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暗黒竜

 本当に40秒で支度して、余所行きの接ぎ当てのない服に着替えた妹と、特に着替えないで済むので子竜と幼竜も並んで、王都へのお出かけで御馳走を予想してワクワクテカテカしていた。


「オッス、着替えました、オッス」


 この妹も口からクソ垂れる前と後に押忍を付けるよう言われているようで、竜達も竜語で押忍を付けて返事をした。


「ヨシッ」


 姉が服装チェックをして現場ヨシ、ご安全に。


 どうせ貴族家なので着替えさせられるが、長男から三男、次女みたいなボロを着た上に竜舎の作業服を羽織ったままじゃなかったので多少マシ。


「んじゃあ行ってくるよ、折角晩飯作ってくれたのにゴメンよ。今日はあんちゃんやらこいつ(子竜)に乗って移動だから、おっ父は行けねえからもうすぐ帰って来る」


 いつも留守番の姉竜には悪いが、子供の散歩か狩り以外には余り出掛けようとしない姉で、人間語が不自由で子供にも怖がられるので、村の中での物々交換とか買い物にも出なくなり、外出や買い物は社交的な上の子に任せていた。


「まあおっ父も、これから養子縁組だのなんだの呼び出されて、ゆっくり家に帰れるのも今日ぐらいでねえか?」


 簡単に説明は受けたが、カーチャが竜騎士団長の養子、次女と長男が大公家、次男が魔法師団長の公爵の家、三男は騎士団長の侯爵家に行くので、この家で家族が集合する事はもう無い。


 年末年始に帰省してくれるかもしれないが、村でも都会に働きに出た男の子が帰って来るなど珍しく、余程のマザコンかシスコンで無ければ帰るのが面倒で恥ずかしく、色々と親に口出しされて命令されるのが嫌で出て行ったので、結婚でもして子供を連れて来てくれるかもしれないがそれは遠い先の話。


 長男と次男は金さえあればすぐにでも出て行けるよう準備していて、王都で住み込みか下宿に住んで働けるよう貯金もして、三男はどうにかして長男(竜)の所に転がり込む気でいたので、男手は一気に出て行ってしまうのも予想していたが、それが今日だとは思いもしなかった。


 カーチャは自分が教会に連れて行かれないように、弟妹を売って竜魔術が使えるようにしたが、それは大変姉竜不幸になった。


「まあおっ父も稼いだし親方に出世したし、もっとデッカイ屋敷なら、デカすぎて竜舎に預けてるあんちゃん(竜)とかねえちゃん(竜)とか妹(竜)も全員集まれるかも知んねえから、そんな情けねえ顔しないでくれろ」


 姉竜はカーチャからお小遣いとして、他の兄弟のように金貨二枚を握らされた。


「どうして? 金貨?」


 今まではカーチャに小遣いをあげる立場で、魔物の毛皮や討伐証明を定期的に回収に来てくれる商人に売ったお金をあげていたのが、ついに逆転してしまい働きに出てたった二日の妹に大金を渡された。


 高給取りの竜騎士と言えど、父親が家に入れてくれる金額よりも大きすぎる。


「ああ、貴族共を治療してやるのに「誠意」を見せて貰ってな、他にも竜の鱗の剣とか鎧とか案外高く売れて、金の事ならもう心配いらねえ」


 長男(竜)が仕送りしてくれると言うか樽一杯の現行金貨をくれるので、元から金の心配はなかったが、親父が仕事を辞めて飲んだくれたり、全員贅沢を覚えてしまわないよう父親の収入の範囲で生活していた。


 金とか竜魔術が家族を狂わせてしまい、今日で一家離散してしまう。


 他の弟妹も父親も金には困らなくなり、自分が作る田舎料理や、夜なべをして接ぎ当てしてやった古着になど目もくれなくなる。


 姉竜は皆を見送るまでは我慢しようと思っていたが、堪えきれずに泣き出してしまった。


「どうした? ねえちゃん、何で泣くんだ?」


 雛鳥はいつか旅立つが、今年はカーチャ、来年は長男となるはずだったのが、三女四女以外は一斉に飛び立ってしまう。


 四女も竜魔術が使えるようにして貰えば、すぐにどこかの養子にされてしまう。


 大きな屋敷なら今まで送り出した兄や姉、妹弟の竜も集合できるかもしれないが、自分が育てて来た弟妹の面倒をまだ見ていたかった。


 姉竜にとって自分の家と言うのは、産まれた日にすぐ連れて来られたこのボロ家で、竜舎で羽化出来ず卵から出られないで外から親竜に割って貰い、小さすぎて片翼なので一瞬で間引かれ、父親ストナが体温も保てない目も開いていない竜を懐に入れたまま仕事をして、家に連れ帰って姉竜に託され、竜語と人間語を覚えながら育ったこの家こそが我が家。


