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暗黒邪炎極死冥界破

 騎士団員達は三男が放ったフィニッシュブロー、暗黒邪炎極死冥界破だか鳳凰幻魔拳的な精神攻撃でズタボロにされ、大半が地面に転がっていて「死んだか? 地獄を見て指一本動かせまい」みたいな状態で屍を晒していた。


 マーマが乗っていた沈没船が崩れ落ち、美しかったマーマが骨かミイラになって崩壊し、船ごと深海に落ちて行くような幻覚を見せられて苦しんでいた。


「や、やめてくれ、あの頃の事だけはっ」


 暗黒騎士に憧れ、毎日左手に聖なる模様を描いたボロボロの封印の包帯を一人で巻いて、左右の掌と手の甲に聖痕があるように見せるため刃物で傷を付けて、内に潜む暗黒竜を封印する設定で生活していたあの日。


 もちろん目の下に黒い書き込みをして悪役線を入れ、両頬や胸に逆十字架の書き込みも忘れず、メイドに刺繍させたのがかわいらしすぎて結局自便で刺繍し直した、胸や背中に髑髏のマークが入った黒い服を着ていたのも忘れてはならない子供時代。


「ひいいいっ、違うんだ、あれは暗黒騎士に憧れていただけでっ」


 見た者を魅了したり隷属させてしまうギアスを発生する「魔眼」である左目を隠すため、通学時でも真っ黒な眼帯をして、それでも足りないので金糸で闇的な紋章を自分で刺繍した過去。


 金属系の装飾でジャラついて家の鍵とかもロッカーの鍵も逆十字架も銀の鎖でぶら下げ、黒い首輪も腕輪もメリケンサックもトゲトゲのヘビメタ系のファッションでキメ、鏡の前でジョジョ立ちして悪魔的な表情でニヤリと笑う練習もした。


 いつも存在しない暗黒竜と会話したり、急に何かを察知して驚いて猫みたいに何もない空間を凝視したり、殺気を感じると後ろを振り返って「姿を現せ、下種な刺客どもが」と呟いてイキり倒してブイブイ言わせていたあの頃。


「うわああああっ、嫌だ、嫌だあああっ」


 成人前に買って貰った剣や軽装の鎧は全部黒に塗って、まだ若いのに痛み止め?にアルコールなど飲んで「ケッ、今日も内側から好き放題暴れてくれやがるぜ」と吐き捨てるように言って煙草なども吸った。


 どっかのハードボイルド刑事デカ同心みたいに「男には酒でしか癒せない痛みがある」とかホザきながらカミュとか洋酒を飲んで、内に潜む暗黒竜から与えられる痛みに対抗し、危険な薬物まで服用してガリガリに痩せ、物語の中の暗黒騎士みたいに吐血までして「ゲフウッ、クソッ、こんな時にっ」とか言いたかった15の夜。


「違うっ、俺は聖騎士の方に憧れていたんだっ」


 いつも綺麗事ばかり言って、どんな状況でも暗黒騎士とは反目する聖騎士に憬れていた連中も、装備全部を白魔法とか光属性装備で固めていた騎士学園時代。


 道で困っている老人や子供がいれば平民でも誰でも助け、雪かきのような重労働でもトレーニングだと言い切って年寄りに喜ばれ、街の清掃ボランティア活動に明け暮れて「仁」「義」「愛」「信」などの徳を積み、竜の試練があってもフリーパスで通った聖騎士を目指した。


 当然のように暗黒騎士を目指している連中とは諍いを起こして、マジ喧嘩していた学生時代。


「もう許してくれっ、それだけはっ、それだけはああああっ」


 騎士学園卒業までには暗黒騎士勢と殴り合ったり決闘したりして、スクールカースト上位のジョックと枠外のバッドボーイズとの対決を済ませた後、応援団みたいな桁が一つ違うトレーニングをしている相手の実力と努力と決意を知った。


