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わたし達、冒険者始めます  作者: 遠ノ守
第四章 過去から呼ぶ声
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28 厄猪──ミスフォートボア── 3


 ちょっと自立状態での高速移動を試してみようと思う。

 ロボットアニメで、ロボットが脚を動かさずスケートのように移動するやつだ。


 使うのはいつもの“見えない盾”。

 “自動追尾衝撃ホーミングインパクト”から縦方向の動きをなくして、移動を水平方向に限定するのだ。


 ひょい──。


 “厄猪ミスフォートボア”の突進をかわしてみる。

 できる。

 できるけど、盾の動きに体をついていかせるのが大変だな。

 左腕にかかる負担が、かなりと大きい。

 そこで“見えない盾”で足場を作ってそこへ立ち、足場の動きを盾に連動させてみる。


 ひょい──。


 よくなった。

 盾の動きに足がついていく。

 だが地面に大きめの凹凸(おうとつ)があると、懸架装置サスペンションが底突きしたトラックの荷台にいるように、体全体が突き上げられるのがいただけない。


 小さな凹凸(おうとつ)は、“足場(パネル)”がわずかに“錨床アンカーフロア”から浮いて移動するよう形像イメージしているため、問題ない。

 実際に浮いている訳ではないのだろうが、この隙間すきまを大きくし過ぎると、立ち姿勢で飛んでいるようになってしまうので、ここ(すきま)はあまり広げられない。

 そこで盾と足元、三点の位置関係を完全な固定にせず、連動量を加速度半減までゆるめて、ゆっくり変化するようにしてみた。

 三点のあいだ緩衝機構ショックアブソーバーを入れた感じだ。


 ひょい──。


 おお、これは良いな。

 雪上バイク(スノーモービル)に引いてもらうそりスノーボード(スノボ)にでも乗っている気分だ。

 いや、左右の足が自由になるので、片手(ストック)のスキーかスケートの方が近いか。

 加速アクセル制動ブレーキはもとより、転回ターンも自在になる。


 この状態で“厄猪ミスフォートボア”の突進を止める。


 ダンッ!───


 よし、止まった!

 いろいろゆるめたので、ひょっとして押し返されるかも? と身構えていたのだが、そんなこともなく普通に止まった。

 なにしろわずかに浮いている設定なので、ちょっと心配してしまったのだ。


「止める」という意識があるときは、摩擦まさつがどうこうではなく、“錨床アンカーフロア”と“足元パネル”が一体化するのかな。

 というか、これまでの“見えない盾”の挙動を考えると、一体化するのだ(●●●●)と考えてしまった方がいいのかもしれない。


 さて、“自動追尾衝撃ホーミングインパクト”のわりに一発試し打ちしてみますか!




 “厄猪ミスフォートボア”が来る。

 それを“ひょい”っと避け、横へと回り込む。

 そのまま横腹へ“盾鎚撃シールドバッシュ”!


 ドンッ!───


 大当たり(クリティカルヒット)

 厄猪ミスフォートボアが、ゴロンゴロン転がっていく。

 いけそうだ。

 というか、転がりすぎだろう!


「かかれっ!」


 スレインたちが突っ込む。

 うん、前向きだな。

 だが残念、厄猪ミスフォートボアは脚を下にして止まってしまい、すぐさま立ち上がってきた。

 それを見たスレインたちが、慌てて引いていく。


 厄猪ミスフォートボアを吹き飛ばした“盾鎚撃シールドバッシュ”は、通常の盾鎚撃シールドバッシュ当たり(インパクト)の瞬間、錨床アンカーフロアから伸びた“見えない盾”による突進力を上乗せ(サーブ)して行なった。

 害猪イビルボアを切り裂いた、なんちゃって昇降機エレベーターの動きを横にして、盾鎚撃シールドバッシュに上乗せした形だ。

 錨床アンカーフロアを広い面積に広げたために、こんなことが出来たのだと思う。

 地属性魔術で、外から身体強化をかけているようなものだな。

 速度はこちらが段違いに速いようだが。

 はじめは径路パスを通すために広げたフロアだったけれど、意外な性質を見せてくれて、ちょっと面白くなってきた。


 そういや月那るなも、地属性術で体表を保護してたっけ。

 耐久試験をしたとは聞いていないが、あれはどれくらい硬くなったんだろう?