 自分が父親や弟妹とは別の生き物だとも知らずに育ち、そんなことは全くキニシナイ天然の長男(竜)に教えられて初めて種族の違いと家族構成を知ってショックを受け、血が繋がっている人間たちと養子で養女の竜の違いも知った。


「みんな、立派になった、うれしい」


 無理に笑顔を作って、妹が旅立つ時に心配させないように答える。


 ある意味嬉し泣きなのだが、自分が育てて来た小さな子供達が一人前になってしまい、ついに別れの日が来てしまった。


「早く、行っといで」

「ああ、団長様待たせてるからな、詳しいことはおっ父に聞いてくんろ」

「うん」


 屋外に出て妹達や弟の竜が順に羽ばたいて行き、無事巣立ちしていくのを涙で見送った姉竜。


 そこで幼竜のピーちゃん(メス)ポーちゃん(オス)の本当の母親が、山から双子をヤンデレーな目で監視していたが、二羽を追って王都方面に飛んだので、幼い雛鳥を心配する必要はなくなった。


 ただ王都が灰燼に帰す心配事は増えた。



 王宮


 王城の通路や階段を下り、侍従が縋り付いて止めるのを振り切り、衛兵が誰何して止めるのも「陛下お忍びの御行幸である」と言い切って通り過ぎ、侍従たちに買収されている門番にも、三将軍で国王の移動だと言い渡して道を開けさせた。


 それでも国王の移動でお忍びの行幸を止める者がいた。


「左将軍エズワルドである、陛下の御行幸を邪魔するとは一体何者か?」


 相手の顔も目的も知っているが、あえて聞いたエズワルド。


「おお、これはこれは左将軍様、右大臣カリストにございます、夕食前の静謐で貴重な時間でありながら、突然何の予定も無かった夜会へ出席するなど、高貴な御身分である陛下に置かれましては、是非ご自重下さいますようお願いに上がった次第にございます」


 役者のような流れる動きで口上を告げた右大臣。背後には道を塞ぐ手勢まで連れている。


 人形である国王には予定通りの行動をして貰い、馬鹿でマヌケな王に相応しい傀儡でいなければならないのに、弟で大公の家で三将軍との密談など決して許せない内務省。


 聖女聖人に勇者まで手にして、一体何を仕出かすつもりなのか? 質問して詰問して尋問するのは宮廷の側なのに、逆に質問してくるなどおこがましいと思う右大臣。


 右大臣などの内務省派は、魔国の魔王からの調略を受諾していて、無血開城して国王を生贄に捧げ、あらゆる罪を国王に擦り付けてから広場で処刑する予定なので、徹底抗戦派の国王以下王族派は今後の出世の妨げでしかない。