 暗黒騎士側の「タイマン張ったらマブダチ」理論とか「不幸アンラックダンスっちまったのさ」理論で和解した。


 卒業する時には魔王城での最終決戦前に聖騎士が暗黒騎士と交す挨拶を再現し、どっかのユージオの2クール目のオープニングみたいにイキリまくった挨拶をして、拳を合わせたりハイタッチしたり一連の行動をしてから逆方向に背を向けて歩いて、勇者を守るために自分が担当するべき属性がバッチリの敵と相対する前の、暗黒騎士志願者との別れを済ませ「これで勇者パーティーで再会するまでお別れだな」と言ってから卒業したあの日を思い出していた。


 結局、貴族家の事情で野良の冒険者や暗黒騎士になるなど決して許されず、平民の歩兵師団にも、ホモジジイの僧侶に悪戯されまくった後のキズモノ竜騎士団にも、エリート魔法士の魔法師団にも入団するのも許されず、どうにかして騎士団にコネ入団させられ、卒業後の翌月一日よくげついっぴには騎士団の同僚として入団していたオチが付いて、お互い気まずい挨拶を交わした聖騎士志願兵と暗黒騎士志願兵は、思い出してはならない記憶を呼び覚まされて地獄の苦しみを味わっていた。


「ふふっ、こっちは準備完了だぜ」


 変身後は暗黒竜に精神汚染されて性格が変わってしまう設定もあり、以前の長男か多重人格者のように人格が豹変して乱暴な言葉遣いに変貌した三男。


 どこかの不動明君が、最初はカマっぽい大人しい性格で登場したのが、親友の実は天使で両性具有だった男女おとこおんなにデーモン族が作った変な記憶再生装置を被らされて、サバトの途中で勇者アモンが転移して来て憑依した後は、眼の下に悪役線が入るぐらいの目付きで乱暴な性格に豹変したように、三男の目の下にも悪役線が入って別人格に切り替わった。


 一応黒装備にもそういった機能があって暗黒竜も憑依していて、まるでアーチャーのカードを使い続けたジュリアン君の姉のアンジェリカさんみたいに、カードの持ち主の英雄王で金ぴかのギルガメッシュ王と同じ傲慢で暴虐な性格に代わるように精神汚染されたりするのだが、人格がコロっと切り替わったりセリフ回しが乱暴になるまでの機能は無く、長男から鎧ごと継承した設定だったりする。


 今も長男の方は中二病ど真ん中と言うか、ちょっと症状が緩和してきているので、現在の赤装備では戦隊系リーダーのレッドで熱血路線、最強の竜装備のポーンでオッパイドラゴン的なギャグ路線も入れてある。


 どこかの天使戦隊みたいに、天使だけに綺麗事を並べる台詞はお母さま方には大好評でも、戦隊物を見て育った父親とか、フィギアとかロボとかグッズを全部買ってくれる大きなお友達には大不評で、後半は熱血路線に変更してどうにかした。


 グッズの販売が不振だったのか翌年には海賊戦隊になり、チョイワルレッドのオレサマ王子とか、お嬢様おぼっちゃまの貴族が、戦隊シリーズ35周年の「伝説のオタカラ」を奪い合うような路線に変更されたのと同じく、ガッツリ病んでいる中二病から熱血チョイワル路線ぐらいに変更された。


 ちなみに次男は平和主義のグリーン辺りなので、緑の奴が顔から出す炎で大抵の事は解決する。


 やがて状態異常耐性があった騎士団長が大ダメージから回復し、剣を杖のようにして立ち上がった。


「恐ろしい攻撃だ、だがまだ負けておらんッ」


 そこで三男は「その意気や善し」とかホザきながら、師匠(長男)から託されたフィニッシュブローを放つ準備をして小宇宙コスモを高めた。


 この世に悪がはびこる時、必ずや現れると言われる伝説の少年達。


 メスガキ(カーチャ)を守る少年が立ち上がった時、その拳は空を裂き、その蹴りは大地を割った。


「顕現せよっ、刮目せよっ、暗黒邪炎極死冥界破ァッ!」


 岡田芽武ぐらいの見開き一杯の武技言語を唱えた三男の黒いフィニッシュブローが放たれると、騎士団長や騎士団員を暗黒の疾風で造られた刃が襲い、続いて竜の形をした暗黒の邪炎が襲い掛かった。


