墓泥棒
もうかなり昔のことだが、あるところに、忠助という男がいた。
もともとたいして裕福でもない生まれだったが、あるときなどはひどく落ちぶれて、草履の代わりに牛の革を巻き、明日食うものにも困るあり様だった。それだから忠助は、村のはずれにある墓地、生前はそこらの地主だった金持の墓へ行こうと決めた。
夜中になるのを待って、忠助は墓を掘った。しかし忠助は、死者の骨以外には何もみつけることができなかった。仕方がないので、彼は、金持の名誉以外のすべてのものをありったけ盗んでいくことにした。すなわち、彼の口調、強欲、高慢さ、孤独など。墓穴には、再び土が被せられた。
翌日、忠助は空きっ腹を抱えて村を歩いていた。
彼が、埋められた財産の噂を聞いたのは当然ながらその村でのことだったので、彼は、誰かがすでに奪った後だったのではないかと考えた。その金はもともと自分のものになるはずだったのだと思うようになり、村人に対する言葉遣いはぞんざいになっていった。しかし、人びとはどこまでも善良だった。ある人などは、忠助の調子があまりにも生前の地主に似ていたために、彼の墓の碑を、「忠助」と書かれたものと取り換えたほどである。
甦った金持は態度こそ威張っていたが、ついに、生涯を足に牛の革を巻いたまま過ごした。