「道を開けよ、推して参る」


 大公が押し通ろうとしても避ける素振りすらせず、笑顔のまま平然と立ち塞がり続ける右大臣。


「はて? どちら様ですかな? 私が知る大公閣下とは、60歳を超える高齢者、そのような若者が大公閣下などとあり得ぬ、この者も捕らえよっ」


 やがて他の貴族にも連絡が付いたのか、通路の後方も塞がれ、包囲されて立錐の余地も無いほどに詰め寄られた。


「ささ、陛下に置かれましては自室にお戻りあそばされて、心安らかにお過ごしくださるよう、おん願い奉りまする」


 衛兵や近衛兵の後方で、もう一度役者のような優雅な物腰とセリフ回しで立ち回り、国王を嘲笑うかのような態度と表情でチェックメイトを告げた。



「お三方、空を飛んだ経験はおありですかな?」


 詰んだ状態で魔法師団長が何か言いだしたが、何をしようとしているのか理解した三人は問いかけに答えた。


「ある」

「ああ」

「構わぬ」


 騎士団長は飛んだ経験が無いようだが、そこは人生何事も経験なので実行する。


「それでは、我が七階梯魔法で空の旅へとご案内致そう、エクスフライッ」


 王宮内では魔法禁止なので、右大臣は下品に高笑いして左将軍を嘲った。


「馬鹿め、王宮内で魔法が使えるとでも思ったか?」


 これがもし昼間のレベル50師団長のままなら結界に防がれたが、レベル99の大賢者なら自分よりも遥かに低位の魔法士が組んだ結界など簡単に破れる。


 カーチャの余計なお世話と言うか「誠意」に対する返礼が役立った。


「さらばだ、右大臣っ」


 四人はどこかのさくらちゃん(誰?)の後半のさくらカード編みたいに背中からツバサを生やし、CLAMP的な空の旅に飛び立った。


「であえっ、皆の者っ、出合えっ、左将軍エズワルド乱心っ、陛下を虜囚とし逃亡っ、右将軍も大公閣下を名乗る痴れ者も加担しているっ、全魔法士に命じて捕らえよっ!」


「はははははっ、大賢者となった儂の魔法力、しかと見よっ」


 広い王宮の廊下とは言え高速で飛行するには困難だが、まるでグラディウスの超ハードな操作が必要な、一般人なら絶対に不可能な立体機動で飛行し続け、渡り廊下に出ると明り取りの窓から外に出て、スーパーサイヤ人よりも早く飛行して王城を抜け、近くにある大公家に無事着陸した。


「如何でしたかな? 兵力が不足しているようでしたら我が魔法師団へ、陸上兵力が必要でしたら騎士団か歩兵師団までご案内いたしますが?」

「ここで構わん、内務省の出方を見て、防ぎきれぬなら駐屯地まで行こう」


 王の許可も出たので、夜会を開催して涼しい顔で右大臣や内務省を待ち、それでも喧嘩するなら内戦の開始。


 聖女や勇者も手にしていないので手駒が足りない気もするが、これから王のために参集する者だけが本当の味方でもある。


 それ以外は魔国の調略を受けて国を売った売国奴。



 竜騎士団


 カーチャを待ちきれなかった団長は、通勤に使用する飛竜に乗って、すぐに飛び立てる準備を済ませていた。


「お待たせしやした、例の四匹を連れてきましたんで、三女も連れて行きましょう。


 それでも三女の方はいつも通りグズグズして、幼竜舎のお片付けとか、親方で親父の所で本日の手伝い料をちゃっかり貰ってから子竜に乗って滑走路にやって来た。


「行くぞ、遅れんなアホウどもっ、王都まで行ったら食い物にありつけるが、帰っても姉ちゃんに晩飯いらないつってきたから、途中逃げて帰っても食うもんねえぞっ」

「「うん」」

「「「「クイーーーッ」」」」


 こうして、よ~~~やく娘を生き返らせる手はずを整えた団長は、色々とオマケが付いて来る勇者を連れ、王都の屋敷へと帰った。


「離陸許可っ、離陸許可っ」


 管制塔からグリーンフラッグが振られ、四騎の竜騎士と二匹の幼竜が飛び立った。


 妙に長い一日が終わって、勤務終了した貴族も帰り始め、後始末を任された平民騎士も食堂や酒鋪の立ち飲みで一杯やりながら、夜勤の者は交代で晩飯だけ済ませて勤務に戻ろうとした。