「ぐわああっ」


 暗黒の呪われた鎧に付加された機能なのだが、さしもの騎士団長とてレジストできず、邪炎に焼かれながら伸身の三捻り半で吹き飛ばされた。


 ヤラレ役のシルバーセイントみたいにヘッドパーツも飛ばされて、シルバー聖衣のように鎧を粉砕されて破片を撒き散らして回転しながら「ザシャアアッ」と言う車田調の擬音と破壊音で着地し倒され、勝敗が決した。


「アホウが、接待で負けろと言うただろうがっ」


 姉が上から三男をぶん殴って沈黙させ、ほぼ致命傷を負った騎士団長にも治療呪文を掛け、天使を呼んで修復した。


「いってえ、何すんだねいちゃん」


 この姉はアテナでは無く、リンかけの菊ねいちゃんらしい。それでもユニコーンの邪武みたいなザコの弟をシバいて馬にして遊んだりする姉。


 十聖剣の時みたいに読者から「ふぁんろーど」に投稿があり、「この人は本当は悪い人じゃないと思うんです」とか投稿があって、本当に人格が書き替えられたアテナ。


 それでもこの姉は勇者になっても改心しない。


「いやあ、すんませんねえ、クソガキが調子に乗りまして~」


 また揉み手などしながらゲスい顔で媚び、大金を支払ってくれる予定の騎士団長のご機嫌を損ねなかったか心配する。


「いや、これで良い、レベルと装備の差を思い知った」


 騎士団長はハードなパワープレイがお好みのようで、全力で踏みにじられて吊るされて腹パンマジゲロとかスパンキングもされまくって、様々な言葉攻めも食らうのがお好きらしい。


「呪いの装備ですけえ? さっきは出しやせんでしたけんど、呪い装備も充実してやす」


 暗黒騎士マニア垂涎の呪われた黒装備も出品された。


「商品番号1番、普段着扱いもできる竜の皮で造られた軽装のロングコート、防御力と魔力が上がる代わりに竜に呪われて、背中にも金で竜語の刻印、一度着ると掌に穴が開いて反清教徒の印が体に出て、暗黒の暴竜の魂も封印されてて体の中を蝕まれる代わりに、物凄い負荷トレーニングを一日中してるのと同じになるスグレモノでさあ」


「それ、物語の暗黒騎士の標準装備じゃないかっ」

「掌に聖痕が開く奴だっ」

「買うっ、俺が買うっ」


 地面に転がっていたタヒ体が次々に起き上り、どっかのイキリト君たち御用達の黒のロングコートで、首周りにはどっかのチームの団長みたいなボアボアが付いて、スリーシーズン用に脱着可。


 それも竜の呪いと暴竜の魂まで封印されているアイテムを見て、凝りもせず騎士団員が競りに参加した。


「こちら限定5着となっておりますだ」

「金貨300、いや400出すっ」

「俺なら500出すっ」


 瞬くうちに売れ切れて、後日金貨と交換になった呪い装備。


「まあ試着してみて下せえ」


 着た瞬間に何かに取り憑かれ、頭の中にだけ響く声で話し掛けられる。


『ふっ、まだこれに袖を通す馬鹿がおったか? さて、存分に喰らわせて貰おうかのう』

「ああっ!」


 掌に開いてしまった聖痕と内側からの栄養や脂肪吸引で、余りの痛みに声を上げる騎士、これを着続けるとガリガリに痩せられるので、ダイエット器具にはなる。


「大丈夫ですけ?」

「ああ、大丈夫だ…… いや、こうだったな「ケッ、今日も内側から好き放題暴れてくれやがるぜ」ククッ」

「「「「「「おお~~」」」」」」


 これを着て街中を歩くと、長男を見た三男みたいに「アニキ、カッケー」と子供に声を掛けられたり、同類とすれ違うと「ククッ、まさか俺と同じ修行する馬鹿がいるなんてな」とか、ビジュアル系バンドみたいな恰好をしていて、顔色が悪いので化粧もして黒装備でイキリ倒している、ガリガリのヤバそうな奴にも声を掛けられてグータッチとかされる。


