖女さんね、何でも竜語の魔法を使うとか」
「はい、魔力はゼロで普通の魔法は全然使えないんですけど、赤ちゃんの頃から姉の竜に育てて貰って、人間の言葉より竜の言葉の方が得意なんです」
56年前の天然痘禍で一度魔法が使えなくなり、家族からは「存在しなかった、天然痘で死んだ」扱いをされて来た聖女は、楽しそうな家族の中で育った魔女を羨んだ。
「へえ~」
「本当は15になるまで魔法は覚えさせないって姉が言ってたんですけど、姉が竜騎士団に勤め始めて、竜の治療魔法を使ったから正教会に連れて行かれて、死ぬまで外に出られないって聞いたそうなんです。そしたら私や弟を身代わりに差し出す気になって、急に竜と契約させられて魔法も覚えさせられたんです」
エトワールと同じく、この魔女も家族の被害者なのだが、楽しそうに話しているので、困った状況にいるのではないと思えた。
「そうだったの。私もねえ、天然痘を患ってから治療魔法が使えなくなって苦労したわ。代々聖女を出す家の中で、魔力がほぼなくて初級の治療魔法も覚えられずに、家の恥だからって貴族学校にも行かせて貰えず、地下の牢屋みたいな所で生活させられたの」
この大聖女も不遇系聖女の定番の少女時代を送らされたらしく、屋根裏部屋とか馬小屋で奴隷同然の生活をさせられた訳では無かったものの、地下の座敷牢で監禁された。
父母や姉と妹からも「役立たず」「家の恥」「母の不貞の子」と呼ばれ、浮気などしていない無実の母から特に厳しい仕打ちを受ける系統の苦労をさせられた。
座敷牢の面倒を見る使用人からも厳しい仕打ちを受け、「出来損ない」「能無し」と言われて笑われてさげすまれ続けた。
食事も無茶苦茶になった物を与えられ、良い食べ物は使用人に取られ、貧しい粗末な食事をネズミやゴキブリに奪われながら食べる定番の不遇時代を送ったらしい。
「そうでしたか」
「でもね、15の夜、生誕祭の鐘が鳴る中で天啓を受けてね、そこから第八階梯のパーフェクトヒールが使えるようになったの」
どこかのエクスプロージョンしか使えない、紅魔族の「頭がおかしい魔法使い」みたいに上級魔法から覚えた大聖女。
寝ているとネズミに耳を齧られたり、ゴキブリに体の上を這いまわられる生活が嫌で、常時自分を守る神聖なバリヤーを無意識に張り続け、屋敷の地下に入って来る病害虫と小動物を一匹残らず抹殺していると経験値が貯まりまくり、レベル99でステータスをカンストしてようやく白魔法を使えるようになり、最後の最後に死者復活呪文を覚えた。
「それから色々あって大聖女になったんだけど、大変だったわ」
生誕祭の夜、魔法が使えるようになったのを共に喜んでくれた、唯一自分を助けてくれる親友で使用人が毒見して自分の代わりに毒殺され、白魔法にもある攻撃魔法で地下牢と貴族家を全て破壊し、自分を毒殺しようとした両親にも思い知らせて白魔法で焼き尽くした。
自らを正教会に売り渡してでも死んだ親友を救おうとしたが、4分以上経過した死人を生き返らせる者はおらず、貴族家を全滅させた経験値と、町中の病害虫を抹殺した経験値で超越者となって、ハーデストモードクリアの特典で覚えた死者復活魔法で親友を救った。
色々な悪行の数々をカクカクシカジカで語るに語り、楽しい茶会にはなったが、初対面の魔女などには決して教えてはいけない内容まで簡単に教えてしまった天然系の聖女。
尚、この聖女の生家は、今も神聖な白い炎で焼き尽くされていて、普通の人間が近寄ると原罪の罪でも有るのか、塩の柱にされて魂まで浄化される。
「ああ、この奥の院の聖堂ってね、聖女が独り言を言ったり、神様にお願いをすると全部叶ってしまうのよ、貴方も一度お試しなさい」
「はい」
それ以降は、ざまあ街道を突っ走り、自分を虐げ続けた親戚も生き残っていた姉妹も全員排除、貴族家当主の座は自分が確保したが、奥の院からは出られないので仲が良かった従弟を代官としている。