「感っ、北方より竜が一機侵入っ、滑走路方向に侵攻っ」


 魔法的な拡声器とスピーカで駐屯地全てに緊急事態が発令される。


 これが敵軍なら滑走路を爆撃する攻撃機になるが、たった一機で正しい経路と速度で滑走路着陸側に侵入してくるのは一人しかいないので、団員もいつもの事だと思っていた。


 管制塔から着陸許可のオレンジフラッグが振られ、騎士団に存在するはずがない巨大な暗黒竜が失速寸前の速度で滑空し、定位置に無事着陸した。


「只今の警報は暗黒竜ダリーシュ卿着陸によるもの、警報解除」


 一日が終わったと思った団員は、さらに大事が起こるのを予想して頭を抱えた。



 滑走路誘導路


 竜騎士団の一般兵や憲兵が駆け寄ると、暗黒竜は「超者〇イディーン」の変身解除後みたいに「全裸で」人化の魔法を使い竜が人間化するのを待った。


「お久しぶりですダリーシュ卿」

「お~、うちのカーチャのアホウが何かやらかしたって聞いてな、慌てて飛んで来た所だ」


 初対面の憲兵にも臆せず、顔見知りの団員とオラオラ系の挨拶を交わし、「全裸で」前も隠さずにブランブランさせて移動しながら街中用の装備を蝕装していった。


 余裕の表情で管制塔で入館証にサインして、入館理由も「親父と妹に面会」と記載、Sランク冒険者のカードも提出。


 高レベル冒険者でSランクなので貴族待遇、「生涯勝手御免」の免状を受けた桃太郎侍みたいな生活も許されている、ストナ家長男(暗黒竜)が妹に会いに来た。


 王都周辺で暗黒竜の着陸が許されるのは竜騎士団か山の中ぐらいなので、親父がいる方に着陸した。


「あれ? 団長帰っちゃった? え~~っ、カーチャも団長の家? 行き違いかよ~」


 18年ぐらい前、暗黒竜の父親が弱い方の息子を間引いた所、そんな事には耐えられない母親は、人間界で竜を育てている馬鹿な飼育員がいると聞き及んでいたので、間引かれた息子を抱いて竜騎士団駐屯地に強制着陸。


 人化の魔法を使って人間の雌に変化し「全裸で」幼竜を抱いたまま歩き回り、既にメスの竜を夫婦で育てている男を念話で見付け、様々な命令をしてから息子を大事にするように泣いて言い渡し、保育料として大樽一杯の古代国金貨と宝石と宝剣の数々を与えて去った。


 勤務中で勤務範囲の出来事だったので、宝物の数々は話し合いの結果竜騎士団所有になって、宝剣は国宝指定されたが、今度はストナの家の方にもっかい同じものが配達されて、更にアブダクト(誘拐)されてキャトルミューティレーション(内臓撤去)されて軽くブレスでローストされて火山で燻されて燻製になった巨大牛がハムとして置かれていたと言う。


 ハムの方は毎週のように配達されたが、近くで攫われた酪農家の牛だったりしたので苦情が入っても、古代金貨で支払うと大変喜ばれた。


 暗黒竜の排泄物とか匂いが付いた村なので、狼とか魔獣でも放牧地に決して近付かなくなり、牛は怯えて牛乳を出さなくなったが、乳牛をやめて肉牛にしても被害ゼロなのでそれも喜ばれた。


 これがプリンセスメーカーなら、10歳ぐらいのょぅじょが戦災孤児とか天から与えられた子として預けられ、親父が男手一つで18歳まで育て上げて、プリンセスとか色々な職業になるはずだが、人化の魔法を掛けられて人間の赤ちゃんになった男の子を見た母親の方が「魔眼」で悩殺されてしまい、摘まんでみたり(何を?)長男クンラブラブで溺愛して、ウザイくらいに可愛がった。


 村中の人気者にもなって、女どころか男までたらし込み、小沢一郎みたいなジジイ転がしや毒蝮三太夫のBBAイジリまで実行して、TOKIOの松岡クンみたいにどこの家に行っても普通に飯が出て来るような生活をして、娘とか孫娘にも「キャーキャー」言われて大歓迎され、村中で「孫の婿に」とずっと勧誘され続けた。


 人間の方の長男と三男が中二病全壊?なのは、全部コイツのセキニンである。


 定番の「コイツら俺の弟と妹、全部俺んだからな、コイツら虐めていいのは俺だけ、だから虐めたら承知しねえゾ」と宣言すると、全員メスの顔をして脳殺され、クソジジイの家の娘まで村にいる間は言う事を聞いたらしい。


 11、2歳で独り立ちして冒険者になり、王都か別の街に行こうとすると「ママを置いて行かないでっ、ママも連れてって」と縋り付く安物のコントを見せられ、ストナも自分には愛が向いていない、ムチュコタンラビューのママは長男(竜)にNTRされていて、夫など触られるのも虫唾が走ると宣言されたので離婚、もしかするとまだ死んでないで、長男にへばりついて生きているかも知れない。


「よ~う、親父~、また来たぞっ、カーチャの野郎がまた何かやらかしやがったんだってぇ?」


 親方部屋のドアをバーンと開き、クソ親父に挨拶すると、親父までメスの顔をして息子(暗黒竜)を迎え入れた。


「お、お帰り(////)」


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