 他にも魔法具で写メを取られたり、それが浮世絵みたいな版画に掲載されて「今も廃れない暗黒装備」とか「ガイアが俺にもっと美しくなれと言った」みたいなキャプション付きで販売されたりする。


「え~、次は弟が決戦仕様とか言ってた黒鎧、どれどれ?加工が不可能な暗黒竜の鱗を大胆にあしらった逸品で、暗黒竜の鱗には穴があけられないので外側を金属で……」


 アイテムボックスに出る説明を読み上げる前に説明を遮られた。


「それ、暗黒騎士が魔王城に攻め込むときの決戦仕様じゃねえかっ?」

「俺が買うっ、金貨1000だっ」

「金貨1200っ」


 呪いの説明をする前から買い手が集まったが、正直な商売をするために説明した。


「いえいえ、こいつは呪われてましてな、力とか魔力が上がる代わりに心と魂を蝕まれる呪いで、暗黒竜の魂と精神世界で戦って、勝って認められないと命を食われるんでさあ」

「それが良いんじゃねえかよっ、そんで最後に魔王の前で倒れた時、暗黒竜に認められて……」


 そのシーンが大好きだった騎士は、涙で言葉が続かなくなり、嗚咽までし始めた。


「ちくしょう、イミテーションでもいいから欲しい」

「本物着るのははキツイけど、これ見ながらチビチビ飲んでみてえ」


 お仲間も泣き出してしまい、競りが一時中断したが、意外な人物が口を開いた。


「金貨1500」


 それは綺麗な涙をすっと流している騎士団の副団長だった。


 失われた聖都の暗黒闘士だっただけではなく、勇者物語の暗黒騎士も大好きで、中年になって腹も出て来たので、これを着込んで暗黒竜に食われ、激痩せしようと思っている。


「副団長が買うなら仕方ねえ」

「たまに見せて下さい」


 貴重なアイテムなので他の騎士が諦め始めたが、メスガキはこう言った。


「限定数4ですのでお早めに」

「「「「「ナ、ナンダッテーーーーーッ!」」」」」(AA略)


 レアドロップアイテムで奇跡でも起こらないと複数出ないが、暗黒竜を倒すクエストが美味しいので何度もループすると「もう勘弁してください」と渡される品でもある。


「俺も1500」

「1500っ」

「俺もっ」


 上司を超える金額は提示できなかったのか、4着とも金貨1500で売れた。


「うん、勤務が終わったらこれを見ながらチビチビ飲もう」

「「「「「はいっ」」」」」


 全員酒の肴には、これをドロップさせたときの勇者の英雄譚でも聞きたいと思ったが、実際はまた暗黒竜が頭を下げて帰って貰っている情けない話なので聞くと後悔する。


「聖なる模様入りの封印の包帯と魔眼を隠す眼帯なんかもご用意しておりますだ」

「買うっ」

「俺もっ」


 そちらはお手ごろな値段でも本物だったので、高価格設定でも飛ぶように売れた。


「レベル99の、人類の限界を超えるにはどうすれば良いのだ?」

「あ~、おら達は竜扱いらしくて制限なしなんですけど、普通の人が限界超えるにはちょっくらコツがありまして」

「む、どうするのだ?」

「ちょうどいい獲物がおりますんで、竜舎に行きやしょうか?」


 一同はゾロゾロと竜舎まで移動して、その間に団長に相談した。


「あの~、カイルのおっちゃんを噛んで火吹いたバカがおりますんで、ちょっくら絞めても宜しいでしょうか?」

「うむ、少しなら構わん」


 カーチャがやるなら竜の仲間なので調教の範囲で済むかと思って許可を出してしまった団長、それは甘い考えだった。


「殺してもすぐ生き返らせますんで大丈夫でさあ」

「は?」


 目の前のメスガキは勇者なので、惨殺死体でズタボロの状態でも即復活、4分ルールを超えても蘇生できる。


「まあ娘さん生き返らせる練習ですんで、そこは目を瞑っておくんなせえ」

「なっ?」


 団長最大の弱点を突かれたので抗弁できず、これから飼育員を殺そうとしたクソ竜のリンチが行われる。


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