それから地下でもずっと世話になった、親友で使用人だけをここに連れて来た。
「聖堂でね「私を虐げ続けた親族を全員地獄に落としてください」とか「生き残っている姉や妹、使用人たちを乞食以下の生活に落としてください」って神様に願うとね、正教会の暗部で暗殺部隊が、私の姉妹の乙女を無理矢理奪って白魔法が使えないようしてから、本当の地獄に送り込んでくれたの」
この内容を笑顔で語れる悪魔が大聖女なのだが、間違っているのは世の中なので、狂っている聖女の方が正しい。
「あの偉そうだった姉も妹も、離れ小島の支部に監禁して貧しい食事だけで飼って、毎日原住民の相手をさせる苦行を続けさせてくれて、屋敷の使用人たちは足切りの刑(膝を反対側に折り曲げる)にしてから売春宿に送り込んで、梅毒で死ぬまで働かせてくれて(男女問わず)私のお願いを全部実行してから報告書を献上してくれたわ」
「アハハハハハハハハハハハハッ」
「ケケーッ、コココカカッカケケッ」
今までこの話をすると、どれだけ親しい人物でもドン引きして二度と来なくなったりしたものだが、同じ心の闇を持っているターニャとデイジーは腹を抱えて大爆笑で返してくれた。
本当の意味で打ち解けた三人は、年齢も種族も違うが親友になれた。
「貴方達、私の妹にならない?」
「へ?」
「キケ?」
修道女会にも姉妹制度とかエトワール様の妹になれる制度があり、おねえさまが妹と契約して妹を指導して行く決まりがある。
最高権力者である先任の大聖女が姉になって後見人になると、ターニャの地位的にも政治的にも歯向かう者が存在しなくなる。
「私が後見人になって姉になると、あなたを虐めたり罵ったり馬鹿にする奴らが全部消えてなくなるわ、結構いい条件でしょう?」
「ええ、喜んでお受けします」
「カルル、クケキカ」
後はロザリオでも交換するのか、姉妹の印を誰にでも見えるようにしなければならない。
「ねえ、イケリア? この子達と姉妹の契約をしたいの、道具や書類を揃えてくれる?」
「姉妹契約ですか?」
まだ幼すぎる気はするが、同じ大聖女同士なのでおかしな話ではない。
先任大聖女が新人大聖女を指導するので、ある意味正しい道でもある。
「少々お待ちください」
大聖女の親友で唯一の使用人は、慌てて書類一式を揃えに行き、大聖女同士が姉妹になるに相応しい品物も用意しに行った。
「これからは私を「お姉さま」とお呼びなさい、どれだけ鈍い人でも、それだけで貴方が私の妹だと気付くわ」
「はい、お姉さま」
「コココカケキカ」
エトワールは今までイケリア以外の親友も妹も一人も作らなかったが、初めて妹を持てたことに非常に満足した。
自分が死んだ後、後継者にするには目の前の魔女で悪魔しかいないとまで惚れ込んだ。
「私だけ保護して頂いて楽をするのは気が引けますわ、お姉さまにもお返ししないと(ニヤリ)」
ターニャもお姉さまが欲しがりそうな物を探し、諦念して死を覚悟しているような聖女に治療をすることにした。
「え?」
「お姉さま? 歩くのが辛そうですけど膝とか痛みますか? 今まで負った傷で一番古い傷はどれですか?」
可愛い妹が悪魔の顔で笑いかけるのを見て、エトワールもその意図に気付いた。
「貴方まさか? 確か天使を召喚して時間を巻き戻すって言ってたわね……」
「ええ、そのまさかです」
竜の敵でもなく、自分の敵でもない、魔女は自分が与えられる最高の物で答えようとした。
「わ、脇腹よ…… 地下牢も屋敷も白魔法の攻撃魔法で壊して、私とイケリアを毒殺しようとした両親を叩きのめした生誕祭の15の夜、父の護衛に毒剣で脇腹を刺されたわ」
先程の話から苦労の内容が偲ばれたが、魔女もそこまで壮絶な事件だったとは思わなかった。
