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わたし達、冒険者始めます  作者: 遠ノ守
第四章 過去から呼ぶ声
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20 ボス部屋調査3 sideルーシー


 剣のかたを流していると、周囲の空気が変わった。

 ささくれ立った気配が、複数こちらへ向かってきている。

 連鎖リンクしたわね。


連鎖リンクしましたかね」

「数は…三……四匹?」


 彼らも気づいたようで、タツヤさんがそう言いリカルドが続ける。


「…五匹ね」


 ちょっと甘かったけど…。

 やがてスレインが、正面から戻ってきた。


連鎖リンクした! 五匹だ! すまん」


 戻ってすぐ報告を入れたスレインのすぐ後ろについて来ていた狼型ウルフタイプの魔獣を、シルィーさんが空気槌エアハンマーで打ち、布陣の中央へと転がした。

 転がりながらも必死に起き上がろうとする魔獣を、武器の間合いが長いルクスが転がる勢いを利用(カウンター)して対処する。


 即席インスタント連携コンビネーションも問題なさそうね。


 続けて残りの魔獣が突入してくると、魔獣三匹が前衛三名へと振り分けられたようにきれいに別れる。

 ナニこの不自然な分かれ方。

 三匹いるなら二匹が本命を襲い、一匹は遊撃で周囲を牽制するものじゃない?

 狼型ウルフタイプなら、統率された群れじゃなくてもそれくらいの連携はするはずなのに。

 それにあと一匹はどうしたの?


 まあいいわ。

 時間がかかるわけじゃなし、来た順にさっさと倒しましょうか。


 左手のリカルドとノルドは、いつも通りの息の合った連携コンビネーションで倒す。

 右手のタツヤさんも、静かに危なげなく倒す。


 私は剣を正面に構えて“跳躍ちょうやく”を発動。

 べつに技能スキルを使う必要のある相手じゃないけど、肩慣らしでやっておく。

 たたきょは一歩。

 つまり実際の移動距離そのままで、上乗せはなし。左足を軸に、体を左へまわすように発動する。

 筋力きんりょくには剣を支えることに専念させ、技能スキルで剣をり出すというかたちで、右下段(げだん)から逆袈裟ぎゃくけさり上げる。


 うん、問題なし。


 あら? ここまで魔石を回収は、ずっとシルィーさんが風属性術でしていたのだけど回収されないわね。そう思ってそちらを見ると、彼女は岩の壁を見ている。

 そして視線が後ろへと移っていく。

 タツヤさんも気付いているようで、同じ方向を見ている。


 へえ、すごい精度ね。

 まるで残りの一匹が岩越いわごしに見えているみたい。


「一匹後ろから来ますね」

「なに!?」


 タツヤさんが警告アラートを発すると、奥の通路に一番近いルクスが反応する。

 そのとき、その入口から狼型ウルフタイプの魔獣が飛び出してきた。

 ルクスが迎撃のやりを突き出すけど、槍がとどく前に魔獣が進路を変えた。

 惜しい。

 変えた進路の先にはシルィーさんがいる。

 だけどそのシルィーさんは、逃げようとする素振そぶりを見せない。

 普通なら後衛は魔獣から距離を取って、タツヤさんと入れ替わろうと動くものだけど、何か狙っている?


 矢を射かけようとするスレインを手で制して様子を見ると、シルィーさんは両手で持っていた短丈ワンドを左手一本に持ちかえて腰の横に置き、その短丈ワンドと左の爪先つまさきを開いて魔獣へ向けると、踏み出す動作と同時に腰を落として、両腕を開くように短丈たんじょうを魔獣へ向かって突き出した。

 空気がって、大きく開いた魔獣の口からくびにかけてが消えてなくなり、やがて全身が消えて、魔石が残る。


 へえ、剣身けんしんなしの魔術剣か。


 “魔術剣”は、剣身けんしんに自前の属性術をまとわせて、れ味を劇的に増す術だ。

 だけど剣身けんしんというしんのない魔術剣は、剣を振ったときに剣の効果が遅れるため、むちのようにしなって扱いづらい。

 実体の剣身のように、さきの速度が速くならないのだ。

 剣身けんしんなしの魔術剣というのは、ただでさえ少ない魔術剣の使い手の中でもさらに使う人がいない技巧テクニックだけど、ああして突きに特化した使い方をすればその欠点も問題にならないわけか。

 おまけに剣身の消耗がないから、耐久力のある高価な剣を用意する必要がない。

 その上もともと魔術士用の短丈ワンドを使うので、魔力の通りが良い。

 考えたわね。


「なんだ!? なにが……起きた?」


 槍を引き戻したルクスがつぶやく。


「まさか魔術剣? ……剣もないのに? …術だけの剣身??」

「嘘だろっ! あいつ後衛じゃないのかよ!!」


 スレインは気付いたようね。

 ノルドはまだ信じられないといった風だけど。


「頼もしいでしょう?」

「お前は知ってたのかよ」


 タツヤさんがが口をはさむと、ノルドが聞き返した。


「それはまあ、日頃から一緒に行動しているわけだから…」

「タツヤ、に、教えて、もらった」

「なに!?」

「片手突きのフォームをね!」


 ええっ! あの魔術剣の使い方って、タツヤさんが教えたの!?

 出会ってそれほど経っていないでしょうに、自分の戦いだけじゃなくて他人の戦術面にまで頭が回るということ?!

 それがあのかせぎの原因なのか。

 これはタツヤさんへの認識を、だいぶ上方修正しないといけないわね。


「そろそろいいんじゃないの」


 この二人をただのDランク冒険者とあなどることは、依頼達成に無駄ロスむ。

 “怒濤どとうの山津波やまつなみ”は、彼らのDランク昇級試験で負けたことを引きっているのか、彼らの評価をなかなか決められずにいるようだ。

 だから伝えた。

 私は彼らを認めたよ。と。


「ですがあねさん」

あねさん言うんじゃないの! それよりスレイン、連鎖リンクの報告は?」

「そうでした。周辺の魔獣は片づいたんですが、その内側に四~五匹(しごひき)ずつ固まっているのが何組かいて、今のはその一つです。あいつらかたまりごとに連鎖リンクしそうですよ」

「そう。それを片付けたらおしまい?」

「いえ、壁のなかに一番大きな十匹ほどの群れがひかえていて、そいつが最後です」


 立場上、初手から一人で殲滅せんめつするわけにはいかないし、定石じょうせき通りの釣り狩りでは私の技能スキルの効果が限定的……となると。


「…集団ごとに相手をするならなんとでもなるでしょうけど、一気にまとまって来られたらちょっとまずいかしらね」





前回お知らせした通り、話の順番を並べ替えました。


総話数が変化しないので、原文からさくさくコピペ(コピー&ペースト)しましたが、「あとがき」の中でも時事じじものは投稿日に合わせたいので「○部分」に固定、話に付随した内容のものは本文と一緒に移動させたいとあって、少々面倒な思いをしました。

「割り込み投稿」を試してみる機会だったかもしれません。


第四章については、四章に切りが付いたところで実施の予定です。



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