 うまくすればパワー上乗せ(ライズ)にも使えそうだし、こんど話してみよう。


 最初に“自動追尾衝撃ホーミングインパクト”で飛んでしまったため、質量がどうこうと考えてしまったが、“錨床アンカーフロア”を利用した“倍力補助サーボアシスト”付きの“盾鎚撃シールドバッシュ”だ。と考えておけば、いまは充分だろう。

 なんとなくこの“見えない盾”の、使い方が分かってきた気がする。



 だがましは、これで打ち止めだ。

 補助アシスト”付き盾鎚撃シールドバッシュの威力は、厄猪ミスフォートボアの転がり方を見る限り、“自動追尾衝撃ホーミングインパクト”に遜色そんしょくがない。


 “自動追尾衝撃ホーミングインパクト”と“倍力鎚撃アシストバッシュ”が一回ずつ。

 どちらも初めて使ってみたが、こちらの負担が大きすぎてもう使えない。

 みたいなことにしておくか……。

 もう一度言うが、俺は“厄猪ミスフォートボアを張り倒した男”になんて、なりたくない(●●●●●●)のだ。


 弱点調査を再開しよう。



 厄猪ミスフォートボアが来る。

 それをける。

 そしてボアの横腹に張り付き、移動しながらナイフを刺す。

 うん、さらない。ぜんぶ弾かれた。

 ホントに岩だ。


 あ、ボアの奴、俺がくっついているのに気がついたぞ。器用に首をひねって、こちらをにらんでいる。

 急発進、急停止、急転回して俺を引き剥がそうとしてくる。

 急転回(ターン)から牙で突いてきたので、“見えない盾”をばして防ぐ。

 俺も振り回されるのがつらくなったので、一度(ボア)から離れた。

 気を抜いているとき強烈に振り回されると、首と意識が持って行かれそうになる。

 加減速が強力で小回りもくというのは、こういう所でやっかいだ。


 振り回されるときの重力()に対抗するというと、対応策は耐Gスーツか。


 戦闘機の操縦室コックピットは旅客機のそれとは異なり、機器類を保護する最低限の加圧と加温しかされていない。

 では高高度の低圧低温から人間とうじょういんをどう守るのか? というと、飛行服パイロットスーツ保護帽ヘルメットに、電熱器ヒーターと血圧計の圧迫帯あっぱくたいのような機構が組み込まれていて、機体の機動による多方向への重力()に応じて圧力をかけ、脳に血流が行かなくなる暗転ブラックアウトや、脳に血流が集中する赤転レッドアウトを緩和するようになっている。

 これを“見えない盾”で再現する。


 基本ベースで使うのは、転移部屋から試験テストで転移させた全身板金鎧フルプレートアーマーだ。


 俺の収納ストレージは、中の物を取りだした後も、収納物鑑定の情報データが残るようで、履歴りれき参照さんしょうできる。

 出発前日、ルーシーさんから頼まれた全身板金鎧フルプレートアーマー姿図スケッチを描いたのも、この情報データを参照しながらだった。


 この“鎧”の情報データを“見えない盾”で模倣コピーして、全身をおおう。

 次に関節を設置し、外力が加わったときにはそれを無視して現状継続、内側からの力には九十パーセント応じるように設定する。

 百パーセントにしてしまうと、力加減がわからなくなるので、感覚帰還(フィードバック)用に一部を残したわけだ。

 関節の素材は、さきほど盾と足元の三点を繋いだ柔らかいつなぎを使う。リカルドの盾を強化したときに、盾と錨床アンカーフロアを結んだものだ。

 柔らかいつなぎの強度は分からないが、もともとの盾がなくなるわけではないので、問題ないだろう。


 最後に“鎧”と装備中の防具類の隙間をめる。

 耐重力()スーツを思い付いたときには、この隙間すきまを風船のようなもので埋めて耐G用の圧力を得ようと考えていたのだが、“見えない盾”は強度があるのに変形できるのだ。

 これを素材にするなら、最初から密着させておいて、突発的な重力()がかかったときにだけ、変形して必要な圧力を得ればいいじゃないかと気がついた。

 装備に密着した外皮服スキンスーツでいいじゃないかと。


 “見えないよろい”の出来上がりだ。


 この“見えない○○”というのもいい加減どうにかしたいのだが、英語だと

stealth(ステルス) armor(アーマー)”か?


 うん、変わらない。

 それに鎧が見えないのであって、俺自身が見えなくなるわけじゃない(笑)。




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