それでも気を取り直して治療を始める。
「クルルカー、コココッ、クリクククッ、キキリス、コローラ、カトリストルーカ(全ての病よ消え失せろ、脇腹の傷よ15のその日まで戻れ)」
それ以前まで戻して心の傷も消すことさえできたが、もしそう望むのなら後日もう一度治療すれば良い。
まずは若返りさせ膝の痛みと残りの寿命の少なさを消すことにした。
奥の院は光と癒しに包まれ、高い天井付近に開いた召喚陣から天使が舞い降りた。
「ああああっ!」
先任大聖女ですら初めて目にする下級天使。
あらゆる悪行の数々を働いて来た大聖女には眩しすぎて、今までの悪魔の所業は救いを得ることなど決して許されないはずなのだが、天使の救済と癒しと赦しにより、その体は屋敷の窓を全部割って歩き、盗んだバイクで走り出した?15の夜まで巻き戻って行った。
「本当に……」
髪は白髪から若い頃の栗毛に戻り、顔中苦悶と苦痛の皺だらけだったのも全て消え失せ、嘘ばかりついて来たので口がひん曲がって左側が上に上がっていた醜悪な部分も元に戻った。
政治闘争で宮廷闘争に明け暮れて、人を蔑み呪い続けた醜い目付きと表情さえ改まり、当時の幸薄そうな顔に戻った。
本当に幸運値が低すぎるのは解放されて、レベルや経験やステータス、使える魔法はそのままに、心身ともに満ち足りた若い体を取り戻した。
「エトワール様っ、如何なさいましたかっ?」
叫び声や光に気付き、イケリアが戻って来たので、若返ってしまった大聖女の姿を見られた。
「イケリア…… どうしよう、私、この子の魔法で若返っちゃった」
「はああっ?」
有り得ない出来事だったが、若い方の大聖女は、天使を呼んで時間を巻き戻して傷を治すので、老いたエトワールを若々しく治療した。
若い頃の姿を見せられて当時の感情までが湧きあがり、既に遠い昔に捨て去った名前を呼ぶ。
「お嬢様っ、カテリーヌお嬢様っ!」
「駄目よ、その名前は捨てたの、あの両親が付けたような名前で呼ばないで頂戴」
「はいっ、はいっ」
泣いて縋る老婆を見て、デイジーの方も治療魔法を実行。
「あああっ!」
付き人で大聖女の親友も時間を巻き戻され、一度毒殺された日まで肉体の時間が戻った。
「ああ、イケリア、貴方まで若返って……」
「お嬢様っ」
こっちも結構ぁゃしぃカンケイだったが、ゆるゆり程度でガチレズでは無かった模様。
それから自分語りで独白を開始したイケリア嬢?が語るに語った大ネタ、大聖女の苦労話に一時間以上付き合わされてから、姉妹の手続きをして「エトワール様の妹」と書かれた腕章とかロザリオとか記章とか、一目で分かる品々を装着した。
「お姉さま、そのまま外に行かれると、エトワール様だと分かりませんよ」
「あら?」
天然の大聖女に、顔を隠すなり何なりしないと、修道女会全員から「誰?」と思われる。
イケリアが繕い物をして、帽子から垂れ下がる御簾を付け、背中が曲がっているように見える詰め物も入れ、今まで通り杖をついて、どうにか元の大聖女に見えるようにした。
治療魔法と復活魔法は今まで通りなので、もし若い顔を見られても本人確認さえできれば困らない。
「でも、修道院長様にだけはお話を通しておきませんと」
「そうねえ」
「できれば修道女長様も……」
「そうねえ」
この天然の聖女に悪行など可能なのかとは思ったが、残虐性では自分にも負けていないので、ブレインで暗部のイケリアに任せてみた。
貴族令嬢私室
あれから自分の異変に気付いた側仕えの少女たちは、慌てて自分から生えた突起物を私室で確認した。
「よ~う、これからお前の相棒になる魔物だ、ヨロシクッ」
「ヒイッ!」
少女達は、自分の股間から生えてしまった、男のチ〇チンみたいな物から挨拶されて卒倒しそうになった。
それも黒ウナギかドジョウみたいな奴に、目鼻や唇まで付いていて「今行くぞ、ドボーン」「ううっ、凄い締め付けだ、タマラン」「ブハーー!」までやりそうな奴に声を掛けられてしまった。
ある者は刃物を探して切り落とそうとしたり、またある者は引っこ抜いてしまおうとしたが、魔物には防御呪文が掛けられていて傷一つとして付かなかった。
「うそぉ、何でぇ? こんなの有り得ない」
「フフン、諦めて俺様の言う事を聞きな」
大体聖女の契約竜の仕業なのだと気付いたが、誰にも相談できないし、バレたら魔物憑きだと判定されて即処刑される。
人面瘡程度が膝にできたなら切り落としたり手術して誤魔化せるが、腹の下から生えていて会話までするので言い訳不能。
「俺っちが宿主のお前の困りごとを解決してやるぜ」
「はあ?」
一番の困りごとは生えてしまった魔物で、オフィスソフトのヘルプに「お前を消す方法」をイルカに聞くようなもので、困りごと本人は消えてくれなかった。
それでもこの魔物は高機能で知能も高かったので、話しているうちに打ち解けてしまい、悪役令嬢にいいように使われない方法とか、他の側仕えと足の引っ張り合いをしないでも済ませる手段とか、siriみたいに何でも答えてくれた。
「ねえ? あんたを隠す方法って本当に無いの?」
「フンッ、仕方ねえな、普段はお前の腹の中で眠っておいてやる」
チュルンと奥に戻った魔物を見て、使用人の前で着替えたり、風呂に入れるようにはなった。
アレクサのように照明の消灯点灯まではしてくれないし、アマゾンに消耗品の注文までしてくれなかったが、個人情報とか仕事内容を勝手にSNS投稿するような極悪な真似はしなかったので助かった。
奥の院
聖女とイケリアにベヒーモスのハムでも食わせてワインなど飲んだり、ちょっと待ち時間に聖堂に行って「子爵令嬢から処刑宣告をされ、一週間以内に死体になって出て行く羽目になると予言されております、お救い下さい」などと言って笑っていると、修道院長と修道女長と聖女頭が奥の院に集まったようで、大聖女と面会させられた。
「お呼びでしょうか? 長らくご歓談の様子でしたので、お邪魔しないよう皆控えておりましたが、わたくし共に何か御発表でも?」
「ええ、これからこの子達をわたくしの妹とすることにしました」
長らく誰も姉妹とせず、貴族家から多くの希望者がいても全て断り、誰の指導もしてこなかった大聖女が、今日会ったばかりの二人(片方竜)を妹とすると聞いて少々驚いた修道院長。
「それはお目出度いことに御座います、聖女様からの御指導があらば、新しい聖女様お二人もさぞや御立派な柱となられるでしょう」
治療性能と復活呪文だけなら、仏血義理の仏陀義理で新聖女の方が性能が上なのだが、謀略とか政治力とか宮廷闘争の性能では先任の方が遥かに高いので、そちら方面も教育してもらう。
三人共、聖女の顔の前に御簾が掛かっているのに気付いたが、以前からの天然痘の痘瘡を気にしておられるのか、ご高齢で皺だらけの顔を隠すことにしたのか、そこは触れないようにした。
「それともう一つ気付いたことがあるでしょう? イケリアを見て驚いた? それと……」
聖女は御簾を上げて若返った素顔を晒した。
「ばあ~」
その年齢で舌を出して「ばあ」はないだろうと思ったが、天然聖女は杖も手放して背中を伸ばした。
「そ、そのお姿は?」
「奥の院に入来された頃のお顔……」
普段気にしていた痘瘡の跡まで消え、綺麗な顔になっていた。
「ええ、この子に若返らせて貰ったのよ。ねえ、この人たちにもできる?」
「はい、まあ」
政治闘争の果てに今の地位に付いた者なので、余裕で魔物が召喚できるが、そこは曲げて大聖女に従った。
残りの寿命も少なく、天命も少ないと思われたが、ベヒーモスのハムでも少し食わせて延命しておく。
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